君のギアスは   作:JALBAS

3 / 10
ブリタニアの少年ルルーシュは、体を2つ持つことになる。
ひとつは、エリア11のアッシュフォード学園に通う高校生と、黒の騎士団のリーダー“ゼロ”との表裏の顔を持つ自分本来の体。
ひとつは、8年前の日本の糸森町に住む女子高生、宮水三葉の体。
この2つを使い分け、ルルーシュは動き出す。妹ナナリーが、幸せに過ごせる場所を作るために……
その行動が、いかなる結果をもたらすのか?今はまだ、誰も知らない……




《 第三話 》

 

「何をやっていた?ちゃんと監視していろと言っただろう!」

「無理を言うな!お前の代わりに、扇達に指示も出していたんだ。四六時中、あの娘に構ってはいられない!」

C.C.から、昨日の俺(三葉)の様子を聞き、愕然とした!俺が、ゼロだということを、あの女に知られてしまった。まずい……まずいぞ!何とかしなければ……

「協力したいと言ってきたぞ、余程、ブリタニアが許せんらしい。」

「あんな田舎娘に、何ができる?余計な混乱を増やすだけだ!」

「あんな嘘を言わせるからだ。ブリタニアの攻撃で滅ぼされたなどと……あの娘の町は、彗星落下で滅んだんだろ?」

「本当の事を言ってどうなる?彗星落下から生き延びても、その先はブリタニアの支配下の生き地獄だ!もしかしたら、本当にブリタニアの攻撃で命を落とすかもしれん!彗星落下で、ひと思いに逝けた方が幸せだろう!」

どうする?知られてしまった以上、大人しくしていろと言っても、まず聞かないだろう……彗星落下まで、まだ半月以上ある。その間は、何回も入れ替わりは起こってしまう……だが、あの女に“ゼロ”をやらせるのは危険すぎる……

「別にいいだろう。影武者とでも、考えればいい。」

「影武者だと?」

「私が、代理をやっているのと変わらない。シナリオはお前が書いて、その通り演じさせればいい。」

そうか……そういう考えもあるか?それならば、俺が糸森に行っている間も、作戦の進行は可能になる……だが……

「突発的なイレギュラーが発生したら、どうするんだ?」

「そんなことは知らん。そもそも、入れ替わり自体がイレギュラーだろ?」

腹をくくるしかないのか?もう俺の体は、半分あの女に握られているのも同然なのだから……

 

 

 

「ほんと?私にも、協力させてくれるん?」

「ああ、但し……」

そう言って、C.C.さんは折り畳んだメモを私に差し出す。

「ここに書かれた、制約を守ればという条件だそうだ。」

私は、渡されたメモを開いて、内容を確認する。箇条書きで、十数項目の制約が書かれている。

・俺のシナリオ通りに行動しろ!余計な事はするな!

・黒の騎士団の団員とは、私的会話は一切するな!

・ゼロの時は、常にC.C.と行動を共にしろ!単独行動は禁止!

・生徒会の仕事は、仮病を使ってでも避けろ!

・会話の時に訛るな!

・スザクとは話すな!

・ナナリーには、余計な事は一切言うな!

・ナナリーと話す時は、常に笑っていろ、暗い態度は見せるな!

・ナナリーとの食事の時は……

・ナナリーが寝る時は……

・ナナリーが……

な……

「何よ、これ?後半は、殆どナナリーの事ばっかりやない!」

「仕方が無いだろう……あいつは、極度のシスコンだからな。」

し……シスコン?た……確かに、ナナリーちゃんは可愛いけど、だからって……ま……まさかあいつ、四葉に変なことしないでしょうね?

 

 

 

「はっくしょん!」

「どうしたん?かぜ?」

「い……いや、そんなこと……無いわよ。」

妹と家を出たところで、急にくしゃみが出る……C.C.め、まさか、変な事でもあの女に吹き込んでいないだろうな?今日からは、髪の毛もちゃんと結って、組紐で纏めている。やり方は、あの女に書き出させておいた。これで、変に怪しまれることも無いだろう。

「ねえ、お姉ちゃん?」

「ん?」

「もしかして……彼氏でもできたん?」

「え?ど……どうして?」

「だって、このところ変やよ!朝は、きっちり早く起きる日が多いし、妙に時間に正確やし、言葉使いも……」

「はあ~~?」

こ……この三葉という女は、どれだけルーズなんだ?妹にまで、こんな心配をされているとは……な……ナナリーは大丈夫か?もし、ナナリーに何かあったら、ただでは済まさんぞ!

 

学校に来ても、俺は授業等は聞いていなかった。これからは、あの女の行動シナリオも立てねばならん!時間は、いくらあっても足りない。ここで記録はできないが、自分の体に戻って直ぐに書き出せるよう、頭の中でまとめておかねば。

「じゃあ、ここを……宮水さん!」

「……は、はい!」

急に指されたが、こんな田舎の授業内容なら、聞いていなくても答えは導ける。俺は難無く答え、再び構想に没頭する。

 

「なんか、最近すごくない?三葉……」

「ん?何が?」

学校の帰り道、名取が尋ねて来る。

「だって、全然授業聞いとらんみたいやのに、指されたら、びっくりするほどの即答やし……」

「そんな事ないよ、ちゃんと聞いてるって。」

そんな会話をしつつ、バス停横の、勅使河原がカフェと呼ぶベンチの前まで来た時、勅使河原が驚嘆の声をあげる。

「な……なんや、これは?……」

「ん?カフェでしょ?テッシーが設計してたじゃないの?」

俺は、自動販売機でレモンティーを買い、そこの真新しい椅子に腰かける。

「せ……せやけど……これ、俺が設計したものよりも豪華すぎるで……」

それはそうだろう、お前の設計では、ただの丸太テーブルに丸太椅子、それにビーチパラソルを添えただけだ。そんなものでは、カフェとは言えん!俺の手に掛かれば、こんなものだ。極上の檜を使った洒落たテーブルに、ちゃんと背もたれや肘掛も付いた頑丈な椅子、雨露も凌げるように、しっかりと木造の屋根も付けた。加えて、周りには小さな花壇も用意した。敷地が狭いので、1m弱の幅しか無いが。

「たった一晩で、誰がやったんや?こんなん?」

「ああ、私が頼んどいたのよ。」

「だ……誰に?」

「親切な業者に……快く、引き受けてくれたわ!」

もちろん、ギアスでな。

「わあ~すてき~!」

「う……う~っ……」

名取の方は、気に入ってくれたようだ……勅使河原は、どうも納得がいかないようだが……

 

 

 

せっかく協力できると思ったのに、今日は“ゼロ”の出番は無かった。普通に学校に行って帰ってきて、自室でC.C.さんと寛いでる時に、ふと、あることが気に掛かる。

「ねえ、そういえば……」

「何だ?」

「ルルーシュって、ブリタニア人やのに、何でブリタニアをぶっ潰そうとしているん?」

「……それは……私の口から言うのは、問題があるな。本人に聞け。」

「え?だって、入れ替わっちゃうから、話せへんけど?」

「携帯のメモにでも書いて、聞けばいいだろう!」

「あ……そっか、そやね!」

その日から、携帯メモでの、ルルーシュとの会話も始まった。

 

“ねえ、ルル?ルルは、何でブリタニア人なのに、ブリタニアを恨んでるの?”

                ▼

“誰がルルだ!シャーリーの真似をするんじゃない!そんな事は、お前には関係ない!余計な詮索はするな!”

                ▼

“いいじゃん!教えてよ!私達、もう運命共同体でしょ?あなたの事を、もっと知りたいの!”

                ▼

“好きでなった訳じゃない!俺の過去等、お前には関係無い事だ!”

                ▼

“いいわよ!それなら、みんなにルルがゼロだって、ばらしちゃうから!”

                ▼

“貴様!そんな事をしたら、お前の体もただでは済まなくなるぞ!”

                ▼

“いいわよ!どうせブリタニアが攻めてきたら、私死んじゃうんでしょ!”

                ▼

“分かった!C.C.に伝えておくから、あいつから聞け!”

 

「……という訳で、ルルの許可貰ったから、教えて!」

C.C.さんは、呆れたような顔をして、ようやく答えてくれる。

「あいつは……ルルーシュとナナリーは、ブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアの子供……元は、ブリタニアの皇位継承者だ。」

「え?……る……ルルが、ブリタニアの王子?……じゃあ、何で自分の国を?」

「あいつらは、日本との外交の道具として、日本に送られた……あいつは、捨てられたとしか思っていないがな。そしてその後、ブリタニアは日本に宣戦布告し、容赦無く攻撃した。記録上あの2人は、その戦争で死んだ事になっている。」

「そんな……ひ……ひどい……」

「だが、その事で、変な同情をする必要は無い。そんな事は、あいつも望まん。」

そんなのって……ひどすぎる……血の繋がった親に、異国に捨てられて、その上、生死も問わずに攻撃なんて……ナナリーは、脚も悪くて、目だって見えないのに……

「ただ、あいつがブリタニアを潰したいのは、復讐のためだけでは無い。ブリタニアの思想は弱肉強食だ、強い者だけが生き残り、弱者は滅びるしかない。あいつの妹、ナナリーは弱者だ。あいつは、ブリタニアを倒して、ナナリーが幸せに過ごせる世界を創ろうとしている……」

そ……そうだったの……ルルは、ナナリーのために……

私は、また泣いていた。

 

「あ……お兄様!」

リビングに入ると、ナナリーが折り紙を折っていた。テーブルの上に、ナナリーの折った鶴が、数羽並んでいる。

「咲世子さんに、折り紙を教えて頂いたんです!日本人って本当に器用ですよね?」

「そう……あ……わたし……おれも、少し知ってるよ。」

「わあ~、本当ですか?」

「う……うん、ちょっと待ってて……」

そう言って、私は折り紙で、小鳥やうさぎ、カエル、手裏剣などを折ってあげる。

「うわ~っ!すごい!ありがとうございます!お兄様!」

ナナリーの喜ぶ姿を見て、私は、また涙が出て来てしまう。

こんないい子が、弱者というだけで虐げられる世の中なんて、やっぱり間違っている!絶対に間違っている!

私もやる!ルルと一緒に……ブリタニアを、倒す!

 






う~む……難しいです。どうにも、三葉のキャラがシャーリーのようになってしまいます。
ルルーシュの方が個性がありすぎるんで、どうしてもそっちに引っ張られます。
まあ、三葉は、どこにでもいそうな普通の女の子。ルルーシュは、どこにもいそうもない特殊な男なので、仕方が無いかもしれませんが……

感想書いて頂いた方、本当にありがとうございます。自分の書いた物に、共感を頂けると本当に嬉しいですし、やり甲斐も出ます。
今後も、宜しくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。