GATE モリアーティ教授(犬) 彼の地にて 頑張って戦えり   作:BroBro

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長らくお待たせしました。なかなか続きが思いつかず、指が進まない日々が続き、そして今回も進んだかと言えば進んでいません!はいすいません。
ですが悩んでいる内に適当な構想だけは作れたので、これからは仕事の合間に書いて何とかして更新速度を上げたいと思います。


では、続きです。


赤色より桃色

レレイとカトーが炎龍の脅威が迫っている事を村人達に伝えている中、モリアーティ教授は誰にも見られる事なくプテラノドンへと向かった。しっかりと挨拶したかった所だが、避難活動の邪魔をする訳にもいかない。住民の中で教授が村を既に出ている事に気付いているのはレレイとカトーのみである。

 

 

「いやぁ、予想はしていたけど、面倒だなぁ……」

 

 

森に隠してあるプテラノドンには少ないながら木の葉や枝が被さっていた。殆どが紙で出来ているプテラノドンは繊細である。無造作に払い除けると翼を傷付けてしまう恐れがある為、一つずつ丁寧に手で取りながら、教授は大きく溜め息を吐いた。

 

大体目に付く木の葉や枝を払い除け、漸く教授は操縦席に向かう。そしてエンジンに火を入れ、プテラノドンのプロペラがゆっくりと回り始めた。

 

 

「…それが教授の翼竜?」

 

 

不意に後方から声がかかった。激しいローター音の中においても良く通る声。その声を良く知っている教授は振り返り、その場にいるレレイに目を向けた。

 

 

「いい造形だろう?なんてったってワシが生み出したのだからな」

 

「とても造られた物とは思えない。こんな技術を持つ教授はやはり凄い」

 

 

胸を張る教授にレレイは素直に賞賛する。プテラノドンの口をパクパクさせたり、変声機を使って見せたりとデモンストレーションをする教授の目は、どこか生き生きとしている。

 

この世界において、教授の技術力と発想の右に出る者はいない。レレイもそれを理解して、率直に凄いと感想を零した。

 

 

「約束通り、また会えたらこの翼竜の構造を教えて欲しい」

 

「ワシは約束は破らん。心配するな」

 

 

そう告げて、教授はプテラノドンを発進させた。ほんの少しの滑走の後、遥か上空へと飛び立つ桃色の翼竜を、レレイは見えなくなるまで見送った。

 

翼竜が頭を向けている方向にはイタリカと言う国がある。大きな国ではあるが、最近では賊がよく現れ、イタリカの平和を脅かしていると言う。無事に生きてどこが出会える事を静かにレレイは祈る。

 

そして教授が向かっている方向がイタリカで合っている事を確認したレレイは、静かに村の中へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇遡って教授が現れる少し前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この特地にはエルフと言う種族がいる。

 

長寿としても知られるエルフの特徴は、耳が長く、主に深い森の中で生活していると言う所だろう。エルフは他種族との関わりを持つ事を嫌う。そのため、彼等は結界を貼った森の中で日々を過ごしている。

 

エルフの種類も色々あり、エルフ、ダークエルフ、精霊種エルフなどが存在する。上記の特徴はこの全てのエルフに当てはまるもので、各種エルフにはそれぞれに細かい特徴がある。

 

中でも、精霊種エルフは多種エルフより優れていると言う優越意識を持っている。そのため、精霊種エルフは他のエルフと干渉する事もあまりしない。

 

自らを隔離しているため、精霊エルフ達はエルフの中でも安全な種族と言えよう。しかし見方を変えれば、壊滅の危険が迫っても誰も助けには来ないと言うことになる。

 

エルフの結界すらも易々と乗り越え、堅牢な鱗であらゆる攻撃も弾き返し、抗う事すらも億劫になるその存在を、この特地の者達は"炎龍"と呼んだ。

 

 

飛ぶ災害は、深い森の中へと舞い降りた。

 

 

 

様々な形の家が並ぶ小さい村落の中心に降り立った炎龍は一つ、翼を動かす。それだけで台風の様な突風が巻き起こり、家々の屋根の一部を吹き飛ばした。

 

そして家の中から出てくるエルフ達をゆっくりと品定めする様に目を向け、人一人入る位な巨大な口を大きく開けた。

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 

 

強烈な咆哮を一つ放ち、炎龍は木製の家の一つに向けて火炎を向けた。

 

一瞬で燃え上がるその家から悲鳴が聞こえた。しかしそれも一瞬の事、吹き続けられる火炎を受け続けたその民家からは悲鳴が消え、家すらも主と共に消えようとしていた。

 

炎龍が一つの家を焼却した時には全ての精霊エルフが弓矢を片手に家から出ており、炎龍に向かって矢を放つ。しかし炎龍の鱗は装甲車の機関銃すらも受け付けないほど強固な代物。鏃は石、威力は機関銃に比べれば何倍も劣っている武器では、炎龍の鱗を貫通できる訳がなく、矢を放ち続けた者達は火炎に飲まれるか、その鋭い牙によって噛みちぎられた。

 

女子供も容赦なく、燃やし、喰らい、踏み潰す。

 

阿鼻叫喚の地獄絵図。熱く、苦しく、痛い。地獄とは、まさにこの様な所なのだろうと思うほど、平和に過ごしていた精霊エルフの村は壊滅していく。まるで流れ作業をするかの如く、炎龍はエルフ達を焼いていた。

 

抗う術を持つエルフが少なくなり、炎龍は周りのことを気にせずに逃げ惑うエルフ達を食らう。

 

抗えば焼き、逃げれば食らう。そんな事をただの繰り返す。

 

 

しかしその作業は、村の殆どを焼き切った所で終わりを迎えた。

 

突如、炎龍の右目に矢が突き刺さり、悲鳴じみた大声を上げた。それと共に吐き続ける火炎を止め、炎龍は自らの目を潰した犯人へと顔を向ける。

 

残された左目が捉えたのは、一人の金髪の少女を庇うように立つ男の姿だった。

 

 

「逃げろテュカ!」

 

 

男は背後の少女、テュカと呼んだ少女に大声で叫ぶ。倒壊や炎上による轟音に負け無いように声を張ってテュカに叫ぶが、テュカは地面に座り、光の消えた瞳で炎龍を見ながら固まっている。声は届いている。しかし、目の前で親友を失った少女の脳が男の声をシャットアウトしていた。

 

まずいと、男は心の中で舌打ちをした。炎龍のダメージを見て勢いを取り戻したエルフ達が炎龍に再度矢を放っているが、男は魔法を使って命中精度を高めて漸く目を射抜いたに過ぎない。勢いのままに突っ込み、狂ったように矢を放ちまくる今のエルフ達では、そう長くは持たない。

 

現に勢いそのままに炎龍の足元まで向かい、顔面に向かって矢を放ち続けた男達は炎龍から放たれた火炎によって火に巻かれ、数秒間叫び続け、直ぐに動かなくなった。

 

このままでは一分とたたない内に全滅し、テュカは間違いなく殺される。

 

そう思った男は、味方を焼いていく炎龍を見つめ続けるテュカを抱いて、村の井戸へと向歩を進めた。

 

ガクッと乱暴に体を引っ張られ、そこら中から伝わる熱とは違う体温がテュカに伝わり、テュカは自分の置かれている状況を再確認する。そして父であるそのその男の険しい顔を見て、少女は出てこない言葉を必死に探し、口を開いた瞬間

 

 

ボチャン

 

 

体から熱が消えた。突然の浮遊感の後に襲ってきた、今までとは真逆の温度。背から水に落ちたせいで体全身が濡れ、上がっていた体温を徐々に下げていく。テュカは父の手によって井戸に落とされたのだ。

 

井戸に人を許可なく落とすという行為は、どう考えても殺人に該当する。しかし時と場によっては落ちた者を守る城塞となり、落下者を炎等から守ってくれる。

 

 

「お父さん!!」

 

 

それを知っているからこそ、テュカは自分の父の行動の意味を即座に理解した。

 

テュカの頭の上には何十mもの井戸が続き、丸い穴が空いている。そこから見えるのは、炎龍によって焦がされた真っ黒な空と、笑顔で自分を見る父の姿だった。

 

呼びかけても、父が降りてくる気配はない。それどころか、井戸の中に居るテュカを安心させる様に見守っている。

 

 

「お父さんッ!!」

 

 

涙を流し、必死にテュカは叫んだ。既に父の姿が良く見えない位に目に涙を溜めている。喉が痛くなるほど、喉の奥から血の味がするほど少女は父を呼びかける。しかし、父は降りてこない。

 

そして遂に、父の頭上に血のように紅い炎龍の頭部が現れる。涙の向こうからでも炎龍の紅さは良く分かった。

 

大きく開かれた口の中で、大きく炎が踊る。父の姿はまだ見えた。

 

そして、地獄の業火が放たれた。

 

それと共に、ギュッとテュカは目を瞑る。少し熱が顔に伝わり、少し熱かった。

 

そして目を開けると、男の姿は無くなっていた。

 

 

「と……お………さん……」

 

 

絞り出す様に出された声。目の前にその父はいない。それが信じられなくて、少女は井戸の口を凝視し続けた。もしかしたら生きていて、また笑顔を見せてくれるかもしれないと信じながら。

 

しかし現れたのは父でもなく、勿論エルフでもなく、炎龍。

 

爬虫類に似たその巨大な目左は、しっかりと井戸の中のテュカを捉えていた。

 

父を殺されま恨み、憎しみ、怒り。全てが体の中にあるはずなのに、出てこない。ただただ抗えないその脅威に目を向け、絶望した。

 

 

(もう……だめ……)

 

 

向けられたその目から、テュカも目が離せず、そんな事を思った。このまま焼き殺されると、何度も思った。頭にあったのは絶望のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンナアァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その咆哮が、天空から轟くまでは。

 

 

その咆哮を響かせた翼竜が、炎龍を地に沈めるまでは。

 

 

その翼竜が、爆笑にも似た声を上げながら去っていくまでは。

 

 

 

 

その優雅に空中を舞い、去っていく桃色の翼竜はテュカに大きな衝撃を与え、当の翼竜本人であるモリアーティ教授にも、小さいながらも衝撃を与える事になる。

 

少女の頭からプテラノドンが離れる事は無い。

 

例え水汲み用の桶が落下してきて頭部にクリーンヒットし、訳も分からぬまま意識を失う事になっても、少女の脳裏にはプテラノドンの咆哮が響き続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後にテュカから述べられたその響きは、自衛隊にも伝達する様に響く事になる。

 





モンタナのDVD化はよ(20年程待ち続けている人)




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