GATE モリアーティ教授(犬) 彼の地にて 頑張って戦えり   作:BroBro

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評価真っ赤になってて焦った

こんな粗末なもんに評価して下さりありがとうございます。これからも名探偵ホームズファンの恥にならない程度にひっそりと頑張っていきます。

では、続きです


教授の歩くでこぼこ道

 

全く言語の通じない人達と頑張って対話すること約一時間、教授は何とかこちらの意思を伝える事に成功した。この間、一際大きな家に招かれたり、よく分からない根っこ見たいな味の飲み物を飲まされたり等して、教授は幾分かげっそりしていた。

 

それだけやっただけあって、村人達は教授が道に迷ったことだけは分かってくれた。実際は道に迷った訳じゃなくて道が何なのかすら分からなくなったのだが、それを訂正する程の気力は教授には残されていなかった。

 

ぐた〜っと机に突っ伏すモリアーティ教授に、村の人達はどれ程の苦労をしたのだろうと同情の目を向ける。実際、教授をここまで疲労させたのは村人達な訳だが、そんな事教授は気にしない。気にしている余裕はない。もう何でもいいから休ませてくれと頭で願う。口には出さない。出しても意味が無いと分かっているからだ。

 

 

『にしても面白い格好だな・・・』

 

『ああ、ここらじゃ見ないよな』

 

『獣人だろ?お洒落と言えばいいのか奇抜と言えばいいのか分からんな・・・』

 

『言葉も理解できんし、田舎者か?』

 

『田舎者があんな高そうな格好するか?』

 

『・・・しないな』

 

 

ここの村人達にとって獣人と言うのはなかなか見ない存在である。しかも随分と高価そうな衣類を身につけた獣人となれば、噂が流れるのは早い。たった数分で教授の噂は村全体に行き渡り、奇妙な来訪者を一目見ようと集まり始めた。家の外がガヤガヤと騒がしくなったのは、もう何十分前だろうか。そんな事態でも教授は机から顔を上げず、ただ机に身を任せている。

 

この場所の事を考えて疲れて、体全身で村人に意思表示をしたせいで身体的にも疲れた。

 

眠気と戦いながらゆっくりと席を立ち、今の自分の状況について思案しながら外へと向かう。

 

村人の反応から察するに、この世界の生物の大半があの様な猿っぽい者であると推測される。そしてこの世界の言葉は自分のいた世界の言葉と全く違い、恐らくこの世界の共通語がここの村人が使っていた言葉なのだろう。

 

情報収集とは何よりも先に行うべき事であり、情報と言う物は無くてはならない物である。情報を得る為には幾つか方法があるが、主な方法と言えば"聞き込み"だろう。何よりお手軽であり、現地民の話を聞けば確実性がある。しかし聞き込みをする為には当然言葉を交わすことが必要であり、言葉が分からない等という事は問題としては論外である。

 

一先ず急を要する事は言語を覚えることである。言葉を理解しなければ炎龍の事も分からないし、元の場所への帰り方も分からない。しかし言葉を覚えるにも言葉を介せる者もいないため、困難が予想される。だがこの問題は避けては通れない物だろう。

 

木製で引き戸式の扉を開けて外に出る。まずは周りを観察する事にした。言葉を覚えるには単語を覚える事が必要である。接続詞は二の次だ。

 

周りにいる人間の動きを観察し、何を意味している言葉を発しているか考察する。頭にハチマキを巻いた筋肉隆々の男は薩摩芋らしき紫色の植物を指差し、目の前にいる男と話している。その男は少し悩んだ素振りを見せ、硬貨らしき物を数枚渡した。この時点で教授は男が商人だと理解する。そして指さしていたこの世界の物の名前を理解し、硬貨の名前、そしてその薩摩芋らしき物一つの値段を理解した。

 

 

(芋の名前は余計だったかな?)

 

 

天才の片鱗を見せながらも、重要度の少なそうな芋の名前を頭の片隅に置く。しかし少なくとも知識を得ると言う嬉しさを抱え、上気分で右腕のステッキを肩にかけた。

 

しかし

 

 

(ああ、そう言えばワシのステッキは無いんだったか・・・)

 

 

何時もの癖で振り上げた右腕には寂しくもステッキは握られていない。少なくともトッドとスマイリーよりも確実に長く共に過ごしてきたステッキが無いことに、教授は寂しさを感じた。

 

あのステッキは教授の特別製であり、様々な隠し装備が格納可能であった。ライト、ナイフ等など嵩張りそうな物を収容でき、即座に取り出せる優れ物である。(教授の主な殺傷武器は斧かリボルバーなため、ナイフは殆ど使わない)

 

無いならないで仕方無しとは思っているが、どうしても右手が寂しい。右足を前に出す度にステッキを前に出す癖があり、右膝を曲げてステッキを振るう仕草をしてしまう。何処かで適当な大きさの棒でも見つけてステッキの代わりにしようと考えながら、教授は村の探索を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約2、3間探索していた教授は落ち着く為にプテラノドンへと戻った。村人に一言挨拶して来たので心配される事は無い。

 

段々と村人達にも見慣れて来て、少量ながら単語も覚えた。色々と見た情報を整理しながら教授はプテラノドンの操縦席に座る。

 

一番の成果と言えば、この世界の文明レベルが明確化された事だろう。この世界には自動車や飛行機等の概念は無く、代わりに不可思議な謎の技術が根ずいている様だ。見たのは一回だけだが、とある村人が見せたデモンストレーションで、教授の目の前で金貨が一瞬にして銅貨に変わっていた。最初は有り得ないと頭を悩ませたが、異世界なら何でも有りなのではないかと割り切った。一応、教授はこの様な事象を魔法と呼ぶことにしている。

 

今回の調査で文明レベルが分かった事はラッキーだった。今の教授の技術ならば宝石等を盗む事が出来るからである。彼等は主に馬による移動方法しか知らず、それ以上に速い乗り物は今の所見つかっていない。もし本当にこの世界の乗り物として馬が最速ならば、スチームカーで簡単に逃げる事も出来るはずだ。仮にゴリ押しで物を盗んでも逃げられる可能性は高い。

 

しかし問題なのはここの村の情報しか無いこと。そして教授の考えはただの予想でしかなく、情報不足により確実性に欠ける事だ。もし魔法による盗難が多発していて、魔法の盗難を基準とした防犯設備が作られているのなら、教授がそれを掻い潜れるかが分からなくなってくる。魔法がどのような物なのかが掴めていない今、下手に動く事は控えるべきだと考えられた。泥棒企業を再開するのは、当分先になるだろう。

 

今後の方針としては、継続して言語の完全取得を最優先とし、現実に及ぼす魔法による事象の限界値を調べ、世界情勢を確認する。そして現状の技術力で泥棒可能と判断したらこの世界でも泥棒に専念する。長い道のりになるだろうが、やると決めたら即決行がモリアーティ教授の信念だ。

 

彼は部下達に『犯罪者に明日は無い』と告げた。今部下は居ないが、現在部下の大切さを身を持って知っている。有言実行しない者が、悪の天才を語る資格はない。

 

例え命の危機に瀕したとて、例え誰からも見捨てられたとて、泥棒として生きると決めたからにはどこに居ようと突き通す。

 

天才の名を汚さぬ為にも、彼は一人、異世界で一日一日に全力を持って挑む。

 

 

「やってやる・・・ワシはやってやるぞ!」

 

 

一人決意を頑とし、闘士を燃やす。バッと立ち上がって両手でガッツポーズらしき動きをする様子は、誰が見ても本気だと感じるだろう。

 

モリアーティ教授は冒険好きであるため、少し気持ちが高揚していた。不安を消して気持ちを新たにしたお陰なのか、周りに見える景色が綺麗に見えた。よく地面を見れば見知らぬ植物もあり、教授の探究心をくすぐる。いずれは魔法を覚えて夢にまで見た完全犯罪を完遂してやろうと密かに心に決めた。

 

気持ち新たに村に向かう教授の足取りは軽い。既に日は陰っており、道をゆく教授の影は長く伸びている。

 

 

(どこでも夕陽は美しいものだな)

 

 

改めてそう思い、教授は村の敷地内へと入った。

 

今日は休むとして、宿の確保が必要となる。金は一応持ってはいるが、とても一泊出来るほどではないし、この世界ではポンドは使えないだろう。

 

最悪プテラノドンの翼の裏で寝る事を考えながら、教授は人間行き来が少なくなった舗装されていない道を歩く。ザッザッと砂利を踏む音は異文化にやって来た事を思い知らせてくれる。

 

 

「長い道のりになりそうだな・・・」

 

 

これからの事を思い、一人呟いた。そして自分の言葉に苦笑し、また前を見る。やはりシリアスは似合わんかなと更に独りごち、改めて宿探しに意識を集中した。

 

 

『お困りかな?』

 

 

突然、教授に声がかかった。

 

なんと言っているのかは分からなかったが、周りに話しかける対象が居ないため自分への言葉だと教授は察し、声の方に振り向いた。

 

 

「あんたは・・・」

 

 

そこには教授に最初に話しかけてくれた白髭の老人が立っていた。軽く右手をあげて挨拶の仕草をしている。

 

声をかけてくれた恩があるため、教授は少ない誠意を持って言葉を発する。

 

 

「これはこれはご老人、先ほどは助かりましたぞ」

 

 

言葉は通じないだろうと分かっていても礼をせずにはいられず、小さく頭を下げる。老人はそんな教授に対して『礼の必要は無い』と手を横に数回振る。

 

そして本題に入る為に教授の目を見る。

 

 

『どうやら宿屋に苦労しているようじゃが、ワシの家に来てみる気は無いかの?』

 

 

少し前に疑問詞を覚えた教授は何かを訴えかけている事に気付き、その言葉の中に『家』の単語がある事にも気づいた。簡単に推測して、家に困っているのか聴いているのかと聞いてきていると思ったが、指を森の中に見える一軒の民家に向けて指しているため、あの家なら大丈夫だがどうだ?と聞いてきていると予想した。

 

 

「・・・いいのなら、有り難く使わせて頂く」

 

 

了承の意味を込めてコクっと首を縦に振る。それをみた老人はうんうんと頷き、こっちだと先導してくれた。

 

一応教授は人を見る目があり、誰が危険な人物かは見て分かる。この老人に関しては安全な人物だと感じたため付いていく事にしたが、念の為腰に付けた2丁のリボルバーを常に抜ける状態にして置く。

 

 

『いや〜、ワシの弟子がお前さんの事を気にしてしまってのぉ。ああなったら止まらないからどうしたもんかと思っておったんじゃよ』

 

 

老人は話すが、その言葉は教授には通らない。しかしとても嬉しそうに話している事は分かるため、教授は警戒する気が無くなってしまった。

 

 

(まあ何かあっても何とかなるかな?)

 

 

老人のペースに押されて教授は構えていたリボルバーから手を離し、家へと招待された。









そう言えば、この題名を見ただけで名探偵ホームズだと気づいた人はどれ位いるのでしょうか?ちょっと気になってしまった今日このごろ。

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