GATE モリアーティ教授(犬) 彼の地にて 頑張って戦えり   作:BroBro

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教授の口調分かんなくなったよ(真顔)


教授は混乱している

椅子で眠っているモリアーティ教授が周囲の異変に気がついたのは、教授が寝てから4時間後の事だった。モリアーティ教授の基地は地下であるにも関わらず、どういう訳か教授の体に風が当たる。木の葉の擦れる音が聞こえる。地下にいるなら有り得ない事だ。

 

不思議に思い、細く瞼を開ける。

 

 

「んなっ・・・!?」

 

 

そして捉えた風景は小ざっぱりした地下などでは無く、緑色に大地が塗られた草原であった。その草原を囲むように木々が生い茂り、この草原を隠しているようにも思える。たまに吹く一陣の風が、モリアーティ教授の純白のマントをはためかせた。とても清々しい所である。

 

そんな広い草原の真ん中に、木製の椅子に座ったモリアーティ教授が一人。そして愛機であるプテラノドンとスチームカーがポツンと置かれている。

 

なぜ、自分はこんな所に居るのだろう?と、声も出せずに考えるモリアーティ教授。誘拐の可能性が浮上するが、モリアーティ教授の基地に生物が侵入した瞬間に警報がなる為それは無いだろう。

 

寝ぼけていた訳ではないだろうし、自分から動いた訳でもない。全く理解出来ない事が起きている。

 

現実の光景に理解が追いつかなく、教授はしばらく椅子に座って呆然としていた。

 

数十秒程たち、このままでは何も始まらない事を感じた教授は椅子から立ち上がる。そひて、教授の唯一の移動手段とも取れる二つの機械を点検した。

 

 

「どこも異常は無さそうだな」

 

 

エンジン部等を見てみたが、これと言って異常は無かった。プテラノドンにはガソリンが入っているし、スチームカーにはしっかりと石炭が積んである。動作テストをしても問題は見受けられなかった。教授が地下基地で点検した時のままのようだ。

 

 

(スチームカーやプテラノドンで運ばれた訳では無いのか?だとしたら誰がわしをこんな所に・・・)

 

 

犯人探しも大切だが、この状況を打開する事の方が重要である。場所もわからない所に放り出されたのだ。誰が人を見つけて色々と聞かなければならない。

 

幸いにもプテラノドンにはランディングギアが付いたままだ。スチームカーに積んであるロープでプテラノドンを引っ張って移動すればプテラノドンを奪われる心配はない。

 

サッサッと慣れた手つきでスチームカーとプテラノドンを繋ぎ、スチームカーを起動させる。しかし、スチームカーは最低でも2人で乗ることを想定されて作られている。一人でも動かす事は出来るが、逐一ハンドルと燃料室を行き来しなければならない。そうなれば、一旦ハンドルを疎かにしてしまえば、どんな事故が起きるか分からない。

 

現状も把握できなく、さらにスチームカーすら動かせない今の状況に、教授は歯噛みした。

 

 

「ぐぬぬぅ〜!トッドォォ!スマイリィィ!何処だあぁぁ!!」

 

 

自担馬を踏んで大声で助手達の名前を呼ぶが、勿論、最初から返信が帰ってくると思っていたわけでは無いのだが、叫ばずにはいられなかった。

 

しかし、彼の叫びに応えた者がいた。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」

 

 

 

とても人の言葉とは思えない咆哮が木々を揺らした。それと共に、男女の悲鳴が響く。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

焦げ臭い臭いが草原を支配する。辺りを見回すと、森の一部から黒煙が見えた。爆発音が鳴り響き、男達の怒号と女子供の悲鳴が絶え間なく教授の脳に響く。

 

 

(これはまずい・・・!)

 

 

その絶望に染まった悲鳴を聞いたモリアーティ教授は戦慄し、とてつもない恐怖感を体の底から感じた。

 

今すぐここから離れなければならない、そう教授の野生の勘が告げている。

 

兎に角遠くに逃げるためにコストの安いスチームカーは置いておく。一先ず一人でも充分動かせるプテラノドンのエンジンをかけた。解体所のトラックから盗んできたエンジンは正常に作動した。

 

プテラノドンはエンジン音による雄叫びを上げ、ゆっくりと地面を滑走する。全体的に素材が紙で出来ていて軽いプテラノドンの滑走距離は短く、数秒で離陸を開始した。直ぐに高度500m辺りにまで達したプテラノドンを操る教授は、確認の為にプテラノドンの前方に位置する黒煙を見た。

 

 

「なんじゃありゃ・・・?」

 

 

そこには、血のように赤い10m以上の巨大な生物が小さな集落を襲っていた。

 

その巨体の背には真っ赤な翼が生えており、神話等に登場するドラゴンの様だ。そんなドラゴンは大きく開けた口から炎を吐いて村人を焼殺し、鋭利な牙で黒く焦げた村人を噛みちぎっている。

 

抵抗する村人もいるが、一昔前の主兵装であった弓でドラゴンを攻撃している。放たれた矢はドラゴンの鱗によって弾かれ、矢を放った村人は焼き尽くされた。

 

 

「あれは本当にまずいぞ!」

 

 

何故ドラゴンがいる等といった疑問を浮かべる余裕は教授には無い。

 

幸いにも、ドラゴンは教授に背を向ける形で炎を吐いていて教授には気付いていない。少し心苦しくはあるが、あんな化け物に戦いを挑む程教授は愚かではない。一人でも多く生き延びて居てくれと願い、教授はプテラノドンの機首を傾け、旋回しようとする。

 

しかしその瞬間、村人が苦し紛れに放った矢が教授の眉間目掛けて飛んできた。

 

 

「んなああぁぁぁ!?」

 

 

緊張感の無い悲鳴を上げながらも、超人的な反射神経で首を曲げ、矢を回避する。

 

危機を間一髪で回避した教授は一安心したが、今度は唯一信頼を置ける兵器であるプテラノドンが教授の敵に回った。

 

 

『ンナアアアァァァ!!』

 

 

プテラノドンに備え付けられていた拡声器がいつの間にか作動しており、教授の悲鳴を少し低くして大音量で流してしまったのだ。教授の悲鳴はプテラノドンの雄叫びとなって、辺り一帯に響き渡る。

 

これによって、真っ赤なドラゴンの目が教授の目と重なり合ったのは、言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きく見開いたドラゴンの目が教授を捉えた。炎龍と呼ばれているこのドラゴンは、井戸へと逃げ込んだ金髪の少女から目を離し、教授のプテラノドンへと羽ばたいた。

 

辺りに疾風が巻き起こり、家屋の炎を一瞬で消した。巨体に似合わず猛スピードでプテラノドンへとドラゴンが向かう。

 

その姿を見て、 教授のプテラノドンは挙動不審に小さくグルグル回りながらも逃走のために大きく急旋回する・・・ことは無く、どういう訳かドラゴンに向かって急降下した。

 

好機と見たのか、ドラゴンは口を開き火炎を口内に踊らせる。すぐにでも火炎を放てる体制である。

 

ドラゴンと教授との距離が残り200mにまで縮まる。そして、炎龍が火炎を放とうと更に大きく口を開いた。

 

次の瞬間、教授のプテラノドンの両サイドに装備されているネットガンが爆音を上げた。

 

 


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