問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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新しい朝

 

 

 

 

 

 

 巨人が宮殿を破って現れ、闇に染まる帝都の空に紅い閃光をもたらした。突然の強い光によって目がやられ、綺麗に見えていた星空も塗り潰される。

 その光景は、進撃の巨人、なんて言葉を連想させる程だ。いや、実際には進撃なんてしていないのだが。突っ立って口から光線吐いてるだけなのだが。

 

『嫁! 無事か!?』

 

 通信機(チャット)越しに、ラウラの焦った声が俺の鼓膜を刺激する。

 

 俺は、巨人の破壊光線が被弾する前にラウラを投げ飛ばした。完全に光線を防ぎ切る自信が無かったからだ。俺とシャルロットだけなら問題は無かったが、ラウラもとなると不安が残った。

 

「大丈夫。俺もシャルロットも無事だよ。そっちは?」

『あ、ああ。私は無事だ。一応、シュラという男もな』

「結構。ラウラは一旦この場を離れろ。南側の帝都門外にナイトレイドの連中が集まってるから、そこに合流してもいい」

『.....分かった。この男はどうする?』

「一応持っとけ。でも、もし邪魔になったんなら捨ててもいいぞ」

 

 と、そこまで言って、俺は地面に降り立つ。

 シャルロットを一旦降ろさなければならないし、何よりモードレッドと合流しようと考えたからだ。

 

「シャルロット、お前もラウラと一緒に行動しとけ。あの巨人帝具の一撃はまずい。ISの絶対防御を破るかもしれない」

 

 ISの絶対防御は絶対ではない。果てしなく矛盾している事だが、それが事実だ。強力過ぎる攻撃をまともに食らえば絶対防御は破られる。

 

「...いや、僕も戦うよ。僕だっていつまでも守られてばかり、逃げてばかりなんかじゃない。それに、ほら。今の僕にはこれも使えるんだよ?」

 

 そう言って、シャルロットが両腕を俺の方へ向けてきた。

 今までISに隠れてよく見えなかったが、シャルロットの細い両腕には似つかわしくない、ゴツイ籠手が装備されている。

 

「どこかで見たことあるような...ないような...?」

「これ、ブドー大将軍が持ってた帝具だよ。雷神憤怒・アドメラレク。前から僕が欲しかった帝具なんだ」

 

 まさかの告白。っていうかこの子、いつの間にブドーから帝具なんて掠めてたんだ?

 

「さっきのワイルドハントとの戦闘中にね、僕、吹き飛ばされちゃったんだ。でね? 別にダメージとかは無かったんだけど、飛ばされた先にブドー大将軍が倒れてて...。悪いかなって思ったんだけど、何か新しい力が無いとシュラに勝てそうに無かったから、貰ってきちゃった」

 

 そんな盗み気味な真似を...。シャルロットも変わっちゃったなぁ...。

 けどまあ、別に悪い変化じゃない。勝つ為、生き残る為には手段を選ばない。それは戦いにおいてとても大事な思考だ。

 

「...仕方ない。でも、危なくなったら投げ飛ばしてでも離脱させるからな」

「うんっ!」

 

 アドメラレクは俺の権能と相性が良い。いつでも雷のチャージが可能ならガス欠の問題は解消されたも同然だ。

 運良くシャルロットに適性があった事は驚いたが、それでも十全に使いきれるわけではないだろう。強力な帝具な事に間違いはないが、ブドーの様に扱えなければ脅威度は下がる。シャルロットがどれほどアドメラレクを扱えるのかを見てから、シャルロットを離脱させるかどうかは考えよう。

 

「...ちょっと過保護過ぎるのかな、俺」

 

 もう少し放任の方がシャルロット達にとって良い結果に繋がるのかもしれない。

 そう思いながら、俺はトニトルスを解除する。制空権なんて、あの巨人相手には無いも同然だ。であるならば、より小回りの効く生身の方がやりやすい。そもそも、トニトルスに搭載されている兵器じゃ、あの巨人の相手にならないだろう。豆鉄砲みたいなもんだろうな。

 

「じゃ、いくぞシャルロット。気ぃ締めろよ」

「うん!!」

 

 勢いのある返事を聞き、俺は地面を蹴り砕いた。

 一気に巨人へと肉薄し、とりあえずその顔面を殴りつける。

 

『リョータ。余は貴様に期待していたのだがな...』

「そーかい。俺は帝国に期待なんてしてなかったよ」

 

 巨人から放たれる声はまだ幼さの残る高い声。聞き覚えがある声だ。

 皇帝に期待されていたとは初耳だが、所詮は大臣の傀儡。大臣が悪だと言えばそれは悪になってしまう。割といい子だな、と思っていたため、大臣の傀儡にされている事に若干の哀れみを感じる。

 まあ、だからといって容赦はしないのだが。

 

 割と本気で殴ったのだが、多少頭が後ろに逸れるのみだった。

 見た目通り頑丈だ。だが、どうにも出来ない程ではない。

 魔力を練り、腕に集中させる。足場がない今、全身に魔力を張り巡らせるのは無駄だ。踏ん張りが効かないのだから、単純な腕力のみで殴るしかない。

 

 額の一点集中でラッシュを放つ。踏ん張りが効かないとは言っても、俺の拳は一撃一撃が岩を砕けるレベルだ。それだけの威力を額に受け続ければ、壊れないとしても倒れはするだろう。

 

『くっ...』

 

 秒間十数発程度の速度で殴り続けていると、予想通り巨体が後ろに傾く。倒してしまえばこちらのものだ。マウントを取ったとは言えない程の体格差があるものの、上から叩いた方がやりやすい事に変わりはない。

 

 だが、往々にして事はそう簡単には進まないらしい。

 

 倒れかけた巨人は片足を引く事で体勢を立て直し、お返しとばかりに拳を振るってくる。

 巨体に似合わない素早さだ。地上であれば余裕を持って躱せるが、足場が無い空中では避けられそうにない。ISの展開も間に合わないだろう。

 諦めて両腕をクロスして防御の体勢に入る。が、そんな俺をシャルロットが横からかっさらった。

 

 ブフォン!! などという風切り音と共に台風並みの強風が俺達に叩きつけられるが、シャルロットは辛うじて飛ばされずに耐え切った。

 

「大丈夫、凌太!?」

「ああ。助かった、ありがとう」

 

 拳が当たっていても大したダメージにはならなかっただろうが、喰らわない方がマシなのは明らかだ。素直にシャルロットへ礼を言う。

 

「にしても、この体格差は面倒だな」

「体格差って言っていいのか分からないくらいにサイズが違うけどね」

 

 俺達からしてみれば、超高層ビルを相手にしているような状況だ。正直どこから攻めていいのか悩む。やっぱ足か?

 

「とりあえずアイツの足を潰そう」

「身動きを取れなくしてフルボッコ?」

「そうだ」

 

 最近シャルロットやラウラが逞しくなってきた。順調に俺の思考に染められてきている。いいね。

 

「じゃあ、僕が右足をやるよ」

「いけるか?」

「頑張る!」

 

 ...まあ、やるって言ってるんだから任せようかな。厳しそうだったら俺が加勢すればいいだけの話か。

 

「OK。だったら右は任せる。けど、無茶はすんなよ?」

「凌太こそね!」

 

 言って、俺はシャルロットから離れる。いつまでも一緒にいたらいい的にしかならないし。

 それにしても、威勢のいいこったな。強力な帝具を手に入れた事が自信に繋がっているのだろうか? だとしたら早めに矯正した方がいい。過度な自信は慢心に繋がる。

 だが、矯正(それ)はまた後日でいいか。今は目の前の巨人をイェーガーする事に集中しなければ。

 

『くっ、ちょこまかと...!』

 

 ブンブンと大振りの拳を振るう巨人だが、地面という足場がある以上、あんな攻撃には当たらない。巨大さ故の低速度。威力だけをみればかなり強いが、当たらなければ意味が無い。

 

 そうして攻撃を尽く避けつつ、俺はアッサルの槍を構える。

 今は俺が巨人の気を引いている状態だ。そうなる様に誘導している。その間にシャルロットが右足を破壊し、俺は遠距離攻撃で左足を破壊する。俺まで巨人の足元に行ってしまっては、巨人は足を移動させるだろう。そうなればシャルロットが踏み潰される可能性も高くなるし、何より破壊が困難になる。

 

「オラオラどうしたウスノロぉ!!」

『っ! くっそォおおおお!!!』

 

 皇帝とは言え、相手はまだ子供。こんな安い挑発でも簡単に乗る。

 俺も人の事を言える程大人ではないが、それでも皇帝よりかは大人なつもりだ。

 

 迫り来る拳を紙一重で避けつつ、シャルロットと通信を繋ぐ。

 

「そっちはどうだ。まだ時間かかりそうか?」

『大丈夫、いつでもやれるよ!』

 

 通信越しに元気な声が聞こえてくる。

 

「よし。んじゃあいくぞ? 一、二の...」

「『三ッ!』」

 

 言って、俺はアッサルの槍を全力で投擲する。

 紫電を纏う黄色の槍は、逸れること無く巨人の左足首を抉り穿ち、更に爆発を起こした。それとほぼ同時に右足付近でも稲妻が走り、右足を破壊──出来てねぇじゃん。

 

「...おいシャルロット」

『ごめんなさい!!』

 

 速攻で謝ってきたシャルロットに対し、俺は何とも言えない感情と共に溜息を吐き出す。

 やはり無理だった。付け焼き刃の力では、至高の帝具とやらには通用しなかった。いや、そもそも帝具ではあの巨人に勝てないようになっているのかもしれない。なんてったって至高だからな。

 

「まぁいいや。それよりシャルロット、早くそこを離れろ。踏み潰されるぞ」

 

 戻ってきたアッサルの槍を掴み、シャルロットにそう警告する。

 右足の破壊が失敗に終わったとは言え、左足は破壊できた。それに、元々この巨人の相手は俺一人でやる予定だったのだ。シャルロットには悪いかもしれないが、俺一人の方がやりやすい。

 

『おのれ.....おのれおのれおのれ!! 賊風情がぁああ!!!』

 

 左足を潰されたことで片足を付くハメになった皇帝が、忌々しげな声音で俺へと叫ぶ。

 俺の知っている皇帝はもっと穏やかな口調だった気がするが...まあ状況が状況だし、何より俺自身が挑発したし。冷静さを欠くのも仕方がない。坊やだからね...。

 

 と、ちょっと巫山戯てみるものの、巨人の口から破壊光線が放たれたので咄嗟に回避。惜しくも俺に避けられた光線は、帝都の一角を一瞬で灰に変えた。

 

「...さっきから思ってたんだけど、この数分で何人死んだ?」

 

 帝都民にさしたる思い出の無い俺だが、自身の国の民を何の躊躇も無く戦いの巻き添えにする皇帝に対し、俺は僅かながらの疑問を浮かべる。

 無辜の自国民を守らないどころか、戦いの巻き添えになることに何も思うところはないのだろうか? 幾ら腐りきった国とは言え、それは大臣が原因だと思っていた俺は間違っていたのかもしれない。自分が治める国の住民を、なんの理由も躊躇いも無く殺す。目の前の巨人を操る少年には、皇帝としての、王としての、人の上に立つ者としての器が無い。

 

「ま、だからどうしたって話なんだけどな」

 

 少年に器があろうがなかろうが関係ない。

 向かってくるのなら敵だ。敵であるなら排除する。たったそれだけの単純な理由で、俺は今から千年続いたという帝国を滅ぼす。

 

「立てよ皇帝(ウスノロ)。死にたくなけりゃあ、死に物狂いで足掻いてみせろ」

 

 

 

 * * * *

 

 

 

『うっ、をぉおおおおおおお!!!!』

 

 地を揺るがす声を伴い、巨人が立った。

 

 .....いや、「立てよ」とか言ったのは確かに俺だけれど、まさか本当に立つとは思ってなかった。

 だってあの巨人、左足首から下がないんですよ? それに、巨人の方にダメージが入った時に悲鳴を上げる辺り、皇帝と巨人の痛覚はリンクしていると思われるんですよ? そんな状況で、生まれてこのかた甘い汁を啜らされ続けてきた子供が根性みせるとは思わないじゃないですかぁ?

 

 だがまあ、問題は無い。根性をみせたことは素直に褒めるが、至高の帝具如きじゃ俺には勝てない。この数分のやりとりでそれは分かった。

 

「ごめん、凌太!」

 

 どうやって倒してやろうかと考えを巡させていたところ、上からそんな声が俺へと投げかけられた。

 

「別にいい。それより下がれ。後は俺がやる」

「でもっ!」

 

 見上げれば、シャルロットは泣き出しそうな顔で俺を見ている。

 余程悔しかったのだろう。新たな力を得て、ちょっとした万能感を感じていた直後の敗北。やっと次のステージに進んだと思ったら、即座に新たな壁が立ちはだかった事への失望感。

 シャルロットの気持ちはよく分かる。権能を手に入れ、順調に強くなってきていたところで、俺は爺さんに惨敗した。あの時の俺と似た感情を、今のシャルロットは抱いているのだろう。

 

「気にすんな、とは言わねぇぞ。この際だから言うけど、お前じゃまだまだ力不足だ。“ファミリア”に籍を置いてる限り、箱庭では生き残れない」

「っ!」

 

 厳しいことを言うようだが、これが事実だ。

 “ファミリア”は(主に爺さんのせいで)様々なところから睨まれている。そんなコミュニティに籍を置いていれば、否が応でも激しい戦いに巻き込まれるだろう。

 俺は仲間を殺させるつもりは一切無いが、俺自身箱庭では弱い部類に入るだろう。上を見れば限りがない。そんな俺が、果たして本当に仲間全員を守り通せるのだろうか?

 答えは否である。爺さんやヴォルグさん、そして英霊組がいてもなお、シャルロット達は危険に曝されるだろう。

 

「シャルロット。お前はまだ弱い。それをしっかりと自覚しろ」

「っ.........う、ん...」

 

 自分の弱さを肯定することは、思ったよりも難しい。

 俺だって嫌だった。自分が弱いと認めようとしても、どうしてもプライドが邪魔をする。

 だが──

 

「自分の弱さを受け入れたなら、あとは這い上がるだけだろ? まだまだもっと、俺達(・ ・)は強くなれる」

 

 守られてばかりではいられない。

 シャルロットとラウラはそう言った。言ったのならば、その言葉に責任を持ってもらう。是が非でも、彼女らには強くなってもらう。

 

 その間の期間、シャルロットとラウラが強くなるまで彼女らを守るのが、俺の義務だ。勢いに押され、ただの人間でしかなかった二人を巻き込んでしまった、俺の義務。

 

「焦るなよ、シャルロット。焦っても結果はついてこないぜ。地に足着けて、ゆっくりと。一歩ずつ進んでいけばいい」

 

 シャルロットは確かに強くなった。確かな一歩を踏み出している。それはラウラも同じこと。彼女らは、彼女らの信念に従って、俺の傍に立とうと足掻いている。

 

「もう一度言うぞ、シャルロット。後は俺がやる」

 

 ならば次は、俺が義務を果たす番だろう。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 その後は早かった。

 エスデスと戦っていた辺りから自身に対する制限を解いていた俺にとって、片足を失った至高の帝具など相手にならない。

 

 俺はまず、槍の投擲で巨人の右足を破壊した。

 両足を失ったことで巨人は仰向けに転倒。両足の次は両腕だな、と思い両腕を千切り、胴体だけになった巨人の胸辺りを思う存分殴って踏み潰して雷を落としていると、そのうち動かなくなったのである。

 

 機能が停止したことを確認した俺は、至高の帝具を解体、もとい破壊していき、内部にいた皇帝を引きずり出した。

 

 

 そして現在。

 ほぼ全壊した宮廷にて、俺は大臣の前にいる。

 

 

「よぉ。気分はどうだ、大臣?」

 

 大臣からの返事はない。それもそのはず、大臣は口を布で縛られており、喋ることが叶わないのだ。

 だから、俺は返事を期待して大臣に問い掛けたのではない。ただ単に、恐怖を煽るためだけに問い掛けた。

 

 現在、この場にいるのは皇帝と大臣、そしてエスデス、ウェイブ、セリュー、クロメ、ブドーだ。クロメ以外、口だけでなく全身を縛った上でうつ伏せにしている。まあ大臣以外は全員気絶しているのだが。

 大臣の所へ向かう途中、瓦礫の下敷きになっているのを見かけたから何となく運んできたんだが...こいつらよく生きてたな。

 

「ぶっはァあ!!!」

 

 エスデス達の生命力に軽く感心していると、近くの瓦礫が突然吹き飛び、中からモードレッドが出てきた。その手はクラレントではなく、気絶したランを掴んでいる。

 

「お疲れ、モードレッド」

「お、おう...。死ぬかと思ったわ.....」

 

 モードレッド一人であれば、霊体化すれば良かっただけの話だろう。だが、モードレッドの傍にはランがいた。なんだかんだで甘いモードレッドは、ランを見捨てられなかったのだろう。

 

「優しいなぁ、モーさんは」

「と、突然なんだよ...気持ち悪ぃな...」

 

 素直な気持ちでモードレッドを褒めていると、トニトルスに通信が入った。見てみると、相手はラウラのようだ。

 

「どした?」

 

 切る理由も無いので、通信を繋ぐ。

 

『凌太。今、時間は大丈夫か?』

「ん? んー...まぁ大丈夫っちゃ大丈夫だけど、何かあった?」

『ナジェンダが、凌太と話がしたいと言っていてな』

「ナジェンダ? ああ、別にいいよ。そのままナジェンダに喋らせてくれ」

 

 わざわざナジェンダの元まで行くのも面倒だし、チャットで十分だろう。

 数秒待つと、通信画面にナジェンダの顔が映し出された。その顔は、どこかやつれているようにも見える。きっと気のせいではないだろう。

 

『...とりあえず問おう。リョータ、お前、一体何をやらかした?』

「やらかしたとは人聞きの悪い。俺はただ、帝国を実質上滅ぼしただけなんだが?」

『十分やらかしてるだろう、それは!!』

 

 何を怒ってんだ、こいつ? 反乱軍の最終目標も帝国の打倒だと聞いているし、別に不都合は無いはずなんだけど。

 

『私達がどれほど苦労して作戦を考えていたと思っている!? 大臣だけを殺しても意味は無い、大臣に加担する主要な役人達も纏めて始末しなければならないんだ!』

「んなこと知ったことかよ。ムカついたからやった、反省はしていない」

『この.....ッ!』

 

 怒りに震えるナジェンダだが、俺としては本当に知ったことじゃない。成り行き上やっちゃったんだから仕方ないだろ。

 

「とりあえず、皇帝と大臣は生け捕りにしてある。宮廷の真ん中辺りに捨てとくから、欲しけりゃ勝手に拾え。ラウラは一旦俺の所に来てくれ」

 

 ラウラに集合するように伝えた後、俺はすぐに通信を切ろうとした。

 だが、最後に言っておくことが残っているのに気付き、通信切断を中止する。

 

「ああ、そうだ。ナジェンダ、よく聞けよ? 俺らは反乱軍の味方じゃない。成り行き上ナイトレイドに協力してはいたが、それもこの瞬間までの話だ。今後、俺達に敵対する意思があるなら好きにしろ。だがその時は、決死の覚悟をして来いよ?」

 

 それだけ言い残し、俺は通信を切る。

 

 タツミやブラート、アカメなど、面白そうな奴はいた。ブラートやアカメは帝具の能力だけでなく素で強いし、タツミは伸び代がある。その他の連中も、割と気に入っていることは事実だ。

 だが敵対すると言うのであれば容赦はしない。ナイトレイドの連中は気に入っているが、大切なのは比べるまでもなく俺の仲間。単純な優先順位の問題である。

 

「凌太」

 

 そろそろ夜も明けるし、ラウラと合流してからどうするかな、などと考えていると、シャルロットが俺の名前を呼んだ。

 シャルロットの治療はすでに終えている。傷一つ残さない完璧な治療だと自負できる程だ。

 

「なに?」

「あの...その.....本当に、ごめんなさい...」

 

 まさに恐る恐るといった感じで、シャルロットが頭を下げる。

 謝罪の理由は、十中八九先程の出来事絡み。戦力になれなかったことをまだ引きずっているのだろう。

 

「いーよ、別に怒っちゃいないしさ。ただ、今後は自分の力を過信しすぎんなよ?」

「...うん」

 

 ふむ...。だいぶ自信やら何やらが砕け散ってしまったらしい。まあそれも仕方ないのかもな。あとは時間をかけていくしかないだろ。多分。

 さっきは鞭を打ってしまったし、次は飴を与えなきゃな。

 そう思い、俺はシャルロットに励ましの言葉の一つでもかけてやろうとした。

 

 だが、この世界の神は俺にすんなりと事を行わせるつもりがないらしい。

 ここで、俺が全く予想できていなかった不測の事態が発生する。

 

「やっほー、りょーくーん!! 来ちゃったー!!」

 

 聞き覚えのある声が頭上から飛んでくるので見上げてみれば、なんとまぁ。

 ──空から兎さんが降ってきているではありませんか。

 

 ...ごめんこの世界の神様。悪いのは全部ウチの駄神(爺さん)でした。

 

 

 

 

 

 

 




アカメ編のあとは一旦箱庭に帰るか、それとも別の異世界編に突入するか...どうしよう...。
箱庭に帰るのなら、原作三巻の時間軸に合わせようかと思ってます。蛟魔王 VS 十六夜 VS 主人公っていうのを書いてみたい。

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