投稿速度上げるとか言ってたのにすまない...本当にすまない...っ!
「ふんふふーんふーん...ふふっ」
三獣士との戦いから一晩開けた今日、俺達はナイトレイドのアジトに帰ってきていた。
ちょうど昼飯を食い終わり、使った食器等を洗っていると、居間の方からラウラの機嫌が良さそうな鼻歌が聞こえてきた。
「ラウラ、機嫌良さそうだね? 何かいい事あった?」
目に見えて機嫌の良いラウラに、シャルロットがそう問いかけた。無理もない。隣で鼻歌なんぞを歌われれば普通気になる。
「ふふん! 聞いてくれシャルロット、そして驚いてくれ。私は、自分の帝具を手に入れたのだ!」
「えっ、ホントに!? 昨日ゲットしたの!? うわーっ! ねぇ見せて見せて!」
「いいだろう!」
楽しそうにキャッキャと盛り上がる声を聞きながら、俺はタツミと並んで皿を洗う。皿洗いと言えば下っ端の仕事の様な感じだが、やってみると意外と楽しいものだ。
むっ、この汚れ取れにくい...。
「...帝具かぁ」
しつこい油汚れと格闘していると、隣でそんな声が聞こえた。見ると、タツミが何やら羨ましそうにラウラの方を見ている姿が目に入る。
「なんだタツミ、お前も帝具欲しいのか」
「まあ、そりゃな。オレもいつか超絶カッコイイ帝具使ってみたいぜ」
「インクルシオとか?」
「ああ! 兄貴のインクルシオは超カッコイイよな!」
「確かに。しかも強いしな」
カチャカチャと皿を洗いながら、以前に見たインクルシオの事を思い出す。見た感じは二天龍の神器に似ている。性能は断然二天龍の神器の方が上だが、インクルシオも十分強い。ブラート本人の強さも相まって、現時点ではブラートがナイトレイド最高戦力の座に君臨していると言っても過言ではないだろう。まあ、アカメの村雨も大概チートだけどな。一斬必殺ってなんだ。
まあ、ナイトレイド同士で戦えば、恐らくブラートが生き残るだろう。しかし、その他の敵と、となれば話は変わってくる。ナイトレイドの連中はそれぞれ面白い帝具を持っているし、それに強い。タツミだって、帝具を持てばもっと強くなるだろう。是非ともシャルロットやラウラと切磋琢磨して欲しいものだ。
* * * *
夜。ナイトレイド隠れ家内に与えられた俺達の部屋にて。
「給料を貰いました」
「「「おおー」」」
俺の発言を聞き、モードレッド、シャルロット、ラウラの三人の声が綺麗にハモった。
「なんか、昨日の護衛任務の報酬の分け前らしい。俺達四人分がこれなんだと」
そう言って、俺は一つの麻袋を、皆に見える様に机に置いた。
「こっちの通貨はよく分からないが、ナジェンダ曰くそれなりに入っているらしい。そこで、とりあえずこの金で日用品を買い揃えようと思う」
「日用品だぁ? んなもんいらねぇだろ、それより何か旨いもん食いに行こうぜ!」
「モードレッドは必要無くても、シャルロットやラウラには色々と必要な物があるだろ。下着とか。いつまでも同じやつを、洗ってすぐ乾かして着る訳にもいかないだろうしな」
「そんなのマスターが作ればいいじゃん」
「確かに作れるっちゃ作れるけど、必要なのは下着だけじゃないからな。次に報酬が入ったらどっか美味いもの食べに連れて行くから、今回は我慢してくれ」
「ちぇっ。仕方ねぇ...約束だかんな」
モードレッドの説得に成功した。明日の飯はモーさんの好物を作ってやろう。
「日用品かぁ。確かに、色々必要な物はあるよね」
「女子は特にな。例えば生r」
「おっと、それ以上はセクハラだよ?」
「しかし凌太よ、日用品を買うと言うが、まさか帝都に行く気なのか? 先日、そこの兵士と戦ったばかりなのだが...」
少し心配そうに、ラウラが言う。三獣士や、この世界に来た時に戦った帝国兵の事を思い出しているらしい。
「まあ大丈夫だろ。手配書は出てないらしいし」
「そうか。...うん、そうだな」
「よっし、そうと決まれば善は急げだ。明日にでも帝都に行こう。モードレッドはどうする?」
「そうだな...一応着いて行ってみようかな。ナイトレイドの連中が口を揃えて言う『腐り切った帝国』の首都。それを、この目で一度見ておくのも悪くねぇ」
「うし。じゃあ明日、朝飯食ったら帝都に繰り出すか!」
ってな感じで帝都行きが決まり、この場は解散する。各々が寝るまでの時間を思い思いに過ごそうとする中、俺は一人風呂へと向かう事にした。
ナイトレイドの風呂は温泉だ。源泉掛け流し。本当お前らの隠れ家豪華過ぎないか、隠れる気無いだろ、と突っ込みたい。そもそもさっきの報酬もそうだが、ナイトレイドないし革命軍の収入源ってなんだ。ナイトレイドは市民からの依頼を受けているようだが、それだけでは食っていけないし、アジトをここまで豪華にする事も出来ないだろう。謎だ。
「まあ、別に豪華な分には何も文句無いんだけどな。むしろいい」
そう独り言を零しながら、俺は服を脱いで浴槽へと向かう。
すると、浴槽には既に先客がいたようで、湯気の立ち込める奥から話し声が聞こえてきた。
「なぁ、タツミ。お前、ウチの女子連中ならぶっちゃけ誰が一番好みだ?」
「え? そんなこと言われてもな...。今、オレは強くなるのに夢中だから...選ぶとか、そんな身分じゃないよ」
「はーっ、固いなぁ、お前」
「これだけ女が揃ってる中で誰にも興味を示さない...つまり、隠された選択肢があるわけだな!!」
「「......はい?」」
「俺もさ、初めは興味無かったんだけど、従軍中に色々あってな...」
「「は、はぁ......え?」」
......風呂入るの明日でもいいかな。
「ん? おっ、なんだリョータじゃねぇか! お前も風呂か?」
見つかった。しかもよりによってブラートに見つかった。ちっ、仕方ない。逃げようとしてるラバック捕まえて俺も風呂に入るか。
タツミに言ってラバックを捕獲させ、俺はささっと体と頭を洗って湯船に浸かる。ああ、気持ちいい。星も良く見えるし最高だな。...ブラートからの視線が無ければ。本当顔を赤らめないで下さいお願いします。
「ん? なぁリョータ、お前、胸のとこにそんな刺青してたっけ?」
出来るだけブラートの視線を無視する事に努めていると、タツミからそんな事を聞かれた。タツミとは、ナイトレイドに転がり込んだ初日に風呂で遭遇している。その時は刺青なんてしてなかったから気になったのだろう。
「ああ、ついこの前な。ちょっとした封印だよ」
「封印? なんだよお前、『俺の中には悪魔が眠ってる』とか言い出したりしちゃう奴なの?」
ラバックが呆れた様に言ってくるので軽くチョップをお見舞いしつつ、せっかくなので説明を続ける事にした。
「自慢じゃないが、俺はお前らの何倍も強い」
「自慢じゃねぇかよ」
「まあ聞けってラバック。お前らより強い俺だが、上を見れば掃いて捨てるほどの強者がいる。そいつらに勝つ為に、俺は強くなりたい。だったら修行するしか無い訳で。そこで、この封印だ。これはルーン魔術っつってな、色んな事が出来る便利な魔術なんだよ。それを使って、俺の力に制限を付けてんだ」
「すっ、すげぇえーー!!! かっけぇえーー!!!」
タツミが瞳を爛々と輝かせて、若干高い声を上げた。ここまで良いリアクションを取られると俺も少し照れるな。
「そのルーンだか魔術だかは分かんないが、具体的にはどのくらいパワーダウンしてるんだ?」
「筋力は三分の一くらいだな。魔力は十二分の一くらい」
「魔力...?」
ラバックが魔力という単語に反応したが、そっちの説明は面倒そうなのでスルーする。
それに、これは正確には封印じゃない。魔力を封印してしまったら英霊への魔力供給量が足りなくなってしまう。
そこで、俺が考えたのが“封印”ではなく“小分け”である。まずは、俺の持つ魔力を十二個に均等に分ける。そして、俺が自由に使えるのがその中の一個だけに限定。他の使っていない十一個は、供給分ともしもの時の予備だ。
筋力の方は単純な封印だが、こちらもすぐに解ける様にしてある。もし強敵と戦っている最中に、俺の封印が原因でシャルロット達を守れなかったら話にならないからな。
「魔力も良く分からないけど、筋力の方も別の意味で分かんないな。十二分の一とか数字を言われても...。こう、誰かと比較した説明が欲しかったんだけど...」
困ったようにラバックが言うので、身近なところでの比較対象を考えてみる。
「んー、そうだな......ブラートと同等か少し下くらいじゃね? まあ、俺は身体強化も出来るから、俺とブラートが戦えば俺が優位に立つんだろうけどな」
まあ優位に立つも何も、
「えっ!? リョータ、お前兄貴に勝てるのか!?」
「リョータならありえるだろうな。軽い組手しかしたことはないが、リョータからは底知れない何かを感じた」
「ホント意味分かんないなお前」
いつもながら、周りの俺に対するこの反応は誠に解せぬ。
* * * *
翌日、昼。
「ほぉん、これが帝都か」
帝都のとある大通りにて、俺はふと、そんな事を口にした。
街並みはまあまあ綺麗に整えられているし、大分賑わっている。俺達の周りは大勢の人間が行き来しており、とてもでは無いが、悪政を敷かれている国とは思えない。まあ首都だから豊かなだけなのかもしれないけどな。
「おお、思っていたより賑わっているではないか」
「うん、そうだね。聞いてた感じ、もっと酷い場所かも、なんて思ってたんだけど」
「............」
物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡すラウラとシャルロットと違い、モードレッドは黙って人の群れを見ていた。目線を追ってみれば、そこには一人の青年と三人の少女の姿が。ちょうど少女達が青年に服を買って貰っているらしく、キャッキャと楽しそうに笑っていた。
「あっ、マインの手配書」
モードレッドは何を考えているのだろうか、などと考えていると、俺の隣でフードを深めに被ったタツミが一枚の貼り紙を指差してそう言った。
そちらの方を見れば、マインと非常によく似た絵の描かれた貼り紙が貼ってあり、少し見渡せば至る所に貼り出されているのが分かる。
「へぇ...上手いもんだな、マインの小憎たらしさが良く表れてる絵だ」
「確かに」
俺の独り言にタツミが反応し、同意を示す様に頭を縦に振った。
二人してマインに失礼な感想を抱いていると、シャルロットが若干興奮気味な声色で俺に話しかけてきた。
「ねぇ凌太、凌太! 僕、あのお店見てみたい!」
「ん? よっし、んじゃまずはそこ入るか」
「あ、じゃあオレはラバックの所行ってくる。姐さんも待ってるらしいし」
「りょーかい」
タツミとはここで別れる事にし、俺はシャルロットの後に続いて店に向かう。
最初は何の店か分からなかったが、入って見れば服屋である事が分かった。店内には様々な服が置いてあり、日本ではコスプレの部類に入りそうな服もいくらか並んでいる。まあ、英霊の服装とかほぼコスプレみたいなものだし、そういう系の服も見慣れてる。別段珍しいものでも無い。
シャルロットはコスプレ風の衣服にも興味を抱いている様子だったが、一般的な服の方を物色している。着てみたいけれど普段着としてはちょっと...といった感じだろうか?
「凌太、ちょっと見てくれ」
「ん?」
俺も何かテキトーは服を買おうかな、などと思っていると、ラウラが俺の裾を掴みちょいちょいと引っ張ってきた。振り返って見れば、そこには黒い猫が。つなぎの様な服で、黒猫の様なデザイン。猫耳だけでなく尻尾まで完備という徹底仕様。あれだな、愛い。
「あっ、それこっちにもあるんだー!」
ラウラの服装にちょっとばかり呆けていると、シャルロットがラウラの服装に反応した。「こっちに“も”」とはどういうことだろうか?
「これね? 僕がラウラに買ってあげたパジャマに似てるんだよ。僕とお揃いで、僕のは白猫なんだー。凌太は見たことない? ラウラのこの格好」
「無い。初めて見た」
というか、ラウラの奴パジャマ持ってたのか。俺の布団に潜り込んでくる時はいつも裸だったし、寝る時は裸族なのかと思ってた。パジャマを持ってたんならちゃんと着て欲しかったなぁ...。
「白猫のもあったぞ、シャルロット」
「え、ホント!? んー、じゃあ買おっかなぁ...。あれ、結構気に入ってたんだよね」
「いいんじゃね? ラウラのも可愛いし、シャルロットもきっと似合うだろ」
「本当? なら買おっと! ラウラも買うでしょ?」
「う、うむ...。......可愛い...」
ラウラが照れて顔を赤く染めたが、暫くするとシャルロットと一緒にキャッキャと服を物色していた。さて、女子の服選びはこれからが長いだろうし、俺も普段着を見てみようかな。
暫く店内を見て周り、手頃な服を二着程選ぶ。シャルロット達はまだ服選びの最中っぽいし、先に会計を済ませておくか。そう思い、レジの方へと向かっている途中。店内の隅で、何やらコソコソとしているモードレッドを見つけた。
...気になる。
気配を消し、そーっとモードレッドの背後へ近付いて行く。すると気付いた、モードレッドが何かを持っている事に。まだモードレッドが俺に気付く様子がないので、背後からその物を覗き見る。
「.........ドレス?」
「とぅわ!?」
思わず漏れた俺の声に、モードレッドが「ビクゥッ!!」 という音が聞こえて来そうな勢いで驚いた。
「マッ、マママママッ、マスター!?」
おぉ、こんなに焦ってるモーさんは久しぶりに見たな。いや、もしかしたら過去最高かもしれない。俺の姿を確認すると同時、アタフタと手元を狂わせながらも手に持っているドレスを棚に戻す。
「............み、見た...のか?」
耳まで赤く染め上げ、若干涙の溜まった目で上目遣いに見てくるモードレッド。なんだこのモーさんめっちゃ可愛い。これがギャップか。
「見た。いいじゃん、ドレス。似合うと思うぞ。なんなら買っちゃえば?」
「なっ...! 〜〜〜〜ッ!!!」
なんで照れてるんだろうコイツ? まあ、普段ドレスなんて着るキャラでもないしな。ちょっとばかり恥ずかしいのかもしれない。
「ド、ドレスなんて知らねぇし! オレは先に出とくぞッ!!」
照れ隠しなのか怒りなのか、赤面したまま逃げるかの様に店を出ていくモードレッド。...えっ、もしかして俺のせい? アイアムギルティ?
「...仕方ない」
多分6:4くらいで俺が悪いのだろう。モードレッドは女扱いをすればキレるし、かといって男扱いしてもキレるめんどくさい奴だ。それを知ってたのにドレスを勧めた俺に若干非があるんだと思う。後でフォロー入れとかないとな、などと思いながら、俺は少しだけ棚を見て回ってから買い物を済ませた。
* * * *
「む? 凌太、あの店に入ろう」
服も買い終え、再び道をふらついていると、今度はラウラがそう提案してきた。
「...あれ、ランジェリーショップか?」
看板の文字こそ読めないものの、見るからに男子禁制感溢れる店だった。解読不能な看板の文字の横には女性物の下着の絵が描いてあるし、ランジェリーショップでファイナルアンサー。
「ん、じゃあ行ってきていいぞ。俺はそこのカフェっぽい所で待ってるから」
「何を言う。凌太も来い」
「は?」
「夫婦として、嫁の好みは把握しておく必要がある。一緒に選んでくれ」
「いやでもさ、ラウラはともかくシャルロットやモードレッドが嫌がるだろ?」
「僕は構わないよ? むしろ、僕のも選んで欲しいっていうか...」
「オレはどっちでもいい」
「賛成多数だな。行くぞ凌太」
「えぇ......」
とまあ、俺が下着を選ぶ事になった。なってしまった。
...まあ、決まったものは仕方がない。今更他人の目を気にする様な性格でも無いし、選ぶのなら真剣に選ぼう。...下着選ぶ基準ってなんだろう? 別に他人に見せる様なもんじゃないし、俺のパンツなんて『文系男子』と大きくプリントしてあるような物もあるくらいテキトーに選んでいる。ま、なるようになるか。
そんな事を考えながら、俺は人生で初めて、女性の下着販売店に足を踏み入れた。と同時、俺達四人に店内からの視線が集まる。...いや、俺だな。俺だけに視線が集まってるな、これ。まあ男が入ってくれば気にもなるか。
「あっ」
「?...あっ」
声が聞こえたので、何となくそっちの方を見てみると、そこにはオレンジ色の下着を持った見覚えのあるポニテと、リードで繋がれた犬っぽい生き物がいた。
「やっぱり! 貴方達はこの前の!」
俺と目が合ったことで確信を得たらしく、ポニテ少女がコロを引きずってこちらに近付いて──途中で止まった。
「......何故、男性の貴方がここに?」
「お前こそ、なんで店ん中に犬連れてきてんの?」
「あ、二人が真っ先に気にするところ、そこなんだ?」
ポニテ少女を、正確にはコロを見て、警戒の色を濃くしていたシャルロットが意外そうにそう言った。確かに、互いにもっと色々気にすべき事があると思う。
だが、相手が以前の様な見境無しのバーサーク状態でないのなら対話の余地がある。なんで俺らが指名手配されてないのか、とか実は結構気になってたんだよね。
「買い物だよ、日用品を買い揃えてんの。俺はこいつらの付き添い」
「買い物...付き添い、ですか」
「おう。お前は?」
「セクハラですか? 現行犯で逮捕しますよ」
まあ、そりゃ下着売場でそれを聞いたらそうなるわな。ISなんかなくても、最近は女尊男卑の傾向にあるからなぁ。いや、この国もそうなのかは知らないけど。
「それよりお前、よく無事だったな? オレ、結構な速度でぶん投げたんだけど」
そうモードレッドがポニテ少女に言う。純粋に驚いているっぽい。
「はいっ! 私、鍛えてますから!」
それを聞いたポニテ少女は、何故か笑顔を浮かべてそう言う。笑顔の意味もイマイチ分かりかねるが、それ以上に、一般人が鍛えた程度であれを耐えれるという方が分からない。もしかして英霊にも並ぶ様な天性の肉体の持ち主か、とも思ったが、目の前の少女からはそんな特別な気配は感じない。
「それより!」
俺の思考を断ち切る様にポニテ少女が声を上げ、そして凄い勢いで頭を下げた。何だ何だ、突然どうした?
「この前は突然襲ってしまい、すいませんでしたッ!」
この時、俺は久々に周りの視線というものを意識した。
──曰く。
先日はナイトレイドに恩師を殺されて気が立っていた。いや今も立ってますけど。
まあそのせいで、ナイトレイドとの戦闘に割って入ってきた俺達にも腹が立った。
でも後日、上司に「いやそれ、多分国外の奴。だってナイトレイドとも戦ってたんでしょ?」と指摘され、俺達への考えを改めて先程の謝罪に繋がる、と。
とりあえず各自下着を買ってから、向かいのカフェのテラスに陣取って謝罪の理由を聞いたら、そんな感じの返答がきた。
「因みに聞きますけど...本当に、貴方達はナイトレイドとは関係無いんですか?」
一段落ついた後、ポニテ少女──セリューが、ケーキを食べる手を止めて俺達に聞いてきた。一応の確認のつもりだろう。
だが残念というか何というか、俺達四人ともナイトレイドとがっつり関係持っちゃったんだよなぁ。
けどまあ、わざわざここでセリューと敵対する必要はないだろう。
「無関係じゃないよな、戦ったし」
「あっ、それもそうですね。じゃあ聞き方を変えます。貴方達は、反乱軍に所属しているんですか?」
「だったら答えはノーだ。帝国の悪評は聞くが、進んで潰そうとは思ってねぇし」
「なら良かったです! もし貴方達が悪なら、ここで正義を執行しなければならないところでした!」
ここは無言で流しておこう。コーヒーを啜り、自然に話を終わらせる。いや自然かどうかは分からないけど。
「おいマスター。いいのかよ、あんな事言って。オレら、一応ナイトレイドに協力してる立場だぞ?」
セリューがコロの相手をして注意がこちらから逸れている間、モードレッドが小声で耳打ちしてきた。シャルロットとラウラも同じような事を思っているようで、俺に視線を向けてくる。
「別に嘘は言ってない」
「いやそりゃそうだろうけどよ...」
「それに、俺は本当に反乱軍に味方する気も無いぞ。寝床を提供してくれてるから、その見返りを肉体労働で返してるだけだ」
「じゃあ昨日貰ってた給料はなんだよ」
「それはそれ、これはこれ」
「うわぁ...」
くれるってものはありがたく貰う、これ基本。
小声での会話を終えたのとほぼ同時、セリューがこちらに話掛けてきた。
「あっ、そういえばリョータ! 貴方達は、遠方から修行の為に帝国まできたんですよね?」
「ん? 別に帝国を目指してた訳じゃないけど、まあそんな感じ」
「だったら、この後開催される武闘会に出場してみませんか? エスデス隊長主催の腕自慢大会で、優勝者には賞金も出ますし......これはホントは内緒なんですけど、余ってる帝具の使用者探しの為の大会なんですよ。あ、帝具って分かります?」
「帝具は分かる。コロもそうなんだろ? それより、エスデス隊長?」
予想もしていない人物の名前が突然出てきたので、そこを掘り下げていく事にした。
「はい。私、この度異動が決まりまして。警備隊からエスデス隊長直属の特殊警察、イェーガーズっていうチームに配属されたんです」
「ああ、噂は何度か聞いたな。なるほど、セリューは優秀なのか」
「いえいえ!」
それにしても、エスデスか。帝国最強と謳われるドS将軍、興味が無い訳がない。それに帝具も手に入るかもしれないと来たもんだ。
だが、エスデスと戦える訳でもない大会に出場するメリットは少ないのではなかろうか。シャルロットとラウラは参加させても良いかな...?
「都合が合えば参加するわ。教えてくれてありがとな。じゃ、俺達もう少し買う物があるから」
「はいっ! 私もそろそろお仕事の時間ですので、ここでお別れですね。それじゃ、またいつか!」
そう言って、セリューは自分の分の勘定を置いて、俺達に手を振りながら走って行った。
「...で、参加する?」
「大会か? オレはパス。ぜってぇつまんねぇし」
「私は参加してもいい。実戦は積んでおいた方が良さそうだしな」
「ボクも参加してみようかな。帝具も欲しいし」
「んじゃ、二人は参加だな。俺とモードレッドは観戦しとくわ。あ、ISは使わない方がいいぞ。ラウラはブラックマリンもな。てかブラックマリンは一応俺が預かっとく。何かの弾みでエスデスに見られてみろ、戦争待ったナシだ」
とまあ、そんな訳になった。
現段階での主人公のステータス(爺さんの封印+自分で施した制限込みVer.)をFate仕様で表したものです。封印無しの方は下記から+三~四段階、制限の方は+一~二段階アップです。
【坂元 凌太】男・16歳
筋力 D-/ 敏捷 C / 耐久 D/ 魔力 C+ / 幸運 B
スキル:直感 B+/魔力放出 A+ / 対魔力 EX / 気配遮断 A / 騎乗 B / 気配察知 B / カリスマ B+ / 頑丈 EX / 原初のルーン C / 戦闘続行 B
恩恵(権能):“???”/“順応”/“転生者”/“雷で打つ者”/“形作る者”/“大海を統べる者”