問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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活動報告の方のアンケート、沢山のご意見を頂いて恐悦至極にございます。ありがたやありがたや...。いや、本当にありがとうございます。素直に嬉しいです。

期限については特に設けていないので、今後も気の向いた時にでも書き込んで下さると幸いです。


IS〈インフィニット・ストラトス〉②
「フッ、残像だ」


 

 

 

 

 

 

 

 

 爺さんと思われる人物...神物? まあそんな感じの奴の話を聞いた俺の反応といえば、

 

「ふーん」

 

 程度である。話を聞く前のテンションはどうしたと自分でも思わなくもないが、結論としてそういう感想しか出てこなかったのだから仕方がない。

 

 爺さんの過去が判明しようが何しようが、爺さんは俺の目標であり最優先打倒(ブン殴り)対象であり仲間である。そこは何一つ変わらない。まず先程の話に出てきた青年が爺さんだという確証もないのだ。今気にすることではないだろう。仮に「あの方」=「青年」=「爺さん」なのだとしたら、俺はもう1度ティアマトをぶん殴らなければならなくなるのだが。爺さんレベルのキチガイだと認識されるのは心外だ。

 

 

 

 で、そういった話を聞き終わった後。とりあえずイッセー達だけは元の世界に返そうという事になり、各自が帰る準備を終え、後はタイムマシン擬きに乗るだけという頃。

 

「ねぇ帰りましょうって! 研究なんてあっちのラボでいくらでもすればいいじゃないですかぁ! 帰りましょうよアザゼル様ぁ!! あそこにいる聖女マルタ2人がこっちを真顔で見てるんですよぉ!...あっ、杖とガントレットとタラスクの整備を始めた!? ちょ、アザゼル様、ホントに早く帰りましょう! 滅されちゃいますから! 鉄拳で聖裁されちゃいますからぁ!!!」

「分かった、分かったから泣くなって...。くっ、夢の永久機関開発に携わりたかったぜ...」

 

 イッセー達を元の世界に送り返す直前に、この様な出来事があった。なんかもう、必死だった。

 

 というか永久機関とかいう阿呆みたいな代物を作ろうとすんなと、声を大にして言いたい。なんでも、万が一協会や教会、そして国連を敵に回してもなんとかなるように無限電力供給炉を作りたいだとかなんとか。そんなの聖杯使えよバカヤロー、と思わないでも無かったが、すぐに自身で味わった副作用を思い出してぐっと言葉を飲み込んだ。せいはいこわい。カンピオーネの筋細胞ズタズタにするとか何なのだろうか。やはり代償無しのチートなど無い、地道に修練を積めという事なのだろうか。...きっとそうなんだろうなぁ。

 

 まあそれは兎も角。英霊に留まらず神や(ビースト)すらも止める『ガンド』などというチート魔術式を開発したカルデアのキチガイ開発局に加えて、英霊陣とアザゼルが手を組めば副作用無しの聖杯擬きすらも作れそうではある。このメンツに束とか加えたらどうなるのだろうか。まあ十中八九俺の想像を超える事だけは確かである。

 

 あとついでに言うなら、黒ひげとイッセーが手を組んで女子風呂覗き未遂事件などという愚行を犯し、両者共女性陣にガチで殺されかけるという事件が起きたが、それはまた別のお話。深くは語るまい。ドライグが泣いた、とだけ言っておこう。

 

 

 

 そして現在。

 

「良い闇ですね。なんというかこう...落ち着きます」

「ここでそんな感想聞いたの初めてだわ。俺とかまだ少し怖いんだけど、この場所」

 

 無事にイッセー達を元の世界に送り届け、「修学旅行中だってこと忘れてた!」などと叫び飛び出して言った2年組を見送り、残ったグレモリーとヴァーリにいつの間にかギフトカードに入っていた異世界通信型連絡機・通称黒スマホを渡してから10数分後。

 俺とニトリを乗せたタイムなマシンはゆっくりと暗闇を進んでいた。ペストは完全に別の世界に入り切るまでギフトカードから出ないと豪語し、その言葉通り、未だ彼女は俺のギフトカードから出てきていない。どんだけ怖いんだよ。トラウマになってるんじゃないだろうな?

 

 そんな心配をしながら時間遡行機械を進めること10分程。前方に出口が見えてきた。いつ振り下ろされても良いように体勢を整えていたのだが、特に何もなく出口である光の穴を抜ける事に成功した。...不安だ。何も無い事が逆に物凄く不安だ...っ!

 

 

 

 

 光を抜けたその先にあった光景は、数ヶ月前に俺が出ていった部屋。そして、

 

「フンフフー、フ○デリカ〜♪」

 

 ...鼻歌交じりにベランダで布団を干している金髪少女(アイドルじゃないよ)の後ろ姿だった。いや、ホントなんでさ。

 え? 部屋間違えた? いやいやそんなはずがない。だって、ちゃんと俺に割り当てられた部屋に座標指定したはずだし...ああ、いや。これ作ったの多分爺さんだしな。そこら辺テキトーでも不思議じゃないか。

 

「うんっ、いい天気! 偶には凌太の部屋の掃除でもしておかないと、もし万が一凌太が帰って来た時困るもんね〜。フンフンフフーン、フンフフー」

「お前は俺のエミヤか」

 

 どうやら俺の部屋で間違いは無いらしい。無駄に爺さんを疑ってしまった。許せ爺さん。だが反省はしていない。日頃の行いが行いだから仕方ない。

 

「ふぇっ!? えっ、あれっ? 凌太? えっ?」

「おう。久しぶり...で合ってるよな?」

「あっ、うん。久しぶり...」

 

 異世界間の時間軸が一緒かはよく分からないしな。カルデアでの数ヶ月が、こっちでは数日って事も十分有り得たが、どうやらそういう事はないらしい。ちらりと見た備え付けの電波時計に示されている日にちが、俺がここを出た真夏から数ヶ月経っている事を証明している。...もう秋か。もうすぐ俺の誕生日だな。いや、最早誕生日とか意味を成してないけれど。確実に前の誕生日から1年以上過ぎてるけれど。

 

「ここが異世界ですか...余り私達のいた世界軸と変わりは無いように見えますね」

「まあ、同じ地球だしな。箱庭とかになると結構変わるぞ? なんたって世界の果てが存在するような世界だからな。きっとあの下には大亀とかがいると思うんだ」

『......異世界着いた? もう誰も追ってこない?』

「着いた着いた。だから安心しろ、ラッテンも婦長もいないから」

 

 キョロキョロと周りを見渡すニトリと、震えた声で確認を取ってからソロソロと外へ出てくるペスト。俺やニトリの登場もそうだが、1人の少女がカードから出てくる様はベランダの金髪少女、シャルロット・デュノアを驚かせるには十分を通り越していたらしい。『開いた口が塞がらない』という言葉をそのまま体現していた。まあ是非も無い。なんの連絡も無く突然来たからな。でも連絡手段が無いんだから仕方ないよね。

 

 

 

 * * * *

 

 

「なあ一夏。なんで俺は正座させられてるんだ?」

「まあこっちにも色々あったんだよ...大人しく従っておいた方がいいと思う」

 

 驚きで固まってしまったシャルロットが正気に戻るのを待つこと数分。今度は弾けたかのように張り上げられたシャルロットの声を聞きつけ、2人部屋でしかない俺の部屋に一夏、篠ノ之、鈴、オルコット、ラウラ、その他大勢の野次馬が大勢集まってきた。

 どうやら今日は日曜だったようで、寮内をウロチョロしていた生徒達が一挙に集まっているらしい。人口密度とか凄いことになっている。静謐ちゃんがいたら死人が2桁単位で出るくらいには凄い。というか暑い。完全に蒸し風呂状態である。俺と一夏以外は女子なのでムサイという事はないが、シンプルに暑い。知り合い以外はどっかに行っててくれないかな。いやマジで。

 

 久しぶりに人払いの殺気でも放つかと考えている中、颯爽と登場したのが我らが担任・織斑千冬その人である。よぅし、これでこの野次馬騒ぎも修まるぞぅ。など思っていたのだが、何故か彼女に正座させられて現在に至る。解せぬ。

 

「こんな大衆の中心で正座とか...マスター、ホントに何したの? また泣かせる様な事したの? 夜道で背後から刺されるの?」

「またってなんだまたって。俺はまだ誰も泣かせてないぞ。味方は」

 

 敵なんざ幾ら泣こうが喚こうが関係無い、という意気込みの元に実際何人も泣かせてきているが、味方は泣かせてない。...はず。きっと。

 

 

 その後は千冬の睨みでとりあえず野次馬組を部屋から追い出し、現在俺の部屋にはいつも絡んでいた連中が勢揃いしていた。いや、いつも、という言葉には語弊があるな。

 一夏とそのラヴァーズが居るのは分かる。シャルロットやラウラ、そして千冬もだ。だがしかし、なんで生徒会長とその妹がいるのだろうか。いや、生徒会長は割と話していた、というか一方的な干渉は受けていたけれど、妹の方は全く絡み無くね? 普通に初対面なんだが。本当、何故残った? キミの憧れているであろうエミヤは此処には居ないぞ? ...まあいいか。エミヤに様子を見ておいてくれと頼まれていたし、別に拒絶する理由も特にはないしな。とりあえず放置で。今俺が対処すべき問題はそこではない。

 

「...で、俺はなんで正座させられてんの? 本当に覚えがないんだが」

「なに。貴様らが突然消えた事でこちらが迷惑を被ったのでな。ちょっとした説教をしてやろうというのだ。歯を食いしばれ」

 

 とんだ体罰教師がいたものである。まさか迷惑を被ったから生徒を殴るとは...。説いて教えると書いて説教と読むのだが、どうやら千冬の場合は違うらしい。薄々感じてはいたが、やはりマルタ的説教理論思考の持ち主だったか...。まあそれを大人しく受ける俺ではないのだが。

 

「ふんッ!」

 

 俺の脳天を捉えようと振るわれた千冬の拳は、明らかに常人のソレを超えていた。

 ...そう言えば、頭を叩かれると脳細胞が死滅する、みたいな話を聞いた事があるのだが、あれは本当なのだろうか。まあ真実がどうであれ、今の俺には関係ないか。

 

「なんっ!?」

 

 正座する俺の頭を捉えたと思われた千冬の拳は、虚しくも空を切る。というか俺の頭をすり抜ける。

 これには流石の千冬も驚きを隠せないようで、思わずといった感じで声を漏らす。それは周りも同様だ。ニトリ以外、全員の顔に驚愕の色が見て取れる。フフッ、愉悦。さて、そろそろ種明かしをば。

 

「──フッ、残像だ!」

 

 千冬の背後に立ち、ビシッとサムズアップなどを決めてみる。どうしてだろう、なんか変なテンションになってきている気がしないでもない。でも楽しい。楽しいは正義。よってこのテンションをもう少し引きずろうと思います。

 

「くっ、お前のISにそんな高性能な立体映像装置が搭載されているなどという報告は受けていないぞ...。そもそも、今のホログラムには確かに気配があったが」

「え? いや、別にISとか使ってないし。自前の残像だけど? 気配があったのはアレ、俺の魔力やら気やらの残滓を固定化して象った像だからな。まあニトリにはバレてたみたいだけど」

「当然です。気配遮断の方は流石の一言ですが、残像の方はまだまだ不安定。並の魔術師(キャスター)であれば誰でも気付くでしょう」

「だよなー。一応、ロマンのを真似てるつもりだったんだけど...練度が足りないか。まだ実戦じゃ使い物になりそうにないな」

「細き流れも大河となる。そんな言葉もあるように、腐らずに修練していけばいずれ成功するものです。凌太、貴方は少し急ぎ過ぎな傾向があります。まだ若いのですから、ゆっくりと丁寧に、地に足つけて人生を歩んで行きなさい」

「お、おう...。なんか急に真面目な話になったな...」

 

 妙に高かったテンションも一気に落ちたわ。いや、先人からの助言というものは非常に有難いのだけれども。というか河系の諺を出してきたのはナイル川を意識しての事ですかね...。ニトリがナイル川好き過ぎな件について。史実的にはナイル川を上手く利用しているらしいが...余り考えない様にしよう。これ以上はニトリの(トラウマ)的なナニカに触れそうで怖い。

 

「魔術...またオカルトの話か...。この目にして尚信じられんな。......『未知』、か。なるほど、これはあいつが動くのも頷ける。原理が全く分からん」

「ごめんちょっと話が見えない」

 

 

 曰く。彼の天災兎こと、篠ノ之束が亡国機業(ファントム・タスク)なる組織に加担したらしい。その理由が『魔術を駆使した新型ISの実戦投下によるデータ収集』、及び『〈トニトルス〉型の量産計画実現』の為なのだとか。そして束自身魔術に関しての知識があまり無く、尚且つ俺達が居なくなった後のこの世界で魔術を扱える人材が見つからなかったが為に、数打ちゃ当たる形式で手当り次第のデータ収集に勤しんでいるらしい。つい先日も一夏が襲われたとかなんとか。

 ...ごめんやっぱりちょっと意味が分からない。俺は悪くなくないか? 魔術等に関しては不可抗力だろう。全て束が勝手にやっていることだ。やはりさっきの拳骨は千冬の八つ当たりか。

 

「そこら辺割とどうでもいいけど、その束って今何処に居んの? ちょっと用事があるんだけど」

「分からん。前は連絡をつけることも出来たが、今では応答しようとしないからな。連絡を絶ったアイツを見つけ出せる奴はいないだろう。因みに篠ノ之。お前の方はどうだ?」

「私も織斑先生と同様です。一夏が襲われたという話を聞いてから連絡を試みたのですが、繋がりませんでした」

「ふむ...篠ノ之や私でもダメとなると、本気で奴を見つけ出せる奴はいないんじゃないか?」

「つまり手詰まりであると?」

 

 なにそれ面倒くさい。ちょっとその亡国機業とかいう奴ら潰して来ようかな...。あ、いや。そいつらの居場所が分からないのか。俺は機業の構成員に会った事が無いし、気配察知で見つけ出す事も出来ない。というか、この広い世界を虱潰しに探すとなると時間がかかりすぎる。素直に束だけを探した方が早そうだ。...まあその束の居場所にも検討は付いていないんですけどね。もし宇宙とかにいたら、今の俺では感知など不可能だ。深海も同様である。どちらも普通に気配察知の範囲外だ。...あっちから干渉してくるのを気長に待つのが一番早いのかもしれないな。

 

「...そうだな。1つ、束の奴が現れそうなイベントがある」

 

 息抜き感覚でもう1度IS学園の生徒でもやってみるかと思っていると、千冬からそう声がかかった。

 ...イベント...素材...修行...。うっ、頭が...っ!

 

「何故そんな悲痛な表情を浮かべているんだお前は」

「いや...ついこの前必死に花びらとか集めたなーって...」

「何を言っているんだ貴様」

 

 益々疑問を膨らませる千冬だが、こればっかりは理解できまい。ボックスは良い文明だが、周回は宜しく無い文明である。何が宜しく無いって、師匠らに闘技場まで拉致られてからの連日戦闘が宜しく無いのだ。『周回』と名付けられたスカサハ師匠発案のこの修行。兄貴ーズを始めとしたケルト戦士やベオウルフなどの戦闘狂、全然すまなくない舞い降りし最硬のすまないさん、無駄に本気を出してくる古代王ズ、ステラ祭り、終いにはボックスを回す為などと(のたま)い、目を血走らせながら特攻を仕掛けてくる藤丸一行という闇鍋じみたメンツで連日戦い続けようという、ただ単純にこちらを殺しに来ているだけ修行内容だった。何日だったかな、覚えているだけで10日くらいはほぼ不眠不休で戦い続けた。普通に死ねるよね。というかよく生き残れたよね俺。ネロ祭、恐ろしい子...!(錯乱)

 

 話が盛大に逸れたな。元に戻そう。

 

「んで? そのイベントってなんだよ」

「貴様の表情の原因が気になるが...まあいい。今日から約2週間後、IS学園の1年は修学旅行に行くことになっている。奴ら亡国機業は一夏、白式を狙っているようなのでな。学園を離れたそのタイミングを狙ってくることは十分考えられる。私も参加する以上、束が出張ってきてもなんら不思議ではないだろう。そこでだ、坂元凌太。貴様、一夏や他の専用機持ちの護衛として、修学旅行についてくる気は無いか?」

「そこは生徒としてじゃないんですかねぇ......」

 

 俺もまだ一応この学園の生徒って事になっているはずなんだが。ほら、学生証あるし。退学してないし。

 

 まあ俺の立場は兎に角だ。いつ来るかも分からない天災をただ待ち続けるよりも、出る可能性のある場所にこちらから赴く方が早いのは確かだろう。修学旅行に遭遇するのはこれで2回目だな、などと思いながら、俺は千冬の申し出を受けるのだった。

 

 

 * * * *

 

 

「それで凌太。そっちの2人は一体誰なのかな?」

 

 ひとまずはいい感じに話が纏まり、俺が椅子に腰を下ろした瞬間。今まで黙っていたシャルロットが口を開いた。その顔は表面上は笑みを浮かべているが、目は笑っていない......という事は無く、純粋に2人の事を疑問に思っている顔だった。そっちの2人とは、まあニトリとペストの事ですよね。

 

「ああ、皆にも紹介しとかないとな。こっちの褐色の方がニトリ、斑ロリの方がペストな。んで、こっちの制服着てる奴らが右から織斑一夏、篠ノ之箒、オルコット、鈴、ラウラ、シャルロット。こっちの体罰教師が織斑千冬だ。あっちの薄青髪の2人は簪と生徒会長...そういや生徒会長の方の名前は知らねぇや」

 

 と、テキトーに各自の名前を相互に紹介する。案の定ニトリとペストからは不満が上がったが、もう諦めた方がいいと思う。ニトクリスのニトリ呼びも、ペストは斑ロリだという風潮も、すでに身内では共通認識となっているのだ。まあ本気で嫌がるのならすぐにでも止めるが、両者共そこまで嫌がってはいないので、今後もこの呼び方は続くだろう。強く生きて下さい。

 

「ふむ...嫁の新たな嫁候補、という認識で大丈夫か?」

「ニトリ達はそういうのじゃないよ。というか嫁の嫁候補とは一体。やっぱ黒ウサギ隊の副官と1回OHANASHIした方がいいと思う」

 

 人目も憚らず、ナチュラルに俺の膝の上に腰を下ろしながらそう聞いてくるラウラに、俺は彼女の頭を撫でながら答える。若干のドヤ顔で撫でられてるラウラ可愛い。

 というか、静謐ちゃんが毎度本当に自然に膝に乗ってきたり抱きついたりしているから、こういった事が起きても動揺しなくなったよね。俺も、そして周りも。慣れって怖いね。

 

「仲が良いのは結構だが、私がお前らの担任であるうちは不順異性交遊など許さんからな......おいデュノア。何故あからさまに目を泳がせる?...まさか貴様...」

「ね、ねぇ凌太! 僕、魔術とかに興味あるなーって!」

「...坂元。説明」

「魔術より気とかの方が扱い易いかと」

「そっちではない」

 

 そうは言ってもだねチミぃ...俺だって思春期真っ盛りの男の子である。他人、しかも女性に対して真っ正面から、僕達がやりました、とは言えんだろう。その程度の羞恥心の持ち合わせくらいあるわ。

 

「でもまあ実際。魔術より気の方が分かり易いんじゃないかな。ほら、箒とかはそういうの分かるだろ? 座禅の時の精神統一。あれに似た感覚だよ」

 

 襲い来る千冬のアイアンクローを軽くいなしつつ、話題変換を試みる。というか一夏やその他の皆さんや、失笑してないで助けてはくれまいか。

 

「...まあ、それなら多少は分かるが...。しかし、アレはそんなオカルトチックなものではないぞ?」

「まあ、精神統一だけで強くなれるのは達人とかの域の連中だけだろう。でも、なにもそんな極地に立たなくてもいい。極地に至るのと気の扱いを覚えるのとは別物だからな」

 

 そうだな。どうせ暇なんだし、コイツらの魔改造(強化)をしてみるというのもいいかもしれない。それに、人に教える事で見えてくる何かがあるかもしれないしな。そうだそうしよう。

 

 思い立ったが吉日、という訳で、まだアイアンクローを諦めていなかった千冬にアリーナの使用許可を貰えるよう、俺は話を持ちかける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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