そして、しつこいようですが再度言っておきますね。
※この作品には作者の独自解釈、及び曲解が含まれています。
「グゥッ...! 貴様らぁあ!!」
叫びながら無数の魔力弾を連射してくるゲーティアだが、俺はその全てを避け、或いは弾いてゲーティアに接近。槍で脇腹を抉り、カウンターが来る前にバックステップで後退する。ゲーティアは傷をすぐに癒やすが、その一瞬の隙を突き、ロマンによる隠匿魔術によって気配を極限まで薄めていた金時とヘラクレスが背後に現れ、同じくロマンによる強化魔術により元から強力だった彼らの、より一層強烈な一撃がゲーティアの両肩を襲う。そして彼らもすぐに後退。バーサーカーとは思えない程の慎重な戦闘っぷりである。
ヒットアンドアウェイ。それが俺達の選んだ戦法であり、確実に敵へダメージを通すやり方だ。本来ならローリスク・ハイリターンであるこの戦法がいつまでも上手くいく程世の中甘くは無いのだが、今は時間さけ稼げればそれで良い。
だが、時間稼ぎに集中しすぎて攻撃の手を少しでも休めればゲーティアの宝具が飛んでくる事は必至だ。ロマン曰く、その宝具の威力は俺でも無事でいられるか分からないレベルらしい。俺の耐久を基準に考えるな、と言いたいが確かにバーサーカー連中よりは堅いな。まあ兎に角。ゲーティアに宝具を撃たせない為の波状攻撃。俺が小手先の攻撃を仕掛けて隙を作り、そして強化バーサーカーがダブルで殴るという作戦だ。どうしても出来てしまう攻撃の間はメディア・リリィの魔術で補っている。
そういう訳で再度ゲーティアへ肉薄しようとしていると、後方から声がかかった。
「退けマスター! 打ち込むぞ!」
それを聞き、俺は即座に突撃を中止し膝に掛かる負担を無視して全力で飛び退く。と同時、数十本にも及ぶ『偽・螺旋剣Ⅱ』がゲーティアに直撃し、大爆発を起こした。
...もう少し遅かったら俺も巻き込まれてたんじゃね? 危なかった...。
大火力の矢型爆発螺旋剣により大量の砂塵が舞う。
確かにエミヤの放ったほぼ全ての矢は直撃した。だが、その程度で
「エミヤ、武器は?」
「投影は完了している。念には念を、ということで全部で13本投影した。足りるか?」
「十分」
そう言って俺はエミヤから武器を受け取り、ギフトカードに収納する。流石に1度に13本は持てないからな。
「エミヤ、ロマン、あと藤丸。3人にやってもらいたい事がある。手短に言うぞ──」
ボソボソと声を
「小癪な。 この程度の攻撃が我々に効くと思っているのか?」
「フッ。私はそこまで楽な死線は
「エ...エミヤ先輩......それ、多分...フラ...グ...」
「マシュが目を覚ました!? でもちょっと黙ってようね!」
...何やらゴタゴタしているが、やる事はやって欲しい。あとマシュはお願いだから回復に努めて。
「I am the born or my sword...──『
巫山戯ているのかとも思ったエミヤだが、存外真面目にやるつもりの様だ。良かった、これ以上巫山戯るつもりだったら2、3発殴るところだった。
「フンッ!」
5本程の赤い軌道を記しながら飛翔する赤原猟犬は、ゲーティアの眉間を撃ち抜く寸前で防がれた。が、それは予想済みだったらしいエミヤは焦る事なく伝説級の武器を続々と投影して投げつける。
にしても容赦なく魔力を持っていくなぁ。
エミヤや下で魔神柱と戦ってる面子も然る事ながら、カルデアにいる道満への魔力供給が存外に多い。まあ、あっちに残っててまともに戦える英霊は道満とダ・ヴィンチちゃんくらいだからな。あとはイリヤやクロエといった子供組の一部も残ってはいるが、それでも魔神柱8体はキツイのだろう。ロマンがここにいるって事はダ・ヴィンチちゃんは管制室から離れられないだろうし。
まあ魔力回復薬はもう1本あるので大丈夫だろう、そんな事を考えながらラスト1本を呷る。
エミヤが刀剣を投擲している間、ロマンは自身の背後に無数の魔法陣を展開させる。その数はゆうに百を超え、その属性、及び体系もそれぞれ異なるものばかりだ。さすが魔術の祖と言われているだけはある。こと魔術に関して、俺程度では足元にも及ばない。
だが、相手はソロモン王の作り上げた魔術式。当然の如く、ロマンが使用する魔術はほぼ全てゲーティアも扱えるらしい。威力も全く同じというのは若干驚きもしたが、それでも想定外という訳では無い。それにエミヤやメディア・リリィも同時に攻撃しているので、純粋に手数で勝っているのだ。
段々と全ての攻撃を処理しきれなくなってきたゲーティアは、自身にダメージを与える可能性のある攻撃だけを防ぐようになる。結果、ゲーティアの周りには狙いの
......そろそろか。
「...随分と大人しいな、坂元凌太。貴様なら真っ先に仕掛けてきそうなものだったが」
攻撃を防ぎながら、ゲーティアは意外そうに呟く。無理もない。敵どころか
それに、別に俺は大人しくしてはいない。奴もじき理解するだろう。俺の勝利への貪欲さ、有り体に言って卑怯さを。勝てば良いのだ。
──もう十分だろう。時は来た。
「ガンドッ!」
突如放たれるガンド。動作主は勿論藤丸である。俺、
「くっ、小癪な...ッ」
ガンドは見事ゲーティアに命中し、身動きを取れなくする。さすが、神をも止めるカルデア技術開発部の魔術礼装。神性溢れるコアトルですら止めたガンドは、ゲーティアも例外無く
数秒もすれば解除されるかもしれないが、その数秒があれば十分だ。
先程藤丸達に言い渡した作戦...と呼べる程高尚なものではないが、兎に角彼女らに伝えた内容はこうである。
『倒すのでは無く目隠しを目的として、威力より数を重視した攻撃をし続けろ。砂埃で視界が悪くなってきたらガンドでゲーティアの動きを一瞬でいいから止めろ。後は俺が殺る』
実にシンプル。シンプル・イズ・ベストとは正にこの事だ。...違うか。まあいい。
兎に角、ここからは俺の仕事だ。準備は全て皆が整えてくれた。後は俺が決めるだけである。
ゲーティアとは、自立し、自らの意思を持った魔術式である。この事実は他でもない、ロマンとゲーティア本人から確認したものだ。間違いは無い。というか間違いがあったら困る。
72柱の魔神の集合体にして、“人間の不完全性”を克服しようとしている呪い。その根源は、生前のソロモンが彼の魔術で生み出した従属型魔術生命体に他ならない。であれば──
─── 別に、その一切を原初に還しても良いのだろう?
「『
「「「「なっ!?」」」」
気配遮断をフル活用し、砂塵に紛れてゲーティアの背後に接近。からの一撃必殺である。ゲーティアは目を剥き、味方布陣からも驚嘆の声が上がる。
「貴様ッ、何故そこにいる!?」
ゲーティアが叫ぶ。その疑問も最もだろう。何故なら、俺の姿は未だ尚ロマンの隣にあるのだから。
...まあネタバラしをするのなら、俺の魔力残滓をロマンが固定化、俺と殆ど同じ気配を纏った像を造り出していたのである。ロマンマジ優秀。その間に俺はロマンとエミヤ以外にバレない様に気配遮断を使って身を隠し隙を伺う。敵を騙すならばまず味方からとも言うし、そういう駆け引き的なものに慣れていない藤丸の目線でバレない様、彼女には黙っていたのだ。
『破戒すべき全ての符』に至ってはロマンにも伝えていなかったので、多少の驚きもあるだろう。自分の自殺覚悟の一撃と同格の無力化だからな、是非もないよね。
「ぐっ...ッ! 舐めるなぁ!!」
だが、いくら俺の気配遮断のランクが最近上がったとは言え、攻撃する瞬間は感知されてしまう。その一瞬は常人なら気付かぬ間、達人の域に居る者でなんとか反応出来るレベルだが、ゲーティアはその達人の域に居たらしい。一瞬で幾重にも魔術防壁を構築し、『破戒すべき全ての符』の刃を防いだのだ。
完全に初撃が防がれた。それには多少驚いたが...備えあれば憂い無し。エミヤの仕事に感謝しなければ。
「
すぐに2本目を取り出し、残りの防壁を最初の1本で破壊しながらゲーティア本体を2本目で狙い撃つ。ルルブレ二刀流とは、魔術師にとって悪夢以外の何物でもないのではなかろうか。斯く言う俺も権能が防がれるので戦力は格段に下がる。宝具はルルブレの効果範囲外らしいが、ゲーティアは宝具ではなく、今は少し異質なだけの魔術式である。要するにルルブレは天敵なのだ。
「莫迦な......莫迦な莫迦な莫迦な莫迦な莫迦なァッッ!!!」
迫り来る『破戒すべき全ての符』を、ゲーティアは為す術もなく見つめ、叫ぶだけである。だが、俺の手元は狂わない。全力で、その曲がった刀身をゲーティアの心臓部へと奥深く抉り突く。慈悲など掛けぬよ。
「ガブッ......。...巫山戯るな...巫山戯るなよ...ッ......この、この程度で...我々3000年の悲願を...終わりの無い、滅びの無い理想の星を...ッ! こんな所でぇええ!!!」
「残念無念ってか。だが死ね」
「ガッ...!」
念には念を。こういうものは念を入れ過ぎても困る事はない。
という訳で更にもう1本、『破戒すべき全ての符』を胸部に突き刺す。それでは終わらない。合計で13本もあるのだから、この程度で終わらせる訳が無い。オーバーキル? それがどうした。殺して
「......うわぁ...」
藤丸の口から漏れる同情の様な息が聞こえる。悲しい哉、もう既に聞き慣れてしまった。...でもこれだけは言っとくけど、俺の現性格形成の元凶の1つは貴女が契約している某女王様ですからね?
「......まだだ...」
「あん?」
刺されながらゲーティアが呟く。
というかタフすぎるだろ、こいつ。現在進行形で体が分解されてる筈なんだが...。
「まだだ、まだ終わっていない! 最後のその瞬間まで宝具を回せば良い、貴様らを始末してから再度この体を構築すれば良いだけだ! 死ね人間、死ねソロモン! 我々は魔神王ゲーティア、新世界の神である!」
こいつ一体どこのキラだろう。などと一瞬思ったが、口にしたら場の雰囲気が崩れそうなので黙ってルールブレイカーを突き刺す。俺だって空気くらい読む時は読むのだ。まあ読んだ上でぶち壊すことも多々あるのだが。
「ッ! 凌太君、今すぐ離れるんだ! 宝具が来るぞ!」
「マジでか! でもそっち行って俺、というか俺達助かるのか!?」
「あっ」
「さてはテメェ何も考えてねぇな!?」
だがまあ、ロマンの言う事も確かだ。対人理宝具なんてものを食らって生きていられる自信はあまり無い。それに、仮に俺が無事でも他が死ぬだろう。
まだルルブレが数本手元に残っているが、宝具相手では分が悪い。さっさと下がろう。...下がったところでどうするか、という問題は残るのだが。エミヤの『
...ま、まあ大丈夫だろ、俺だし(意味不明)
あとは俺の全力『
「...私が防ぎます」
「マシュ!!」
若干の焦りを抱いていた俺の耳に届いたのは、盾を杖替わりにして立ち上がったマシュと焦った藤丸の声。声こそ出していないものの、ロマンも驚いているようだった。まあさっき運命がどうちゃらとか言ってたしなぁ。
「...まあ、マシュに防げなかったらここにいる誰も防げないだろうしな。任せた。俺達でバックアップする。ロマン、それでいいよな?」
「え?あ、ああ、うん。問題無い...ことは無い、かな。確かにマシュの宝具の特性上、心が折れない限りその守りは崩れない。けどそれは『盾』だけであって、マシュ本人が耐えきれるかどうかは別問題。今のマシュなら尚更だよ」
「それは...」
ふむ、実際どうなんだろうか。俺はゲーティアの宝具の威力を知らない。『約束された勝利の剣』の数百倍の威力、だったか。うん、正攻法じゃまず無理だわ。
「フン、無駄話は済んだか? であれば死ぬがいい、カルデアマスター、英霊、坂元凌太、そして愚王ソロモン! 第三宝具展開、誕生の時来たれり、其は全てを修めるもの。──塵と消えろ、『アルス・アルマデル・サロモニス』ッ!!」
こっちでごたついている間に、ゲーティアが宝具を発動させた。初めて見る、人類史全てを収縮したという大魔力の砲撃。
うーん...アレ、防げる? まあやるしかないんだけど。
「下がってください、皆さん。宝具、展開します!──『
爺さんとの戦いで見せた『振り翳せり天雷の咆哮』の十数倍はあろうかという程の魔力砲と、マシュの展開した白亜の城がせめぎ合う。今の所拮抗しているようだが...やはりロマンの言う通り、マシュの体が持ちそうにない。マシュの肌が、所々耐えきれずに裂けてきているのが見て取れた。
「ロマンとメディア・リリィは全力でマシュに防御バフかけろ! エミヤはアイアスでマシュにかかる衝撃緩和! 藤丸は全令呪使ってマシュに魔力を回せ!」
言って、俺もマシュを覆うように耐衝撃用障壁を張りつつ魔力を渡す。マシュのスキル『魔力防御』は、彼女が保有している魔力に比例して防御力を高めるスキルだ。令呪三画分の魔力と俺の魔力が合わさればそれなりの量になるはずである。
出来うる限りの抵抗は見せなければ。こんな所で死ぬとか本当に冗談じゃない。
「大将! 俺達はどうする!?」
「金時とヘラクレスは...えっと...マシュが飛ばされないように支えるとかしてて!」
「おう!」
「■■■!!」
防衛に関しては、正直に言って邪魔でしかないバーサーカー連中も役に立とうと奮闘している。
だが、それでも足りない。人類史全てを束ねた熱量は着々とマシュの体を襲い、壊す。彼女の意地なのかどうかは知らないが、宝具の余波は俺達まで届かない。『自陣防御』の効果はマシュ自身には反映されないのだと、いつか藤丸が言っていた。
「くっ...やはりダメか...!」
「諦めないでロマン! まだ...まだ何か人類を...いや、マシュを守る方法は無いの!?」
勝手に諦めムードに入ったロマンと、彼に懇願する藤丸を横目で見ながらマシュへと注ぐ魔力を更に練る。
一応はゲーティアの分解は現在進行形で進んでいるようで、下の英霊達の宝具使用が止まった。恐らく魔神柱らが消滅、或いは再起不能となっているのだろう。今までそちらに回していた分の魔力もマシュへと送るが......まだ足りないのか。
......クソッ。こうなったら、未完成だし、9割以上の確率で暴走して俺の五体が爆散するかもしれないが、一か八か例の恩恵を──
「『
「フェ!? な、なんだぁ!?」
集中しており、ゲーティアの攻撃を防ぎきること以外の思考を一切放棄していた俺の耳に、新たな声が聞こえてきた。そして何故か吐血する音も聞こえた。何だ何だ、沖田さん大勝利案件か? 思わず変な声が出たじゃないか、恥ずかしい。
『しっかりしろヴァーリ!』
「くっ...、たった1度の半減で俺のキャパシティを超えるか...。強い力を感じでここまで来たが、まさか翼からの排出すら間に合わないとはな......ハハッ、なんて破壊力だ...!」
振り返るとそこには血反吐を吐きながらもゲーティアの宝具威力に心を踊らせて口角を上げている
それにしても、ヴァーリは倒れたがその代償にゲーティアの宝具威力を文字通り半減した。この功績は大きい。これなら今の超強化済マシュなら難無く防げる。問題は宝具を連発された場合だが...もう2度と撃たせねぇ。
「はぁっ!ハア...ハァ...ハァ...」
宝具を全て防ぎきったマシュは、盾を地面に突き刺してそれを支えにかろうじて立つ。無事...とは言えないが、全員生きてはいる。
「ふん、防いだか。だが無駄だ。 光帯は尽きぬ。手負いの貴様らに何度防げるか...見物だな。第三宝具展開!」
「うっさい。黙ってくたばれ、死に損ないの魔術風情が!」
宝具再補填までにかかる僅かなクールタイム。そこを狙って全力で地面を蹴りゲーティアに接近する。
『破戒すべき全ての符』はもういいだろう。外見は繕っているようだが、ゲーティアの内面は既に9割方崩壊している。これ以上しても効果はあまり望めない。ならば正面から捻り潰す方が早いというものだ。早急に無慈悲にぶっ潰す。
俺はギフトカードから2振りの剣を取り出す。片方はダインスレイブ、もう片方はディルヴィング。両方ともジークフリート(子孫)を倒した際に戦利品として頂戴したものだ。戦闘後、ジークフリートが所持していた剣が全て、何故か俺を主と認めたのだから仕方がない。貰えるものは貰うぞ。何気に強いしな。単なる攻撃力だけを見るのなら、相手が神、ないし神性持ちじゃない場合は『天屠る光芒の槍』よりこっちの魔剣の方が高かったりする。伊達に伝説の魔剣とは呼ばれていない。まけんつおい。
え? スカサハ師匠との修行ばかりで、剣の扱いは出来ないんじゃないかって? ......あの修行オバケが槍の扱いしか指導しないとでも? 魔境の智慧は剣術にも通じていたのですよ。勿論弓術も、馬術も、魔術ですらも教え込まれた。...いや、教え込まれたというより出来なきゃ死んでたから止む無く習得した、といった方が適切かな。まあ1番得意な武器は? と聞かれれば槍と答えるのだが。
兎に角。大抵の戦闘技術は身に付いている。なんなら
「ダインスレイブ」
「これは...氷か!!」
名を囁きながら左手でダインスレイブを振り上げる。
すると、ゲーティアの足元から数十本の氷柱がゲーティアを狙うように生えてきた。これがダインスレイブの能力だ。まけんつおい。
「効かぬわ!!」
ゲーティアは腕を振るい襲いかかる氷を薙ぎ払う。が、別に氷のみで倒せるなどとは微塵も思ってはいない。
目的は氷柱で動きを多少制限し、続く大振りの準備を整えることだ。
「ディルヴィング!」
「ゴッ...!」
残っていた魔力を付け焼刃程度だが筋力増強に回し、全力でゲーティアへと振り下ろす。
ディルヴィングの能力はその破壊力の高さだ。人は選ぶが、その選んだ人物が一般人であれ、一撃でコンクリにクレーターを作れる程の破壊力を持っている。要するにまけんつおい。
このまま頭蓋を潰すか。さすがに頭が潰れれば死ぬだろう。死ななかったら...その時考えるか。
ゲーティアの体は着実に崩壊しつつある。段々と崩壊してきているこの神殿と比例していると考えて良さそうだ。...というか、もう玉座付近以外はほぼ崩れてきているな。モタモタしてたら俺達まで帰れなくなりそうだ。急ごう。
「フンッ!」
剣を持つ両腕に力を入れて、上段の姿勢からゲーティア目掛けて振り下ろす。ディルヴィングは綺麗な軌道を描いてゲーティアの眉間にクリーンヒット。声も上げられずにゲーティアの体が1度跳ねる。
そして再度剣を振り上げ、全力で降ろす。それを5,6回繰り返した辺りでゲーティアは釘の様に首から上だけを残して地面に埋まってしまっていた。唯一見て取れる顔面もギリギリ輪郭を残してはいるが、原形は留めていない。...ちょっとやり過ぎた感が無くもないな。ラスボスの扱いじゃねぇぞコレ。
「......ははっ。やるな、人間。...いや、坂元凌太。見事だった」
「なに爽やかに負けました感出してんのお前? 首だけ出してる状態でその台詞言ってもシュールなだけだぞ」
「フッ。確かにな」
...何だろうコイツ。いきなり親しみやすそうな声と表情を浮かべだしたんだが。いや、顔は俺が輪郭変えちゃったからそう見えるだけかもしれないけど。
「そうだな。本来はマシュ・キリエライトに聞く予定だったのだが...貴様に聞くことにしよう。坂元凌太よ、お前は今の世界をどう思う? 生まれながらに死を確定されている、この世界のシステムを」
「知ったこっちゃないな。俺は死ぬのは嫌だし、仲間だって死なせたくないが...無限の生が必ず幸せだ、とも言えないと思う。というかだな。20年も生きていないガキにそんな事聞くなや。分かるわけねぇだろ」
「...確かに、そうかもしれないな。だが、お前は生きる事に必死なのだろう。それが分かっただけでも収穫なのかも知れん。私も、少しだけ『生きる』という事に興味が湧いてきたよ」
......正直に言っていい? 何言ってんだコイツ。さっきまで「人類とかまじいっぺん死んで来い。私が新たな神だ!」みたいなこと言ってた奴の台詞じゃねぇよ。
「貴様のいる世界...我々でも見通す事が出来なかった世界...確か、お前は『箱庭』と呼んでいたか。そこに行けば、私も生きられるのかもしれないな」
「おいやめろフラグを建てるな! そういうの全部爺さんが回収する恐れがあるんだぞ!」
「ほう? それはいい事を聞いた。私も生きてみたくなったんだ。そう、『無限』でなく『有限』の生を謳歌する為にな」
既に消えかかっていたゲーティアは、最後に少しだけ笑って光の粒子となった。...なんかしんみりした空気を作っていったけど本当にやめて欲しい。爺さんは今ギフトゲーム中らしいので多分聞いてはいないだろうが、それでも少しでもゲーティア復活とかいう可能性を残しては欲しくなかった。だってもう1度戦うとか面倒だもの。ルルブレ対策とか絶対してくるだろ。
「凌太くーん! 早くしないと戻れなくなっちゃうから! っていうかもう若干手遅れ感ある!」
背後で藤丸がそう叫ぶ。この神殿からのレイシフトは何かしらの理由があって1箇所からしか出来ないとかで、最初ここに来た場所まで戻らなくてはならない。その為に藤丸達は俺がゲーティアを埋めたと同時に帰る準備をしていたのだが...。
というか手遅れ感ってなんだ? ちょっと言ってる意味が分からないですね。
「走ればまだ間に合う...だ...ろ......うーん、手遅れ感ハンパねぇ」
「でしょ? 割と本気でピンチだよね。一周回って落ち着いちゃってるんだけどさ」
「お前のメンタル強過ぎるだろ」
呑気にそんな事を話だながら、俺達が帰るべき方向を眺める。......うん、もう道すら無いよね。瓦礫だけは所々浮遊しているが、あれを経由しても戻れるかどうかは分からない。というかこっちにはマシュとヴァーリという怪我人2人に身体能力は一般人の藤丸がいる。結構手詰まりだなぁ...。せめてあと1人、俺以外に空を飛べる奴が居れば全員運んでいけるかもしれないのだが...。
「...よし。いっちょ賭けに出よう。まず俺が藤丸をレイシフト出来る位置まで投げる。次にマシュ、ヴァーリ。最終的には全員俺が投げるんだ。上手くいく確証は無いけど」
「却下」
「ですよねー。ヴァーリ、グレモリー眷属で誰かこっちに来ねぇの? 悪魔なら飛べるだろ?」
「いや、魔神柱が倒れた時点でレオナルド・ダ・ヴィンチから帰還命令が下っていてな。俺は無視して来たが、他の連中は素直に帰っているだろう」
「まじかー...。因みにヴァーリ、お前今飛べる?」
「......正直に言って無理だな。体の中がぐちゃぐちゃになっていて、立っているのが精一杯だ。ははっ、世界は広いな。あんな強者がいるのなら、グレートレッドを倒し、白龍神皇の座に着いてから『箱庭』とやらに行くのも良いかもしれない。心が踊る...!」
「血を吐きながら言うな。普通に怖いから」
しかし困った。ヴァーリが飛べないとなると、俺が全員分運ばないといけないのだろうか?『トニトルス』に乗せられるのは2人なんだが...無理すればいけるか?
「あのっ、私は自分で飛べますので」
俺が思案していると、横からメディア・リリィのそんな申し出があった。なんとありがたい。でもこの子軽いし、正直そんなに変わらないかな...。
「僕もだ。一応、神代の魔術師として名を残している身だしね。でも今は魔力がちょっと足りない。1人なら運べるけれど...メディア・リリィは?」
「すみません...私は自分1人しか...」
「いや、気にすんな。自分で飛べるだけありがたい」
メディア・リリィに続きロマンも口を開いた。3人減るならいけるか? ギリギリな事に変わりはないけど...無茶すればなんとかってところか。
「よっし...じゃあロマン達は先に行っておいてくれ。俺は速度があんまり出せないだろうからな」
「はいっ!」
「分かった。じゃあ立香ちゃん...それからフォウもおいで」
「えっ、ちょっと待って。なんで藤丸」
言い切る前に、ロマンは藤丸を抱き抱えて飛翔していく。...野郎、比較的軽い奴連れていきやがって...ッ! ヘラクレスとか金時とか連れて行けよな!
「...仕方ない。ホラ乗った乗った。狭いのは我慢しろよ。あ、金時はヴァーリを、ヘラクレスはマシュを持っててくれ。2人とも怪我してるし、何より場所が無いからな。誰かの上に乗せるしかない。エミヤは...俺が持つか」
『トニトルス』を展開しながら全員にそう伝える。
俺含め6人が乗ったトニトルスは心無しか悲鳴を上げている様にも感じた。...頑張れ。俺も頑張るから。
「乗ったな? んじゃ行くか。...ねぇ飛ばないんだけど」
「確実に重量オーバーだな。だが、このISの構造上、注ぎ込む魔力量次第では飛べるはずだ。頑張れマスター」
「てんめ...他人事みたいに...っ。フンヌッ!!」
カラに近かった魔力を無理やり捻り出し、トニトルスに注ぎ込む。すると、どうにかこうにか浮く事は出来た。浮ければこちらのものである。ゆっくりではあるが、俺は平行移動を開始した。本当にゆっくりながらも、着実に前へと進む。この調子ならなんとかなりそうだ。良かった。さあ、気を抜かずに最後まで行こうか。
......あっ、今体内とISの両方から、何かが切れる様な聞こえちゃいけない音がしたんだがっ!?
一応、今の主人公のステータスです。()内は封印無しのものになります。
【坂元 凌太】
性別:男
年齢:15
ステータス:筋力 D(B+)/敏捷 B(A++)/耐久 C(A)/魔力 B(A+++)/幸運 B
スキル:直感 B+/魔力放出 A/対魔力 EX/気配遮断 A/騎乗 B/気配察知 C/カリスマ C+/頑健 EX/原初のルーン E/戦闘続行 B
とまあ、fate仕様で記述するとこんな感じですね。うーん、チート臭くなってきたぞぅ(今更感)