問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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やり過ぎた感は多いにありますが、何か? (開き直り)


フライト

 

 

 

 

 

 

 

 

「──来たね。遂に、この時が」

 

 館内の案内放送にて管制室に呼び出された俺達に、ロマンが神妙にそう告げる。いつも首に手を当て、不安そうにしていた瞳は決意に満ちており、真っ直ぐに俺達を見据えていた。どこか覚悟を決めたようにも見えるロマンは、尚も言葉を続ける。

 

「これより最終オーダーを発令する。行先は魔術王の居城。僕等はこれを『冠位時空神殿』と仮称する事とした。敵は魔術王・ソロモン。人理を焼却した張本人、倒すべきラスボスと言ったところかな」

 

 一言一言にヤケに力を込めて言葉を紡ぐロマンを、藤丸は不安そうな顔で見つめていた。これじゃあいつもと立場が逆だね、と苦笑気味に呟いたダ・ヴィンチちゃんの言葉を拾い、俺もそれに同意する。

 

「...立香ちゃん。キミは今までとてもよくやってくれたね。一般枠だったキミが、急に人類救済の鍵だと、最後の希望だと周りから言われて困惑していた事は良く覚えている。でもキミは投げ出さず、そして諦めることもなく、七つの特異点やその他の突発的に発生した特異点の修復を──」

「そういうのいいから」

 

 何やら語りだしたロマンを、俺はいつもの調子でバッサリと切る。決戦前のそういう感傷に浸る雰囲気って余り好きじゃないんだよ、俺。フラグになりそうだし。

 

「...最後くらいもうちょっとシリアスをさぁ...」

「別にこれを最後にする気なんて毛頭ないし。ここにいる全員、俺が認めた奴らなんだ。死なせる訳がないだろ? だから、そういうのは全部終わってから、祝勝会のスピーチにでも取っておけよ」

 

 最後の方は少し笑みを浮かべながら、努めて不敵に言い放つ。不安など微塵もない、という態度で言えば多少なりとも兵士の士気は高まるだろう。それに、誰も死なせる気が無いというのは紛れもない本心である。だから死にかけるような修行をしてまで力を付けているのだ。まあもちろん、俺1人では手の回らない事も確かにあるのだし、その分は各個人に頑張ってもらうしかないが。というか英霊の皆さんに至っては逆に俺が助けて欲しいくらいなのだが、それは言わぬが花だろう。きっと。多分。

 

「ふっふっふ。流石は余の奏者である。実にクサイ台詞ではないか。まさにローマ!」

「ローマとは一体...(哲学)」

 

 いつもの訳の分からないドヤ顔を披露するネロを見て、どこか暗い表情だった者も不意に笑みを浮かべる。これでいい。気負ったって何にもならないし、ミスしか生まないのだ。まあ俺の偏見的意見ではあるがな。

 

「ははっ......ふぅ。そうだね、これが最後なんかじゃない。この戦いに勝利して世界を元通りにした後に、思う存分、カルデアの英雄譚に花を咲かせようか!」

 

 

 * * * *

 

 

 あれから数分後。

 今まさに、人理継続保障機関カルデアにおいて事実上過去最大規模のレイシフトが行われていた。問題はイッセー達にレイシフトをする適正があるかどうかだった訳だが、全員問題無くレイシフトできるらしい。

 

 

 マスターは俺を含め2名。

 それに対し、英霊(サーヴァント)数は70を超えている。本来有り得るはずのない数字ではあるが、爺さんが送ってきた魔力が、その不可能を可能としているのだ。

 そして俺が呼んだ異世界組が十数名。敵が魔術王1人だけだというのならば、これは明らかなる戦力過多。しかし、世の中そんなに甘くは無いだろう。きっと魔神柱が沢山出てくるか、もしくは魔術王の仲間が複数名いるに違いないのだ。良くも悪くも、バランスを取ってくるのが世界の摂理というものである。是非もないよネ。

 

 

 

 レイシフトを終えた俺を待っていた景色は、決して良いとは言えないものだった。景色もそうだが、この空間に蔓延している気配もいけない。確か(ビースト)だったっけか、あの人類悪(ティアマト)のクラス名は。それと同じ気配がこの世界を支配している感覚だ。それに、微小ではあるが身に覚えのある気配も感じる。

 

「よっ、と」

 

 周りに気を配っていると、藤丸とマシュも無事にレイシフトしてきた。現在レイシフトが完了しているのは全体の半数程度。流石に一気に出来るような事ではないらしい。

 

『気を付けてね、皆。もう気付いてるかもしれないけど、そっちには災害の獣の反応で埋め尽くされている』

 

 立体映像が浮かび上がり、そこからダ・ヴィンチちゃんの声が聞こえた。今回の案内はロマンじゃないのだろうか? まあいてもいなくてもあんまり変わりはないけど。

 もしかしてティアマトみたいなのが出てくるんじゃなかろうな、と多少警戒の色を濃くしていると、何処からか乾いた拍手が聞こえてくる。気配は...ダメだな。さっきから探ってはいるのだが、如何せん魔力濃度が高すぎて上手く察知できない。メソポタミアを軽く越えてるだろこれ。まあ魔力濃度が高いというのはデメリットばかりでは無いし、気配察知の方もすぐに慣れるとは思うが...。

 

「ようこそ、カルデアの諸君。災害の獣の反応を感知するとは、随分と鼻が利くようにィ!?」

「ちっ」

 

 気配の位置を完全に把握することは出来ずとも、ある程度の場所は検討がつくし、何より音は普通に聞こえる。音源は特定出来るということだ。なのでそこに雷砲を放ってみたのだが...少し狙いが甘かったようで、紙一重で避けられてしまった。五感の鋭さには意外と自信があったんだがなぁ。

 だが、今ので音だけではなくその姿を目視で確認することが出来た。

 岩陰から転がる様に出てきた人物はどこかで見覚えのあるような緑のワカメ。どこだったっけな...。まあ、この場で出てくるって事は敵確定でいいだろう。

 

「...あ、相変わらずだな坂元りょぅ」

「てい」

 

 気配遮断を使ってワカメの背後から接近、そして雷を纏った拳で一突き。はい終了。ワカメの上半身が吹き飛んだ。

 

「...ねぇ、マシュ? 今のレフ教授じゃなかった?」

「私は何も見ていません。見ていません」

「あっはい」

 

 藤丸とマシュの会話を筆頭に、味方側が少し騒がしくなる。やれ情け容赦もないだとか、やれ鬼畜すぎるだとか...。敵に温情をかけるのは三流だと、僕は思うんです。

 

「───ギ」

「あん?」

 

 今しがた、完全に命を刈り取ったワカメから声らしき音がした。...発声器官も何も無いのにどうやって声を出してんだ? こわっ。

 

「ギ、ギギギ、ギャハハハハハハッ! 無駄だ、何もかも、お前の行動は無駄に終わる! ハハハ、ハハハハハハハハハグゥッ!」

 

 再生したらしいワカメ...思い出した。こいつ、俺がローマで殺ったカルデアの裏切り者か。

 まあ誰でも構わないが、再び立ち上がったソイツをもう一度殺す。次は先程より電圧を上げて骨ごと灰に変える。表情1つ変えずレフ・ライノールを再度殺す俺にまたもや味方からのひそひそ声が聞こえたが、復活したからといって一々驚いていられるかっての。

 そういや、気付けばレイシフトは全員無事に終えたようだ。因みに、俺は今回道満以外の全員を連れてきている。道満はスキルの性質上、短期決戦では足を引っ張るだけだからな。

 

「無駄だ無駄だ無駄だ無駄だ!」

「っ! これは...驚くべき事ですが、再生でも復元でもありません。今、新しいレフ・ライノールが誕生しました!」

 

 マシュが驚愕に目を見開くと同時、カルデアとの通信にノイズが走る。

 

『うわぁっ!? な、なんだ今の衝撃は!? 何が起こってる!?』

『が、外部からの攻撃です! っ! 北部観測室、反応ロスト!天文台ドームに過度の圧力を確認しました!』

『なっ...!? 電力を全てこの管制室と各要所に回すんだ! ここが落とされたらカルデアそのものが終わる!』

『第二攻撃理論の正体が判明しました! 魔神柱です! カルデアの外に1、2、3...計8柱の魔神柱の反応を確認!』

『8!? くっ...、レオナルド! キミが隠し持ってる資源(ソース)でどうにかならないか!?』

『無理だ。私が直接出るという手もあるが、良くて1柱と心中だろうね。残っている英霊で戦える者は少ない。万事休すってやつか』

 

 何やら慌ただしいと思ったら、カルデア本拠地が攻撃されているらしい。敵戦力は魔神柱8柱。かなり厄介な出来事だが...まあ、カルデア付近が戦場になるのならば、そこまでの心配は必要ないだろう。

 

『っ! カルデア外部の魔神柱、2柱の消失を確認しました!』

『何だって!? い、一体誰が...』

『霊基の照合終了、外で魔神柱と戦っているのは...道摩法師、芦屋道満です!』

『道満君っ!? え、いやでも彼にはスキルが...』

「アイツ召喚してから何ヶ月経ったと思ってんの。とっくに陣地作成は終わってるって」

『いつの間に! というか彼、そんなに強かったのかい!? い、いや、でも助かった。レオナルド、他に戦えるサーヴァントも早急に向かわせてくれ!』

 

 道満の数少ない活躍を耳にしつつ、俺は再三レフを殺す。が、奴は何度でも蘇って、否、新しく生まれてきた。不死身って訳じゃないみたいだが...厄介だな。そして更に悪い事に、エジプトで対峙した事のある気配──ここに来て微小に感じ取れていた魔神柱の気配が、先程と比べてより一層濃ゆくなってきている。これは本格的に魔神柱全部を相手取らなければならないかもしれない。...いや、8柱はカルデアにいるから、残り64柱か。まあどちらでも厄介極まりない事に変わりはない。それに何より時間が惜しい。...仕方ないか。

 

「アーラシュ」

「ん? なんだ凌太、手を貸すか?」

 

 俺が呼ぶと、今どき珍しい弓を使う弓兵、アーラシュが英霊の群れの中からひょこっと顔を出した。

 ...今更だが、英霊の群れってなんだそれ。圧巻を通り越して呆れるレベルである。

 

「この特異点の中央辺りに玉座っぽいのが見えるだろ?」

「ああ。あの白いやつだな」

「そうそれ。でさ──あそこまで藤丸達を飛ばせる?」

「ちょっ、凌太君!?」

「正気ですか!?」

 

 藤丸とマシュ、そしてベティ、邪ンヌ、ノッブ、呪腕が顔を青く染めるが気にしない。

 

「そうだな...。定員5人ならいける。ただ、敵に邪魔されない弓矢作成の時間が欲しいな。この距離だと結構大きめに作りたいから...2分くらいか」

「オーケー、任せろ」

「私達がOKじゃないんだけど!? 全然これっぽっちも大丈夫じゃないんですけど!? ねぇ聞いてる!? アーラシュフライトはイヤーー!!!」

 

 必死に抗議する藤丸達だがそんなの知ったこっちゃない。別に俺がISを使って運んでやってもいいが、それでは定員的に藤丸とマシュしか連れていけない。だから却下。一番手軽な方法があるのだから、それを使うに越したことは無い。

 

「藤丸、どうでもいいけど連れていくメンバーは決めとけよ」

「うぅ......。じゃあマシュと...」

 

 半泣きだが、流石に潜ってきた修羅場が修羅場。藤丸は切り替えてメンバー選考に入った。こいつのメンタルもまあまあ逸般人だよな。

 

「貴様らなんぞをあの玉座に近付ける訳にはいかない。ここで死んでゆけ、カルデアァ!」

 

 既に8回は殺されたレフがそう叫び、その体をうねうねと人型から柱状へと変形させていく。有り体に言って、その過程は非常に気持ち悪かった。

 

「我が名はフラウロス! 魔神柱72柱、情報局フラウr」

「『雷砲(ブラスト)』」

「「「「「うわぁ.........」」」」」

 

 名乗りを上げようとしていたレフ改めフラウロスを殺ると、俺の後ろで哀れみの声が零れた。だったら聞くけどお前ら、敵の口上を聞くメリットを教えろ。

 

「きっ、貴っ様ァアアア!!先程から甘んじて攻撃を受けていれば、調子に乗りおってからにッ!」

「甘んじて攻撃を受けてる時点でどうなんだよお前」

 

 そんな油断や慢心をしているから雷砲程度で死ぬんだ。アモン・ラーを名乗った魔神柱はもっと手強かったのに。

 

「もういい。全力を以て貴様らを排除する! 顕れよ、顕れよ、我が同胞! 我ら魔神柱の恐怖を刻みつけよッ!」

「おおう...。まあ予想通りの展開ではあるが...実際目にすると気持ち悪いな、これ」

 

 フラウロスの呼び掛けに呼応するように大地が震え、至る所から魔神柱が生えてくるという光景は異常としかいいようがない。魔神柱のバーゲンセールとはこの事か。

 と、ここでアーラシュから声がかかる。

 

「凌太ッ! 弓と土台の準備は出来たが、アイツらが邪魔で玉座を狙えない!」

「じゃ、じゃあアーラシュフライトは中止の方向で...」

「よし分かった。アイツら吹き飛ばそう」

「知ってたッ! どうせ無駄だって知ってたけど、一縷の希望を掛けて提案しただけだもんっ!」

「な、泣いてるんですか? しっかりしてください先輩。大丈夫ですよ? このマシュ・キリエライト、必ずや先輩を無事に着地させますから。ね?」

 

 そんなに嫌なのか、アーラシュフライト。楽しそうなんだけどなぁ、アレ。

 まあとにかくだ。今はとりあえず玉座までの道を切り開く事に専念しよう。

 ここから玉座までの間に立ち塞がる魔神柱はフラウロスを含め15柱程。少し多いな。元聖剣を使っても全部は無理か...?

 

「凌太。パワーが必要なら俺も手伝うぜ! 俺だってあれから強くなってるんだからな! な、ドライグ」

『ああ。相棒は強くなったぞ。そこは自信を持って言える』

 

 火力的な心配をしていると、イッセーがそう声を上げた。確かに『赤龍帝の篭手』の倍加能力を用いた一撃の破壊力は計り知れない。イッセーの器次第で何処までも強くなれるのだから。...俺の周りには俺よりチートな奴が結構居る件について。爺さんは別枠だとしても、十六夜とかその筆頭だろ。

 

「お前達だけでは心許ない。オレも手を貸そう」

 

 そう言って出てきたのはインドの大英雄、根はアホみたいに優しいカルナさんである。彼がその気になって宝具を放てば、魔力量次第では俺をも上回る火力を打ち出す可能性もある。そういう事実を加味すれば、この3人で十分だろう。

 

「念のために魔力をいくらか渡しとく。ネロ、お前もカルナにバフをかけてくれ」

「うむ、了解したぞ! 施しの英霊よ、大サービスだ。受け取るが良い!」

「すまない、感謝する」

「他のバフかけれる連中はイッセーにかけてくれ。出来るだけ多くな」

 

 そう言うと、各支援系サーヴァント達がイッセーへとバフをかけていく。あれだけ重ねがけされてたら魔改造のレベルまで登るんじゃないだろうか。

 

「うおぉぉぉおお!! スゲェ! 部長のおっぱいをつついた時より力が溢れるぜっ!」

『やめろ相棒! 本気でやめてくれ!! 周りの白い視線を感じないのかお前は!』

 

 やはりイッセーはどこまでいってもイッセーのままか。それと今「部長(グレモリー)のおっぱい」という単語に反応し、グレモリーをチラリと見た上で親指を立てて良い顔をしている騎士共。気持ちは分からないでもないが自制しろ。じゃないとお前らの後ろの騎士王らの聖剣が火を吹くぞ。

 

「今からきっかり30秒だ。それで今出せる最大火力の一撃をぶっ放すぞ」

「了解した」

「おうっ!」

 

 言って、俺も準備に取り掛かった。天閃の聖剣・魔改造ver.をギフトカードから取り出し、魔力を解放させ始める。解放された高密度の魔力は一気に溢れ出し、気を抜けばこの乱流に飲み込まれそうになる程だ。特に強化無しの状態でこれとは、相変わらずえげつないなぁ。

 

「──我、目覚めるは王の真理を天に掲げし赤龍帝なり。無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を往く。我、紅き龍の帝王と成りて、汝を真紅に光り輝く天道へと導こう!」

 

 イッセーがそう唱えると、イッセーの体を真紅の鎧が覆う。普通の禁手とは明らかに違う気配。イッセーもあれから修行を積み、次のステージへと至った事は疑いようが無かった。さすがは俺が見込んだ男だ、とでも言っておこう。今のイッセーは十二分に強い。

 

 ...さて、30秒経ったしそろそろ撃つか。

 

「喰らえ──『魔改造されし元聖剣だったナニカ』!」

「──『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』ッ!」

「クリムゾンブラスターァァアァアア!!!」

 

 敢えて形容するならば、『太陽の一撃』であろうか。そう言える程の質量とパワーを含んだ3つの極光線は互いに交わることなどなく、それぞれで魔神柱を葬っていく。漫画でありがちな融合技は今回発動しない。何故って? 俺達3人にそこまでのチームワークがないからである。あれは技を繰り出す全員の呼吸であったりタイミングであったり、果ては相性がドンピシャで合っていないと成功しない。俺達3人がそんな事をやろうとしても、精々互いが相殺しあって逆に威力が半減するだけである。だったら失敗する未来しかない掛け算ではなく、単純に足し算をした方が良い。小学生でも分かる事だ。

 

「アーラシュ!」

「おうっ! しっかり掴まってろよ、お前ら!」

 

 そう言って、アーラシュは特大の弓を引く。

 因みに乗っているのは藤丸、マシュ、メディア・リリィ、金時(狂)、ヘラクレスである。それなんてチート編成? さすが人類の未来を背負う人間だ、容赦が無い。この女、完全に殺る気満々である。にしても火力バカ過ぎるだろ。

 

「行くぞッ! 口を閉じろ、舌を噛むからな! 3、2、1──ステラァアアア!!」

「何それ縁起悪ぃ──」

「■■■■■■ーーーッ!!」

「ゴールデェ──」

「「きゃあああぁぁ──」」

 

 不穏極まりないセリフと共に放たれた特大の矢と土台は藤丸達を乗せてもの凄い速度で玉座へと飛んでいく。ジェットコースターより楽しそう(小並感)

 

「...爆発オチじゃなきゃいいが...」

 

 おっと。もう魔神柱が新しく生えてきそうだな。藤丸達をたたき落とす気か? 誰がやらせるかっての。

 

「「真の英雄は目で殺すッ!」」

 

 俺とカルナの瞳からほぼ同時に放たれた光線が魔神柱に着弾し、ピカッと光って爆発する。ふむ、奴らの爆発フラグだったのか()

 

「ちょ、え、はぁ!? 今の何だよ凌太! 目からビーム出てたぞ!? そっちの白い人も!」

「ただの視線だが?」

「俺のはカルナの技を真似てるだけの魔力光線だ。似てるけど別物だよ」

「視線......? 魔力光線は理解出来るけど...視線...?」

『考えるな、感じるんだ相棒。インドは魔境だ』

 

 ドライグの言う通りだ。インドに限らず、英霊なんてものを理解しようとしない方がいい。頭が痛くなるだけだからね。俺もその『考えるな、感じるんだ』というカテゴリに入っているらしいが、まあ確かに、冷静に考えると俺もまあまあ頭のおかしい事をしでかしているし、そう捉えられても仕方ないのかもしれない。...若干納得いかないけどな。

 

「よっし。着地の方も無事成功だ。で? これからどうする、凌太? マスター(立香)の指示を仰げない以上、俺達はお前の指示に従うぜ?」

「そうだな...」

 

 アーラシュの言葉に、少しだけ考え込む。

 目の前には数多の魔神柱。今まではなんの支障もなく倒せたが、相手の被害は実質0である為、俺達の攻撃はほぼ無意味だったという事になる。だが、放っておく訳にもいかないだろう。というか、相手がそれを許さないだろなぁ。

 やはり全面衝突しかないか、などと考えていると、突如白い軌跡が魔神柱の群れの中へと飛来した。

 

「坂元凌太。俺は好きにやらせてもらうぞ! さて、72柱の悪魔を名乗るからには、それなりに楽しませてくれるんだろうな?」

 

 1人獰猛に口角を上げ、白い鎧を纏ったヴァーリは魔神柱の群れに臆すること無く突撃していく。命知らずにも程があるだろ。俺でも魔神柱を5柱以上相手にして無事でいられる自信はほぼ無いというのに。

 ...仕方ない。どうせ俺が先行するつもりだったのだし、少し先を越されただけか。

 

「全面衝突だ。藤丸達が魔術王を倒すまで持ち堪える、なんて悠長な事は言わない。なんなら、さっさとかたをつけて藤丸の援護に回るつもりで行くぞ」

 

 言って、俺は槍を構える。敵は魔神柱が64柱。対するこちらはマスター1人に英霊70基前後、そしてその他異世界組。正直に言って、爺さんが送ってきた魔力に限りがあるこの状況で、俺達が終始優位に立つ事は厳しいだろう。だがやるしかない。大丈夫、どいつもこいつも国だの世界だのを救ってきたチート共だ。そう易々と殺られる様なタマじゃないだろ。

 

 問題は敵が本当に無限だった場合である。その場合は魔神柱をいくら倒しても意味が無い。大元である魔術王(・ ・ ・)を叩くしかない。...あれ? これって、俺も魔術王のところに向かった方が良かったんじゃ...?

 ...後悔しても遅いか。状況が未だハッキリしない以上、魔力供給者であるマスターがどちらにも付いていないといけないだろうし、俺が移動するのは魔神柱相手にこの面子でどこまでやれるかを見極めてからでも遅くはない...はず。多分、きっと。

 

「さあ、狩りの時間だ。敵は全人類共通の敵。遠慮は要らないだろう? 各自全力を以て──奴らを潰せ!」

 

 

 

 

 

 

 




友人が、
「デレマスの世界に行かせてネロを中心に何人かプロデュースしようぜ!」
と言ってきたので、軽く構想を考えた結果。
2話目辺りで軍隊と全面戦争する流れになったので却下になったのはまた別のお話()

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