問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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※サブタイには特に深い意味はありません。強いて言うなら、水着ネロがウチのカルデアにご降臨されたからです。


ぎゅわーん、ぎゅうぃーん、花火がドーン!

 

 

 

 

 

 英雄派退治を終わらせた俺達は、とりあえずイッセー達との合流を計る事にした。先程まで例の妖狐が纏っていた禍々しい気配も霧散しているし、イッセー達も上手くやったのだろう。

 

 「ようイッセー、こっちは終わったぞ。そっちも無事っぽいな」

 「ああ、うん...そだね」

 

 気絶した英雄派の連中を肩に担いでイッセー達に合流したらなんか引かれた件について。解せぬ。

 

 「こっちから見えたあの常軌を逸しているとしか言えない威力の爆発と雷撃...アレはなんだ? 神器の類か? 爆風だけで飛ばされそうになった、というか何人かは実際飛ばされたんだが」

 「え? いや、普通に権能だけど?」

 「権能...」

 

 アザゼルにまで引かれたんだが。まことに解せぬ。

 

 「それよりこの妖狐は結局なんなの? 襲ってくる気配も無かったし、戦闘はしてなかっただろ? 案外大人しかったよな」

 「あ、ああ。この妖狐は京都妖怪の御大将でな。今回は『英雄派』達に洗脳を施されていただけで、敵意は無いんだよ。お前達がゲオルグを倒した時点でその洗脳は解けたからな。だから戦闘は起きなかったんだ」

 「洗脳ねぇ...。尚更納得いかねぇな。洗脳してたなら、この妖狐を俺達に差し向けてもよかっただろ? 英雄派なんかよりずっと強そうなんだが」

 「それはこの御大将がエサだったからだ。曹操らは京都と狐の御大将の放つ気をエサに、グレートレッドを喚ぼうとしていたのさ」

 「グレートレッド? なにその超赤そうな名前。どっかの神か?」

 「『赤龍神帝』グレートレッド。間違いなく、この世界最強の1つだ」

 

 答えたのはアザゼルではなくヴァーリ。何やら熱意の篭った発言だったが、その赤龍神帝とやらに思い入れでもあるのだろうか? ...いや、最強とか言ってたし、ただ単に戦いたいだけかもしれない。

 つか赤龍神帝て。なに? 赤龍帝の上位互換か何か? ってことはそいつも龍かな。さすが幻想種の中の最強種。この世界でもその猛威は大いに振るわれているらしい。会ってみたいような会いたくないような...。

 

 とまあ、そんな風に自己完結しようとしていたところ。何やら知らない、そしてとんでもなく強い気配が感じられた。しかもその出処が分からないときたもんだ。これさっきの三蔵のフラグ回収案件じゃないだろうな? というか、つい先程までその赤龍神帝を喚ぶ為のエサとやらがバラ撒かれていたこのタイミングでの登場って...。

 

 「おい、なんか来るぞ。しかもバカみたいに強い奴。これってその赤龍神帝じゃね? タイミング的に。なんか神性っぽいのも感じるし」

 「何ッ!? くっ、遅かったのか...!? い、いや、まだ大丈夫なはずだ。グレートレッドはこちらから手を出さなければ大人しいだろうし...おいヴァーリ! 絶対に手を出すなよ!? これはフリじゃないからな!」

 「分かっているさ。さすがの俺でも、今の実力でかの赤龍神帝に勝てるとは思っていないからな」

 「ヴァーリ(戦闘狂)がそこまで言うとは...。実際、俺やジャンヌ達とその赤龍神帝、単純な戦闘力としてどっちが強い?」

 「赤龍神帝だな。俺はお前達の全力を見た訳ではないが...。そうだな、全盛期のアルビオンやドライグが各100体も入れば五分の勝負になるんじゃないか?」

 「そんなに」

 

 それは正攻法じゃ勝てませんわ。

 もし将来的に戦う事になったら龍殺し系の武具や魔術の準備が必要だな...。術式だけでも案を練っておこう。

 

 「ん...? この感じってもしかして......んんー?」

 「そういう意味深な発言マジ止めて」

 

 脳内で対龍の構想を練っていると、三蔵がまたもや呟く。本当にやめて欲しい。言霊という単語があるように、言葉というのはそれなりの力を持ってるんだぞ。フラグになりそうな発言は思い付いても胸に秘めていて欲しい。

 まあ三蔵のフラグ建築は今に始まった事でもないし、正直俺も人の事を言えない節があるが。

 

 そんな事を思っていると、俺達から見て西側の上空30m程の位置が裂けた。

 ...うーん...『空間が裂ける』とかいう超常現象を見慣れてしまった俺がいる。爺さんとか片手間でやってのけるからなぁ。

 

『オオオオォォォォォォン!!!』

 

 空間の裂け目から姿を現したのは1体の龍。

 しかし、その色は赤ではなく緑。一瞬、とある願いを叶えてくれる龍を思い浮かべるような、体が細長い所謂東洋型のドラゴン。

 感じる力はそれ程強いようには思えない。いや、普通に強いのだが、聞いていた赤龍神帝程では無さそうだ。

 

 「白竜? ねぇ、あれ白竜よね!?」

 「白竜? 何、あのドラゴン知り合いなの?」

 「うん! あたしの愛馬!」

 「馬」

 

 西遊記の物語は悟空ら3弟子と牛魔王、金角・銀角くらいしか知らない俺だが、あれはどう見ても馬じゃないだろ。言うなれば愛龍...なんだそれ。

 

 「白竜は元来龍でしたが、西遊記の物語の中でなんやかんやあり、馬に姿を変えて三蔵法師達と天竺へ向かったんですよ」

 「説明ありがとう」

 

 俺の心中を察したらしいジャンヌが横から解説を挟んでくれた。さすがに詳しいな。

 

 「白竜──西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)玉龍(ウーロン)か!?」

 「えっ!? そ、それって五大龍王のですか!?」

 

 アザゼル達も何やら騒ぎ出したが、俺としては龍よりその上の奴が気になるんだが。あれ、多分龍より強いぞ。

 

 「大きな『妖』の気流、そして『覇』の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ。...だが、それも新しく現れた気流が全てを呑み込んだ。そこの神性擬きを纏ってる小僧。お前、何者じゃ...い...? いや待て、待ってくれぃ...。小僧の隣の女...てめぇは...」

 

 龍の背から飛び降りてきた小学生にも満たなそうな背丈の人影は、年老いた声音でこちらに問いかけてくる。そして何故か勝手に困惑した。隣の女...。ジャンヌと三蔵がいるが、十中八九三蔵の方だろうなぁ。

 

 「はっ! あたしティンときたわ!」

 「お前何処の社長だ」

 

 一瞬訝しげに玉龍の背から降りてきた人影を見ていた三蔵が声を上げた。

 相手──金色に輝く体毛に法衣っぽい服を纏った黒い肌で猿顔の...気配的に妖怪...? いや神性も感じる。妖怪から神へとのし上がった系の奴か? とりあえずその猿も、三蔵の方を未だ訝しげに見ていた。

 

 「...性別とかは違うがやっぱり...お師匠...?」

 「そういう貴方は悟空ね!? 姿形は違うけれど、雰囲気が何となく悟空だわ! もー! あたしを置いて何処をほっつき歩いてたの!? 色々大変だったんだからねー!?」

 

 ......ややこしくなってきた(確信)

 

 

 * * * *

 

 

 

 「緊箍児(きんこじ)が儂の頭に無い今、玄奘を敬えど、恐れる道理は一切無し。 いくぜぃお師匠。 いつぞやのリベンジマッチ、異世界のアンタで果させて貰うぜぃ!!」

 「ふっふーんだ! あたしだって昔よりすっごく強くなってるんだからね! 御仏パワー、甘く見ないでよ!」

『えっ、これオイラはどっちの味方をすべき...?』

 

 何だかんだで三蔵と猿の妖怪 ── 孫悟空の戦闘が始まり、玉龍が困惑している件。どうしてこうなった。経緯? 分かりませんが何か。本当に唐突に始まったのだ。まあ異世界とはいえ、三蔵法師と孫悟空って言ったら色々あるからな。玉龍の板挟みも見ていて可哀想に思わなくもない。まあ特に助け船は出さないけれど。

 

 「カルデアで読んだ『西遊記』! あれの主人公ってあたしなのになんでか悟空が主人公みたいになってるじゃない! お師匠の影を薄くする弟子なんてどこの世界にいるのよぅ!!」

 「ここだぜぃお師匠!」

 「そういう話じゃなくてー!!」

 

 ...何だか両者楽しそうなので放っておいて大丈夫だろう。とりあえず三蔵に魔力だけは回しとくか。

 2人が戦っている間に、俺はイッセー達グレモリー眷属とアザゼル、ヴァーリ一味、それから天使だというイリナに声をかけることにした。

 ...ヴァーリが三蔵達の戦いに混ざりたそうにしているのをアーサーとルフェイが抑えているがそっちも無視。

 

 「なあアザゼルよ。今回のテロ組織『禍の団』、『英雄派』の捕縛。俺達の活躍は言うまでもないよな?」

 「え? あ、ああ。まあそうだが...突然どうした。というかあれ(三蔵VS.悟空)は放っておいていいのか?」

 「大丈夫だろ。三蔵には十二分に魔力を送ってるし、もし負けそうなら俺やジャンヌも介入する。それに三蔵は五行山出せるし、孫悟空という存在相手になら有利に進められるだろうしな。多分だけど」

 「五行山が出せるってなんだ...? いや、もう突っ込まないでおこう」

 「おう。まあそれよりも、だ。そんな功績者である俺達には然るべき報酬があってもいいと思うんだ。正直、『フェニックスの涙』1瓶だけじゃ割に合わない」

 「...何が望みだ? 人工神器なら失敗作含め腐る程あるが...」

 「『アッサルの槍』にはいつもお世話になってます。けど、今は武器は要らねぇかな。それより、俺が今欲しいものは即戦力だ」

 「即戦力? なんだ、戦争でもおっ始める気か? この世界を巻き込むつもりだったらこの場でお前を討つぞ」

 「やれるもんならやってみろ。その場合は容赦はしないからな。この擬似京都と共に灰になりたいなら臆せずかかってこいや。...まあ戦争なんてしないけど」

 

 俺の発言に一瞬身構えたアザゼルだったが、別にここで堕天使狩りをする気は無い。というか貴重な戦力を失ってたまるか。

 

 「...じゃあ何故戦力を欲する?」

 「強いて言うなら、人類を救うためって事になるのか」

 「人類を救うだと? どういう意味だ」

 

 何も分かっていない様子のアザゼルやイッセー達。まあ無理もない。というか分かってたらアザゼル達の情報網は異世界にまで及んでいるということになる。何それ怖い。

 とりあえず魔術王が行った人理焼却の、俺が知っている限りの話を掻い摘んで話すことにした。三蔵と孫悟空の戦闘という名のじゃれあいもまだ終わりそうにないし、時間はまだ丸1日ある。人類滅亡の危機を、精々面白おかしく語ってやろうじゃないか。

 

 

 * * * *

 

 

「..................話がデカすぎる」

 

 魔術王の企みとやらをほぼ全て話し終えて、イッセーがやっと絞り出した言葉がそれだった。うん、分かる。

 

「...それで、その人理修復の為に、一介の下級悪魔である俺達にどうしろと?」

「あん? 決まってんだろ、魔術王と戦うぞ。ここにいるグレモリー眷属は強制参加な」

「なんで俺達の参加は決定事項なんだよっ!?」

「前回のギフトゲームの勝利報酬」

「そうでしたねっ!」

 

 ヤケに元気なイッセーと苦笑いの木場&アーシア。理解が追いついていないゼノヴィアとロスヴァイセを横目で見つつ、俺はアザゼルに向き直る。ヴァーリは放っておいても付いてくるだろ。

 

「人理だけじゃなく教え子も危険なんだ。来ないっていう選択肢は無いよな、アザゼル先生?」

「...脅してんのかお前...。分かったよ、行けばいいんだろ? 人間は好きだ。滅びようってんなら止めるさ。それが異世界であってもな。あと純粋に異世界っていうモノが見てみたい。それに英霊ってやつらもな」

 

 そっちが本命か。まあ分からないでもない。俺も最初は異世界という存在に胸を踊らせたものだ。今? 厄介事しかない所だと認識していますが何か。いや楽しいんだけどね?

 

「アーサー、ルフェイ、黒歌。俺は坂元凌太に付いて行くが、お前達はどうする?」

「僕は行きますよ。ご先祖様であるアーサー・ペンドラゴンに会ってみたいですしね」

「わっ、私も行きたいですっ」

「ん〜。私はどうしよっかにゃ〜。そこの神殺しちゃんが私に強い子種をくれるっていうなら考えてもいいにゃん。ホントは天龍を狙ってたんだけど、その天龍より強いのなら話は別。どうにゃん? 自分でいうのもなんだけど、私って結構美人だとおm」

「よし。じゃあヴァーリチームは黒歌以外参加だな。正直助かる」

「なに、俺は強者と戦えれば十分だ。因みに坂元凌太より強い英霊はいるのか?」

「おう。そりゃあもうごろごろいるぞ。ケルトとかインドとか古代王とか」

「ほう? 俄然楽しみだな」

「英霊と戦うのはいいけど、とりあえず魔術王倒してからにしてくれよ」

「フッ。分かっている」

「......ねぇ、私はいつまで無視されればいいの?」

「えっ。いやだって黒歌は不参加って」

「言ってないけど!? 強い子種くれたら考えるって言ったにゃ!!」

「いや、そういうの間に合ってるんで。イッセーとかに言えよ。きっと血の涙を流して喜ぶぞ」

「赤龍帝ちんには前に言ったんだけど、話を有耶無耶にされて結局ダメだったにゃん。因みにヴァーリには一刀両断」

「なん…だと…」

 

 ヴァーリはともかく、まさかあの性欲の権化と言っても過言じゃないイッセーが据え膳を食わないとは...。黒歌は美人の部類に入るし、何より胸もデカイのでイッセーが断る理由はないと思うんだが...。世の中、不思議な事が多いな。

 

「ってことで私とレッツ子作り!」

「しないから」

 

 別に性欲が無いわけではないが、そこまで飢えているわけでもない。ここで黒歌の誘いに乗ったら後が怖いしね。それに、強ければ誰でもいいという、特に俺に対して好意を向けている訳では無い黒歌と肌を重ねる気はない。体だけの関係とか俺の趣味じゃないです。

 

「むー。いいにゃいいにゃ。私の誘いを断るならホントに付いて行かないだけだし」

「おう」

「...いいのかにゃー。私の仙術とか魔術とか、割と強力なんだけどにゃー。なんなら『英雄派』のゲオルグくらいなら片手間で倒せるくらいなんだけどにゃー」

「それは凄い。これからも精進してくれ」

「.........猫は冷たくされると死んじゃう生き物なんです」

「なんなのお前」

 

 猫って冷たくされると死ぬのか。いや死なねぇだろ。むしろ孤高を愉しむ様な生き物だろ(偏見)

 

「連れてってやれ。そいつ、ヴァーリと同じで意外と寂しがり屋らしいぞ?」

「俺は寂しがり屋じゃない断じてない」

「私だって別に寂しいとかじゃにゃいし!」

「何そのツンデレ発言」

「はっ! これは新たな2人のライバルの予感...? 静謐さんとネロさんに連絡をっ!」

「はいそこ。面白そうなネタ見つけた! みたいな顔しない。というか今ヴァーリを頭数に入れたな?」

「はいっ! 私的にはSっ気のあるマスターが受けに回るというギャップがとても良いと思います!」

「うん分かった。とりあえず説教から始めようか」

 

 ジャンヌの心情はイマイチ分からん。俺に好意を向けているのかと思いきや、別にそうでもない様な態度もとる。まあ俺の自意識過剰と言われればそこまでなのだが。

 ふむ、やはりジーク君とやらが好きなのだろうか。それはそれで面白そうであるが、そのジーク君がロクでもない奴だった場合、お付き合いなんてマスター許しませんからねっ!

 

「んじゃまあ、とりあえず全員参加って事で」

「つまり私との子作りを認証したという事でオーケー?」

「しつこい」

 

 擦り寄って来る黒歌を怪我をしない程度に投げ飛ばす。あんな性格ではあるが、黒歌の戦闘力も中々に侮れない。先程の戦闘では多彩な魔術で多くの魔獣を屠っていたので、その実力は認めざるを得ない。

 敵が魔術王だけでなく、プラス魔神柱72柱であるという可能性が非常に高い今、黒歌のように広域殲滅技を持っている奴は何人いても困らないものだ。聞いた話、ロスヴァイセもそういう系の戦闘スタイルらしいので頼もしい。

 

「悪魔や堕天使と共に戦線を張る、というのは聖女的にアウト気味ですが...、まあ良しとしましょう。既にマスター(神殺し)と共に戦っていますし、今更ですね。それに、戦力的には申し分ありません」

「だな。まあ欲を言えばもう少し欲しいところだが」

 

 確かに戦力的には多大な強化が叶った。しかし、これで満足という程ではない。せめて残りのグレモリー眷属は連れていきたかったところだが...自身の領地が危険だというのなら連れて行けない。領地や領民を守るのは王の務めであるし、仮にも魔王を名乗る俺がそれを疎かにさせる訳にはいかないだろう。

 

 グレモリー達は諦めて今の戦力でどうにかするか、と俺が考え始めた時。今度は擬似京都を覆う結界が粉々に破壊された。

 ...おい。まだ三蔵達が戦ってるんだからちょっと待てや。現実の京都に被害が出るぞ。

 

「魔法少女マジカル☆レヴィアたん、参上☆」

「お帰り願えますか」

「話は聞かせて貰ったわ!」

「いや全然聞いてねぇだろ。帰れって」

 

 また変なのが来たんだが。そして地味に強いのがまた怖い。下手したらヴァーリ超えじゃん。魔法少女って奴らはやはり化け物級なのか(『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』に競り勝ったとかいう魔法少女を思い描きながら)

 

「レ、レヴィアタン様!?」

「様付けとか。魔法少女設定どこいった」

 

 イッセー達が目を見開いて例の魔法少女の方を向く。てか三蔵達止めないと被害が出るな。

 

「うわーんっ!! 悟空が如意棒で遠慮無しにお師匠様の頭叩いたーっ!!」

「そりゃあ叩くだろうよぅ。戦いをなんだと思ってる。てか、お師匠の出した五行山。アレ結構トラウマだから今後はやめてくれぃ...」

「あー...。はいはい、痛かったねー。よしよし」

 

 さすがにフォローのしようが無かったので、とりあえず泣きついてきた三蔵の頭を(さす)ってやることにした。あー、たんこぶになってるな。英霊でもたんこぶとかできるのか。

 しかし、丁度いいタイミングで戦闘が終わってくれて良かった。あのまま続けてたら間違いなく明日の朝刊の1面を大々的に飾っていただろう。俺もう嫌だよ、朝イチで多額の被害総額からそっと目を逸らすのは。

 

「あっ! こんな所にいたんですかアザゼル様! いきなりいなくならないで下さいってあれほど......って坂元凌太!?」

「あ?お前は...あー、えっと確か...レ、レ......レオタード!」

「レイナーレよっ!」

 

 おしい、もう少しだった。てかコイツ、なんで平然とここにいんの? イッセーやアーシアにとっては憎い相手だろうに。

 

「レイナーレは最初牢屋にぶち込んでたんだが、何やら改心したみたいでな。今はシェムハザの命令で俺の秘書をやってんだ。はぁ...。俺が仕事をサボってると、こいつがすぐにシェムハザの野郎に報告するから、最近はロクに遊べもしねぇ」

「へぇ...。いや別に俺としてはどうでもいいんだけどさ。イッセーとアーシアはいいのか?」

 

 イッセーは純情な心やその他諸々を、アーシアは命を奪われた相手だ。普通なら許せないだろう。俺は、俺を1度殺した爺さんをいつかぶん殴ると決めている。許す許さないで言えば、俺は爺さんを許しているのだろうが、それでも怒りはあるからな。

 

「私は...その、正直、まだ少し苦手意識はあります。ですが、私はこうして悪魔として転生し、生きています。そのお陰でイッセーさんやオカ研の皆さん、学園の皆さんとも仲良くなれました。今の私に不満はありません。主への祈りを捧げられないことは少し残念に思いますが、それだけです」

「俺もまだ、レイナーレのことを完全に許せた訳じゃないけどさ...。アーシアがこう言ってるんだし、俺も、騙されたとか、そんな小さな事をいつまでもグチグチと言ってられないよ」

「ふぅん...。寛大だな」

 

 俺は会う度に殴りかかってるけどな。まあ成果は0だが。

 

「なにやら感傷に浸ってるところ悪いんだが、そろそろ儂は九尾の姫さんと、あとそこの魔王少女と交渉したい。さっさと帰ってこいと天帝から言われとるんじゃ。どこか、そこらの旅館で始めよう。玄弉へのリベンジも果たしたし、気分良く京都料理に舌鼓を打てるってもんだぜぃ」

「悟空のバカー!!!」

「それより魔王少女とな」

「ちょっと猿のおじいちゃん! 魔王少女じゃなくて魔法少女よ、ま・ほ・う!」

 

 魔王少女...レヴィアたん...。おい、もしかしなくても四大魔王の1角か、コイツ。どうりでえげつない魔力を纏ってるわけだ。いや勝てない事はないけど。

 

「話は私も聞かせて貰った!」

 

 自称魔法少女の正体にある程度気付くと、次は地面に見覚えのあるような無いような魔法陣が展開され、そこから声だけが聞こえてくる。赤く光る魔法陣の光が収まると、そこにはグレモリーと2年以外のグレモリー眷属、いつぞやの銀髪メイド。そして──

 

「ッ!!」

 

 ───とんでもなく嫌な感じの魔力を内包している赤髪長髪の男が現れた。

 

 ほぼ反射的というか、本能的というか。とにかく、言いようのない悪寒に襲われた俺は、その悪寒の元である赤髪の男からバックステップで距離を取り、ギフトカードから槍を取り出して即座に構える。因みに、三蔵は飛び退いた際に着地点に置いた。

 

「おや。そこまで驚かせるつもりは無かったんだけどな」

 

 赤髪の男は俺の反応に逆に驚いたような声を発する。

 

 ...ヤバイ、本気でこの男はヤバイ。いや、男というより『得体の知れないナニカ』と言った方が適切だろうか。俺の直感が全力で警鐘を鳴らしている。

 見た目はイケメン風だが、人の皮を被った...いや、この場合は悪魔の皮か。もはや悪魔と呼べるのかどうかすら怪しいレベルである。明らかに他とは次元が違う、文字通りの別次元。堕天使総督・アザゼルや魔王・レヴィアタンと比べても、その存在は異常としか言いようが無い。...さっきから冷や汗止まらないんだけど。

 

「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないかな。 私だって少しは傷付くんだよ?」

「奴は本能的なところでお前の実力を感じてるんだろうよ、サーゼクス。ったく、獣並の危険察知能力だな」

 

 アザゼルが親しげに話しかけた赤髪の男──サーゼクスは警戒し続ける俺を見て苦笑いを浮かべた。

 サーゼクスって言ったら、確かレヴィアタンと同じ四大魔王の...。これ、同じ魔王ってカテゴリーで括っていいのか? 魔神とか、そういう別称でもいいとも思うんだが。

 

「やあ、キミが坂元凌太君だね。話は妹達から聞いているよ。それにそっちは...白龍皇とその仲間、それと、そちらは闘戦勝仏殿ですか。白龍皇・ヴァーリ君はあの会議以来だね」

「セラフォルー・レヴィアタンに『超越者』サーゼクス・ルシファー。現魔王が直々に、しかも2人もご登場とはな。それに加え、坂元凌太とその仲間、俺達『禍の団』、赤龍帝とリアス・グレモリーの眷属、堕天使総督、女悪魔最強と名高いサーゼクス・ルシファーの『女王』、京妖怪総大将、そして闘戦勝仏に五大龍王・玉龍。これらが1箇所に集まるとはね。ははっ。全く、この面子で戦闘が始まったら、京都は一体どんな戦場になるのやら。塵も残らないんじゃないか?」

 

 そんな軽口を叩くヴァーリだが、正直こんな化け物どもと戦うとか冗談じゃない。やるなら“ファミリア”総出で挑むくらいの意気込みが必要だ。なんなら“ノーネーム”やカルデアも巻き込むか?...いや絶対面倒だわ。

 

「安心しろ、とは言わないけどね。仮にも君はテロリスト集団だし、本来ここで捕まえておくべきなんだけど...。人類の危機に立ち上がろうとしている悪魔を、無慈悲に捕まえる訳にもいかないかな。それに、被害を出しているのは『旧魔王派』や『英雄派』だろう? だから、今回は見逃そう。ただし、悪事を働けば容赦はしない」

「それはそれは。寛大な心の持ち主だな、サーゼクス殿」

 

 薄ら笑いを浮かべながら目の前の化け物に話しかけられるヴァーリは、もしかしたらもの凄い大物なのかもしれない。単にサーゼクスの奥の方にある力を感知し切れていないだけかもしれないが。

 

 それはそうと、レヴィアタンやサーゼクスは何故この場に現れたのか。まさか俺に会うためとは言うまいな。...いや、レヴィアタンはともかくサーゼクスの方は覚えがあるわ。だって妹とその眷属を半強制的に傘下にしたからね、是非も無いね。こちらのルールに則ったやり方とはいえ、家族としては見過ごせないのかもしれない。...嫌だなぁ、この時間に余り余裕が無い状況でこんな化け物と戦うの。てか『超越者』ってなんだよ。

 

「先程も言ったが、そう警戒しなくていい。私は別に、君達と戦いに来たわけでは無いからね」

 

 出来るだけ温和な態度で話しかけてくるサーゼクスに、俺は未だ警戒を解けずにいた。これでも、自分の直感には結構な信頼をおいている俺としては、その直感に抗うのは出来るだけ避けたい事なのだ。

 

「...ふむ。妹を負かした事について、私が怒っていると思っているのかな?」

「恐らくそうでしょう。というか、実際に怒っていらっしゃいますよね? 先程から微小ではありますが、滅びの魔力が滲み出ています」

「......どうやら私は自分が思っていた以上に怒っているらしい。いや、きちんとしたルール下での結果らしいし、リーアたんも最近は納得してきていたから、自分では許している気になっていたんだが」

「このシスコン魔王め」

 

 サーゼクスをグレイフィアが諭し、そしてアザゼルがニヤニヤとサーゼクスを弄る。...この3人をまとめて相手取るのも、今の俺ではキツイかな。全盛期ならまだ互角くらいにはやり合えたかもしれないけど...。いやまあ、やり方次第では今の状態でも勝てますけどね?

 

 とりあえず形だけでも警戒は解くとしよう。そうしなければ話が進まないのも事実だ。グレモリーのことをリーアたんとか言ったのもスルーしていいだろう。

 

「さて、凌太君の警戒も若干緩まったところでもう一度。──話は聞かせて貰った!」

「貰ったわ☆」

 

 ──どうやらこの世界の魔王というのは、とても愉快な連中らしい。

 

「なんでも、異世界の人類の存続が危ないらしいね。それはいけない。人間には割とお世話になっているし、黙って見過ごす訳にはいかないな。私達も手を貸そうじゃないか、凌太君。差し当たっては私の女王、グレイフィアを連れて行ってくれて構わないよ。ああ、もちろんリーアた...リアス達もね」

「お久しぶりです。改めて、サーゼクス・ルシファーが女王・グレイフィアと申します。以後お見知り置きを」

「あっ、はい」

 

 グレイフィア が なかま に なった !

 

「俺達堕天使陣営は...そうだな、俺とレイナーレでいいだろう」

「わ、私も行くんですかっ!? 何処に何をしに行くのかもイマイチ理解していない私が!?」

 

 レイナーレ が なかま に なった !

 

「儂は行けんのぅ。天帝が許可を出さんじゃろうし。玉龍も無理だぜぃ。ま、頑張れよお師匠」

 

 そんごくう と ウーロン は なかま に ならなかった !

 

「じゃあ私も行」

「かせるわけないだろう? セラフォルー、現魔王が今この世界から離れる訳にはいかない。それは分かってるね?」

「うぅ〜☆」

 

 ...とりあえずレヴィアタンの語尾に☆が付いているように感じるのはなんなのだろうか。魔王少女の特異能力か何かだろうか。え? 気にしたら負け? うん、そうだと思ってた。てか魔王はダメなのに堕天使総督は離れていいのだろうか。まあ来てくれるって言うんだし俺としては全然構わないけど。

 

 

 

 まあ何はともあれ。とりあえずは戦力を選出できた事を喜ぶべきだろう。魔術王の実力は未だ未知数。これで絶対に安心だとは言えないが、それでも無いよりは何倍もマシだ。

 とりあえず爺さんに連絡を入れて、“ファミリア”も出動させよう。そうすれば、割と簡単に勝てるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結構テキトーに終わらせてしまった感が否めない...

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