「これがぁ...スパルタどぅぁあ!『
「怨霊調伏ならば拙僧の領分。レオニダス殿にばかり見せ場はやらせぬ!念仏など後回しだ、どっせい!!」
とまあ、漢2人が張り切ってうじゃうじゃ出てきた亡霊を相手どる中、俺はモードレッドと牛若丸に魔力を回しながら聖句を唱えて雷を纏う。
作戦としてはまずモードレッドがブッパして、次に牛若丸が斬って、そして俺の槍と雷でトドメという流れを構想しているが、まあ上手くはいかないだろう。
という訳でギルガメッシュにも頑張って貰う事にした。現在はキャスターとなって魔術しか使わないギルガメッシュだが、それでも十二分に強いのだからチート臭い。
「覚悟しなさい、決して出られない死の籠に入れてあげる!」
「断固拒否する!」
巨大化した事で動きが鈍くなったエレシュキガルの全体攻撃を全員が回避しながら攻撃の隙を伺う。
静謐ちゃんには一応、毒霧散布の為に気配遮断で隠れたうえで舞って貰っているが、正直気付かれる可能性の方が非常に高いし、第一毒が効くのかどうかも分からない。あまり期待しない方が良いだろう。
という訳で、いい加減避けるのも面倒になってきたし反撃に出ようか。
雷槍を10本程造って投擲、エレシュキガルの両腕を地面に縫い付ける。そしてモードレッドの宝具開帳。大量の魔力と雷の渦がエレシュキガルを覆う。そしてそれを目眩し代わりにして牛若丸も宝具を開帳。ギリギリで狙いを逸らされたが、まずは左腕を切り落とす。そしてギルガメッシュが雷系統の魔術で攻撃している間に魔力を充填し、“天屠る光芒の槍”に注ぎ込む。そして投擲。槍は真っ直ぐに飛んでいき、エレシュキガルの胸部を貫いた。そして最後にダメだしの雷砲、からの『我が麗しき父への叛逆』を再度叩き込む。
...うん、正直やり過ぎたとは思います。
最初こそ死を覚悟しながら戦いに挑んでいたが、最早悲鳴すらあげずに霊の姿から人型へと戻るエレシュキガルを見てなんだか申し訳ない気持ちが湧いてきてしまった。白目とか剥いてるし。だが、あれだけの攻撃をモロで喰らったのに死んでいない辺り、さすが神だと思う。
とはいえ、冥界の主などというラスボス級の神との戦闘がよもや10分かからずに終わるとは。見ればレオニダス達も亡霊退治を終えていた。...流石に不憫だと思わざるを得ない状況ですね。だがまあ負けた奴が悪いって事で。
「さて、我の戒めも解かれたな。勢い余って気絶させてしまったが...。凌太よ、コヤツの処遇、貴様が決めて良いぞ」
「なんで俺」
「決まっておろう。我はウルクに帰るからだ。今は時間を無駄に出来ぬからな。では、先に帰っているぞ」
そう言い、ギルガメッシュはあっさりと地上へ帰っていった。えっ、マジで俺に一任すんの?
「どうするマスター?なんなら今のうちに殺っとくか?」
「んー、どうしよう......ファッ!?」
仕方ないので未だ目を覚まさないエレシュキガルの処罰を考えていると、背後から斬撃が飛んできて、そして追い越して行った。な、何を言っているのか分から(ry
その斬撃はエレシュキガルを正確に捉え、そして両断する。え、何事?
「──愚かなり」
すると、斬撃の飛んできた方向から老人の声が聞こえた。慌てて振り返るとそこには深くローブを被ったどうしようもなく異様な老人が1人佇んでいる。
どうしようもなく異様、というのは何もその老人の風貌がという訳ではない。いや、風貌も異様っちゃ異様だが、ネロの常時花嫁衣装装備とか牛若丸のなんちゃって鎧などの方がよっぽど異様なのでスルーする。
では目の前の老人のどこが異様なのか。簡単だ。この老人、
「貴様、何者だ。気絶していたとは言え、神を易々と斬って見せるその手腕、只者ではあるまい。だが1つ物申す、何故首を斬らなかった?」
「牛若丸様、今の論点はそこでは無いかと」
「弁慶うるさい。私にとっては大事な事なんだ。こう私のぱーそなりてぃ?とかそういう物の問題なんだ」
「首取りオバケ怖いよぅ...」
っと、巫山戯てる場合じゃないな。正直、今ここであの老人に全滅を喰らっても可笑しくはない状況ではあるのだ。先程の斬撃も、風の変化で何とか察知出来ただけであって不可視だったし......いや待て、不可視の斬撃?
「──案ずるな、神殺し達よ。良く見るがいい。我が斬ったのは肉体に有らず、『三女神同盟』の契りのみ」
言われてからエレシュキガルの方を横目で確認すると、確かに身体は無事っぽかった。さっきの両断された様に見えたのは何だったんだ。殺気による幻覚?いや殺気すら感じられなかったけれども。
それはそうと、不可視の斬撃に概念切断...。えっ、それって...
「ッ!?」
俺よりも少し早く気付いたらしい静謐ちゃんが、顔を真っ青にしながらものすごいスピードで平伏する。やっぱりそうだよね?
「...なんでここにじいじが?」
「我が名はじいじでは無い」
「いやでもですね?気配を全く感じさせず尚且つ概念そのものを切断するなんて変態じみた事出来るのはじいじしか」
「じいじではない」
「アッハイ」
...じいじでは無いらしい。いや本人が認めないだけでほぼ100%じいじで決まりなんだけどね?静謐ちゃんとかまだひれ伏してるし。
「冥界の主人が目覚めた後に伝えよ。汝の縛りは既に無し、己が信念に従い行動せよ。と」
「ちょっと待って消えようとしないでまだ早い」
言うだけ言って消えようとするじいじ(仮)を慌てて呼び止める。
「如何用か」
「その、なに?同盟の契りだっけ?それを斬ったらどうなんの?」
「同盟とは、3柱の女神が契りし不可侵の条。これを断つこと即ち、女神の枷を解き放つことなり」
「えっと...要するに?」
「冥界の女主人による複合神性、及び羽毛ある蛇への攻撃を可能とする」
「...複合神性ってのがゴルゴーンで、羽毛ある蛇はコアトルだっけか...」
「是なり」
じいじの言葉は一々分かりずらくていけない。簡潔にいこうぜ。
それはそうと、なんだってじいじはエレシュキガルの同盟の契りとやらを斬ったのだろうか?ゴルゴーン討伐だけならば既に過戦力もいいところなんだが...。やっぱり一筋縄じゃ終わらないんですかね。確かに俺の直感的な何かもゴルゴーンやキングゥを倒しただけでは終わらないんじゃないかと訴えてきてはいる。例えるなら「私が倒れても第2第3のティアマト神が...」的な?...何それ自分で言ってて怖い。
だとしたら、じいじにはもう一仕事してもらわなくては。
「じゃあさ、一応コアトルの方の同盟の契りも斬ってきてくれない?」
「請け負った」
そう言って今度こそ消えていくじいじ(仮)。
ふうむ、なかなか面倒な事になってきたぞぅ。
「...とりあえず、エレシュキガルどうすっかな...」
正直言ってゴルゴーン戦に於いてエレシュキガルの力は必要無い。もともとマルドゥークの斧と“天屠る光芒の槍”だけでゴルゴーンは殺れる予定だったし、何よりこちらには対ゴルゴーン最終兵器と言える者もいるのだ。今更戦力が増えようが、余り俺達のプラスにはならない。
だがしかし、あのじいじ(仮)がそれを理解していないとも考えにくい。エレシュキガルに何かの価値を見出し、尚且つそれが俺達の役に立つと判断したからこそ姿を現したのだろう。
...やっぱ第2第3のティアマト神とか出てくるのかなぁ。次は誰だ、アルテミスか?玉藻ナインの一角か?それともティアマト本人の御降臨か?ダメだ、どれが出てきても面倒事になる未来しか見えない。
そうやって俺が割と本気で唸っていると、エレシュキガルが目を覚ました。
「っつつ......あら? 私はどうなって...?確か嫌な感じがする槍に貫かれて...貫かれて!?私死んだの!?」
「まだ生きてるから黙ってて」
目覚めた直後から騒ぎ出すエレシュキガルを一旦黙らせ(肉体言語)、正座をさせてから今後の方針を再度確認していく。
第1にゴルゴーンについて。
ゴルゴーン襲来まであと3日と少し。これは問題無い。なんなら明日にでもこちらから奇襲をかけれるまである。
第2にエレシュキガルについて。
とりあえずこれは保留で。
第3にキングゥについて。
キングゥはゴルゴーンから引き離しておきたいところだ。出来れば俺かコアトルを主軸とした編成パーティで、ゴルゴーンと同時進行、或いはその前に撃破したい。ゴルゴーン戦に駆けつけられたら面倒だろうしな。
最後はゴルゴーンとキングゥを倒した後について。
良くある話で、ゴルゴーンを倒したら「ふっ、奴は所詮我らの中でも最弱」とか言いながら更に強い奴が出てくる、というのが1番に警戒するべきパターンだ。ティアマト神でないのにその名を名乗っている時点できな臭い。ゴルゴーンは無駄に力を蓄えているらしいし、その蓄えた力で真のティアマト神を降臨させる、というパターンもありえる。その場合の黒幕は恐らくキングゥ。
ふむ、やはりどう考えても面倒くさそうだ。
となれば、エレシュキガルは一応味方に付けておいた方が良いのかもしれない。じいじ(仮)が出てきたのもそういう訳だと思うし。
「よし、エレシュキガル。お前の処置が決まったぞ」
「...え?」
まさかの正座を喰らって若干泣きかけていたエレシュキガルが驚いた様にこちらを見上げてくる。どうでもいいが神を見下すのは若干良い気分だ。
「まあ俺からの処罰を告げる前にじいじからの伝言だ」
「...色々と言いたい事はあるけれど、とりあえずそのじいじって誰なのかしら?」
「『汝の契りは既に無し、己が信念に従い行動せよ』だそうだ」
「無視?私無視されてる?」
「じいじの言葉の上で言おう」
「あ、これ完全なる無視なのだわ」
ちょっとうるさい黙ってて。
「とりあえずお前、藤丸と仮契約結んでこい」
「...は?」
素っ頓狂な声を上げるエレシュキガルだが、こういった反応にも慣れてきた俺がいる。
「何故私が人間なんかと契約しなきゃいけないのかしら」
「敗者に拒否権はありません」
「...私は人間が嫌い。私の頑張りを褒めてくれない貴方も嫌い。だから全てこの冥界に叩き落とそうと...」
「拒否権はありません」
「......でも私は」
「拒否権は無いと言っている」
「ひぅ...」
割と本気で殺気にも似た威圧感を出しつつ、正座するエレシュキガルに上からものを言う。仮にも神という存在に対してこの態度は失礼にあたるのだろうが、まあ俺は神殺しだからね、仕方ないね。
「いいのかマスター?コイツ、今までウルクの奴らを何人も殺してるんだろ?」
「見ず知らずの市民の事を気にかけるなんて、モーさんは優しいなぁ」
「そういうのじゃねぇよバカ」
「拙僧もモードレッド殿に同意見ですな。エレシュキガルめに冥界へと連れ去られた市民の中には、少なからず知り合いも居申した」
ふむ。確かに兵士の中でも2割程度はそういう理由で精神的に死んだとされる奴もいるらしいことは聞いていた。だがまあ、それも特に問題はないだろう。
「エレシュキガルが許可を出せば皆生き返るだろ。それでチャラってことで」
「...まあ、マスターがいいならそれでいいんだけどな」
「よしよし、モーさんは良い子だなぁ。で、弁慶達は?」
「......拙僧も、凌太殿がそう仰るのなら異存はありませぬ」
「ん。なら決まりだな。じゃあさっさと帰るぞ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
話は纏まったので、俺達も地上へ帰ろうとしたその時。エレシュキガルがまたもや待ったを掛けてきた。
「何、まだ言いたい事でもあんの?」
「えっ、と。その、私...冥界から出れないんだけど...」
「えっ」
まさかの事実発覚。なんて事だ、まさか冥界から出ることすら叶わないとは...。いや待て、それこそあのじいじが把握していない訳が無い。何か解決方法も存在している筈だ。
「今まではどうやって地上に出てたんだ?」
「イシュタルの身体を勝手に借りていたのよ。夜、アイツが眠ってる間とかにね。だから貴方達と会えたのは夜だけだったという訳」
「ふむ...つまり依り代があればいいと?」
「ええ」
となると...どうしようか。イシュタルに憑依して地上に出てきて貰っても、その間にイシュタルが居ないのでは意味が無い。どうしたものか...。
「あっ、あれは?イタコの真似事を祭祀場の誰か、もしくは素質のある奴にやってもらうとか出来ないの?」
「出来なくは無いけど...多分、そのイタコ役の人間は死ぬわ。私やイシュタルを召喚しただけで、巫女場の人間は死んだのだし...。神を降ろすとはそういう事なのだわ」
「むう...」
やばい、手詰まりだ。もうエレシュキガルとか連れていかなくてもいいんじゃね?(諦め)
「道満殿に頼めば良いのでは?」
「流石だ戦場の天才、褒めてつかわす」
「頭を撫でて頂ければ!」
牛若丸の閃き、悪くない。
道満なら依り代に代わる変な式神でも造ってみせるだろう。逸話的にそういう事も出来そうだし。確かスキルに“陰陽道”とかいう式神作成可能なものも持っていた筈だ。それが出来なければ...まあエレシュキガル参戦は諦める方向で。最悪、じいじに「冥界から出られない」というエレシュキガルに課せられた制約を斬ってもらうか。
* * * *
「いや、普通に出来ないよ?というか逆になんで出来るなんて思ったの?」
「oh......」
冥界から帰ってきてすぐ、門の近くにいた道満を捕まえて例の件、エレシュキガル降臨用の式神作成が可能かどうかを聞いたのだが返ってきたのはNOという返事。まあ冷静に考えたら普通出来ないよな。
「くっ...!すいません凌太殿、私の至らぬ提案のせいで...っ」
「いやまあ、これは俺も悪いからなぁ」
心底悔しそうに握り拳を作る牛若丸に若干のフォローを入れつつ、本格的にエレシュキガル不参戦を視野に入れる。
最初はエレシュキガル無しで戦う気満々だったのだし、そこまで問題は無い。無いのだが...
「おい、どうするんだよマスター。あの女神、地上に出れるって凄い喜んでたんだが」
「............」
そうなのだ。エレシュキガルに「地上に出れるかもよ」という根拠の無い希望を示したら、パァッ!という効果音が付きそうな程破顔させて喜んでいたのである。戦闘前に語っていた事からも、冥界から出られない彼女は地上へ対する憧憬が強いであろう事は容易く推測できた。
...うん、罪悪感が無いと言えば嘘になるよ。
「とは言っても、もう手が無いしなぁ」
「全く、道満が使えないから」
「道満さん、役立たず...」
「そこで僕を責めるのは違くない?僕悪くないよね?ね?」
もはや大した意味の無いモードレッドと静謐ちゃんの罵倒が道満を襲う。南無三。
とは言え、道満が悪いかと言われればそれは違うだろう。それどころか、彼は良くやってくれていたらしい。
道満を捕まえる前に出会った顔見知りの兵士達が口を揃えて「道満殿は凄かった。どれくらいかと言うと凌太殿が戦線参戦した時くらい凄かった」と言うほどだ。
...もう、サーヴァントと同じ括りとして語られる俺は、一般人ではないと自覚せざるを得なくなったが。で、でもまだ常識人である事を捨てた訳じゃないんだからねッ!!(ヤケクソ)
とりあえずエレシュキガルについてはギルガメッシュやマーリン、ロマンやダ・ヴィンチちゃん等、専門っぽい人達に相談するかと考え、ひとまずはジグラッドへと足を運ぶ事にした。
レオニダス達が戻ってきた事で魔獣戦線から一時離脱し、息抜きだと言い張りながら人妻漁りに行こうとする道満を令呪を使って強制連行して、ウルクの大通りを進んでいく。
と、不意に目に入った人影に気が行く。
それもそのはず、その緑髪の人影は見覚えのある、しかしこの街で見てはいけない顔であるのだから。
「...疲れてんのかな、俺。確かにこの特異点来てからロクに寝てないけど、まさか幻覚を見るレベルの疲労が溜まってるなんて...」
「疲れているのでしたら私が膝枕でも何でもしますが。というか寧ろバッチコイなのですが」
「静謐ちゃん、やっぱりキャラ変わってきたよね…」
キラキラした目でこちらを見てくる静謐ちゃんを軽く諫めつつ、1度目を擦ってから再度その人影があった方を見る。
...うん、やっぱりいるわ。んでもって花屋の婆さんと笑顔で話してやがるわ。
「オイコラ、なんでこんな所にいやがる」
最大限の警戒をしながら、その人影──キングゥに声をかけた。
すると、袋いっぱいの果実を抱えたキングゥがこちらへと振り返り、出会った当初のような笑みを浮かべる。
「何故、か...そうだね。強いて言うなら、人を守るためかな」
花屋の婆さんに丁寧にお辞儀をしてから、こちらへと返答してくるキングゥ。...キングゥ?
「まあ、君たちは確実に勘違いしているのだろうね。でもそれは無理もない事だ。では、自己紹介でもしてみようかな。僕はエルキドゥ、友の喚び声に応えて起動した、ただの兵器さ」
* * * *
「フハハハハ!驚いているようだな、凌太よ!よいよい、言わずともその顔を見れば分かるぞ?」
「うるさい、説明早く」
キングゥ擬きであるエルキドゥを連れ...いやキングゥがエルキドゥ擬きなんだっけ?もうどっちでもいいか。
とりあえず、大通りで出会ったエルキドゥを名乗る人物を連れ、足早にジグラッドへと向かった。
玉座にて俺の姿を確認したギルガメッシュがニヤニヤとしだした事から、彼が確信犯である事は間違いない。
「はい、ギル。頼まれてた果実類。お釣りは面倒だったから全部果物屋の店主に渡してきたよ」
「構わん。...む、おいエルキドゥ、ブドウが無いではないか」
「ああ、ブドウは醸造の方に回されてて、今は食用としてはあまり出回っていないらしいよ」
「何?葡萄酒など、ウルクではまだ主流ではないはず...はっ!?まさかまたあの娘か!?ええい、枝豆のつまみの件と言い、味を占めた民衆がアルコール中毒にでもなったらどうするのだ!」
「すまないギルガメッシュ、葡萄酒は俺が飲みたかったから造ってもらった」
「貴様か凌太!」
「凌太!あれほど飲酒はダメだと言いつけたにも関わらず、私に秘密にして飲んでいたのですか!」
「俺だって皆と飲みたかったのでござる!」
「くっ、無駄に腹が立ちますねその口調...ッ!モードレッド殿!ハサン殿は凌太に甘いし、道満は普通に使えないので、貴女に凌太が飲酒しようとしたら止めるようお願いしていたはずですが!?」
「いやぁ、最初は止めたんだが、マスターと飲む酒は美味くてな!」
「つまり買収されたと!?」
「僕の扱いが雑、というか非道い言われ用な件について。これでも割と高名な術者なんだけどなぁ」
「ドンマイ」
というか、ウルクに来た1週間後に葡萄酒製造を依頼した俺だが、葡萄酒の熟成に年単位の時間がかかるという事をすっかり失念していた。なので、今製造中の葡萄酒を俺が飲む事はほぼ確実に無いだろう。残念だ。
おっと、話が逸れた。
「それより、エルキドゥの事だよ。なんでいる?というか本当にキングゥじゃねえの?気配が一緒なんだが」
「貴様にも違いは分からぬか。まあ仕方あるまい。キングゥとエルキドゥ、2人は同じ器だからな。違うのは中身だけ。容姿、気配、性能は全くの同じと見て良いだろう。次にエルキドゥを喚んだ理由についてだが...これは我が逆に聞こう。凌太、それからそこのセイバー。貴様らは直感持ちだな?ではその直感に従って答えよ。此度の戦い、ゴルゴーンめを打倒したらそれで終わりだと思うか?」
巫山戯た雰囲気を霧散させ、真剣な声音で問うてくるギルガメッシュ。
まあ、敵がゴルゴーンで最後じゃないっぽい事は俺でさえ感じていたし、ギルガメッシュが気付いていない訳もないか。
「俺はまだだと思う。まあ、本当に勘の域を出ないけどな。モードレッドは?」
「オレもマスターに同感だ。嫌な予感もしやがる」
「ふむ、やはりか...。我は直感持ちでは無いが、虫の知らせの様なものを感じてな。そこで、牛若丸達の魔力供給を凌太が行っている今、多少なりとも余裕が出来たが為に戦力増量を図ったのだ。ま、エルキドゥが来るとは思ってもいなかったがな!」
...どうやらそういう訳らしい(適当)
というか、ギルガメッシュ自身がエルキドゥを召喚する為の触媒と言っても過言ではないのではないだろうか…?違うか。
「それでは凌太よ。冥界から帰って早々だが、貴様に王命を下す。藤丸らが帰還すると同時に北にあるゴルゴーンめの神殿へ移動、あの女神を叩き伏せて来い。エルキドゥ、貴様もだ。作戦は貴様らの好きにするが良い」
...という訳で、ゴルゴーン達へと奇襲を仕掛ける事となった。
エレシュキガルの件、どうしよ...。
あと2,3話で第7章を終える予定です。...予定です。