少し長くなるかもしれませんが、どうぞお付き合い下さい。
カルデアに帰って来てから2日。今日は藤丸と共に英霊召喚をすることになっている。何故2日も間が開いたのかと言うと、まあ俺がぶっ倒れていたからだ。カッコよく言うなら泥のように眠ってた。...俺だって疲れるんだよ。特に今回はほぼ寝てないから余計に。
あと余談だが、今朝「もう何度も一緒に戦ってるんだから、いつまでもさん付けはしなくていい」と藤丸に言われたので、今は呼び捨てになっている。
さて、例の如く、召喚は藤丸から始める。
今回は特異点先で見つけた聖晶石は計24個。うち18個は俺の取り分になった。今回はエジプトで俺任せな戦闘があったので、その功績だという。それに、なんでも藤丸はダ・ヴィンチちゃん工房から幾らかの石を購入してきているらしい。買えるんだ、石って。
「来い!獅子王来い!あとベディや円卓の騎士も来い!」
藤丸が投入した石は全てで60個。回数にして20回分の聖晶石をフェイトに投げ込んでいる。
マシュの話によると、1番酷かった時で石を200個近く浪費したそうだ。一応だが、カルデアの役員、というかマスターとして、藤丸には給料が出ている。その分をほぼ全てダ・ヴィンチちゃん工房で石に変えてくるらしい。なんて事だ。カルデアから貰った筈の金は、全てカルデアに還るのか。
ちなみに俺には給料など1円も出ていない。不平等だ。
「応えよう。私は貴女のサーヴァント、ランサー。最果ての槍を以て、貴女の力となる者です」
「我が名はオジマンディアス。王の中の王。全能の神よ、我が業を見よ──そして絶望せよ!」
「円卓の騎士、ガヴェイン。今後ともよろしくお願いします」
「円卓の騎士、嘆きのトリスタン。召喚の命に従い参上致しました」
「セイバー、ベディヴィエール。これより貴女のサーヴァントとなりましょう」
「サーヴァント、セイバー。ランスロット、参上致しました」
「うむ。サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。──久しいな、カルデアの諸君」
総勢7名のサーヴァント召喚。それも全員が強力な英霊だ。というか、獅子王が召喚出来るのって驚きなんだが。まああの特異点での獅子王とは別人らしいが。
「きぃぃぃたぁぁぁぁあぁぁあぁあ!!!!」
最早キャラ崩壊もいい所な藤丸の歓喜の叫び。
またアルトリア顔やセイバーが増えたことにより、謎のヒロインXが怒り狂いそうだが、まあ放っておこう。
続いては俺の番。早速三蔵の髪の毛をフェイトの前に置き、石を9個放り込む。
「玄奘三蔵、御仏と弟子のリョータによる導きでここに現界したわ!ええっと...クラスはキャスター!よろしくね、リョータ!」
「サーヴァント、キャスター。天空の神、ホルスの化身、ニトクリス、召喚に応じ参上しました。この様なファラオの身ですが(ry 不敬ですよ!」
「キャスターのバーゲンセールかよ」
藤丸はセイバーが多めだったが、俺はキャスター多めだな。というか女性しか来ないのは何故?ウチの男性サーヴァントはエミヤしかいないんだけど...。もしやアイツの女難の相でも働いてるのか...?
礼装としてライオンのぬいぐるみも来たが、アルトリア(槍)が物欲しそうな目で見ていたので彼女に渡し、再度召喚を続ける。
「サーヴァント、ルーラー。ジャンヌ・ダルク。...またお会いできて、本当に良かった」
...ふぅむ。別に男が来て欲しい訳では無いが、こうも女性続きだと何か陰謀めいたものを感じる...。いや嬉しいんだよ?ジャンヌとか久々に会えたし。
続く召喚は全て礼装。あっという間に最後の3個となった。そして最後の召喚。光の輪は3本になり、それは人の形を取っていく。
「サーヴァント、道摩法師。キャスターのクラスで参上した。で、僕みたいなハズレサーヴァントを引き当てたのはどこの誰だい?」
現れたのは黒で統一された文官束帯を身に纏う、黒髪短髪の20代前半程の日本人風男性だった。線は細く、無精髭を生やした、いかにも呪術師といった風貌だ。
道摩法師といえば、あの芦屋道満か?
「俺がマスターだが、文句あるか?」
自身をハズレサーヴァントだとのたまわる目先の男にそう問いかける。それと共に彼のステータスを見たのだが...まあ、ハズレというだけはあるか。先に召喚した三蔵やニトクリスと比べると、どうしても見劣りしてしまう程のステータスではある。まあ一部とんでもない数値にはなっているが。
「いや別に?ただ、希望を言うのなら女のマスターが良かったなぁ」
「そりゃ悪い。残念だが、俺で我慢してくれ」
「了解だマスター。さて、これからよろしく頼むよ」
そう言って握手を求めて来る芦屋道満。別に拒む理由も無いので素直にそれに応じる。
これにて英霊召喚は終了。控えめに言ってもカルデアの戦力増長は十分に叶う結果となった。
* * * *
真名:道摩法師(芦屋道満)
クラス:キャスター
性別:男性
属性:秩序・中庸
身長/体重:169cm/52kg
ステータス:筋力/E ・ 耐久/E ・ 敏捷/D ・ 魔力/A+++ ・ 幸運/D ・ 宝具/B+
* * * *
「おお!貴方が神か!」
「いいえ神殺しです」
召喚を終え、腹を満たしに食堂へ向かう途中。通路で邪ンヌと術ジルにバッタリ会った。
召喚した英霊達は皆一緒にいたので、その中にジャンヌもいたのだ。そして、それを発見した術ジルが半発狂した。
あ、ちなみにヒロインXは既に沈めました。英霊召喚室を出てすぐにセイバー勢とアルトリア(槍)、そしてジャンヌを襲ったので、返り討ちにした。いや、戦力的に見てヒロインXに勝機など無かったのだ。キャスターが3人いるからね、相性的に見ても仕方ないね。
移動中に出会ったのは、何もその3人だけではない。俺の知っているだけで、兄貴、タマモキャット、牛若丸、カエサル、カリギュラ、ロムルス、アタランテ、ヴラド3世、カーミラ、サンソン、エリザベート、ジークフリート、ゲオルギオス、アマデウス、そしてマリー。
たった数百メートルでこれだ。というか、俺の知っている、もしくはあった事のある英霊達にはほぼ全員会った。昨日までは疲れでぶっ倒れてたし、皆と会う機会も無かったんだよなー。
「よくこんなに多くの英霊を集めたね」
「まあ、色々と犠牲にしてきたから...。主にお給料とか」
「なるほど」
非常に遠い目をしだした事から、並々ならぬ金額を注ぎ込んだのだろうことは容易に想像できる。カルデアは食費がタダだからね、食費分まで削れるもんね。
というか、人類最後の望みであるマスターの英霊召喚で金取るってどうなんだよ。
「ちなみに1番金を掛けたサーヴァントは?」
「邪ンヌかなぁ。ジャックも大分頑張ったけど」
「ジャック?」
「うん。ジャック・ザ・リッパー」
「...本当に居たんだ、ジャック・ザ・リッパー」
「そりゃ居るよ〜。これがまた可愛くてねぇ、グヘヘ...」
「よだれよだれ」
未だ謎に包まれている連続殺人鬼(仮)を溺愛する人類最後の希望...。字面だけ見ると完全にアウトだな、これ。
そんな一抹の不安を抱きながら、俺達は食堂へと入った。確かエミヤがいるはずだが、久しぶりに俺自身で調理でも──
「弓兵、おかわりだ!」
「おかわりお願いします、エミヤさん!」
「アーチャー、こちらにもおかわりを」
「もっきゅもっきゅ」
「ターキーだ、ターキーを寄越せ弓兵!」
──アルトリアの系譜、というかアルトリアがいっぱい...。こりゃヒロインXという対セイバー用決戦兵器なんてシロモノが出てくるのも納得だわ。アルトリア多すぎ。
「ええい、私以外のセイバーはデストロイ!あ、こちらも大盛りをお願いします!」
「お前もか」
なにこれ世紀末?
「──フッ。...食料の貯蔵は十分かッ!」
「足りねぇよ馬鹿野郎!ちょっくら食料庫見てくるが、余り期待はすんなよ!ここは頼んだぜ、赤いの!」
「心得た!...別に、この量の調理を1人で捌いてしまっても構わんのだろう?」
「なにあれ」
赤い人と緑の人が何か頑張ってらっしゃる。一方は見覚えがある、というかウチのオカンだが、もう1人は誰だろうか?
「あれ、マスターと...そっちは凌太?うわー、懐かしいね!こっちに来てるってのは聞いてたけど、来た瞬間特異点に行っちゃって、帰ってきたら帰ってきたでずっと寝てるんだから。お姉さん心配しちゃったよ」
厨房にいたのはエミヤと緑の人だけではなく、懐かしのブーティカもだったらしい。彼女の手には大量の食材が山積みにされていた。...これだけあっても足りないとか、やはりアルトリアの食欲は凄まじいのか(戦慄)
「久しぶりだな。いやー、この食堂もすっかり英霊達の巣窟になっちまって...。これ、世界を敵に回しても余裕で勝負できるだろ」
「あはは!まあ、立香はそれだけ優秀なマスターだって事だよ。ね!」
「いやぁ、照れるなぁ」
顔を赤らめて身を捩る藤丸を横目に、ブーティカが抱えていた食料の半分を持つ。
「手伝うぞ。これでも少しは料理出来るんだ」
「それは助かるよ。何せ、ここ最近はよく食べる子が増えたからねぇ。食べる事はいい事だけど、ちょっと手が足りなかったんだ。エミヤ君にも頑張ってはもらってるんだけどね」
「奴はオカンだ。料理を振る舞うこと自体に幸福を感じるような奴だから、存分にこき使ってくれて構わない。マスターである俺が許可を出す」
あはは!と笑いながら厨房の中へと入っていくブーティカ。俺もそれに続き、ギフトカードからエミヤ自製の黒色エプロンを取り出し装着した。
* * * *
「ヘイお待ち!」
「ほう...、中々筋が良いな、凌太」
「美味しいです、凌太さん!」
「もっきゅもっきゅ」
「ジャンクなフードも寄越せトナカイ2号!」
やばい、これはキツい。料理を作った瞬間からその料理が消える。なんて食欲魔神どもだ。ちゃっかり名前覚えられてるし。最後のはなんか違ったけど。
「「「マスター(旦那様)(奏者)の手料理が食べられると聞いて」」」
「また増えやがった...ッ!」
そろそろアルトリア勢の食欲も満たされてくる頃かと思っていたら、新たな刺客が現れた。まあこちらはそこまで食べる方ではないのでまだ大丈夫だろう。
「あっ、久しぶりだなマスター!俺にもご飯くれよ!」
「アルトリアの系譜...ッ!」
大丈夫だろうとか思った矢先にモードレッドが食堂へインしてきた。アイツも結構食うんだよなぁ。
* * * *
翌日。
食料調達の為に色々な時代へとレイシフトし、なんとか1週間分の食料を確保した。本来なら1ヶ月以上持つ筈の量だが、アルトリアが計7名居る為、持って1週間の見積もりだろう。また明日か明後日辺りに食料調達行かないとなぁ。
食料調達を終えた午後。俺はとある人物に拉致された。...何故。
「あーあ。お前さんも運が悪いというかなんというか...。いや、実力的に必然だったのかもしれないな」
「え、兄貴?」
「おう」
俺が無理やり引き連れられてきた訓練場に居たのは、何を隠そう俺の槍術面での師匠、クー・フーリンだった。というか、兄貴は何を言っているのだろうか?実力的?必然?
「力を見せるが良い、勇士よ。出来なければお前の命を貰うまで」
「ッ!」
強烈で濃厚な殺気。それは俺を一瞬のうちに臨戦状態まで持っていくには十分過ぎるレベルである。
このままでは死ぬ。そんな直感に従ってその場を横っ飛びで離れると、一瞬前まで俺のいた場所に数本の朱槍が突き刺さった。
「おお、やるな」
ケラケラと笑いながら、兄貴も臨戦状態に入る。そんな兄貴に油断は無い。それもその筈、現在放たれている威圧感だけならば、あの獅子王よりも上だ。
「覚悟しな、坊主。ここから先は本物の地獄だぞ」
「えっ」
冷や汗をかいた兄貴の姿が消える。権能を行使していない今の状態でも辛うじて俺がついていけるかどうかという程の速度。恐らく、兄貴はまだ本気の速力では無いだろうが、それでも十分過ぎる程に速い。
だが、この威圧感の主はそんな速度の兄貴の突きを余裕を持って回避し、更に反撃までしてみせた。
吹っ飛ぶ兄貴、湧き上がる疑問。今のこの状況はなんだ?兄貴の反応からして敵襲ではないっぽいが、命の危険はヒシヒシと感じる。何これ怖い。
俺を攫った、威圧感を出しまくっている人物。全身タイツの女性は、再び俺に標準を合わせた。
全く訳が分からないが、反撃しないと死ぬという事だけは分かった。なので、最初からフルスロットルで行く。
「我は雷、故に神なり」
聖句を口にし、全身から紫電を撒き散らす。強敵との戦闘とだけあって多少は基礎ステータスが底上げされている。
「甘い」
だが、見えなかった。直感だけを頼りになんとか回避したが、今の突きは殆ど見えなかったのだ。何あの人マジ怖い。
「オラァ!」
「フン」
いつの間にか復活していた兄貴の攻撃も軽く受け流し、再度兄貴を吹っ飛ばす。
「ランサーが死んだ!」
「死んでねぇよ!」
兄貴は吹っ飛びながらも空中で体勢を整え、華麗に着地しながら俺の発言に反論してくる。いや、何故だかこれだけは言わないといけない気がして...。
というか、マジでこの全身タイツの女性は何者なんだ。兄貴と似たような服装だが、同郷の人?だとしたらまあこの強さも納得ですよ。ケルトとインドはおかしい、これ常識。
「よそ見とは余裕だな」
「ちょ、まっ!」
意図せず兄貴に意識が行ってしまい、その隙を全身紫タイツ(仮)につかれ、またしても大量の朱槍が飛んでくる。すんでのところで避けたが、1本掠った。というか、あれゲイ・ボルグじゃね?え、ゲイ・ボルグを複数本ぶん投げてくるって何事?真名解放とかされたら俺普通に死ぬよ?いや冗談抜きで。
「シッ!」
ゲイ・ボルグらしき朱槍を投げた全身紫タイツ(仮)を兄貴の朱槍が襲う。だが、それもどこからか取り出した新しい朱槍で防がれた。マジ何者なんだあの人。
その後も、権能を行使して尚且つ 兄貴&俺 VS. 全身紫タイツ(仮)の実質的な殺し合いは続いた。
ちょうど1時間経つか経たないかというところで、部屋に侵入者の気配を感知した。これはブーティカか?
「おーい!そろそろ晩ご飯だから、そろそろ引き上げて来てねー!」
...俺の緊張感とは真逆の、明るいというか、間延びした声が響く。
「...ふむ。では今日はここまでにしておこう」
「だはぁー!終わった終わったぁ...。あぁ、死ぬかと思った...。てかゲイ・ボルグ2槍流ってオレの立場無くね?」
ブーティカの声で一気に戦闘態勢を解く全身タイツ2人組。
...一体何なんだ。
「なあ兄貴。結局あの女の人って何者?俺、何も知らないまま殺されかけてたんだけど」
「あ?なんだよ師匠、坊主に自分の事教えてねぇのか?てか何も教えずにいきなり修行に付き合わせるとか、アンタ鬼か。...いや、そりゃあ鬼に失礼だったな」
「良く言ったクー・フーリン。そこに直れ」
「...スイマセンデシタ」
師匠?え、兄貴の師匠?それってまさか......!...やっぱ分かんねえや、誰だよ。何となく神性っぽいのは感じるが、まさか半神とか言わないよね?
「ふむ、紹介が遅れたな。スカサハだ。影の国の女王などをしている」
「ついでに言うと年齢不詳のバケモンだ。逆らわない方がいいぜ。容赦ってモンがねぇからな、このバb」
「何か言ったか?」
「いえ、何でも。綺麗なお姉さんだぞって」
「うむ」
...とりあえず2人の力関係は何となくだが分かった。俺も逆らわないようにしておこう。まだ死にたくないし。
にしても、影の国の女王ねぇ。また大層なバケモノが出てきたな。それにバケモノはスカサハだけじゃない。クー・フーリンも十分にバケモノだし、オジマンとかの神代に生きた奴らってのは殆どがキチガイじみている。...修行相手に困らないと考えればいいだろうか。まあその修行で命を落としたら本末転倒もいいところだろうが。
* * * *
第7特異点の特定は終わっているらしいが、その時代が神代なので、満ち溢れているであろう魔素から藤丸の安全を確保するためにスタッフ一同が頑張っている中、俺達は色々な事を経験していた。あ、ちなみに俺の安全なんて誰も考えてなかったよ。エジプトで平気だったんだから別に問題ないだろって判断なんだろうけどさ。
まあそれは兎も角。古代ウルクを目指す前に本当に色々なイベントがありました。
鬼ヶ島擬きの島に飛ばされてゴールデンなお供たちと鬼退治をしたり、事故で南国っぽい無人島へとレイシフトしてウリ坊の仲間らしき奴らを倒しつつサバイバル生活(YARIO村式農作業含む)をしてみたり、また別の島に移動して喋る猪達とハイテクを用いてのカオス状態を繰り広げていたり、魔法少女の治める世界でエミヤ一家(仮)と戦ったり、ローマのローマによるローマの為の祭典に参加したり、ノーマルなエリザとハロウィンなエリザがフュージョンして完成したブレイブなエリザと共にエジプト勢と不毛な争いを起こしたり、オルタでリリィでサンタなジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ・ランサーを相手にエミヤや天草四郎と「俺が、俺達がサンタムだッ!」とか言って薔薇の黒鍵投げてみたりしてました。
事細かに言っていくとキリがない程に濃ゆい時間を過ごし、その経験の中で俺がまた1つ強くなったかなってぐらいで、やっと第7特異点へと向かう事が出来るようになったらしい。
もう正直お腹いっぱいな感じなんだけど、まだ冒険続けるの?神代とか面白そうだけど、絶対一筋縄じゃいかないよなぁ。