問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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神殺しの本領

 

 

 

 

 

 

 

 

大神アモン・ラー。古代エジプトにおける最高位の神性。その名を冠する通り、今のオジマンディアスは“神”そのものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───だったら、結果は見えてるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、退避、退避ーッ!!凌太君が暴れるぞぉ!!」

 

藤丸さんの号令で、俺とオジマンを除く全員がこの玉座からの避難を開始する。当たり前っちゃ当たり前かもしれない。だって、今の俺は“神”を目の前にした神殺しの魔王(カンピオーネ)なのだ。要するに馬鹿みたいに身体能力及び魔力が跳ね上がっているのである。

 

「ヒュウ!やっぱり神殺しなんて事をするキチガイは可笑しいなぁ!魔力計が壊れる程の魔力量ってどんだけさ!この特異点で私の杖は何回壊れれば気が済むんだい!?」

「言うとる場合か!ここも危ないんじゃぞ!?下手したらピラミッドごと崩壊じゃ!」

「これ普通に死ぬわよ!?何考えてんのよ、あのバカは!」

 

...すまない、特に何も考えていない。

 

『神を相手にする』。そう考えた瞬間、強制的に身体能力と魔力が跳ね上がったのだ。これは箱庭で爺さんと闘った時より少し弱いくらいの力。つまり全盛期とほぼ同等の力が湧いてきている。何故急にここまで力が戻ったのか、そんな事は知らない。高い神性を前にしたら封印とか関係無くパワーアップするとか、そんな所だろう。まあ理由は兎も角、この勝負は勝った。

 

「──我は雷、故に神なり」

 

聖句を唱える事で、玉座の間に大量の紫電が迸る。溢れ出た雷だけで、オジマンディアス...、いや、大神アモン・ラーの1部が抉られる。しかし、その抉られた部分は即座に修復された。驚異の回復力だな。面倒だ。

 

だが。

 

「その目玉、全部纏めて真・目玉焼きにしてやるよ!」

 

雷槍を数十本作り出し、同時に射出させる。狙いは目玉。まずは視覚を潰す。

 

「オラオラオラオラァ!!」

 

修復しても即座に雷槍をぶち込む。それを100回程続けた所で大神アモン・ラーの修復は間に合わなくなった。この時既に、玉座の間には俺とアモン・ラーしかいなくなっている。気絶していたニトクリスも藤丸さん達が外へ連れていったようだ。

 

ならば遠慮なくいかせてもらおう。

 

 

そうして、後に藤丸さんに「もうこれ、人理修復とか凌太君だけで出来るんじゃない?ソロモンやっつけて来てよ。こう、サクッとさ。楽勝でしょ?」と言わしめる戦闘、もとい一方的な暴力が始まった。......始まってしまったのだ。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「ふむ。しかしまあ、あまり良いものではないな、魔神柱化というものは!」

「あっさり戻りやがったなぁ...」

 

大神アモン・ラーを下し、トドメの一撃として全力の雷砲(ブラスト)をぶっぱなしてピラミッドの上層部ごと撃ち抜いた。

やり過ぎたかなー、殺しちゃったかなー、などと思っていたのだが、なんとまあ予想に反してオジマンディアスは生きていた。さすがに無傷とはいかなかったようだが、致命傷は避けているっぽい。

 

「当然である!余は太陽王、神々の王なれば!だが、良く戦った!その力は神を名乗る獅子王めに届く刃である!」

「......うん」

 

強がりも良いところだ。あれだけボロクソに負けといて...。

 

「ファラオ...!ご無事ですか!?何やら良くないものと凄まじい雷電を見たのですが!」

「おっ、ニトクリスじゃん。あれ、藤丸さん達は?」

「後ろにいるよー。いやぁ、また無茶をしたねぇ...」

 

ゾロゾロと風通しの良くなった玉座に帰ってくる面々。良かった。巻き添えを喰ってないか心配だったが、皆無事だったようだ。

 

「...何故だろうか。余はこの光景に少しデジャヴを感じるのだが...」

「そうですね。生前のネロさんと共に戦った時、マスターはとある宮殿をこのような状態にした事があります」

「ああ、そんな事もありましたねぇ...」

 

マシュがしみじみと遠い記憶を呼び戻していた。確かに昔、ローマでもレフを殺った時に宮殿を上半分吹き飛ばした。あの時と状況が似ていると言われれば似ているかもしれない。

 

「──さて、何の話だったか」

「共同戦線の話だ、太陽王」

「分かっておる。戦いの後では気まずかろうという、余なりの配慮だ。流さぬか、鰐頭め」

 

ワオ、太陽王まじツンデレ。

 

「汝らは力を示した。ならば余は答えなければならぬ」

「まあ、ニトクリスもオジマンディアスも凌太君が単身で倒したけど...」

 

ボソッと藤丸さんがそう呟いた。確かに、ここで戦ったのはランスロット達と俺だけだ。

 

「余の民だけを守るのは獅子王と同じ、か。玄奘三蔵、貴様の言う通りだ」

 

その後オジマンディアスの反省の言葉を聞き、そして聖杯を貰った。本来なら聖杯を入手したこの瞬間、特異点は修復されるはずなのだが、今回は違う。獅子王、ひいては聖槍ロンゴミニアドを破壊するまでは終わらないのだ。

 

「やる事があるので余はこのエジプトから離れられぬ...。そういうつもりではあったが、まあ、この有り様では守るも何も無いな。既に廃墟と化しているし、貴様らと共に戦場にて王威を振るった方が早そうだ。良かろう!余の神獣兵団を貸し出す!そしてニトクリスと余自身は今この時を持って貴様らの同盟者である!失望させるなよ、異邦のマスター共!」

 

オジマンディアス と ニトクリス が なかま に なった !

 

...ピラミッドの件については、本当にすまないと思っている。

 

 

一応、エジプトの民達を安全な場所まで避難させる為にオジマンディアスとニトクリスは一時エジプトに残るそうだ。決戦が始まるまでには合流するらしいので、それまでは別行動だ。しかし、王であるオジマンディアスや人の良いニトクリスが約束を違えるとは思えないし、大いに安心できる戦力が手に入った。これで獅子王に勝てるだろう。...過剰戦力?仕方ないじゃないか、そうなってしまったんだもの。

 

 

余談だが、こちらの陣営にはアーラシュがいるよ、とオジマンに伝えたら大層喜び、且つやる気になっていた。オジマンがアーラシュをリスペクトしているというダ・ヴィンチちゃんの話は本当だったらしい。さすがは大英雄アーラシュ、居るだけで俺達のプラスになる。そこにシビれる憧れるぅ!

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

「むぅ...。ちょっち、やり過ぎたかな〜......」

 

そんな俺の独り言は山岳の闇夜に溶けていく。砂漠を後にして、数日ぶりに帰ってきた山の村ではノッブ主催の大宴会が開かれた。明日の決戦に備えて英気を養おうというコンセプトだったのだが、殆どが酔い潰れる程の盛りを見せている。そんな中、腹も膨れた俺は1人、夜風に当たりに来ていた。

 

やり過ぎた、とは戦力増幅の事、それからハサン達の事である。

戦力に関しては、なんかもう凄かった。

神殺しの魔王()、円卓の騎士が3人、ローマ皇帝(ネロ)、“山の翁”が5人、竜の魔女(邪ンヌ)第六天魔王(ノッブ)、玄奘三蔵に東洋一の龍殺し(トータ)、大英雄アーラシュ、万能の天才(ダ・ヴィンチちゃん)、オジマンディアス、ニトクリス、神獣兵団、粛正騎士(ランスロット部隊)、そして一般兵が約1万。

 

...大陸が滅ぶんじゃないかな?

 

獅子王側の粛正騎士がどの程度いるのかは知らないが、こちらにも対粛正騎士用の切り札があるし何も問題はない。

ガヴェインと再戦したい所だが、あの3倍ゴリラは初代“山の翁”が抑えるそうなので彼は無視する。

残る戦力はモードレッドとアグラヴェイン、そして獅子王。彼らを倒す為の戦力など、とうに集め終えている。

...本当にやり過ぎたかもしれないが、まあ楽に勝てるならそれに越したことは無い。

俺の出番は、聖都の門をぶち破る事だけだ。あれは普通の攻撃では傷1つ付けられない代物らしいが、聖都とは獅子王の槍であるロンゴミニアドで創られている。つまりあれは神造物なのだ。それならば、俺の“神屠る光芒の槍(ダイシーダ・リヒト)”で壊せるはずである。

 

そしてもう1つやり過ぎた事柄が。

先程、最後の打ち合わせとか言ってハサン達と戦ったのだが、テンションの上がっていた俺が瞬殺してしまったのだ。明日までに万全に回復出来るか、少々心配である。ごめん、百貌の。

 

「ふん〜ふ〜、ぎゃ〜て〜、ら〜ら〜、は〜ら〜ぎゃ〜て〜。めでたし〜はらそう〜、ほじ〜そわか〜♪」

 

...なんつー鼻歌だよ。

 

「ふん〜ふ〜...ん?あら、リョータじゃない。1人でどうしたの?散歩?」

「まあ、そんなところかな。そっちは?」

 

崖の淵に座り込んでよく分からない鼻歌を歌っていたのは三蔵だった。なになら巻物っぽいものを持っているが...、何してんだろ。

 

「あたし?あたしは日課の書き物よ。今日の出来事を巻物に記してるの。いづれこれが三蔵法師苦難道行全百巻としてカルデ...いえ、お寺に並ぶんだから」

 

...カルデアにも何やらそれっぽい資料がある、とマシュに聞いたが、まさかこいつ...。

 

「はい、どーぞ!隣に座りなさいな。ちょっと怖いけど、この崖からの景色、綺麗よ?」

「んじゃ、お言葉に甘えて」

 

指定された通り、三蔵の隣に腰を下ろす。三蔵は書き物を終えたらしく、巻物の筆を片付けていた。

 

「.....................」

「.....................」

 

無言。特に話題の無い俺はボーっと星空を眺めるが、三蔵はこの沈黙が苦手なようだ。あからさまにソワソワしている。

 

「...もう!なんか喋って!」

「お、おう...」

 

余程我慢ならなかったのだろうか。顔を真っ赤にしながら話題提供を促してくる。...ふぅむ、話題なぁ...。

 

「じゃあ、明日の話でもする?抱負とか」

「明日の抱負?つまりガッツって事ね?バッチリよ!」

「The・脳筋思考。さすが俺と旅をしただけあるなぁ...」

「...そうね。マシュや立香ともこんな話をしたわ。あの時は獅子王の事も、そしてオジマンディアス王の事も良く理解していなかった」

「ちょっと待て。俺の脳筋思考を藤丸さん達と既に話してたの?え、何で?」

「だからどっちの味方をするのか、どっちが正しいのか。あたしには分からなかった」

「無視ですかそうですか。ちくしょう」

「だからキミ達の味方をする事にした。あなたや立香が1番分かりやすかったから」

「ふーん...。今は?」

「今はハッキリ決まってる。リョータ達の味方である事は変わらないけど...、あたしはあたしの信条にかけて獅子王と戦う。聖槍は絶対に壊してみせる。とっておきの仏罰で獅子王の目を覚まさせてあげるんだから!」

「...そりゃあ頼もしいな。期待してるぜ、自称・俺のお師匠様?」

「ええ、任せておいて!」

 

実際、三蔵は強力なサーヴァントだ。単純な強さではなく、その存在がとんでもなく強い。そういうところは素直に尊敬するし、心強いのだ。

 

「...ねえ、リョータ。あのね?その、この時代を救ったら...、その、ご褒美として...あたしも......。ううん、やっぱり何でもない」

 

三蔵が何かを言いかけ、そしてやめた。だがまあ、この会話の流れで大体は察せる。ネロの言葉を借りると「愛いやつめ」ってところか。

 

「...三蔵、ちょっとだけ我慢しろよ」

「え?...アイタッ!」

 

そう言い、三蔵の了承も得ずに彼女の髪を手櫛の要領で梳く。その際に髪を数本ちぎり、自分のポケットに入れた。さすがにギフトとはみなされないようで、ギフトカードには収納できなかったのだ。

 

「ちょっと、何するのよ!痛かったじゃない!」

「悪い悪い。でもほら、本人の髪の毛って聖遺物代わりになるからさ」

「聖遺物?代わり?...あっ」

 

俺の行動の真意を察した三蔵が、なにやら驚いた様な顔でこちらを見てくる。

 

「明日まで頑張ったらそのご褒美として、お前をカルデアに喚んでやるよ。まあ、召喚者が俺か藤丸さんかは分からんがな」

 

三蔵の視線が何となく恥ずかしく感じた俺は、立ち上がってその場を去る。その去り際に、エミヤ仕込みのニヒルな笑み、格好つけた笑みというやつを三蔵に向けてやった。

...恥ずかしい。エミヤの奴はこんな事を平然とやっていたのか。そりゃ女難の相も出ますわ。

 

そのまま村に戻ろうとしたら、三蔵も後ろからトコトコと着いてきた。その顔はニコニコとした満面の笑顔だった。自己満の部分も多々あったが、まあ彼女にとっても良い事を俺はしたのかもしれない。良かった。

 

「ありがとう、リョータ。これが終わったら、正式にあたしの弟子にしてあげるから、楽しみに待ってなさいよ!」

「弟子にはならん」

「なんでよー!?」

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

「じゃあ、蹂躙を始めちゃう?」

「女の子、そして人類最後の希望が言う言葉じゃねぇなぁ」

 

決戦当日。時間は午前7時。目視で聖都が確認出来る位置に、俺たち反獅子王連合軍は陣取っていた。

今はオジマン達エジプト勢と初代“山の翁”を待っている状態だ。だが、そろそろ仕掛けなければこちらが後手に回る事となる。面倒だが、ガヴェインは俺と2,3人の英霊で相手取るしかないだろう。

 

と、進軍の準備を整えた瞬間に初代“山の翁”が動いた。一瞬だが、奴の気配を感じ取れたのだ。俺なんかに気取られずに登場する事も出来ただろうに、何というか、律儀な人だ。

そして、その気配と共に砂漠で経験した砂嵐が巻き起こった。十中八九、じいじの仕業だろう。

 

『驚いたな。その砂嵐からは魔力を感じない。つまり完全なる自然現象だ。まさに“天からの恵み”ってやつだね』

「今、砂嵐の中に髑髏仮面が...。じいじ、来てくれたんだ!」

「立香殿、その呼び名は我らの心臓に悪い。いや本当に」

 

始まる前からハサン一同に精神的ダメージが入ったが、まあ大丈夫だろう。

 

「全員弓は捨てろ!この嵐では使い物にならん!速さが命だ、全力で駆けよ!総員、進めぇ!!!」

「「「「「「オォオォォォオオオ!!!!!!」」」」」」

 

ランスロットの掛け声と共に、遊撃騎士達が突き進む。敵は粛正騎士、嘗ての同胞。誰が好き好んで闘おうか。それでも彼らは剣を取る。彼らの王、獅子王の誤ちを正す為に。ならば、俺は少しでも彼らの力になろう。正確には、俺の仲間が、だが。

 

「さあ、出番だ。好きなだけ暴れて来い」

 

 

──皆は覚えているだろうか?

我らがコミュニティ“ファミリア”の愛玩動物を。

 

 

「──やれ、ウリ坊!キミに決めた!」

『GRAAAAAAAAAA!!!!!』

 

その気になれば神とか催淫ホクロ持ちの槍兵とかをも殺す、キチガイ魔境ケルトの産んだ食物連鎖の頂点。INOSISI のウリ坊である。

 

「ウリ坊!ウリ坊ではないか!今まで見かけないと思っておったら、そんな所におったのか!」

「...久しぶりに見ました。兵藤一誠の稽古を付けていた時以来でしょうか?」

「べっ、別に忘れてた訳じゃないよ?ホントだよ?ただウリ坊に相応しい出番が今まで無かっただけでね?」

 

嘘である。実は、ギフトカードに入れてた食料が紛失していたので調べたら、ギフトカード内でウリ坊が食っていた事が発覚したのだ。そしてそこでウリ坊の存在も思い出した、という事である。いや、本当ごめんね、ウリ坊。あと、ギフトカード内で飯とか食えるんだ。内部構造ってどうなってんだろ?

 

「フハハハハ!存分に暴れておるではないか、同盟者よ!」

 

ギフトカードを訝しげに眺めていると、上空から偉そうな声が聞こえてきた。いや、実際偉いんだけどさ。

 

「ファラオ・オジマンディアス、降臨である!」

「讃えなさい、山と聖都の民達よ!太陽王のお通りです、伏して尊顔をご覧なさい!」

「きた、ファラオズと神獣兵団きた!これで勝つる、楽に勝つる!」

 

藤丸さんが興奮した様子でそう語るが、まあ分からないでもない。エジプト勢の到着。これを以て俺達の全勢力が揃ったのだから。

オジマンディアスの登場にアーラシュが笑いながら話しかけ、それにオジマンディアスが何とも言えない表情で応対しているが、まあ放っておいても大丈夫だろう。今は俺の仕事を果たす。

 

「んじゃ、盛大にいきますか」

 

そう言って、俺は空高く跳躍する。別に聖都の門の前まで移動しても良いのだが、こんなふうに上空から放つ攻撃の方が、相手に与える印象は強いものだ。

大体300m程の高さで最高点に達し、一瞬の停滞が訪れる。

 

「ブチ抜け ── “神屠る光芒の槍(ダイシーダ・リヒト)”ッ!!」

 

詰め込めるだけ魔力を詰め込んだ対神武器が、一直線に聖都の門へと飛翔する。狙いは1寸違わず、放った槍は門の中心へ吸い込まれるように突き刺さった。そして──

 

「門が吹き飛んだぞぉ!!」

 

一般兵の誰かがそう叫び、歓喜の声をあげる。ふむ、いっちょ上がり、ってところか。

 

「んじゃあ、俺は槍の回収とガヴェインの足止めしてくるわ。初代“山の翁”がガヴェインと闘ってたらそのまま俺も聖都に入る。それでOK?」

「OK。ありがとね、凌太君。さあ、私達も負けてられないよ!マシュ、邪ンヌ、ノッブ!」

「はいっ!」

「当然です。あんなス馬鹿(スカした馬鹿の略)なんかに遅れを取ってたまるもんですか」

「いや〜、あの神殺しに遅れを取るのは当たり前じゃろ〜。あんなんチートぞ?」

「空気読んでノッブ!」

 

若干締まらないが、まあ大丈夫だろう。それに彼女らにはダ・ヴィンチちゃんとアーラシュ、ベディ、そしてエジプト勢がついている。心配など、するだけ無駄というものだ。

 

 

 

 

その後は静謐ちゃん達を引連れて槍を回収し、ガヴェインと数回打ち合ったら初代“山の翁”が参戦して来たので、俺はその場を離脱。ガヴェインはじいじに任せて俺達は聖都に向かう。

途中で三蔵と藤太にも合流し、外の粛正騎士達はエジプト勢とアーラシュ、そしてウリ坊に、モードレッドとその部隊はランスロット達に任せて全員で聖都に侵入。獅子王が居るであろう城へと駆ける。

すると、先に聖都に入っていた藤丸さん達に追いついた。やけにゆっくり進んでいるなと思ったら、現在はモードレッドを相手にしているらしい。おい、何してんのランスロット。

 

「ちっ、面倒な...。帰ったらモーさんはお仕置き決定だな」

「言われもない事で仕置を受けるのか、モードレッドは...」

 

藤太がそう口にするが、別に本気でお仕置きをする訳ではない。ただ、ちょっとグチグチ言うかもしれないけど。

 

「仕方ない。三蔵と藤太、ネロはそのまま突っ込め。俺とハサン一同は背後からモードレッドに奇襲を......、ワオ」

 

藤丸さん達に加勢しようと、各英霊に指示だしをしていると、聖都の城から光の柱が上がった。その光量、そして魔力量は全盛期の“振り翳せり天雷の咆哮(ネメジス・アルピルク)”と同等程だ。

 

「何よあれ!?獅子王はもう聖槍の準備を終えてたの!?」

「諦めんな、何とかする」

 

騒ぐ面々を黙らせ、そして魔力を練る。出来るかどうかは分からないが、俺の全力を以てあの光の柱を破壊する。

 

「全員離れてろ。というか、ハサン以外は藤丸さんと合流、モードレッドを叩いてこい。ハサンは予定通り隙を伺ってモードレッドに奇襲。そうだな、W静謐でアイツの命を刈り取ってこい。呪腕と百貌は陽動込みでモードレッドの剣を奪取。宝具を撃たせるな。よし、全員...」

 

行け!と言う前にまた驚くべき事が起きた。

 

「奏者!なんかピラミッドが落ちてきたのだが!」

「ファラオ!さすがファラオ、頼りになる!」

 

恐らくオジマンディアスの全力であるピラミッド落とし。光の柱から放たれた“裁きの光”もニトクリスが冥界の鏡とやらで反射させているのが、遠目ではあるが目視で確認出来る。さすがエジプト勢、伊達に偉そうじゃないな!

 

「んじゃ、オジマン達が頑張ってくれてるから、その間にモードレッド撃破で。散!」

 

サッ、と俺とハサン一同が建物の陰に隠れる。ネロ達はそのまま直進、間も無くモードレッドと激突した。

その間に俺はモードレッドの背後へ回り、隙を伺う。待つこと20秒。思ったよりも早くモードレッドが隙を見せた。浅はかなり。

 

「これこそは、我が父を滅ぼし邪剣!」

「知ってる」

「んなっ!?」

 

モードレッドが宝具を放とうとする瞬間、魔力を込める為に動きが止まるのだ。そこを狙って俺と呪腕、そして分身した百貌が寄って集ってモードレッドを攻撃、そしてクラレントをモードレッドの手から奪う。

剣を奪われた事でまたモードレッドに隙が生まれる。そこを見逃す程、山の翁は優しくは無い。

 

「熱く、熱く、蕩けるように」

「あなたの体と心を焼き尽くす」

 

「「“妄想毒身(ザバーニーヤ)”」」

 

2人の静謐のハサンが、同時にモードレッドへと接触する。あれは対毒スキルを以てしても、完全に無効化することは難しいだろう。俺はほら、そもそも毒自体が効かないから効果は無いだろうけど。

 

「ガッハ...ッ!クッ...ソが!俺を、倒すのは...アーサー王だけ、だッ!こんな、と、ころで...!」

「例え相手が誰であろうと、敵に慈悲なんてかけないよ、俺は」

 

最期の意地か、即死級の毒を喰らってもまだ立ち上がったモードレッドに、槍を突き刺す。それは正確にモードレッドの霊基を穿ち、現界を保てなくなったモードレッドは消えた。

...気持ちの良いものじゃねえな。記憶が無いとは言えども、仲間を殺すってのは。まあ敵として俺の前に立ち塞がったんだから是非も無いないよね。

 

「さてと。オジマンの方はどうよ?」

「オジマンディアス王の宝具、光の柱と拮抗しています!ですが、壊すまでには至りません...ッ!」

「ふぅむ...。加勢するか?」

 

1度はやめた魔力練りを再開しようとしていると、またもやとんでもない光量の攻撃が光の柱へ襲いかかる。流星のようなソレは、拮抗しているピラミッドと柱の接点へ直撃し、全てを巻き込んで消滅させた。

 

「ワーオ......」

「今のは...」

「うむ。綺麗ではあったが、どことなく儚いものを感じる光であったな」

 

...こちらにはアーラシュが居た。まあ、そういう事だろう。その内、またカルデアとかで会う機会もあるだろうし、その時に目一杯文句を言ってやる。

 

まあ、アーラシュへの文句は置いておいて、今の一撃で光の柱は消え去り、城への道が開かれた。

残る円卓の騎士はアグラヴェイン1人。しかも、モードレッドが居なくなった今、アグラヴェインはランスロットが相手取る事となっている。騎士同士で並々ならぬ因縁的な何かがあるのだろう。いや、良くは知らないけど。とりあえずは俺達は獅子王に集中しようか。

 

「ささ!凌太さん、サクッといっちゃいましょう!」

「おい、藤丸立香。てめぇ、次は働けよ?」

「い、いえっさー...」

 

藤丸さんが俺に全てを任せようとしてきたので、眼光を効かせて脅す。ニトクリス戦のこと、俺はまだ根に持ってるからな。

 

 

 

 

 


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