土方さんとか限定礼装とか欲しいけど...、石が無いんじゃあ...。
色々あったが、俺達は無事地上に出てきた。帰りも敵が出てきたのだが、ワイバーンはまだしもグレートドラゴンが配置されてるのはどうなんだよ。死ぬかと思ったわ。
ホームズの種明かしは帰り道で歩きながら聞き、そして獅子王がしようとしている事も聞いた。
『自国とその民以外を完全に切り捨てる』、獅子王がしようとしている事はそういうものらしい。今回の特異点は魔術王による人理焼却ではなく、獅子王が人類史からこの世界を引き離している事から引き起こってきる特異点なのだとか。最果てにて輝ける槍、か...。面倒になってきたなぁ。とりあえず獅子王ぶっ飛ばせばOK?
まあ、そんな話は置いといて。現在の話をしようか。現実から目を逸らすのはいけないよね。
「覚悟は良いですか、お父さん!」
「その呼び方どうにかならないか!こう、複雑な気持ちになるのだが!」
「ランスロット卿の家庭は複雑でしたからねぇ...」
「やっちゃえ、マーシューカー!」
「はいっ!歯を食いしばってください、お父さん!」
「だから呼び方をだな!」
「ほら、突っ込めよ邪ンヌ。俺の時みたいに」
「嫌よ、面倒くさい。それに、私はもう突っ込まないって決めたのよ」
「フォウ、フォーウ!!」
端的に言ってマシュが暴れだしました。
マシュに力を貸している英霊、ギャラハッドはランスロットの息子だったらしい。ギャラハッド本人は、マシュ曰く「父と思っていたのは幼少期だけ」と思っているらしい。まあ人妻ニアとか言い出しちゃう父親なんざ俺もノーセンキューだ。
アトラス院の出口付近でホームズと別れた後、外に出るとそこではランスロットが待ち構えていた。もしかしたら、という思いで、獅子王のやろうとしている事を知っているのか、とランスロットに問う。知らないのであれば、そして、それを知ったランスロットが王に叛逆するのであれば万々歳。しかし、返ってきた答えはYesだった。ランスロットはもちろん、円卓の騎士は全員が獅子王の目的を知っている。その上で従っているのだと明言した。
そこでマシュがキレた。「おーこーりーまーしーたー!!」って言ってた。そして、感情が高まったからなのか、それとも真名を知ったからなのかは分からないが、マシュの姿が変わったのだ。いつものへそ出しではなく、ちゃんとお腹も守る鎧へと進化し、剣も携えていた。エミヤが考慮していた「マシュ、あの子はお腹を冷やさないだろうか...」という心配もこれで晴れるだろう。
そして、マシュが使っていた擬似宝具である『
まあ、それはともかく。
「さあ観念して下さいお父さん!次はお城を落としますよ!」
攻撃力も高い方かもしれない...。
「そこまで!?ちょ、落ち着いて下さいマシュ殿!それはさすがにランスロット卿が死にますって!」
「やっちゃえ、マーシューカー!」
「立香まで!? りょ、凌太!貴方からも静止の言葉を掛けてください!」
「...南無三。ランスロットは、良い、騎士だった...」
「諦めた!?諦めたらそこで試合終了ですよ凌太!」
「や、やめろ...、やめるんだマシュ...。落ち着いて、そう、落ち着いて私の話を聞いて欲しい。うん、私の負けだ。だからその振り翳してる盾を一旦降ろしてだね...」
「これは全ての疵、全ての怨恨を癒す我等が故郷──」
「わーッ!待って待って待って!待ってくださいマシュ殿!ほら、ランスロット卿も負けを認めているのですし、ここは穏便に!ね!?」
「──...ちっ。ベディさんに免じて今日は許します。次、私の前で悪事や女性にだらしない発言、又は行動をとった場合、貴方には天罰ではなく我らが故郷が落ちると知ってください」
「い、いえす、さー...」
今舌打ちしたぜあの子。マシュ、恐ろしい子...!
とまあ、色々あったがランスロット卿が仲間になりました。何でも、彼自身、獅子王のしている事を良しと思っている訳ではなく、王の騎士として振る舞っていただけらしい。俺達、特にマシュとベディに負けた以上は王の騎士は名乗れないし、敗者の命は勝者に預ける、との事だ。やったね、戦力が増えたよ。ただ、ネロに手を出したら容赦なく座に還す。もちろん静謐ちゃんへ手を出した場合も然りだ。そこら辺はちゃんと線引きして欲しいね、自称・人妻ニア。
という訳で、ランスロットを仲間に引き入れた俺達は、彼が難民を保護していた村へと赴いていた。そこには、ランスロットが聖抜をして選ばれ無かった人々や獅子王の意向に背いた騎士達が保護されており、騎士、砂漠の民、山の民などが数多く生活しているようだった。
「この穀潰し! 顔に似合わずやりますね、お父さん!」
「ぐはァ!」
ランス は 100 の ダメージ を うけた。
「感想がヘビィだわ、マシュ」
「父親に対する娘の反応とか、普通こんなもんじゃろ。まあ儂はどちらかと言うと親父殿好きだったけどな。ほら、好き過ぎて葬式で遺灰を鷲掴んでバラ撒いちゃうレベル」
「愛情が微妙に歪んでる気がしないでもないわね、それ...」
と、そんな話に耳を傾けていると、難民キャンプの中から覚えのある気配を感じた。ふむ、やはりというかなんというか。しぶとく生きてたのか。
「なんだい、騒がしいと思ったらやっと到着したのか。いやはや、待ちくたびれたよ」
「フォー──」
「え──」
「ダ──!」
「ハァイ!ナイスリアクションだね、諸君!久しぶり、と言っておこうかな?万能天才ダ・ヴィンチちゃん、数日ぶりに登場サ☆」
自爆テロ紛いの事をしでかした天才が、何の悪びれた様子も無く、飄々と俺達の前に現れた。
* * * *
「──もう一度聞きますよ、何を言っているんですか?」
「......いやぁ、遠目で見ても凄く美人だったから...」
「お父さん最低です」
「ぐはァ!!」
ランス は 300 の ダメージ を うけた。
というか、今のはランスロットが全面的に悪い気がする。自爆テロ紛いに突っ込んできたダ・ヴィンチちゃんを、美人だからという理由だけで助け出し、更には保護していたとは...。これが円卓最強の騎士か(驚愕)
難民キャンプは砂漠をギリギリ超えた荒野に位置するので、ロマンとの通信も復活。アトラス院での成果も、ホームズと遭遇した、という事実だけを隠して報告した。ホームズの存在を隠す事は本人きっての頼みだったからな、仕方ない。
さて。無事ダ・ヴィンチちゃんとも合流し、更にはランスロットとその騎士団まで仲間になった。正直、これが俺達に用意出来る最大の戦力であると俺は思っていたのだが、藤丸さんは違ったらしい。
「オジマンディアスに声をかけよう」
「...正気ですか?」
ベディの疑問も尤もだ。しかし、オジマンディアスとニトクリスをこちらに引き込めれば、それほど嬉しい事はない。あの太陽王達は強いからな。
「俺は藤丸さんに賛成だ。オジマンディアスのやつに『俺達は獅子王に勝つだけの力があるぞ』と誇示出来れば、アイツはこちら側に付くだろう。勘だけど」
「確かにの。儂もそうじゃが、領主や王等という奴らは、強い方と同盟を組む。負け戦などしたくは無いからな。まあ、自ら劣境に立とうとする変態は別じゃろうが」
「...ということは、オジマンディアスと肩を並べるだけの戦力を見せつければ良いの?」
「そういうこったな。大丈夫、オジマンディアスは自称・神王だし、強い神性も感じた。なら、俺の独壇場だ。任せろ」
「なんか、別の意味で不安になってきたなぁ...」
とまあ、そんな話し合いがなされて、対オジマンディアスを決行する事になった。
ベディは一旦山へ帰還。山の翁たるハサン達に現状を伝えに行ってもらった。ベディの霊基は俺でも分かる程にボロボロだ。護衛無しでは多少の戦闘は避けられないだろうが、それでも良い休暇になるはず。彼の力は、最終決戦である獅子王戦の為に温存しておいてもらわないと困る。
それに、オジマンディアスならベディ抜きでも大丈夫だ。何故って?
* * * *
という訳で、1晩野宿で明かした後、俺達は再び太陽王の城、もといピラミッドへと帰ってきた。『首を洗って待っていろ』という手紙をダ・ヴィンチちゃんが送り付けていたらしく、到着早々スフィンクスの群れが襲ってきたが、それらはランスロットとその騎士達が相手取ってくれている。その間に、俺達はピラミッド内へ侵入。三蔵が「このピラミッドは獅子王の聖都と同じ、シェルターの役目を担っている。つまり、太陽王は獅子王と同じ考えを持っている」などと言っていたが関係ない。勝てば官軍負ければ賊軍、要するに力で捻じ伏せれば良いのだ。対ファラオ2人か...。オラ、ワクワクすっぞ。
「...止まりなさい、不敬ですよ!」
時たま襲い掛かる謎のヒトデマンを蹴散らしながら玉座へと足を運んでいると、不意にそんな声が聞こえた。
「...女王、ニトクリス...!」
「ほう、ニトリか」
「だから、誰がお値段以上ですか!!本当に不敬ですよ、坂元凌太!」
「古代ファラオが日本の大手家具企業の名を知っているなんて...。天才の私ですらそれは予想していなかった...」
藤丸さんと同じ感想を述べているダ・ヴィンチちゃんは放って置いて、俺は聖句を唱えて槍を構える。今回使用するのはアッサルの槍ではなく
「この前は世話になったな、ニトクリス。助かった」
「...いえ、構いません。そしてよくここまで辿り着きました。その事は素直に賛美しましょう。ですが、それと試練はまた別のモノ。力無き者の声を、ファラオ・オジマンディアスのお耳へと届かせる訳にはいきません。互いの理念、思想はナイルの猛りに流す時。この先に進みたければ、我が屍を乗り越えなさい!」
カツン!と、手持ちの杖を床に打ち付けるニトクリス。どうやら、あちらも本気のようだ。発している魔力量が以前戦った時と比べ物にならない程多い。だが、それはこちらも同じこと。単純な数の暴力であるし、更には俺達も本気を出すのだ。
「行くぞ、ニトクリス」
「...宜しい。勇者とは、そうでなくてはなりません。──では、試練を始めます!王に拝謁したければ、我が召喚に応じた異形を屠れ!我が名はファラオ・ニトクリス!勝利の暁には、そなたらに栄光へと道を指し示そう!」
「そんなのはいらん。俺達が勝ったらお前が俺達の仲間になる。それだけでいい」
そう言って、ニトクリスが召喚した異形、ゾンビらしき兵士達を雷で焼き尽くしながらニトクリスに詰め寄る。
「くっ! 出ませい!」
襲い掛かる俺の雷をギリギリで避け、ニトクリスは更に異形を召喚する。今度はゾンビではなく、白いよく分からない物体。やけに据わった目をしており、布を頭から被ったようなその姿に似合わず、強力な神性をソレから感じる。
「...まあ、関係ないか」
軽く10体は出てきたソレを纏めて雷で屠り、再度ニトクリスに接近する。槍を当てれば俺の勝ち。敵が神に近い程、この槍は真価を発揮するのだ。...本当に、何故爺さんの知り合いである鍛冶神とやらは自分らの首を絞めるような武器を俺なんかに渡したのだろうか?もしや、これを使って爺さんを討ち滅ぼせというお告げだろうか?だったらごめん。爺さんに勝つにはまだまだ力が足りないです。
「ブチ抜け、“
「ホルアクティッ!」
突き穿った俺の槍を、ホルアクティとかいう飛行物体で受け止めるニトクリス。ホルアクティはボロボロに崩壊して塵となったが、ニトクリスは未だ健在である。なかなか攻めきれないな。室内だし、雷を所構わずぶちかませる訳じゃないし、相手がすばしっこい。というか、藤丸さん達は何してんの。援護プリーズ。
「凌太君ガンバレー」
「儂は信じとるぞ、凌太!そなたなら、必ず勝つって!」
「その無駄に可愛らしい声をやめなさい、信長。貴女のその声を聞くと寒気がします」
「えー」
「ダ・ヴィンチちゃん、そなたは何をしておるのだ?」
「良くぞ聞いてくれましたー!ふっふーん。実はね、凌太君の戦闘場面を録画してるんだー。後で見直そうと思ってね。今後のレイシフトシュミレーターのエネミーの強化に役立てようと思うのだよ」
「ふむ。エネミーが全員奏者の様になってしまったら、地獄絵図も良いところだな」
「頑張って下さい、マスター」
「ふぅむ。やはり凌太は人とは言い難いな。本当に生きた人間なのか?英霊である、と言われた方が納得出来るのだが...」
「流石はアタシの弟子ね!」
「働けテメェらぁ!!」
皆さん、レジャーシートを敷いて観戦してやがった。藤太に至っては酒まで持ち出してやがる。戦えよお前ら。一応はマスターである俺を対英霊戦で1人にするな、と声を大にして言いたい。
「...勇者とは、時に孤独なものですよ、凌太」
「くっそぅ!!」
* * * *
その後、半分キレた俺の手によってニトクリスは下された。気絶したニトクリスを担いで玉座に向かう。
「ニトクリスを下したか。良い、褒めてつかわす。して、何用だ、異邦のマスター共よ。余に首を預けに来たか、あるいは情けを乞いに来たか。どちらでも良いぞ?望むままに殺してやろう」
「要件は既に伝えるでしょ?」
余裕綽々といった感じでそう還す藤丸さん。
...いかにも自分達がニトクリスを倒して試練を乗り越えましたよ的な雰囲気を出してるけど、試練乗り越えたの俺だけだからね?君達は見てただけだからね?
「ふむ...。確か、余に共に戦え、などという戯言だったが...、なんと、あれは本気だったか!ふはははははは!!余ともあろう者が真偽を見抜けぬとは!腹を抱えて笑った挙句焼き捨てたわ!だが許す、特に赦す!あれほどまでに笑ったのはいつぶりか!認めよう、異邦のマスターよ。貴様には才能がある。余りにも現実離れした夢を見る才能がな!空想を知らぬ余には到底持ち得ない才能だ、ふはははははは!」
「...ちょっと、それは無いんじゃない、オジマンディアス王。あたしは兎も角、立香は本気なのよ?」
俺はどうなんだ、と思ったが、まあ今気にするべきはそこではないためスルーする。
「貴様は...。余の断りも無しに砂漠を渡った玄奘三蔵か。良い、その偉業に免じて質問することを許す。述べよ」
「ありがとうございます、オジマンディアス王。...貴方は、聞いた通りの人なのね」
「なに?」
「...言いたい事は沢山あるけれど、今は置いておくわ。でも、世界の果てはすぐそこまで来ている。それを貴方は分かっているの?余の民を守る、なんて言っているけど、貴方は民の事を理解していない。貴方と違って、砂漠の民は砂漠を失いたくないのよ!エジプトを救う?自分の民だけを救う?そんなの、獅子王と変わらないじゃない!貴方、エジプト最強の王様なんでしょ!?だったら、自分の領地だけじゃなくて、世界も救いなさいよ、バカーーッ!!!」
「.....................」
まさかまさかのマシンガントーク。さしもの太陽王も絶句である。開いた口が塞がらないとはこの事か。
...なんというか、流石だよ。我らが師匠(自称)は。
「ふは、ふはは、ふはははははは、はははははははは!!!」
「うわっ、急に笑い出して...。壊れたの?あの王様」
邪ンヌが心底引いたような表情を浮かべるが、確かに暴論とも取れる三蔵の言葉を聞いて不愉快を通り越していっそ痛快になっているのかもしれない。めっちゃ笑っとるがな、太陽王。
「はははは!...ふむ、それは我が思想の外にあった。だが、余に...、ファラオ・オジマンディアスに世界は救えぬ。優れた王とは、すなわち暴君でもある。支配し、脅かす側の王である。故に、余に世界は救えぬ。余は君臨し続けるのだ。倒されるべき王として、な」
「...オジマンディアス王...。でも、それは偶々だったんじゃない?今回くらいは善い事をしても、仏罰は当たらないと思うの」
「ふっ── それはどうかな?少なくとも、今の余は貴様らを殺したくて仕方が無い!玄奘三蔵、貴様の問いは中々に良かった!だが貴様の言葉の中には1つ、徹底的に足りぬものがある!」
そう言ったオジマンディアスは、懐から聖杯を取り出した。オジマンディアスを取り巻く魔力の奔流が半端じゃない。何を仕掛ける気だ?
「え、足りないってなに...? あたし、また失敗しちゃった?」
泣きそうな顔でそう言う三蔵。それに追い討ちをかけるように、オジマンディアスが口を開いた。
「言うまでもなかろう?貴様らが世界を救うに値するか否か──、その証明がされていない。故に、余がその機会を与えてやろうと言っているのだ!」
高らかにそう宣言するファラオ・オジマンディアス。すると、彼は自身の腕を傷付けて血を聖杯に注ぎ、それを一気に飲み干した。
何をしているのかは分からないが、とりあえず奴を倒せば万事解決なのだろうという事は理解した。ならばやる事は1つである。
「大丈夫だよ、お師匠。アンタは何も失敗なんてしてない。大丈夫、後は弟子達に任せろ」
「うむ、よく言ったぞ弟弟子。三蔵の弟子になった覚えがない者同士、派手にかますとしようか!」
三蔵法師には、やはり高いカリスマ性があるようだ。弟子になりたいとまではいかないが、この人を助けたいとは強く思う。それは俺だけでなく、藤太や藤丸さん達も一緒のようだ。全員が、対オジマンディアスに向けて構えを取り始める。俺も槍を構え、担いでいたニトクリスを隅っこに置いた。
その間にオジマンディアスの体に変化が起こる。よく分からない金色の肉柱へと化したのだ。
...原型留めてないんだけど、これは変身で片付けて良い案件なのかな?
「我が名はアモン、魔神アモン ─── いいや、真なる名で呼ぶが良い。余の大神殿で祀る真なる神が1柱!其の名、大神アモン・ラーである!」
後に知ったのだが、人理の大敵、倒すべきラスボス。その名をソロモン。そして、そのソロモンの使い魔、魔神柱。
その魔神柱の1柱が、今俺達の前に現れた目が沢山付いた金色の肉柱らしい。
...ふむ、分からん(現実逃避)