問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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第6章辺りから難易度がグンと上がった、と思ったのは私だけではないはず...!


古代王は良い文明...?

 

 

 

 

 

 

「ブチ抜け──“天屠る光芒の槍(ダイシーダ・リヒト)”ッ!」

「これが魔王の三段撃ちじゃあ!!」

「“吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・へイン)”ッ!」

 

よく分からない動物の骨を風避けにして現在置かれている状況を整理しようとした瞬間、よく分からない目玉達に襲われ、リアル目玉焼きを作った後に今度はスフィンクスっぽい奴に襲われた。いや、襲われている、と言った方が正しいか。

 

「なんなのコイツ!宝具があんまり効かないんですけど!?」

「文句を言う前に手を動かせ邪ンヌ!雷砲ォ!!」

「チッ、分かってるわよ!ハッ!」

 

最初は権能を使わずに戦おうとか思っていたのだが、そんな甘い考えは10秒で那由他の彼方へと消え去った。

このスフィンクスの強さ可笑しいって。前脚蹴りの威力がシャレにならないレベル。こんなんチートやチーターや!

 

「もう1回...、ブチ抜け──“天屠る光芒の槍”ッ!」

「ガァア...」

 

放った槍がスフィンクスの脳天を穿ち、やっとスフィンクスの動きが止まる。そして、暫くするとスゥっと消えていった。

 

「...ヤベェ。最初の敵からこのレベルは本当にヤベェ」

 

肩で息をしながら、俺達みんながそう思った。いや、邪ンヌやノッブの宝具を喰らって尚も健在とか何者だよスフィンクス。

 

「んー。やっぱりカルデアとは通信が繋がらない...。とりあえずこっちはこっちで行動を起こそうか。スフィンクスは一応倒したけど、次大群で来られると正直マズイ。その前に近くの水源地まで行こう。マッピングはもう済んでる。立香ちゃんもそうしたいだろう?」

「冷たい水をいっぱい飲みたいです!」

「私もマスターに賛成です」

 

という訳で水源地を求めて歩き出す。途中、ネロと邪ンヌとノッブが歩き続ける事に文句を言ってきたが今はどうしようもないので我慢してもらう他ない。

 

 

「マスター、顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」

「...ちょっと、息がしずらいかも...」

 

暫く歩いた頃、藤丸さんの顔色が悪い事にマシュが気付いた。疲れたのかね?

 

「...やっぱりね。魔力の濃度が濃すぎるんだ。立香ちゃん、はいこれ」

「酸素ボンベ...?いつの間にこんなものを...」

「今さっきチョチョイとね。急ごしらえだけど、これは魔力遮断マスクだよ。この大気は人間にはきつい。まあ凌太君は別っぽいけど」

「流石は奏者と言ったところか」

「アンタ本当に人間なの?」

「あー、はいはい。どうせ俺は人外じみてますよ」

 

と、少し不貞腐れてみたところで俺はとんでもない事に気付いてしまった。

 

「...みんな止まれ。そして回れ右。続いて直進だ。要するに引き返そうと提案している」

「何故じゃ?水源はスグそこなのじゃろう?」

 

ノッブがそう聞いてくる。確かに水源は目と耳の先だ。だが、そこには絶対に立ち入れない。何故なら──

 

「...あー、そういう事か...。うん、これはダメだね。凌太君の言う通り、ここで引き返そう」

「だから何故かと聞いとろうが。疾く答えんか」

 

不思議そうに再度聞いてくるノッブ。いや、だからさ──

 

「この先を注意深く見てみろよ。それが答えだ」

「この先?えっと...、あ、何か影が見えますね。数は...」

「ひぃ、ふぅ、みぃ...軽く30くらい?でもあれなんなの?」

「全部スフィンクス」

 

俺の言葉にダ・ヴィンチちゃん以外が戦慄する。当たり前だ。つい先程戦ったスフィンクス。それは、全員でかかってやっと勝てた相手なのだ。そんな奴が計30体以上。驚くなという方が無理である。というかこんなところでスフィンクスを放し飼いにしてる奴は誰だよぶん殴ってやる!

 

「みんな理解したな?よし、じゃあここから引き返...、なんでこうなるのかなぁ...」

「マスター、どうかしたのですか?」

「あ、いや、なんかあのスフィンクスの群れの方からね?何人かの気配が近付いてきてるんだよ。それも凄い速さで」

「あっ、ホントだ。レーダーに反応がある...。凌太君、よく気付いたねぇ。そろそろ目視で確認できる距離だ。一旦隠れよう」

「と言っても、見渡す限りの砂漠なんじゃが」

「デスヨネー。しょうがない、迎え撃つぞ」

「うん、分かった。マシュ、邪ンヌ、ノッブ、戦闘準備」

「「「了解(しました)(じゃ!)」」」

「静謐ちゃんとネロもね」

「了解しました」

「うむ!」

 

なんでこう、イベント続きなのか。

修行が出来てラッキー!と思うべきか、それとも不幸と思うべきか...。

 

「見えました!あれは...10名程の人です!あと、髑髏の面をつけています!」

「え?髑髏?」

 

マシュの報告を聞き戦闘態勢に入る俺と静謐ちゃん以外のメンバー。

いやいやいや、ちょっと待ってね?え、髑髏?それってハサンじゃね?前に静謐ちゃんに聞いたことがある。ハサンという名は襲名性で、静謐ちゃん以外にも何名かハサンの名を持つサーヴァントがいるらしい。

...絶対ソイツらじゃん。

 

「チッ!先回りされたか!兵士を差し向けているとは、流石は太陽王よ。女王を拉致しておけばあの怪物共は襲ってこん。しかし、人間の兵士は別だ。考えたな、太陽お...。ちょっと待て。そこにいるのは静謐か?」

「はい。えっと...、お疲れ様です?」

 

やはりハサンだったか。しかも静謐ちゃんを知っているらしい。これは話が早い。

 

「初めましてだな、ハサン。突然で悪いが、とりあえず話を──」

「何故ここにいるのだ、静謐!貴様は聖都の騎士に拉致監禁されている筈だろう!?まさか...聖都側に着いたのか!?」

 

何故か1人で盛り上がるハサン。

というか、今聞き捨てならない事を言わなかったか?

 

「おいハサン某」

「気安くその名を呼ぶな、馬鹿者!」

「んなこたどうでもいい。静謐ちゃんが拉致監禁されているだと?そこら辺詳しく」

「は?詳しくも何も、お前の隣に居るだろう!」

 

ダメだ、話にならない。というか、コイツら女を拉致してやがるな。さっき女王とか言ってたし。

...致し方無し。

 

「とりあえずその担いでる女を置いて此処を去るか、俺に消されるか、もしくは情報を吐くか。選べ」

「凌太君、消すのはいけないよ」

「...藤丸さんの要望により、消すのは勘弁してやる。だからそれ以外で選べ」

「何を言っている!我ら山の民、是が非でもこの食料を持ち帰るッ!」

「だから情報と女をだな...。もういい、こうなりゃ力ずくだ」

「ってことでマシュ達もやっちゃって。殺さずに、峰打ちとかでね」

「はい!マシュ・キリエライト、出ます!」

 

 

 

 

という訳で開催されたカルデア組 VS. ハサンズ。まあ結果は見えていた通りだ。俺達の圧勝です。

 

「くっ!お前達!食料だけでも持ち帰るぞッ!」

「あっ、おい待て!情報吐いてけやゴラァ!!」

「ははは!待てと言われて待つハサンが何処にいる!」

 

それを言い残してハサンズは逃亡。一応、担がれていた女だけは手に入れた。

静謐ちゃんが拉致監禁されている、というとても気になる事を言っていたが、今は打つ手がない。なので、とりあえずは目の前の問題を先に解消することにした。

 

「良し。とりあえずその女連れてあのスフィンクスの群れの中を突っ切ろうぜ。さっきのハサン達の話が本当なら、ソイツが魔除けになるはずだ」

「そうだね。この人起こす?」

「いや、縄と猿轡だけ取って、寝かせたままで行こう。眠らされてるっぽいし、下手に起こして俺達が誘拐犯と間違われても困る」

 

という訳で、俺達は魔除け(女)を連れてスフィンクスの群れを難無く素通りし、神殿らしき建物へと向かった。

ハサンと戦っている最中から俺達を見ている気配があったが、別段襲ってくる事も無かったのでスルーしても大丈夫だろう。

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

「フハハハハ!地上にあってファラオに不可能無し、万物万象我が手中に在り!」

「どうしてこうなった...ッ!」

「ちょっと凌太!口じゃなく手を動かしなさい!」

 

邪ンヌから叱責を受ける。奇しくも、それは先程のスフィンクス戦で俺が邪ンヌに言った事とほぼ同義の言葉だった。

 

現状を説明しよう。

魔除けの女──ニトクリスを連れて神殿に辿り着いたは良いものの、そこでニトクリスが目を覚まし俺達が誘拐犯だと誤解。その誤解を解くためにスフィンクスと戦い、それを退けると神殿への入室を許され、中に居たファラオ・オジマンディアスとやらと謁見をしようとした筈が、何故かオジマンディアスの気分で戦闘に発展してしまった。

もう訳が分からない。はいそこ、いつもの事だとか言わない。

というかオジマンディアスが聖杯持ってるし、ここでコイツ倒せば終わりじゃね?

 

「出ませい!」

「放てい!」

「うむ、余の見せ場だな!」

 

少し離れた所ではニトクリス VS. ネロ&ノッブが戦っている。あっちは大丈夫だろう。問題はこっちだ。

 

「フハハハハ!地上にあってファラオに不可能無し、万物万象我が手中に」

「もうそれ聞き飽きたわ!何度目だよ!」

 

巫山戯たサーヴァントだが、性能も巫山戯ているとしか言いようがない。マジ強い。というかピラミッドが降ってくるんだけど!

 

「これは憎悪によって磨かれた、我が魂の咆哮──“吼え立てよ、我が憤怒”ッ!」

「我が叡智、我が万能は、あらゆる叡智を凌駕する──“万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)”!」

「ハハッ!良いぞ、多少はやるか」

 

邪ンヌとダ・ヴィンチちゃんのダブル宝具を受けてあの涼しい顔である。ここのヤツらは全員チートか。

 

「───フッ。遊びと言いつつ熱が入ったわ」

 

ふと、攻撃を辞めて玉座に座り直すオジマンディアス。

良かった、このままガチンコで殺し合いをしてたら結果は分からなかったしな...。

というか、ピラミッド内でピラミッドが降ってくるって何なんだろう?

 

 

 

その後、あれよあれよという間に豪華な食事をご馳走になり、喰ったなら帰れと神殿から追い出された。

追い出される前、オジマンディアスが色々と言っていたが、要約するとこうだ。

 

お前らは来るのが遅すぎた。とうの昔にこの時代の聖杯は余のものである。しかし、この時代を支配しているもの、つまりお前らカルデアの敵とは聖地エルサレムに座する獅子王、純白の獅子王である。だからとりあえずこの残酷な世界を見聞してこい。次に余の前に現れた時は敵同士、慈悲はかけぬ。じゃあな。

 

 

とまあ、そんなところか。正直半分くらいしか理解出来なかったが、ダ・ヴィンチちゃんが訳知り顔で頷いたりしていたのできっと大丈夫だろう。

とりあえず飯は美味かったです。

 

「ああ、もう少し神殿を見て回りたかったのですが...。建設王、せっかちで...」

 

マシュが本当に残念そうに項垂れる。ネロが「ローマの方が上だが、この建物も悪くはなかった。ローマの方が上だがな!!」と言っていたので、建築的芸術は非常に高いのだろう。俺には豪華絢爛なピラミッドにしか見えないが。

 

「何が不満だというのです!王はあなた方に水と食料まで持たせたのですよ!?」

「それに関してはマジでありがとう。気分屋だったけど気前は良かったな」

「...当たり前です。王は無慈悲な方ですが、勇者には寛大な方です。それに、王はあなた方を気に入ったようです。特に藤丸立香の空気というか、雰囲気でしょうか」

「恐縮です」

「さあ、疾くお行きなさい。エジプト領を出れば、そこは終末の世界。...良い旅を」

 

そう言い残し、ニトクリスは去っていった。

空飛ぶスフィンクスの頭に乗って。いいなー。

 

「私も1回でいいからスフィンクスに乗ってみたーい!」

「ところでダ・ヴィンチちゃん。先程から何やら弄くり回している様だが、何を作っておるのだ?余にも見せよ!」

「ふっふーん!良くぞ聞いてくれました!これからは長旅になりそうだからね。このように、砂漠用移動車など作ってみましたー!名付けて、万能車両オーニソプター・スピンクス!」

「フォウ、フォーーウッッッッ!(特別意訳:ダ・ヴィンチちゃんってバカだよねー!)」

 

あれ?今、フォウくんの言っている意味が頭に浮かんだような...?

 

「これは...、どこからどう見てもバギーです、先輩!この13世紀においては最早オーパーツかと!」

「バギー?戦車と似たようなものか?いや、それにしては平たいな...」

「...車の様なものですか?」

「まあ、この見た目は車と変わらないよね」

 

という訳で、この砂漠を移動する為の足は確保したし、水や食料も持っている。しかし問題は...

 

「これ、どっからどう見ても5人乗りなんだけど。なに?あとの3人は走れっていうの?」

 

そう。今邪ンヌが言った通り、このバギーは5人乗りなのである。ダ・ヴィンチちゃんってバカだよねー!

 

「いやー、材料が足りなくて、これ以上の大きさにするのは無理だったんだ。ぎゅうぎゅうに詰めれば全員乗れるよ」

「...3人か...。2人なら俺が運べるぞ。それで丁度だな」

「え?それって凌太君が2人担いで走るってこと?それは申し訳ないよ」

「いや、飛ぶ」

「...飛ぶ?」

「飛ぶ」

 

飛ぶ、という手段に心当たりのある静謐ちゃんとネロ以外の「何言ってんのこの人」的な視線を安定のスルーでやり過ごしながら、ギフトカードから1つのブレスレットを取り出す。そして──

 

 

 

 


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