問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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IS〈インフィニット・ストラトス〉
ISというガ○ダム擬き


「...ありのまま今起こった事を話すぜ。暗闇の中に一条の光が見えたと思ったら空中に放り出されていた。な、何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何故こうなっているのか分からない。催眠術だとk...」

「それは今言う事なのか!?」

 

例の如く、空中に放り出された俺は冷静に今起こった事を把握していた。

目測約1000m。これが俺達が放り出された時の高度だ。これ、普通にヤバイと思う。死なないまでも、粉砕骨折とかするんじゃないかな?

 

「全治1ヶ月で済めば良いけど...」

「普通高度1000mから落ちて全治1ヶ月なんて事はないがな。まあマスターなら無傷すら有り得るが」

 

モードレッド以外は落ち着いている事から、「ああ、コイツらもこの不条理さに慣れてきたんだな」と感慨深く思う。そのうちモードレッドも慣れるのだろう。慣れって怖いね。

ちゃんと着地の事を考えないとそろそろヤバイな。地面まであとどれくらいよ?

と、思った時だった。俺達は突然、何かに抱き抱えられたのだ。

 

「大丈夫かお前ら!」

 

頭上から響く声。そこで俺は自らの状況を理解した。

 

──俺は、人生2度目のお姫様を男に奪われたのだ、と...。

 

 

「不幸だぁああああ!!!!」

「うおっ!?なんだどうした!!」

 

助けて貰った感謝よりも、お姫様だっこを一度ならずニ度までも男に奪われたショックの方が俺の中では大きかった。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

俺を救った男、織斑一夏に抱き抱えられながら俺は地上へと降りた。というかそのモビルスーツみたいな奴カッコイイな。

周りを見ると、静謐ちゃん達もそれぞれ別のモビルスーツ集団に助けられていた。

 

「まあ、助けてくれてありがとう」

「おう、気にすんな!」

 

ニカッと笑うこのイケメン君は、どこか護堂と似た雰囲気がある。どっちも俺をお姫様だっこしたしね!

 

「おい。貴様らは一体何者だ。どうして空から落ちてきた?」

 

一息付いていると、黒いスーツを着込んだ女性がそう言ってきた。まあそこは気になりますよね。

でもまあ、正直に「神様に転送させられました」などと言っても頭の沸いた奴と思われるのがオチなので、いい感じの言い訳を考える。

 

「...とある科学者に人体実験としてテレポーテーションの被検体にされまして」

「何...?」

「まあ実験は失敗し、俺達は見知らぬ土地に転送させられたのです。しかも失敗した場合は帰って来なくて良いと言われております。帰ってきてもお前達に居場所は無い、とも...。うぅ...」

 

嘘泣きを加え情に訴える作戦。帰る場所が無い、路頭に迷っていると遠回しに伝えたことだし、居住地まで用意してくれれば良いなぁ。

その際、空気を読みそうに無いモードレッドとネロは予め令呪で黙らせておく。特にネロは何を言い出すか分からないからな。

1度は無くなった令呪だが、何気に復活しているのだ。1晩経って、本当に令呪が1画だけ回復していた時は驚いた。そして3日で全快である。ナニコレ便利。その便利性から、俺の令呪使用率は格段に上がっている。今回のように、しょうもない事で令呪を使う事もしばしばだ。

 

「...テレポーテーション、テレポートか...。まさかそれを実現出来る者がいるとはな...。まさかアイツが?いやしかし...」

 

などとブツブツ言い出した女性を見ていると、一夏がモビルスーツから降りてきた。

 

「帰って来なくてもいいとか、酷い奴がいたもんだな。千冬ね...じゃなかった、織斑先生。コイツら、暫くここに泊めておくのってできないのか?」

「それは出来ない。ここはIS学園だからな。ISを扱えない者がいてもこちらが困るだけだ」

 

IS。それはもしかしなくてもあのモビルスーツの事ですかね?あれに乗れれば拠点が確保出来る...?

というか普通にアレ乗りたいんだが。

 

「じゃあ俺らがそのIS?に乗れれば問題はないんだな?」

「...まあこちら側としては、IS操縦者が増えるのに越した事は無いが...」

 

と、織斑先生とやらが言うので、いざモビルスーツ搭乗です!モビルスーツとかって男の子の夢だと思うんだ。

 

話に着いてこれていない生徒らしき人達を尻目に、俺は置いてあったモビルスーツへと近付いて行き、搭乗席へと乗り込む。

搭乗席にはボタンなどは無く、最初は操作の仕方が分からなかった。だが、乗り込んで少しすると自然と動かし方が頭に浮かんできたので、それに従い動かしていく。

 

「お、動いた!いやー、長年の夢が1つ叶ったぜ...」

「奏者!次!次は余が乗りたい!!」

「あ、俺も俺も!」

 

令呪によって黙らされていたネロとモードレッドが、目をキラキラさせながらこちらに寄ってきた。それはまるで少年がショーケースの中に欲しいオモチャを見つけた時の顔だ。

俺もそんな顔をしていたと、後にエミヤが言っていた。そういうエミヤもソワソワした顔でISを見ていたのだが。結局静謐ちゃん以外は皆、ロボット系が好きなのだ。

 

 

その後、何やら周りの人達が騒ぎ出していたのだが、そんな事はお構い無しに俺達はISで遊びまくったのだった。エミヤだけは何故か操縦できなかったが、ISの解析をしているだけで楽しそうだったので良しとしよう。

 

 

 

 

 

という訳で、俺達(エミヤ除く)はISが操縦出来ると分かった。そして俺達は織斑千冬に連れられて軽い面談の様なことをしてから入学書類とやらにサインし、トントン拍子でIS学園への入学が決まった。入学料授業料等は国が払ってくれるらしいので免除。男でISを扱えるのはこの世界で俺と一夏だけらしいし、そこに関係しているのだろう。所謂研究サンプル提供料で学費を賄っているようなものだ。

一応、静謐ちゃんとネロ、そしてモードレッドも学生として入学。エミヤはその解析力を買われて技術要員としてIS学園に入るらしい。上手く行き過ぎて怖い気もするが、とりあえず流れに身を任せようと思う。

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

この世界に来て2日目。俺達はIS学園の1年1組に編入という形で入学した。昨日の出来事や、男である俺がISを操縦出来るという事から、俺達は多大なる注目を浴びている。ネロはその注目の目を嬉々として受け止めているが、静謐ちゃんは居心地悪そうに、モードレッドは見世物にされている様だと言って嫌がっている。

 

──なので殺気を放って全員黙らせました。反省は微塵もしておりません。

 

「おい凌太、今の何だ?なんか背筋が寒くなったんだけど...、殺気?」

「ご名答」

「マジで?」

 

俺の殺気が余程恐ろしかったのか、今や面と向かって話しかけてくる奴は数人程度しかいない。その1人が一夏だ。他にも篠ノ之箒、セシリア・オルコット、のほほんさんこと布仏本音など、物怖じしない連中が俺の机の周りに集まっている。それにしても学園に男子が2人しかいないとか、これなんてギャルゲ?一夏にはハーレム状態を邪魔してしまって本当に悪いと思ってる。

と、ここで休み時間の終了を告げるチャイムが鳴った。皆自分の席に戻っていく中、教室の扉が開かれる。そしてそこから入室してきたのは、織斑千冬と、何を隠そう我らがオカン、エミヤである。

そして、織斑千冬が教卓に立ち、全員が着席したのを確認してから口を開いた。

 

「こちら、今日から着任の先生だ。エミヤ先生、自己紹介を」

「ふむ...。知っている、或いは昨日見た者も多いだろうが、一応自己紹介をしておこう。新任のエミヤだ。短い間であるだろうが、よろしく頼む」

「「「ブフォ!」」」

 

エミヤの自己紹介を聞き、俺とネロ、モードレッドは同時に吹き出した。見れば静謐も方を震わせている。

 

「...何かなマス...、坂元達。どこかおかしいところでも?」

「いや、エミヤ先生て!」

 

技術要員として雇われている事は知っていたが、まさか教師も兼任していたとは。これは爆笑必至である。だってあのエミヤがピチッとしたスーツを着込み、先生などと呼ばれているのだ。いつものエミヤを知っている者ならば笑うよ普通に。オカンの間違いじゃねえの?モードレッドなんて指指して笑ってるし。

 

「...投影、開始(トレース・オン)...」

 

我慢ならなかったのか、エミヤがチョークを投影して俺達4人に投げつける。まあ全員避ける訳だが。そうすると被害を受けるのは後ろに座っている奴らで...。

 

「きゃー!チョーク投げを喰らった人達が倒れたわよ!」

「しっかりして!衛生兵(保健委員)衛生兵(保健委員)ーッ!」

「くっ、ダメよ!完全に気を失ってる!」

 

大惨事である。よって、エミヤ先生と生徒のファーストコンタクトは失敗に終わったのだった。

 

「先生、さすがに関係の無い生徒に攻撃を加えるのはちょっと...」

「なんでさ...」

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

そして、俺達が入学してから数日が過ぎた。その間にも、俺の部屋割りをどうするのかとか、生徒会の介入がウザイだとか、エミヤが食堂で学生用の朝飯を作っていたとか、その他にも色々とあったのだが、今日はなんと、このクラスに転校生が2人来るらしい。俺達の前にも2組に凰鈴音が転入してきたばかりで、この転校生ラッシュに皆驚いているとの事。というか何故に鈴以外の転校生・転入生を1組に集めるのか。

しかも、今回の転校生の1人は、一夏、俺に続く3人目の男性IS操縦者らしいとの噂が。

俺に対する周りの反応は、初日の殺気が原因なのか、遠巻きに見てくる程度に収まっている。まあ最近は話し掛けてくる奴も増えたのだが。それでも一夏と比べるとマシな方だ。一夏へのあのしつこい接し方を見ていると、次に来る奴も大変なんだろうなー、とは思う。ネロの様に、注目されるのが好きな奴ならそれで良いのだが、もしその逆だった場合は手助けくらいしてやろう。主に殺気出したりとか。

 

「では山田先生、HRを」

「は、はいっ」

 

今日の連絡事項を言い終えた千冬が山田先生へとバトンタッチする。この先生は何かと慌ただしいというか、落ち着きが無いというか...。

 

「ええとですね...。今日はなんと、転校生が来ています!しかも2名!では、入ってきて下さい!」

 

山田先生の呼び声を聞き、教室のドアが開いた。教室に入ってきた2人の転校生を見て、クラスがざわめきだす。ふむ、金銀コンビですか。しかもどちらも美形...。というか片方、銀髪の方は眼帯付けてるんだが。医療用ではなく、ガチの黒眼帯。お前何処の大佐だよカッコイイなおい!

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

金髪の方、シャルル・デュノアはにこやかにそう告げて一礼する。

 

「こちらに僕と同じ境遇の人が2人いると聞いて本国より転入を...」

「きゃ...」

「...はい?」

『きゃああああああーーーっ!』

 

ソニックブーム。そんな言葉を連想させる程の声量でクラスの女子の歓喜の叫びはあっという間に伝播した。

 

「男子!3人目の男子!」

「噂は本当だったのね!」

「しかもウチのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

元気だな女子諸君。これ、恐らく学園中に響いただろうな。

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介終わってませんから〜!」

「............。」

 

教員に自己紹介を求められても沈黙を貫くという、如何にも軍人風な銀髪少女。ヤダ、俺の中二心にとても響く...。

 

「...挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

「...はあ。ここではそう呼ぶな。もう私は教官では無いし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました。...ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「.........え?あ、あの、以上ですか?」

「以上だ」

 

漂う空気にいたたまれなくなった山田先生がぎこちない笑顔でラウラ・ボーデヴィッヒにそう聞くが、返ってきたのは簡潔な即答だった。そして、ふと一夏と目を合わせると、無表情だった顔に若干の怒りが現れる。そして──

 

パシンッ!

 

唐突に一夏を平手打ちした。え、なに?一夏の奴、とうとう惚れさせた女に復讐されるの?

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

何あの子面白い。ボーデヴィッヒの言葉からして、恐らく彼女と一夏に面識は無い。初対面の女子に突然お前を認めない宣言とか。

 

「いきなり何しやがるッ!」

「ふん...」

 

一夏の激昂は軽く流し、来たとき同様にスタスタと空いている席に行くボーデヴィッヒ。席に座ると腕を組んで目を閉じ、微動だにしなくなる。

銀髪、黒眼帯、軍人風な態度、教師を教官呼び、そして寡黙キャラ...。完全なる厨二病の姿である。何あの子面白カッコイイ!

 

「あー...ゴホン!ではHRを終わる。各人はスグに着替えて第2グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦を行う。解散!」

 

パンパンと手を叩いて千冬が行動を促す。さて、俺らも更衣室に行きますかね。

 

「おい織斑、坂元。デュノアの面倒を見てやれ、同じ男子だろう」

「君たちが織斑君に坂元君?初めまして、僕は...」

「ああいいから。それより移動が先だ。ここは女子が着替えるからな」

 

そう言って俺達3人は慌ただしく教室を出ようとして、そこで気が付いた。いやまあ俺はさっきから気付いてたけど。

 

「アレが転校生ね!」

「ヤダイケメン...!」

「爽やか系の織斑君に、孤高の存在的坂元君、それに可愛い系イケメンが加わるなんて...ッ!」

 

そう、噂と今朝のウチのクラスの叫び声を聞きつけた他クラス他学年の女子に囲まれているのだ。既に正面出口は絶たれている。

 

「遅かった...!どうする!?このままじゃ女子の着替えを邪魔した挙句に授業に遅刻するという惨事に...」

「ふむ...。おい一夏、それからデュノアも。口閉じとけ、舌噛むから」

「へ?」

「おい凌太。お前何する気...」

 

一夏とデュノアが何か言っていたが、とりあえず無視して2人を肩に担ぐ。そして静謐ちゃんが開けていてくれた窓から飛び出した。そして着地、&ダッシュ。時速にしておよそ60km/hのダッシュである。公道を走る普通車くらいのスピードだ。耳元でデュノアと一夏の悲鳴が聞こえたが、気にせず俺は更衣室までの道のりを駆け抜けた。

その際、デュノアの体(その一部)が異常に柔らかい事に疑問を覚えたが、今気にすることでも無いか、と頭の片隅に追いやった。

 

 

 

 

余談だが、登校4日目にしてモードレッドが、更にその2日後にはネロがちょくちょく授業をサボり始めた。

モードレッド曰く、俺は不良息子として名を馳せているのに、何故真面目に学校なんぞに通わなけりゃならんのか、と。

全く、仰る通りです。まあ俺は何気に学園生活を楽しんでるからいいんだけど。

そしてネロ曰く、皇帝たる余がつまらないと思うことをすると思うのか?面白そうな講義には顔を出すが、他は行かないぞ、と。

自由ですな皇帝殿。

まあ2人ともIS実技授業には毎回出席しているので、ISというモノに触れるのは好きなんだなと思う。

 

 

 




ちなみに、モードレッドは男性用の制服を来ています。

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