問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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支離滅裂とはまさにこの事。
最近、自分ですらよく分からなくなってきたこの作品ですが、どうぞ温かい目で見守って下さい。


VS百代

 

 

 

 

 

『おおっとー!?モードレッド選手の繰り出した謎の雷ビームが坂元選手に直撃だぁ!!...え、というか今の雷なに?』

 

至極真っ当な疑問を抱いたアナウンスを聞き流しながら、俺は平然と立っていた。俺の周りにはまだ土煙が立ち込めているので観客側からは見えないだろうが、恐らく俺が無事な事をモードレッドは気付いているはずである。

え?何故俺が無事なのかって?そんなの俺が知るか。アレじゃね?俺の躰にはもう“雷”自体が効かないとか、そんなんじゃね?いや確証は無いけども。でも雷成分を吸収した感じがあるんだよなぁ。何気に魔力回復してるし、力も増している。ふむ、カンピオーネの身体は神秘の塊デスネ。

 

「...おいおい。キチガイって話は聞いてたけど、ここまでかよ...」

 

無傷とは言わないが、まだまだ平気そうな俺の姿を目にして顔を引き攣らせるモードレッド。この表情はアレだ。俺が、『振り翳せり天雷の咆哮』の直撃を受けて無傷だった爺さんを見た時の顔ってああいう表情だったんだろうなぁ、と思わせる表情だ。まあ似たような事をしでかしてるんですけどね?

 

「──さて、モードレッド」

「あ?」

「無断で宝具使用+魔力徴収した罰、覚悟しろよ?」

「え」

 

 

その後、宝具開放直後で動きが鈍っていたモードレッドが、一時的とは言えパワーアップした俺に蹂躙されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

『エキシビションマッチ、武神・川神百代 VS 川神武闘会優勝者・坂元凌太の試合もヒートアップして参りました!川神百代選手を武神たらしめる絶技、瞬間回復が幾度の無く坂元選手を苦しめるー!!』

「マジでウザイよそのチート技!」

 

モードレッドを下して優勝を決めた俺は、百代にエキシビションマッチを挑んでいた。試合開始から早10分弱、俺は既に20回程百代を倒したのだが、又しても瞬間回復で復活してくる。

 

「チートはどっちだよ。私を1回倒す奴すら今までほとんど出てこなかったのに、お前はもう私を何10回と倒してるじゃないか!ワクワクするなぁ、楽しいなぁ!さあ、もっと闘ろう!」

「お前もう少し疲れるとかさ、可愛げを見せたらどうなの?」

「そんなもの知らないさ!それに私は美少女だからな。それだけで十分に可愛げがあるだろう?」

「事実だけど自分で言うなよ」

「アハハハハ!」

 

などと会話を交わしつつも、俺の槍と百代の拳が衝撃波を生みながらぶつかり合う。というか槍の先端を拳で受け止めるとかなんなの?

暫くそんな摩訶不思議な衝突が続くと、不意に百代が俺の槍を掴んだ。

 

「捕まえたぞ...、川神流・人間爆弾!!!」

 

そしてそのまま自爆。しかし、弱体化しているとは言えチートボディな俺に大したダメージは入らない。百代だけが黒焦げである。南無三。

まあすぐに瞬間回復で復活するから、別に自爆技も怖くは無いのだろう。だが、その瞬間回復が使える制限回数もそろそろ限界のはずだ。大和から聞き出した情報によると、百代の瞬間回復使用回数制限は30回程らしい。現在20回弱は使わせているので、ストックもあと少しだ。

 

「やっぱり効かないか。ちぇっ、瞬間回復無駄に使っただけかー」

「お疲れさん。そろそろ限界だろう?大人しくやられとけ」

「嫌だね。折角全力で闘えるんだし、もっと楽しまなけりゃ損だろ?」

 

そう言って再度向かってくる百代の右ストレートをいなし、よろめいた所にカウンターを喰らわせる。熱くなって興奮している為か、動きが単純化されているので攻撃をいなしやすい。まあ、その分パワーがえげつない程上がってるんだけどな。多分、禁手化したイッセーよりも上だぞ、今のパンチの威力。まともに受けたらタダじゃ済まない気がする。

 

「アハハハハハハハハハハハ!!!」

「ハハハハ、怖いよ百代ちゃん」

 

最早笑い声以外の言葉すら発さなくなった百代に若干どころでは無い狂気を感じながら、彼女の攻撃を躱したり流したりしていると、さすがに腕が痺れてきた。百代はそろそろ限界だろうが、俺もヤバイ。

 

「サクッとキメるか」

 

百代のラッシュを全て避けてバックステップで後方に避難。そしてアッサルの槍を投擲する。百代は案外耐久が低いので、アッサルの槍の爆発でもすぐに黒焦げになってしまう。逆に言えば、もし百代の耐久が高ければ俺に勝ち目は無かったということだ。マジでバケモノだよな、この子。まあ俺も同列なんだろうけど(諦め)

 

「しゅ...んかん、回ふ......ッ!?」

 

黒焦げになった百代が又しても瞬間回復を使おうとするが、発動しない。

これはとうとう使用制限が来たか?そうっぽいな、これは勝つる!

 

「年貢の納め時、ってなぁ!これでトドメだ、喰らっとけ!」

 

魔力で身体強化を施した体で、全力で槍を振るう。貫通して殺すのはさすがにダメだと俺でも分かるので、槍の側面、棒状の部分で思いっきりぶん殴る。体力もほぼ底をついていたらしく、ほぼ無抵抗で場外へと吹っ飛んでいき、この勝負の決着が着いた。

最後は無理矢理感があったが、勝ちは勝ちなので素直に喜ぶ事にしよう。盛り上がりに欠ける?もっと派手な技で決めろって?そんな事を言う奴には、権能使用不可の俺にそんな事を求めるなと言ってやる。

 

『......あっ、け、決着ぅー!!誰がこんな事を予想したでしょうか!?武神・川神百代敗れる!!勝者、坂元凌太選手!!!』

 

呆然と静まり返っていた観客席に、事態をやっと理解した実況のアナウンスが駆け巡る。

気分が良かったので、そのアナウンスに合わせて握り拳を掲げると、それに少し遅れて観客席が湧いた。

き、気持ちいい...

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「うぅ...。凌太が強いのは分かってたけど、まさかお姉様が負けるなんてぇ...」

 

大会も終わり、風間ファミリーと俺達は電車に揺られながら帰路に着いていた。俺達の放つ異様な雰囲気に当てられたのか、この車両は貸切状態である為、皆思い思いにおしゃべりしている。

そこで、何故かワン子が、百代が敗れた事を大変嘆いていた。

 

「何で本人よりワン子の方が落ち込んでんの?いやまあその御本人様は逆に喜んでらっしゃるけれど」

「強い友人が身近にいるのはこんなに心躍るんだな!」

「俺、こいつに勝った気が全くしないんだが」

 

高らかに笑う百代を尻目に、俺はもう1人黄昏ている少女の方を見る。松永燕、彼女もこの大会に少なくない思い入れがあったらしく、モードレッドに負けてからずっとあの調子だ。まあ理由は知らんし聞く気も無いけど。

 

「流石でしたねマスター。カッコ良かったですよ」

「うむ!それでこそ余の伴侶よな!」

「余の...伴侶...?」

「ステイ」

 

ネロの言い回しに反応した静謐ちゃんを宥める。だって今、怪しい目付きでネロの手を掴もうとしてましたよ?殺る気だったよね?この前は聞き流していたが、2回目は我慢ならなかったらしい。

というか、静謐ちゃんも性格変わってきてない?

 

「なあマスター。魔力勝手に持っていったのは謝るからさー、そろそろ正座やめt...」

「ダメ」

「デスヨネー」

 

現在モードレッドには罰として車内の床に正座させている。だってあれ、下手したら俺は疎か、観客まで死んでたかもしれないんだし、寧ろこの程度で済ませる事に感謝して欲しいくらいだ。

そして、俺が怒っているのが俺の魔力を勝手に使った事だけだと思っている間はずっと正座ですね。いや魔力を勝手に持っていったのも怒ってはいるけど。

 

暫くの間、そんな他愛もない雑談を繰り広げていると、ふと俺のスマホが鳴った。

それに気付いた俺は即座に電話を繋ぐ。

 

『もっしもーし!』

「くたばれ」

 

それだけを言い残して通話を終わらせる。大会が終わって一段落したこのタイミングであの爺さんが電話をかけてくるってことは、どうせ碌でもない事を言い出すに決まってるんだ。

再度電話がかかって来たが無視。聞かなければ事は起こらないんじゃね?という淡い期待を持っているのだ。

そして暫くすると通知音が鳴らなくなった。ふう、これでもう少しはゆっくり出来そうだ。さて、とりあえず帰ったら飯でも食べ...

 

「マスター。手紙だ」

「なんで受け取っちゃったかなぁ...」

 

不意に降ってきた手紙を何の躊躇も無く手にしたエミヤを恨みがましく見つめ、渡された手紙を見る。宛名は俺、差出人は十中八九爺さん。嫌な予感しかしない。開けなければ、まだワンチャンあるか...?

 

「おい凌太、その手紙今突然降ってこなかったか?ここ車内だぞ?」

「なんで見ちゃってるのかなぁ...」

 

密室投書擬きを目撃した大和が、皆に聞こえる程の声量で俺に問うてくる。それを聞いた皆々様が興味を示してるじゃないかどうしてくれる?

 

「おお!それはジャパニーズ忍者の仕業では無いのか!?」

 

1番興味を示してきたクリスが手紙を覗き込んできた。というか、今時ジャパニーズ忍者とか言う外国人がいたのか。

 

「はしゃぐなクリス。そして寄るな。弾みで封が切れたらどうするんだよ」

「何?封を切ってはダメだったのか!?」

「そりゃあもちろんだとも。多分それ開いた瞬間絶対何かが、起こ、る......おいちょっと待て。手紙どこいった?」

 

ネロが驚きの声を上げるより若干前、手に持っていた筈の手紙が俺の手中から消え去っていた。そして周りを見てみると、時既に遅し、ネロが封を切った状態で恐る恐るこちらを見ていたのだ。

 

 

..................。

 

 

「もうヤだ...」

 

案の定手紙からは強い光が発せられ、瞬く間に俺達を包む。そして俺達の視界は暗転し、浮遊感に襲われる。

今回は一応、静謐ちゃん達も居るようだが、それでも許せない事はあるのだ。

 

「ネロさぁ。麻婆豆腐の時もそうだったけど、不用意に何かを仕出かすの辞めようよ」

「...すまぬ」

「なんでお前らこの状況で落ち着いてんの!?え、マジでこれ何なんだ!?」

「落ち着きたまえモードレッド。これはアレだ、神の悪戯的な何かだ」

「神の悪戯!?余計訳分かんねぇよ!!」

「俺と契約して、普通の出来事が待っているとでも?」

「納得した」

 

途端に落ち着いたモードレッド。自分で言っておいてなんだが、マジでかお前。

 

「ネロ、手紙見せて」

 

もう起こってしまった事はしょうが無いので、とりあえず手紙を見てみる。

 

 

 

『アホの小僧へ

 

異世界転送の準備が出来ましたー、ザマァ見ろー。お土産も持って来い良いお土産を持って来ぉい。

 

 

P.S. お風呂上りに耳掃除をすると、湿っている。

 

あと土産ってのは行けば分かるだろうけど、その世界特有のモノだぞ。別にワシの為じゃなく、ワシを倒す為に持って来い』

 

「ムカつく...ッ!」

 

怒りを超えて呆れへ、そしてまた怒りへと俺の心情が変化した。やはりあのジジイは1度ボコボコにしなければならない、俺はそう思った。

 

 

 

「やっぱり良く考えると訳が分からないんだが」

「考えるな。感じるんだ」

 

 


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