問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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初めまして!



プロローグ
転生するそうですよ?


 

 

 

「おお、そこな男よ、死んでしまうとは情けない」

「死んでない、死んでないから棺桶に詰めようとしないでお願いだから」

 

俺──坂元凌太(さかもと りょうた)は白髪の老人に絶賛詰められ中だ。

何故こうなってしまったのか?

それは少し前に遡る──とか回想に入る前にこの爺さんどかさないとマジで棺桶に詰められるッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー悪かった悪かった。つい悪ノリが過ぎたな」

「ハァハァ...。マジで詰められるとこだった...。テメェ爺さん、笑ってんじゃねぇよ埋めるぞ」

 

ケラケラと笑う爺さんを睨みつけながら地面を指さす。

ちなみに、現在地は俺の家の近所の川原だ。

 

「えー、埋めるとかー、ヤダ私怖いんですけどー」

「自分の歳を考えろよジジイ。いや、アンタの年齢とか知らないけれども。その見た目でそんな発言するな気持ち悪い」

「お前、さっきからワシに対して辛辣過ぎない?ワシ、泣くよ?泣いちゃうよ?」

「うるさい黙れ。てか普通に考えて、いきなり目の前に現れて棺桶に詰めようとした奴に優しくするとでも思うか?いや思わない。さっさと帰れよ爺さん。俺も帰るから」

 

日が暮れて来たのもあり、俺は早く家に帰りたかったので爺さんに背を向けて帰路へ着こうとする。

しかし、爺さんが突然真剣な顔を作り俺を呼び止めた。

 

「いや、そういう訳にもいかんのだよ。坂元凌太」

「ッ!? ...おい爺さん、どこで俺の名前調べやがった?」

 

俺とこの爺さんは初対面だ。もちろん名前なんて教えていない。

俺は爺さんに向き直り構える。

 

「そう警戒するな、小僧。何もとって食おうとか、そんな訳じゃない。ただ、ちと勧誘に来ただけでな」

「勧誘...?」

 

ニッ、と笑う爺さんにより一層の警戒体勢を取る。

 

「勧誘って、なんの勧誘だよ。悪いが俺は部活とか何もしてないぜ?」

「いや、スポーツの勧誘では無い。内容は今は言えないがこれだけはこのワシが保証する──」

 

爺さんが少しタメを作り、目一杯のキメ顔でこう言った。

 

「絶対にお前さんにとって面白いことになるだろう」

「あ、間に合ってるんで。それじゃ」

 

即☆答。

こんな胡散臭い爺さんなんか信じられるかよ!

子供でも知っている。知らない人に連れていかれそうになったら全力で逃げる、と。

俺は小さい頃母親にそう教わった。だから逃げる。全力で!

 

「...え、あ、ちょ、ちょっと待てぇい!!」

 

全速力で逃げる俺を呆然と見ていた爺さんが、ふと我に返って俺を追いかけてきやがった。

てかあの爺さん足速えな!

俺は自分の運動神経が良いと自負している。実際、中学入った辺りから俺より運動出来る奴を、大人を含めて見たことが無い。

なのに、その俺の全速力についてくるとか何者だよあの爺さん...

あ、ちなみに今の俺の年齢は15。高1です。

 

「待てと言うに!この小僧が!」

「うおっ!」

 

色々と考えている間に爺さんに追いつかれて肩掴まれた!

痛い痛い痛い!握力強っ!

 

「痛えよ爺さん!放せ!いや放してくださいお願いします!」

「嫌ですぅ!だってお前逃げるじゃん!」

「いやだからキモいってその言い方たたたたた!!おい爺さん力を込めるな!肩がもげる!分かった!逃げない!逃げないから放して!マジで肩ヤバイ!!」

 

なんとか手を放して貰ったものの、まだ掴まれてたとこが痛い...。折れてないよな...?

 

「で?なんで逃げた?というか、ワシの誘いを断るとか何事だ?」

 

腕を組みながらそう聞いてくる爺さん。

正直今すぐにでも帰りたい、というか逃げたいのだが、そんなことをすれば俺の体がどうなってしまうのかが想像に難くないのでその選択肢を捨てる。まだ命は惜しいのだ。

 

「なんでって...。そりゃ、見知らん爺さんによく分からん勧誘をされたら逃げるわ。傍から見たらアンタ誘拐未遂犯だぞ?」

「うっ」

 

正論かどうかは知らないが、それっぽい言葉をぶつけられ爺さんが言葉に詰まる。

 

「というか、アンタは一体何者なんだよ」

 

俺はずっと気になっていたことを爺さんに聞く。

本当に何者なんだろうかこの爺さん(不審者)は。

 

「ん?ああ、まだ言うて無かったか。良し、その耳かっぽじってよく聞けよ小僧! ワシは──」

 

ゴクッ、と唾を飲む。

そんな俺を見下ろしながら、爺さんは高々と言葉を発した。

 

「神だ!」

「じゃあな爺さん。病院ならこの道真っ直ぐ行ったら右側に見えてくるから」

 

クルッ、と方向転換をしてこの場を離れようとする。

ヤベェ...ヤベェ奴だよこの爺さん!

しかし、またもや爺さんに肩を掴まれた。

痛い痛い痛い

 

「信じられん気持ちは分かる。分かるが帰ろうとするな。分かったか?」

「い、いえす...」

 

めっちゃ凄みの効いた顔...

普通に怖ぇ...

 

「ま、信じてもらえんことは想定内だ。ちゃんと手も打ってる」

「手?」

 

そう言って、爺さんが先ほどの棺桶を取り出した。

ちょっと待て、今それどっから出した!?

 

「では改めて...。ゴホン。おお、そこな男よ、死んでしまうとは情けない」

「死んでない、死んでないからそのデジャヴやめて本当に。ねぇってば、詰めようとしないでっ!」

 

出だしに戻った!

痛い痛い痛い!

無理矢理詰めようとしないでマジ痛い!

 

「良いではないか良いではないか〜!」

 

そんな巫山戯たことを言う爺さんに、俺は棺桶へと完全に詰められていく。怖い。いや普通に怖い。そう思いながら、俺の意識は闇に沈んでいくのだった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ん、...んん?」

「お、目が覚めたか?」

「ん、ああ。...どこだここ?」

 

気が付くと、俺は不思議な空間にいた。一面真っ白で、特に何も無い空間だ。

 

「神の領域、その中のワシの空間だ。ま、ワシの家みたいなもんだな」

「...は?」

 

いや、待て、待ってくれ。理解が追いつかない。

そ、そうだ!慌てた時は円周率を数えたらいいって誰かが言ってた!

よし、3,1415...。あっ、ここまでしか言えねぇや俺。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

爺さんが呆けている俺を覗き込んできたため、なんとか正気に戻る。

 

「あ、ああ。大丈夫だ。なあに、高校にはπという便利な記号があるからな。円周率なんて言えなくていいんだ」

「ダメだこいつ早く何とかしないとッ...!」

 

 

 

 

 

 

あれからしばらく時間が経ち、俺はなんとか本当の正気に戻った。

爺さんに往復ビンタされるとか、人生初の体験だったぜ...

で、爺さんの長話が始まったのだが、まとめるとこうだ。

 

1.爺さんは神

 

2.暇だったので下界の様子を見てたら、やけに強い人間(俺)を見つけた

 

3.気になったのでしばらく見ていると、なんということでしょう。その人間(俺)は完全に人を超えた力を持っているじゃないですか

 

4.よくよく観察してみると、人間(俺)は自分(神)と同じ力を持っていた!

 

5.こらイカン! 早速会いに(遊びに)行かないと!

 

ってことで俺の所に来たらしい。

先ほど分かったが、あの棺桶はこの空間に人間である俺を連れてくるための道具だったらしい。「次元転送棺桶」という名前らしい。...知らねーよ、と思った。

 

「さて、ここまでで質問はあるか?」

 

一通り話し終えた爺さんが満足そうに俺に問うて来た。

 

「一つだけ。 結局爺さんは何がしたいんだ?」

 

挙手をして爺さんに聞く。

正直話の内容は半分くらいしか理解していないが、もう一度説明されるのも面倒なので聞かないことにした。

その代わり、爺さんの目的だけはしっかり聞くが。

 

「まあ、アレだ。お前を殺すんだよ。というかもう殺した。最初から言ってるだろ?『死んでしまうとは情けない』と」

「.........は?」

 

意味が分からない。何を言っているんだこのジジイは...

 

「お前が、というかお前の力が強すぎたからな。あのままお前が生き続けてたら、力が暴走して地球滅亡へ一直線だった」

「......じゃあ、何か?俺の持ってる力が有害だから殺した、と?」

「ま、そうなるな」

 

震えた声で聞く俺に、爺さんは軽い口調で答える。

 

なんだよそれ...。俺、もう死んでんのかよ...。本当になんなんだ......

「なんなんだよ!!」

「落ち着け小僧」

 

ドゴッ、という音と共に俺の視界がブレる。

殴り飛ばされたのだ。

 

「え?えっと......え?」

 

なんで俺は殴られた?

殴られた箇所を抑えながら困惑顔で爺さんの方を見る。

 

「落ち着ついたか? ならワシの話をよく聞け。いいか? 別にお前の人生が終わった訳じゃない。いや、正確には一度終わったんだが、このワシがお前に第二の人生をやる。殺したのはワシだし、ワシなりの償いのつもりだ。どうだ? この『勧誘』、受けるか?」

「.........もうどうにでもなれよ...」

 

俺の頭がついに考えることを拒否した――

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃ、転生させるかー。おい小僧、準備しろー」

「おい爺さん、なにヌルッと始めようとしてやがる。まだ聞きたいことがあるんだが?」

 

なにやら魔法陣みたいなものを書き出した爺さんに待ったをかける。

 

「聞きたいことー?ああ、転生特典とかか?それならお前の力をそのまま残しとくからそれで我慢しろ」

「いやそういうことじゃねえよ。ってか、俺の力?って残してちゃヤベェんじゃねえの?よく知らんけど」

「別に残してても大丈夫だろ。あくまでお前が制御し切れなくなったらヤバイのであって、制御しきれれば問題無い。その為に転生させるんだしな」

「え、それ俺を一回殺した意味あんの?」

「そりゃお前、転生っつったら死んでからするもんだろ?」

「いや知らんけれども」

「そういうものなんだよ、覚えとけ。っと、転生の準備出来たぞ。ほれ、その魔法陣の上に乗れ。転生を始める」

「ちょっと待て。あと一つ聞きたい」

「なんだ? もう転生は始まってんだから急げよ?」

 

うおっ、マジだ!

体が透けてる!ヤダ怖い!

 

「俺はどうやってこの力?を制御すればいいんだ!?」

 

まだよく分かってないけど、俺の力ってヤバイんだよな?

上手く制御出来る自信がねぇよ!

 

「その点については大丈夫だ。まず、お前にはいろいろな世界に行ってもらう。これから行く世界はあくまで拠点だ。そこでしっかりとした拠点作りを終えたら、心の中でワシを呼べ。きっと応えるから、たぶん。で、いろいろな世界に行って力を使いまくっとけば制御出来るハズだ、たぶん。」

「そんなフワフワした考えで大丈夫なのか!?スゲー不安なんだけど!」

「大丈夫大丈夫。神を信じろ。じゃ、よい旅を。グッドラック!」

 

その言葉を最後に、俺はその空間から消え去った――

 

 

 

 

 

 




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