問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

21 / 107
ぐだぐだ感が否めない...


瞬殺だね?分かるとも!

翌日からの俺達の行動は速かった。

とりあえず、エミヤとアルトリアとスパルタクスが一般兵士を薙ぎ倒して行き、その隙に僭称皇帝である赤いDEBUへと接近し油断している間に半殺し。聖杯の情報を吐かせて座へと還す。連合帝国の『皇帝』が歴代ローマ皇帝達だと判明してネロがショックを受けていたが、それは本人が乗り越える事だと判断し敢えて放置した。

 

その後別働隊として動いていたらしいサーヴァント、荊軻と呂布両名と合流し、ネロが立ち直ったのを確認してから連合帝国首都へと進軍。数千の兵士を塵芥のように吹き飛ばし、道中現れたカリギュラを屠り、俺達は今連合帝国首都の門前に到着していた。

電撃戦とはまさにこの事。イタズラ女神とか狐な猫とか竜兼アイドルの少女とかは知らない。赤毛の少年とかその先生も知らない。知らないったら知らない。

 

 

 

『ワァアアア!!!』

「うむ―――要するに決戦である!」

 

連合帝国首都を目前にし、一気に士気の上がるローマ軍。道中の戦闘で戦死者無し、というのも効いているのかもしれない。

 

「今こそ、余と、余の兵たる貴様達の力を集める時。この戦いを以て、ローマは再びひとつとなろう!忌々しくも『皇帝』を僭称せし者共よ、今こそ、偽物のローマが潰える時だ!余の兵達よ、余の剣となり戦え!我が剣は原初の情熱(ほのお)にして、剣戟の音は(ソラ)巡る星の如く。聞き惚れよ、しかして称え、更に歓べ!余の剣たちよ!」

『ワァアアアアア!!!!!』

 

うわすっげぇ、今空気が震えたぞ。某プロ野球チームの応援かよ...。いや、音量だけならそれ以上か。

 

「すっごい士気の高さだねぇ」

「はい。戦闘も既に始まっています。サーヴァントの反応はありませんね」

 

藤丸さんが呆然と呟き、マシュがそれに答える。

 

「さて、俺らも王宮攻略に行こうか。レフの野郎もぶん殴らないといけないしな」

「うん、そうだね。―――行こう!」

 

藤丸さんの号令を合図に王宮へと進むカルデア勢。ネロと少数のローマ兵と合流したところでロマンから報告が入った。

 

『来たぞ、サーヴァント反応だ!』

「了解。俺も感知した。近いな」

 

前方に現れた強い気配。これは確実にサーヴァントだろう。

 

「...勇ましきものよ。実に、勇ましい。それでこそ、当代のローマを統べる者である」

「むっ...」

「こちらも視認しました。王宮入口付近に巨躯の人物が1名」

 

色黒の巨漢が紡ぐその言葉は、この騒がしい戦場の中でもハッキリと聞き取れる程の声量である。えげつない声量してやがるな。

 

「なっ――!まさか...あれは...い、いや、しかしそんなことが...」

「...大丈夫か?」

 

あの巨漢を見るなり、明らかに顔色を悪くするネロ。おそらくあのサーヴァントも歴代皇帝の1人なのだろうが、この反応はカリギュラやDEBUの時とは比べ物にならない程だ。

 

「ローマ...。アレは、いや、あの御方は...。一瞥しただけで分かってしまう...。あの御方こそ――ローマ、だ」

「ネロよ。我が愛し子。お前になら分かるはずだ。(ローマ)こそ、連合帝国の首領である。(ローマ)へと帰ってこい、ネロよ。(ローマ)はお前を許そう。(ローマ)だけが、お前の内なる獣までも許せるのだ。そうだ――(ローマ)が、ローマだ」

「そんな...。貴方だけは...貴方だけは違うと...余は、信じていたのだ、信じていたかったのだ...。しかし、貴方は余の前に立ちはだかるのか!紛うことなき、ローマ建国王!――神祖ロムルス...!」

 

あれが、先日ネロが話していた、ローマを建てた人物。神祖ロムルス。確かにそれなりの力と威厳は感じる。連合帝国の民衆や兵士達も、あのカリスマ性に魅せられたのだろう。他ならぬネロも。

 

「っ!敵兵多数接近!ネロさんを狙っていると思われます!マスター、指示を!」

 

マシュの一声でその場のほぼ全員が戦闘に入った。ロムルスは王宮へと下がって行く。ネロは顔色を必死に取り持ち、戦線に復帰しようとする。

が、俺はそれを止めた。本人は隠しているつもりだろうが、ネロの光に陰りが出てきている。このままではこちらの兵の士気に関わるだろう。

 

「なあネロ。お前、今、あの神祖に連なりたい、全てを委ねたい、そう思ったろ」

「ッ!そんなことは...。いや、無いと言ったら嘘になるな。...うん、正直に言うぞ?言ってしまうぞ?余はあの御方に下りたくて仕方が無い。それが、余の偽らざる本心だ」

 

心から、本当にそう思っているのだろう。そう感じ取れる程に、ネロの言葉には意志が籠っていた。

 

「そっか。......じゃあ、そうすればいいんじゃねえの?」

「――は?」

 

真剣な表情をしていたネロが、一気に唖然とする。

 

「別に、それが正しいと思うならそうすればいいだけの話だろ?お前の好きにすればいい。ただまあ、その時は敵同士になるけどな。俺は敵が誰であろうと、容赦なんてしないから。自分の正しいと思った事をやりたいようにやれよ、第5代皇帝陛下殿」

「...余はてっきり、止められると思っていたのだが」

「止めて欲しかった?」

「――いや、違うな。うん、きっとそれは違う。...あの御方は建国王その人だ。余が間違っているのなら、神祖がそう断ずるのならば、全てを任せてしまいたい。だが、だがそれは出来ぬのだ。あの御方はきっと間違っている。連合にいる民を見よ、兵を見よ!誰1人として笑っておらぬ!いかに完璧な統治であろうと、笑いのない国があってたまるものか!ならば、余は、余は...」

 

今、ネロの中では、俺には計り知れない葛藤や苦悩が渦巻いているのだろう。しかし、それは俺がどうにか出来るものでは無いし、どうにかしていいものでも無い。ネロ自身が考え、答えを出すべきだ。けど、ほんの少しの助言程度ならばいいだろう。

 

「このまま神祖に挑むのならば、俺は最大限の手助けをする。逆にお前が敵に回ったら、その時は俺が責任を持って打ち倒そう。安心して、自分の信じた道を行け」

 

「...ああ、そうだな。余は大事な事を忘れるところだった。相手が誰であろうと迷うことはない。余は、余のなすべきことを成そう。感謝するぞ、凌太。目の覚めた気分だ」

 

ネロは憑き物が取れたような、晴れ晴れとした表情を見せる。どうやら、神祖に挑む方を選んだようだ。

 

「よし、なら早速王宮に攻め込むか。侵入経路は、静謐ちゃん、任せていいね?」

「はい。既に数箇所からの侵入経路を把握済みです」

 

ヤダこの娘有能過ぎない?

藤丸さん達も一通り敵を倒し、俺達に合流した。さて、ここからが正念場だ。カルデア勢はレフ・ライノールと聖杯、ネロはロムルスを目指し王宮へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「――来たか、愛し子」

「うむ、余は来たぞ!誉れ高くも建国を成し遂げた王、神祖ロムルスよ!」

「...良い輝きだ。ならば、もう1度呼び掛ける必要はあるか、皇帝(・・)よ」

「いいや、必要ない。今、そなたが口にしたように――過去も、現在も、未来であっても。余が、ローマ帝国第5代皇帝に他ならぬ!」

「許すぞ、ネロ・クラウディウス。(ローマ)の愛、お前の愛で見事蹂躙してみせよ!」

 

と、トントン拍子で戦闘が開始された。

相手は神の子、神祖ロムルスだ。であるならば、この戦いは(カンピオーネ)の独壇場でもある。

最初から手加減をするつもりなどさらさら無かったが、強制的に体がベストコンディションとなり、いつも以上、正確にはモルペウス戦以後最大の高揚感に胸が高鳴る。

その上、こちらには5騎のサーヴァントとネロがいる。負ける要素はゼロと言っても過言では無いだろう。

 

 

 

 

実際に結論として、俺達はロムルスに圧勝した。まあ戦闘では主に俺が暴れてしまったのだが。王宮をボロボロにしてしまった。神さまを相手にした時のカンピオーネはヤバイ。周りが本気で引く位にヤバイ。

 

「...眩い、愛だ。ネロ。永遠なりし真紅と黄金の帝国。その全て、お前と、後に続く者達に託す。忘れるな。世界(ローマ)は、永遠だ」

 

そう言い遺し、光の粒子になって消えていく神祖ロムルス。

 

「サーヴァント反応の消失を確認。我々の勝利です」

 

マシュが言った通り、既にロムルスの気配は感じない。カリギュラの時の様に、霊体化して撤退ということは無いだろう。

 

「さて。...次はアンタだ」

 

ロムルスの気配は感じない。だが、別の気配は感じる。直感に従って雷を放ち、相手の出方を待つ。

 

「やれやれ、いきなり攻撃してくるとは。私の存在に気付いていたのか?」

「...レフ・ライノール...っ!」

 

藤丸さんが憎々しげにそう口にする。今出てきたワカメ野郎が、話に聞く人類の敵って事で間違いはないようだな。

 

「驚いたよ。ロムルスを倒すなんてね。冬木の時より力をつけたのかな?だが、所詮はサーヴァント。聖杯の力には逆らえ」

 

ドゴォオオオ!!!!

 

レフが何かを言い終わる前に、轟音と共に王宮の天井が吹き飛んだ。

俺が雷でレフごと吹き飛ばしたのだが、ノーモーションから雷速で放たれた雷に反応出来た者はいなかった。まあ、サーヴァント達は見えてたかもしれないけど。

 

崩れ落ちてきた瓦礫に潰されたのか、あるいは雷によって消されたのかは定かではないが、とにかく、レフの気配は跡形も無く消え去った。そして、偶々俺の足下に転がってきたソレを手に取り、高々と掲げる。

 

「聖杯、取ったどー!」

 

これにて、この特異点の修復は終了したのだった。

みんな漫画の様に口をポカーンと開けて固まっているが、終わったったら終わったのだ!

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

「いやー...ぐだぐだだったと言うかなんと言うか...」

『結局、レフの正体も、彼らの目的も分からずじまいだったね』

「だからゴメンって。あのまま話聞いてたら面倒臭い事になるって俺の直感がビンビンいってたからさー」

「それにしてもやり過ぎだと思います」

「うむ。城の上半分が全て吹き飛んだしな。死者が敵の1名のみとは、運が良かったとしか言いようがない」

「反省してます...」

 

時代の修正が進む中、俺達は崩れ去った王宮を出て話をしていた。主に俺のやらかした事について。

ブーディカ達、聖杯に呼ばれたサーヴァント達は既に座に還ったようで、王宮を出ても彼女らの姿は見当たらない。

 

「......」

「ん?どうかしたのか?アルトリア」

「...いえ、私の宝具とほぼ同レベルの攻撃を、生身である凌太が放っていて...。私の存在意義に少し疑問を感じていただですよ、アーチャー...」

「よしマスター、とりあえず土下座だ」

「なんでさ!」

 

空気と化していたアルトリアが本気で落ち込んでいる。ま、まあ是非もないよネ!

 

「まあ、安珍様ったらお強いんですのね。素敵です♡」

「ええ、さすがです、マスター」

「ありがとう。今は君達の異常性が心に染みるよ」

 

と、そんな冗談を言っていたらだんだんと俺の体が粒子となり始めた。それに続き、カルデア勢の体が次々に粒子となっていく。

 

「凌太、なにやら足下から薄くなっているぞ!もしや、お前達も消えるのか!?立香も、マシュも...。そうか。消える、か...」

「楽しかったよ、ネロ皇帝陛下。今後のローマの繁栄、期待してるぞ?」

「...うむ、そうだな。そなた達が帰る未来にも、ローマはあるだろう。だから、別れは言わぬ。礼だけ言ってこう。――ありがとう。そなた達の働きに、全霊の感謝と薔薇を捧げる、とな!」

 

ネロの言葉を聞き届けたところでレイシフトが始まり、俺達はカルデアへと帰っていった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。