すっかり日も昇り、朝とも昼ともつかない時間帯になる頃。俺達はオルレアンを目指していた。
道中ワイバーンの群れが複数現れたのだが、俺の雷やジークフリートのバルムンク、更にはゲオルギウスのアスカロンの前では塵芥も同然だった。南無三。
『みんな、気を付けろ!敵性サーヴァントだ!』
突然、Dr.ロマンの焦る声が響に渡る。宣言通り、目の前には弓を構えたケモノ耳を携える女の子。
ケモノ耳て...。英霊とかもう何でもありか。...いや、何でもありだから英霊なのか?
「...殺してやる、殺してやるぞ!誰も彼も、この矢の前で散るがいい!」
「アーチャー...それに、強制的に狂化されている!」
「本来“竜の魔女”の下につくような英霊ではないのでしょうね」
ジャンヌとゲオルギウスがそう言うが、狂化がかかってるとかかかってないとか、正直どっちでもいい。相手の本意がどうであれ敵は敵だ。むしろ、あのケモ耳少女が善人なら尚更早く倒すべきだとも思う。
なので、先手必勝不意打ち上等の精神の下、宣言無しの雷槍ブッパを決める。
既に指示を出しておいた静謐ちゃんも続き、俺の雷槍を喰らった後に静謐ちゃんの
「さ、行こうか」
「......」
絶句。
何事も無かったかのように先に進もうとする俺達に、みんな言葉も見つからないように見えるが無視。
と、そこで再びロマンから連絡が入った。
『バーサーク・アーチャーの消滅を確認した。同時に極大生命反応!オルレアンからファヴニールが出撃したらしい!いよいよ決戦だ...!』
「Graaaaaaaa!!!!!!!!!」
ロマンの報告からほとんど間もなく、ファヴニールのものと思われる咆哮が響く。
念のため、静謐ちゃんには気配遮断を使って身を隠してもらうことにした。
「隙あらば遠慮なく敵の首を狙いに行っていいからね」
「了解しました」
そう言ってすぐに気配を消す静謐ちゃん。
静謐ちゃんの気配遮断はA+。そうそうバレる事は無いだろう。
さて、正面からぶつかるのは俺達の役目だ。キッチリその役目を果たさせてもらいましょうかね。
* * * *
「こんにちは、
暫くして、黒ジャンヌがファヴニールとワイバーンの大軍を引き連れてこちらにやって来た。
昨日受けたダメージはほとんど残っているように見えない。聖杯でも使われたか?
「...いいえ、私は貴女の残り滓では無いし、そもそも貴女でもありませんよ、“竜の魔女”」
「?貴女は私でしょう。何を言っているのです?」
「...今、何を言っても貴女には届くはずがない。この戦いが終わってから、存分に言いたい事を言わせてもらいます」
「ほざくな!この竜を見よ!この竜の群れを見るがいい!今や我らの故国は竜の巣となった!」
高々と宣言する黒ジャンヌ。
にしてもコイツ、また油断してやがるな?
...そろそろだろう。
「竜達による無限の戦争、無限の捕食!これこそが真の百年戦争。邪竜百年戦争だ!」
「「「「「「Graaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」
けたたましい竜達の咆哮。だが、その咆哮は何も奮起のための咆哮だけでは無いと俺は思う。
彼らの咆哮はどこか苦悶の声にも聞こえるが、それもそうだ。
黒ジャンヌ達が到着した時点で、静謐ちゃんが竜達のいる空間に毒霧を発生させ始めた。その為、さすがの竜種と言えども毒が回ったのだろう。次々と倒れていくワイバーンを、黒ジャンヌが呆気に取られながら見ている。
最終的には竜の群れは半分以下になっていた。
「さて、討掃開始だ」
俺の言葉を合図に、ジークフリートとゲオルギウスが残った竜の群れに突撃していく。もう蹂躙以外の何物でもないよネ!
「くっ...!ファヴニール!この連中を燃やしなさい!」
「Graaaa!!!!!!!!」
ついにファヴニールが出てきた。
が、この邪竜についてはジークフリートが全部任せろと言ってきたので、素直に任せる。
「ハッ!貴様と3度も相見えようとはな!―――貴様を再び黄昏に叩き込む!我が正義、我が信念に誓って!!」
「Graaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!」
ジークさんマジカッケェ。
「我がサーヴァントよ、前に出よ!」
黒ジャンヌがそう指示し、前に出てきたのは3人のサーヴァント達。
それぞれが、バーサーク・ランサー、バーサーク・セイバー、バーサーク・アサシンと名乗る。
これからは所謂総力戦。
このオルレアンへ続く平野が最終決戦場と化し、今ここに、壮絶な戦いが繰り広げられようとしている―――。
☆割・愛☆
結論を言おう。
バーサーク・セイバー、ランサー、アサシンは倒した。あとファヴニールも。
ファヴニールとジークフリートの戦いとか、カーミラとエリザベートの因縁とか、清姫が火を吹いたとか、エリザベートの歌という暴力とか...。その他色々盛り上がる場面はあったのだが、正直長いのでカット。
残るは黒ジャンヌとジル・ド・レェのみ。
2人は海魔と呼ばれるヒトデマンとワイバーンを大量に召喚し、そいつらで俺らを足止めして、後方の城まで退去していた。
ワイバーンや海魔達はジークフリートとゲオルギウス、それにマリーとアマデウスが残って相手取ってくれている。
俺達は現在、黒ジャンヌ達を追って城内に侵入中。襲い来る敵を難無く潰しながら奥へと進んで行っていた。
「なあジャンヌ。今更なんだけど、あの黒ジャンヌ倒してもいいんだよな?」
「本当に今更ですね。どうかしたんですか?」
「いや、いくら中身が違うって言っても、自分と同じ容姿の奴が目の前で殺されるのはさすがに堪えるかなー、と思って」
「ああ、そういう事ですか。私は構いませんよ。彼女は私では無いんですし、凌太さんが気にすることも無いと思います」
「おっけー、分かった」
そう話している間も手と足は止めず、更には奥へと進んでいく。てかこの城ゾンビ多すぎね?
しばらく突き進んで行くと、王座と思われる所へ出た。
そこには黒ジャンヌとジル・ド・レェの姿がある。
何か話し合いが始まりそうな雰囲気が醸し出されたので雷撃を放つ。正直話し合いをするつもりとか毛頭ない。
「なっ!?ち、ちょっとアンタ!少しは空気読みなさいよ!今会話が始まりそうな感じだったでしょう!?」
「敵・即・ブッパこそ我が信条」
「そんな信条、今すぐ焼き捨てなさい!」
「それは出来ない。
...お前を倒す。我が正義、我が信条に誓って...!」
「子イヌ、アンタ1回ジークフリートに謝ってきなさい」
「凌太くん、さすがにそれは止めとこうよ...」
「なん...だと...」
藤丸さんにまで止めろと言われたら今回は止めるしかないかな。今回は。
「よぅし、黒ジャンヌ&ジル・ド・レェよ感謝しろ。この俺が、正々堂々と真正面から戦ってやる」
「何でそんなに上から目線で...!頭にくるわね!ジル、殺るわよ!」
「ええ、ジャンヌ!」
「敵サーヴァント、来ます!先輩、指示を!」
「凌太くんの餌食にならないよう注意しながら各サーヴァント撃破で」
そんな俺が見境ないみたいな言い方はヤーメーテー。
俺だってちゃんと周りに配慮して雷ブッパしてるんだからね!
*
5分で鎮圧完了しました。
まあ、戦力差的にしょうがないよネ。
こちらはマスター込みで7人、対してあちらは2人。...イジメか?
「そんな...私が、負ける...?...ッ!まだだ、まだ終わらない!フランスに、世界に復讐するまで終わってたまるかッ...!」
「残念だが、ここまでだよ黒ジャンヌ」
「ぐっ!」
倒れふす黒ジャンヌに、トドメの一撃として“天屠る光芒の槍”を突き刺す。
血を吐き、タダでさえ絶え絶えだった息が、虫のようなか細すぎる息になっていく。
ジルは既に座に還した。もう彼女を助ける者は存在しない。
「...またな、
「ッ!」
槍を引き抜くと、“竜の魔女”ジャンヌ・ダルクは光の粒子になり消えていった。
彼女が消えた後に1つの黄金の杯が現れる。これが聖杯だろうか?
聖杯らしいものを手に取ると同時に、ロマンからの通信が入った。
『聖杯の回収が完了した。これより、時代の修正が始まるぞ!レイシフトを準備は出来ている。すぐにでも帰還してくれ!』
「了解しました、ドクター!」
「もう、行かれるのですか?」
「うん、やることがあるから」
ジャンヌの問いかけに、藤丸さんが決意の篭ったような表情で答える。
「あら、そうなの?ふうん...。ま、目的は果たしたし良しとするわ。じゃあね、子イヌに子リス。悪くない戦いだったわよ」
そう言いながら、エリザベートの体もゆっくりと消えていく。
「――まあ、これで離ればなれだなんて。でも、安心してください、マスター。私、些か執念深い
清姫も別れの言葉らしきものをいいながら消えていく。
それにしても、最後の「...ね?」とかマジで狂気を感じる。これがほんものの
そうしている間にも、2人は完全に消えてしまった。
おそらく、ジークフリート達も同じように消えていっているのだろう。
時代の修正とやらはそういう事なのだろうか?
...
......
.........ん?
これ、俺と静謐ちゃんってどうなんの?
俺はこの時代の人間ではない。もちろん静謐ちゃんも。かといって、このままカルデアにレイシフト出来るのか、と聞かれたら答えはノーだ。だってカルデアでマスター登録してないし。
「凌太くん達はこれからどうするの?ウチにくる?」
藤丸さんがそう言ってくれるが、実際どうなのだろうか?俺達ってカルデアに行けるの?
「質問。俺達ってレイシフトできんの?」
『「「あっ」」』
藤丸さん、マシュ、ロマンの声が重なる。その反応は何も考えてなかったって感じだな。
ま、困った時の神頼み。という訳で、爺さんに電話をかける。
Prrrrrというコール音の後、爺さんが勢い良く電話に出た。
『もしもし?ワシだよ、ワシワシ!分かる?ワシだって!』
「なんで電話かけられた方がオレオレ詐欺紛いのことをやってんだ。ついでに言うと、俺はまだ爺さんの名前を聞いてねえよ!」
『まあ、それもそうだな。ちなみに、ワシに名はない。随分昔に捨てちまったぜ...キリッ』
「だから自分で擬音を付けるなと...」
『あれー?名を捨てたの下りはスルー?』
「どうせこっちの状況も分かってんだろ?俺と静謐ちゃんをカルデアに送ってくんね?」
『あ、スルーですね分っかりましたー。...で?カルデア宛でいいのか?』
「うん。それじゃ、頼むぜ爺さん」
『ほいほいっと』
そこで電話は切られた。これから準備に入るのだろう。
にしても、あの爺さんは謎だらけだな。
武神のクセに転生やら異世界転移やら出来るし、名前も捨てたとか言ってるし...。
ま、深く考えたところで分からんものは分からんな。
「あ、何とかカルデアまで行けるそうなんで、今後ともよろしくね。まあ、いつまで居れるかは分かんないけど」
「そうなの?まあ、こちらこそよろしくね!凌太くんは強いから頼りになるよ!...まあ、ちょっとズルいところがあるかもだけど...。あ、静謐ちゃんも歓迎するよー!」
マシュも藤丸さんの言葉に同意を示すように頷き、そのタイミングで藤丸さんたちが消える。
おそらくこれがレイシフトなのだろう。
間もなく、俺と静謐ちゃんの足元に魔法陣が展開される。俺達の転移も始まったのだ。
「じゃあな、ジャンヌ。またいつか、どこかで会おうぜ」
「はい。また、いつか...。凌太さんも静謐さんも、お元気で!」
「おう!」
「はい」
そう言って、俺と静謐ちゃんは光に包まれていった。
カルデアに行ったら英霊召喚させようと思ってます。
藤丸立香と凌太の両方ともです。
召喚される英霊に希望などありましたら、ご報告ください。
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