問題児? 失礼な、俺は常識人だ   作:怜哉

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ライオンは兎を狩る時も全力を出すらしい

 

 

 

 

 大魔闘演武、二日目。

 本日の競技パートは《戦車》。妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームからはガジルが出場していた。

 

 が、まさかまさかの乗り物酔いで結果は七位。

 Aチームから出場していたナツは六位だった。

 

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)って乗り物に弱いんだな。そういやウェンディも馬車とか乗った時は酔ってたっけ」

 

 随分グロッキーになって帰ってきたガジルを見ながら、凌太はふとそんなことを思い出す。

 そうしている間にも、二日目のバトルパートは着々と消化されていった。エルフマンが根性で勝利をもぎ取ったことに感心していると、カボカボ言っている司会が次の組み合わせを発表する。

 

「えー、次のカードの発表カボ! 青い天馬(ブルーペガサス)から一夜=ヴォンダレイ=寿! そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームからはサカモトリョウタだカボ!」

「おっ、やっと出番か」

 

 名前を呼ばれ、よくやくやってきた出番に多少ウキウキしながら凌太はリングへ向かう。

 

「リョータ、あの一夜という男、ふざけた言動ではあるが実力は本物だ。気を付けろ」

 

 選手控え用の観戦席を出ようとしたところで、ジェラールが凌太に忠告をする。

 それを聞いた凌太は軽く右手を上げて応え、観戦席を後にした。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 ドムス・フウラ中央。

 ネロが若干反応していた名を持つ会場からは、朝から絶えず歓声が響いている。みんな喉頑丈すぎひん? とは凌太の談。

 

「フッ...久しぶりだね、リョータくん」

 

 ナツやガジル、エルフマンのおかげで多少マシにはなったものの、歓声の中に混じる罵声をしっかり耳に捉え、かつ無視する凌太を待っていたのは、やけにキラキラした小さいおじさんだった。

 

「? あー、えっと...?」

「おや、忘れてしまったのかい? 君たちが天狼島から帰ってきた際、ギルドに挨拶しに行ったのだがね」

「あー、思い出した思い出した。あのホスト集団みたいな奴らか」

 

 一夜や青い天馬(ブルーペガサス)のことを思い出した凌太は、ポンっ、と手を叩く。

 その仕草に満足したのか、一夜が無駄にポーズをキメながら凌太に語りかける。

 

「ナツくんやガジルくんすら軽く(あしら)うキミが相手では、私も本気を出すしかあるまい。弟子達も見ていることだしね」

「おう、全力でこい。俺を楽しませろ」

 

 両者ともに軽く口角を上げる。

 それとほぼ同時、試合開始の鐘が鳴り響く。

 

『試合開始だカボ!!』

 

「力の香り(パルファム)! ンンンン...メェーン!!!」

 

 試合が始まるやいなや、一夜は試験管を二本取り出して自身の鼻に突っ込む。すると、二頭身だった一夜の身体は筋骨隆々なマッチョマンとなった。思わず「キモッ」と呟いた凌太はきっと悪くない。

 

 盛り上がった筋肉に力を込め、一夜はその拳を振るう。

 だが、それが凌太に当たることはなく。簡単に避けられた拳は空を切り、地面へと激突する。

 

『おぉーっと! 青い天馬(ブルーペガサス)の一夜、すごいパワーだ!』

 

 カボチャとは違う実況者が、一夜の攻撃を見てそう評価する。

 確かに、一夜の一撃は強力だった。無手で地面を軽く抉るという威力は、人間にとって驚くべきパワーである。

 

「へぇ。口だけじゃないみたいだな」

「フッ、当然だよ。さぁどんどんいくぞッ!」

 

 パワーだけでなくスピードも中々にある攻撃が、休むことなく凌太を狙う。だが、当たらない。全て最小限の動きで避けられる。

 三分ほどそんな光景が繰り返されたところで、ようやく変化が生まれた。

 

「んー...もういいか。飽きた」

 

 そう言った凌太は、岩をも砕く拳を指一本で受け止める。

 力の差を示すためのパフォーマンスは、多いに効果を発揮した。

 

『なんと!? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチーム、リョータ、一夜の拳を指一本で止めてしまったァ!!』

『ふんむ...スごいね、彼は。魔法を使った感ズもないス、身体(スんたい)能力だけでアレを止めるか』

 

 正確には魔力で肉体強化をしているのだが、元評議員であるヤジマをもってしてもそれは分からなかったらしい。

 会場がザワつく中、凌太は一夜の拳を押し返す。

 

「ヌゥ!?」

「気張れよ、オッサン」

 

 体勢を崩した一夜に短く忠告しつつ、凌太は魔力を雷に変質させていく。

 全身から紫電を撒き散らした後、その雷を右腕に集中させ、放つ。『魅せる』ことを意識しながら放たれた雷は、一夜を丸ごと呑み込んだ。

 

 一夜の拳が岩を割るのだとしても、凌太の一撃は鋼鉄ですら粉砕する。

 

 

「メ.......ェン...」

『一夜ダウーン!! 勝者、妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチーム、サカモトリョウタァああ!!!』

 

 涼しい顔で右手を掲げ、勝者であることを示す凌太。

 万年最下位だった妖精の尻尾(フェアリーテイル)の快進撃は始まった。オーディエンスは沸きに沸き、昨日とは真逆の歓声がドムス・フウラを震わせる。

 

「...虚しいなぁ」

 

 実力の半分どころか一割も出していない中での勝利。それで割れんばかりの歓声を浴びても、凌太は喜べなかった。

 元々他人からの評価など興味のない凌太が戦いに求めるのは、栄光ではない。面白さ、楽しさだ。

 

「(まぁ、今回はその“栄光”を取り戻すための戦いなんだけどな)」

 

 七年前、最強と謳われていた時代の妖精の尻尾(フェアリーテイル)を凌太は知らないが、それでも()妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員だ。だったら虐げられていた連中のために勝ってやろう、そのくらいには思えている。

 

 

 * * * *

 

 

 

 大魔闘演武、三日目。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aチームはエルフマンに代わり、本来の参加者であるウェンディが参戦する。

 

 三日目の競技パートは伏魔殿(パンデモニウム)

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームからは、名前からして少し面白そうだと思った凌太が出ようとするが、それを押し退けたのがカナだった。

 

「? お前、何してんの?」

「んー? ミストガンの代わり。リザーブ枠だっけ? それ使ってんの」

「なんでまた」

「そりゃあ、評議員がゲストで来てるからなんじゃない? アイツ、一応脱獄犯だからね」

 

 酒樽を抱えるカナは、少し覚束無い足取りで会場へと向かう。

 パンデモニウム。デーモンの全て、などと名付けられるような競技に出てみたかった凌太だったが、是が非にでもというわけでもない。どこからともなく二つ目の酒樽を取り出したカナを見送ることにした。

 

 

 

 

 

「ほえぇ...」

 

 競技パートが始まって十分かそこら。

 そんは間抜けな声を出したのは、ジュビアだった。

 そんな彼女の目線の先にあるのは、空中に映し出されたとある映像。その中では、それはもう壮絶な光景が広がっている。

 

 凶悪な怪物達を次々斬り伏せていく、傷だらけの妖精女王(ティターニア)。誰もを畏怖させ、魅了する。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の完全復活を象徴するかのような光景だ。

 

「エルザ・スカーレットねぇ。戦ってんのを見るのは初めてだけど、聞いてた通り結構強いな」

「リョータさんもすごく強かったですけど、エルザさんもやっぱりすごいですね。でもまぁ、こっちにはリョータさんに加えてガジルくんやラクサスさんもいるし、ウチ(Bチーム)優勝できるんじゃないですか? グレイ様に聞いてもらうお願い、ちゃんと考えなきゃ...!」

「リョータ、お前は百体のモンスターを相手にできるか?」

「余裕」

「うーんこの」

 

 ラクサスの疑問に答えた凌太を見て、ジュビアは呆れたように言う。

 ガジルもラクサスも同じような感想を抱いたところで、エルザが最後のS級モンスターを斬った。

 

「おー、ほんとに勝ったなあいつ。ん? でもこれさ、他のチームの順位はどうなるんだ? 同率ビリ?」

「さぁな。運営側もこうなるとは思ってなかったんだろ」

 

 ラクサスの予想は当たっていたらしく、何やらかぼちゃのマスコット(マトー君)が慌ただしく舞台裏へと駆け込んでいくのが見える。

 

 そのまましばらく待っていると、再びマトー君が顔を出した。

 

「えー、審議の結果、残りのチームには別のゲームで順位を決めてもらうことになったカボ」

 

 説明されたゲームのルールは、簡単に言うと魔法の威力勝負。正真正銘、純粋なパワーバトルだった。聖十のジュラやセイバーの黒雷使いがいるとなると、カナには厳しい勝負となってしまう。

 

 

 

 

 

 ────はずだった。

 

 

「止まらないよ! なんせ私達は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからね!!」

 

 他を寄せつけない圧倒的な威力を誇る魔法を遠慮なくぶっ放して、カナは高らかに宣言する。昨日から続く妖精の尻尾(フェアリーテイル)の快進撃。観客達が魅せられ、心奪われるのにそう時間はかからない。

 

「...すげぇな、今の魔術...いや、魔法か」

「つっても、魔法はお前にゃ効かねぇんだろ? ほんとに、魔法界でお前の存在はバグすぎんだよ」

「いや、今のは俺にも無効化できないな。多分」

 

 呆れたように言うラクサスに、凌太は特に顔色を変えることもなく応える。

 

「リョータさんでも無効化できない魔法もあるんですね」

「そりゃあな。俺達は少し強いくらいの人間の魔法、魔術、呪術は打ち消せる。けど、一定以上強力になると無効化できなくなるんだよ。まあ防げばいいだけなんだが」

「防げるんですか、アレ(フェアリーグリッター)を」

「できると思う。アレより強い一撃にも堪えたことあるし」

「やっぱりバグじゃないですかヤダー!!」

「お前キャラ」

 

 キャラ崩壊の加速するジュビアを気にかけつつ、凌太は先程の魔法を思い出す。

 妖精三大魔法の一つ、妖精の輝き(フェアリーグリッター)。その威力は絶大で、凌太の全力の雷砲(ブラスト)よりも威力は高いかもしれない。ちょっとした宝具と考えてもいいだろう。

 

「...俺達?」

 

 凌太の言葉に違和感を抱いたガジルが、ふと違和感の正体を口にする。それでようやく気付いたのか、ラクサスも訝しげに凌太を見る。キャラ崩壊中のジュビアは大して興味を示さなかったが。

 

「あ? あー、別に間違ったとかじゃねぇよ。俺みたいな奴は何人かいるんだ。神殺しの魔王、カンピオーネって奴らがな」

「神殺し...? そういやサラマンダーの野郎が言ってたな。悪魔の心臓(グリモアハート)とやりあった時、滅神魔導士とかいう奴と戦ったとか何とか。そいつもサラマンダーの炎が効かなかったって話だったが、それか」

 

 勝手に納得するガジルにあえて何も突っ込まない凌太。多分違うだろうが、一々訂正するのも面倒だと思ったのだろう。

 

「(それにしても、滅神魔導士か。いつか会ってみてぇな)」

 

 ガジル達の関心が少し薄れたところで、凌太は凱旋するエルザとカナをぼんやり眺めながらそう考える。

 

「(滅竜魔導士は竜から魔術を教わった。なら、滅神魔導士は神から教わったってことになんのか)」

 

 まだ見ぬ滅神魔導士に期待を寄せながら、凌太は再び観戦モードに移行する。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 競技パートの興奮冷めやまぬうちに、三日目のバトルパートが始まる。

 

「三日目バトルパート、第一試合の組み合わせ、発表だカボ! 四つ首の仔犬(クワトロパピー)からセムス! 人魚の踵(マーメイドヒール)からはネロ・クラウディウスだ! ...カボ!」

「うむ、キャラは固定せよ、マトー君。まあ余が言えたことでもないかもだが。それはともかくとして、だ。ついに余の出番である!」

 

 歓声を受けながら、ネロは堂々と入場する。

 女だらけのギルド、人魚の踵(マーメイドヒール)。セイバーや天馬ほどではないが、彼女らは男性陣からだけでなく、女性からも人気が高い。会場は(特に野太い)声援で満たされる。

 

 対する四つ首の仔犬(クワトロパピー)のセムスは、会場の雰囲気に呑まれて緊張したのか、大人しく入場した。ワイルドさなどもはやどこにもない。

 

「ネロ・クラウディウス...リョータの嫁か」

「まだ結婚はしてねぇけどな」

「ギヒッ、まだってこたぁいずれは...」

「おいガジル、お前そんな人の恋愛事情に首突っ込むキャラだったか?」

「数週間程度しか一緒にいない奴のキャラとか分かんのか?」

「ごもっともで」

 

 思わぬガジルの反論に何も言い返せなくなった凌太は、大人しく肯定した。

 

 

 一方、妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aチーム観覧席。

 

「おっ、ネロって奴か。この前店に来てたよな」

「そうなんですか?」

 

 エルザの活躍に騒いでいたナツだったが、バトルパートに出てきた顔見知りに興味を示した。

 唯一ネロのことを知らなかったウェンディは、こてんと首を(かし)げる。

 

「ああ、ウェンディはいなかったのだったな。開会式と、それから一日目終了後の反省会(打ち上げ)。その二つでリョータに絡んできた奴だ。なんでも、リョータの仲間らしい」

「リョータの嫁とも言ってたわよね〜」

「嫁!?」

 

 そんなやりとりをしている間に、ネロとセムス、両者が会場の中央に揃った。

 

「それでは、試合開始だカボ!」

 

 マトー君の宣言と共に、開戦の合図である鐘が鳴らされる。

 真っ先に動いたのは、セムスだった。巨体を高速で回転させ、ネロに迫る。

 

「ふむ」

 

 まるでコマのようなセムスの攻撃を、ネロは片手で持った愛剣で受け止める。何度かそんな交差があったのち、ネロはセムスを蹴り飛ばし、地面に剣を突き刺した。

 

「このような者の相手では、余の実力を出すまでもない。──だが! 獅子は兎を狩るにも全力を尽くすという。格下相手には圧倒的な力量差を魅せつける、それが奏者のやり方だったな?」

 

 そう言ったが早いか、ネロは魔力を高めていく。

 己の魔力と、凌太の魔力。その両方を掛け合わせ、大魔術の構築を開始した。

 

「オリンピア・プラウデーレ! 門を開け、独唱の幕を開けよ! regnum caelorum et gehenna(レグナム カエロラム エト ジェヘナ)! 築かれよ我が摩天! 今ここに、我が至高の光を示せ!」

 

 両腕を広げたネロの紡ぐ言葉に呼応するように、世界が歪む。

 暴君ネロの願望を達成させる絶対皇帝圏。固有魔術と似て非なる大魔術。世界の上に世界を構築する、ネロの宝具。

 

『これは!? .....な、なんでしょう、すごいことが起こっているというのは分かるのですが...。解説のヤジマさん』

『ふむ...とんでもない魔力は感ズるがね...』

 

「ま、理解なんて出来ないわな」

 

 司会と解説の会話を聞いた凌太は、そりゃそうだと言う。

 ネロのやろうとしていることを理解できているのは、術者であるネロを含め、このドムス・フラウにおいてたったの三人(・ ・)だ。

 

 何が起きているのか分からず、皆驚くこともできていない。ただ困惑が積もるだけだ。

 だが、それももうじき終わる。

 

「観衆よ、我が才を見よ。万雷の喝采を奏でよ。しかして称えるが良い、黄金の劇場を!!」

 

 変化が明白になった。

 白を基調としていたドムス・フラウは赤い劇場に姿を変え、豪華絢爛さに拍車をかける。

 

『な、ななな、な──なんとぉ!?』

『...こりゃたまげた。彼女は何者かね? 人ズゃないと言われた方が納得できる』

『これは...幻術なのか...? たった一人で、我々全員を巻き込むほどの...!?』

 

 魔導士ではない司会よりも、魔導に触れているヤジマや、ゲストとして来ていた評議員のラハールの方が驚きは大きい。

 現存する魔法で、世界を塗り替えるなどというものは存在しない。してはいけない。発覚し次第即封印指定。世界の塗り替えとは、そうなるほどの危険性を孕んだ魔法なのだ。

 まぁ、ネロのソレは塗り替えとはまた違うものだし、気付いている者もほぼいないのだが。

 

 観客席、大会参加者にも大きな動揺が走る。

 それはそうだろう。自分が座っている場所が、見ていた風景が、一瞬にして全くの別物になったのだ。驚くな、という方が無理である。

 

 ──だが、そこはフィオーレの民。順応は早かった。

 

「すっ、すげぇええええ!!!!」

「これ魔法!? 本当に魔法!?」

「魔法じゃなきゃなんだってんだ! とにかくどちゃくそにすっごい魔法なんだよ! 知らんけど!」

「ハァハァ、そんなことよりネロたんカワユス。ぺろぺろしたブギャッ!!」

「おい今人に雷落ちたぞ!!」

 

 若干の被害を出しつつも、観客達は興奮を隠そうともせずに会場──黄金劇場を震わせる。

 対して、各参加者ギルドの面々は驚きの方が大きいらしかった。皆が皆、言葉を失っている。ネロが所属する人魚の踵(マーメイドヒール)でも、それは同じだ。

 

「うむうむ、よい喝采である。しかし残念ながら、今日のところはこれで終幕だ。更なる強者との闘う機会があるのならば、その時が余の本気を魅る時となるだろう。ではセムスとやら、覚悟は良いな?」

「ヒッ...!?」

 

 ネロは地面に突き刺した原初の火(アエストゥス エストゥス)──空気の読める愛剣を抜き、円を描くようにしてからゆっくりと上段に構えた。

 怯えるセムスを相手に、ネロは一切の容赦を見せない。まさに兎と獅子。慢心も驕りも捨てた獅子(ネロ)が相手では、か弱い(セムス)に万が一もの勝ち目もない。

 

「謳え──星馳せる終幕の薔薇(ファクス・カエレスティス)!」

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 [凌太side]

 

 

「それでは第二試合、剣咬の虎(セイバートゥース)ルーファス VS 青い天馬(ブルーペガサス)イヴ、試合開始だカボ!」

 

 ネロの圧勝という形で幕を下ろした第一試合。

 戦闘が終わったことによりドムス・フラウは元の姿に戻り、たった今第二試合が始まった。

 

 ネロが本気を出すとは俺も思ってなかった。だってほら、実力差がありすぎるから。いくら俺でも虫を殺すのに奥義なんて出さんし。

 呆れにも似た態度を取る俺をどう見たのか、ジュビアが頬をひくつかせながら俺に聞いてくる。

 

「あ、あの...リョータさん...? つかぬ事をお聞きするのですが...」

「? おう、何」

「えっと...リョータさん達って何者なんですか? とても普通の人間だとは思えなくて」

「そりゃ普通じゃないからな」

 

 神を殺した魔王と、世界に認められた英霊。少なくとも普通の人間ではないと思う。

 

「じゃあ何者なんだよ、って聞かれても正直困る。お前らも知ってる通り、俺達はお前らからすれば異世界人だ。そもそもからして常識も違うからな」

「確かに...エドラスでは《魔力を持ってる》ことが異常だった。お前やさっきのネロって奴からしたら、俺達が驚きすぎてるだけなのかもしれねぇ」

 

 なんかガジルが納得したみたいなこと言ってるし、とりあえず黙っておこう。そうすりゃそれぞれが勝手に解釈すんだろ、多分(放棄)

 まぁそんなことはおいといて。試合はいい感じに盛り上がってきている。

 

「ふーん...記憶の造形魔法とかいったっけ。便利な魔法だな」

 

 記憶から魔法を作り出す魔法、とかメイビスは言ってたな。適正属性関係無く、相手の魔法をコピーする魔法らしい。チートだよなぁ。魔力が持つ限り、って制限があるとしても破格だ。そもそも“魔力が続く限り”なんてのは全ての魔導士に当てはまるから弱点なんて呼べない。滅竜魔法もコピーできるんかな? ネロの宝具は? 俺の権能は? 魔力を使って起こした事象を“魔法”と呼ぶのなら、それら全て使えるはずだ。ますますチートくさい。

 

 俺ならどう戦うか。そんなことを考え始めた矢先に、天馬のホストが倒れる。ルーファスとかいう造形魔導士の勝ちだ。それにより歓声が上がるが、先程までのものと比べるとどうしても見劣りしてしまう。あ、いや、聞き劣りか? まぁどっちでもいっか。

 

 ほどなくして、次の対戦カードが発表された。

 うちのチームからはラクサス、大鴉の尻尾からアレクセイが出るそうだ。

 カラス共は何か企んでいるようだが、まぁ問題はないだろう。ラクサスは弱くないしな。ルーシィや、おそらくウェンディの魔力を消した奴。そいつの存在が少しだけやっかいだが、まぁなんとかなんだろ。

 一応注意だけはしておこう。ラクサスのことはそれなりに気に入っているし、ウェンディの仇ってのもある。いざとなれば俺が出て全員フルボッコだ。

 

 

 

 




評価とか気にしないんだぜ! 自己満で書いてるんだぜ!
とか言ってたけど、正直なところ評価や感想をいただけると奇声あげるくらいには嬉しいのでください(直球)

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