今後はオリ主主観以外のものも入れていこうかとおもいます。そっちの方が楽だって気付いたので。とりあえず今回は第三者主観でいきます。
あとこれ、番外編も含めると100話目です。もうそんなに書いたのか...。書き始めてからもう2年以上経ったんだもんなぁ...。
という訳で、これからも自己満足全開の文を書いていくと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
「終わらせろ、
凌太の声が廃墟に響く。
それと同時に、周囲の温度がグンと下がった。
「...なに、アレ...?」
先程、老いた獣人──ガロロ=ガンダックが呟いたのと同じ言葉を、春日部耀は震えながら口にした。
彼女達の目線の先に在るのは、飛来してきた黒龍などより断然巨大な氷の龍。その頭部だ。
未だ魔法陣から這い出ている最中で全体像は見えないが、推測で全長約三十mはあるだろうか。そう思える程の大きな頭と、圧倒的な存在感。
「...ぃ、おい! 聞いてんのか春日部!」
「っ、」
肩に手をやられ、耀はビクリと跳ねる。
慌てて龍から目を離し、目の前に来ていた少年へと目を向けた。
坂元凌太。自身が所属するコミュニティ“ノーネーム”と同盟を組む“ファミリア”のリーダーであり、問題児三人組と一緒に箱庭へ呼ばれた少年。
時たまふらりと箱庭に現れては好き勝手に暴れ周り、その馬鹿みたいな力で他者を魅せる。自分以上で十六夜並の問題児。それが、耀が目の前の少年に抱く印象の一部だった。
「ったく、呆けんのは後にしろ。さっさと行くぞ。おいカボチャ! 誘導は任せていいんだな!?」
「ヤホホホ! 案内はよろしいですが、その呼び名はなんとかならないですかねぇ?」
突然降ってきた時とは違い、今の凌太はどこも光っていない。
ついでに言うと、服も来ていない。上下共にだ。
そんな全裸野郎が目の前に立っていればどうなるか。もちろん、股間の男の象徴も目に入ってしまう。
「...? .....!?」
「あん? 暴れんな春日部。逃げるぞっつってんだろ」
声にならない悲鳴を上げる耀へ対し、凌太は平然と接している。そしてあろう事か、耀を肩に担ぎ始めたではないか。
まるで米俵か何かのように担がれたことで、耀の視線の先には古傷だらけの尻が現れる。
「ちょ、降ろして!」
「死にたくないなら黙ってろ。本気でヤバい奴がいるんだよ」
「それ絶対凌太の事だよ、この変態!!」
ジタバタと暴れる耀を抑える凌太だったが、すぐに耀の様子がおかしいことに気が付いた。
おかしい。この少女はこんなに取り乱すようなキャラだったかな、と。
頭の片隅で逃げきるための算段を立てつつ、凌太は耀の言葉を脳内で反芻し、解読していく。
「.....変態?」
耀の最後の言葉に辿り着いた時、凌太はようやく違和感に気付く。
──ヤケに下がスースーするな。いや、下だけじゃなくて全身...?
「...ふむ。なるほどそういう...。まあ落ち着けよ春日部。これは事故だ、わざとじゃない」
「なんで!? なんで落ち着いてるの!?」
凌太曰く。
いや、雷そのものになってたんだから服なんてすぐ燃え尽きちゃうじゃん?
耀曰く。
何言ってるのか分かんないけどはよ服を着ろ。
顔を真っ赤にした耀に言われて、凌太は一瞬で服を魔力で編み、身に纏う。今回はいつもの制服やエミヤ支給である某ファストファッション店のような服ではなく、黒のスキニーパンツに紺色の開襟シャツという姿だ。
「はいはい。これで満足か?」
「なんで私がわがまま言ったみたいになってるの!?」
凌太の肩で騒ぐ耀だったが、それも長くは続かなかった。
『逃げられるとでも思うのか、人間!!!』
「ああ、思うね。そら、頭上注意だ」
吼える黒龍に対し、どこからともなく雷が落ちてくる。
それは紛うことなき凌太の仕業であり...その時間を以て、凌太の技は完成した。
『────────』
声は無い。
だが、その威圧感こそが声だとでも言うように、音のない咆哮が周囲に広がる。
氷の龍王、ダインスレイブ。
かつて英雄派のジークフリートが所持していた魔剣の一つであるダインスレイブ。それを核として造り上げられたものが、この龍である。ダインスレイブの逸話に『こおり』を司るなどというものは一つもないが、実際ダインスレイブは氷を司っていた。であるならば、と凌太が改造して威力を底上げし、さらに古代ルーン文字も織り交ぜた魔法陣を通すことで、氷の魔剣は絶対零度の龍王へと姿を変えたのだ。
まあ、龍とは言っても、
そんなゴーレムに、凌太が命令したことはたった一つ。
《終わらせろ》
『───────』
遂にその全身を現した氷の龍王は、その威圧だけで突風を巻き起こす。
全長約三十m。だいたいビル十階ほどの巨体を誇る龍王は、迷うことなく黒龍へと視線をロックした。
『チィッ! 何から何まで化け物か...!』
黒龍──グライアは吐き捨てるようにそう言い、攻撃目標を凌太達から氷の龍王へと変更した。
エネルギーを蓄積し、炎のブレスを撒き散らす。地殻すらも抉るそのはかいこうせんは、だがしかし。氷の龍王に届くことは叶わない。
『なんっ──!?』
グライアの言葉が詰まった。
グライアだけではない。その光景を見ていた者のほとんどが、目の前で起こった出来事に理解が追いついていない。
だが、それもそうだろう。
凍ったのだ。自信の一撃であった炎のブレスが。灼熱を誇る熱炎が。あろう事か、龍王が纏っている冷気だけで。
龍王が攻撃を防いだのではない。ただ、飛んできたものが勝手に凍っただけ。
言葉を無くすグライアに、氷の龍王はゆっくりと手を伸ばす。
近付いただけで、灼熱を誇る炎があの有様だ。それが、直接触れられればどうなるか。グライアの未来は想像にかたくない。
怪獣大決戦の現場から退却しつつも、凌太に担がれていたことで終始しっかりと戦闘を見れていた耀は、後にこう証言する。
『あれは間違っても戦闘なんかじゃない。ただのイジメだった。ちょっと敵に同情しちゃうくらいにはイジメだった』
* * * *
“アンダーウッド”上空。吸血鬼の古城。
すっかり破壊し尽くされたその場所で、殿下は一人佇んで...否、正確には血反吐を吐いていた。
「...チッ。思ったよりもダメージがデカい。...あの神殺し、確か増援が向かっているとか言っていたな。このまま奴と戦い続けるのは危険か...」
かつての同胞とでも言うべきペスト、ヴェーザー、ラッテンの三人を打ち負かした際の主力コミュニティ二つ。《ファミリア》と《ノーネーム》は今回も手を組んでいるらしい、という情報は殿下も知っている。さらに、《ファミリア》にはペスト達三人が所属していることも把握済だ。
それだけの戦力を相手にするにはまだ早い。そう判断した殿下は、倒れているアウラを抱えて古城をあとにする。
「...で、リンはどこまで飛ばされたんだ...?」
どこかにかっ飛んだゲームメイカーを探すのに小一時間かかり、その間に某豊穣神と遭遇して弄ばれるなどの事件があったりするのだが、それはまた別のお話。
* * * *
「...ん?」
氷の龍王による一方的な殲滅が終わった後。殿下という強敵から耀を逃がそうとしていた凌太が、何かに気付いたようにふと足を止めた。
「? どうしたの、凌太」
すでに凌太の肩から降りた耀が、凌太の方を気にするように振り返る。
黒龍という目に見えた脅威が無くなったためか、耀にあまり緊張感はないように見える。それは耀だけではなく、ほかの面々もそうだった。
「いや、あの野郎の気配が遠くなっていくなって」
「あの野郎?」
「...ああ。俺がさっきまで戦ってたやつ。十六夜並のバケモンだよ」
一瞬、殿下達との口約束が凌太の頭をよぎるが、先に約束を破る...というか、守ろうとすらしなかったのは殿下達だ、と思いなおす。
「そんな...凌太が負けるような相手が
「ふざけんなまだ俺は負けてねぇよテキトー言ってんじゃねぇぞ」
そう。勝ってはいないが負けてもいない。
「撤退=負け」ではなく「撤退=勝負の延期」と捉える凌太の思考上、確かに負けてはいないのだ。
とまあ、そんな負けず嫌い野郎は放っておくとして。
実際、凌太と殿下が戦えば、凌太の方が分が悪い。全力を出せるのに時間制限があるほか、ここでは全ての権能を扱える条件が整っていないのだ。あのまま戦い続けていたとして、負けていたのは恐らく凌太の方だったであろう。慎重になった殿下が退いたのは、凌太達にとって僥倖以外のなにものでもない。
「負けてないっていっても、凌太が『逃げよう』って提案するくらいには強いんでしょ? ...まぁそれでも、 そいつのそばにレティシアがいるなら、私は行かなきゃ」
「落ち着け。もう少し待てば、多分あのガキは古城からいなくなる。まだ慌てるような時間じゃないんだ。一回十六夜達と合流すんぞ」
だが、耀を守ることを念頭に置いている限り、さすがの凌太も無理をすることはできない。自分のプライドと身内の安全。この二つを天秤にかけた結果、後者へと傾いたのだ。
「ちなみになんだが、春日部」
「なに?」
「お前、今回の謎解きって出来てる?」
「このゲームの? まあ、一応」
「.....そっかー」
少しだけ、凌太の顔に悔しさが滲み出る。
はっきり言って、凌太はまだほとんど勝利条件が分からずにいた。分かっているのは“魔王ドラキュラ”を殺害するか、“レティシア=ドラクレア”を殺害すれば終わるということ。
“魔王ドラキュラ”=“レティシア=ドラクレア”であると考えられる以上、その二つは実質的に一つとカウントされるし、レティシアを殺すことは“ノーネーム”へ喧嘩を売るも同義。それは避けたい。
となると必然、第三、第四の勝利条件の謎解きをしなければならないわけだが...。
「『砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ』ねぇ...。そもそも文として成立してんのか、これ?」
第三勝利条件は全くの理解不能。星空を集めるまでは、可能かどうかは置いておくとして、なんとか理解できた。だが、実際に玉座に捧げなければならないのは獣の帯。星空どこいった? というのが凌太の考え付いた先だ。
第四の勝利条件『玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て』についてはまだ理解できる。が、それは第一と第二の勝利条件と同じではないのか? と、そう思ってしまうのだ。仮に革命指導者≠レティシアなのだとしても、この広い箱庭で、宛もなく、たった一人を探し当てるなど困難極まる。単純に時間の問題もあった。
「.....いや...星と、獣?」
星と獣で関連して凌太の頭に浮かんだのは、どこぞの熊のぬいぐるみ。星に召し上げられた色男の末路。
そこからさらに関連して出てきたのは、星座である。
「朝のニュースとかでよくある、干支とかじゃなくて......なんだったっけ?」
落ち着いてきた凌太に、ふとした考えが降りてきた。
ようやく謎解きへの活路か見えてきたところで、隣を歩く少女の方から声が飛んでくる。
「あっ。凌太、あれ。あれ十六夜達だ」
そう言った耀は、どこか安心したような表情で正面を指さす。
十六夜とグリー、そしてその他ゲーム攻略組の姿を確認した凌太は、一旦謎解きへの思考を絶ってから、十六夜達のいる方へと気持ち早足で進んで行った。
「よう、ようやく着いたか、十六夜」
「あん? なんだよ凌太。お前、姿が見えないと思ったらこんなとこにいやがったのかよ?」
「おう。暇だったんで、一足先に敵情視察をな。レティシアも見つけたぞ」
「あの城の玉座だろ? ...つーか、あれ本当に城なんだよな? なんか他の建築物と比べて、破壊のされ方が半端ないんだが...」
目を凝らして城を見る十六夜が、そんな疑問を零した。
誰に向けたでもない、ただの独り言だったそんな呟きを拾ったのは、グリーとの挨拶を済ませた耀だ。
「さっきまでは結構綺麗だったんだけど、なんか城内から出てきた雷に粉砕されちゃったんだよ」
「なるほど。つまり全部凌太が悪いんだな?」
「酷い言われようだ」
ちょっと死闘してただけなのに、と凌太は文句を言うが、実際のところ八割くらいは凌太が悪い。
そんな凌太を見て軽く肩を竦めた十六夜は、キョロキョロと興味深げに辺りを見渡す。
「にしても、城以外は随分と綺麗なままなんだな」
「? なんでお前、ちょっと残念そうなんだよ。綺麗に残ってんのはいいことだろ? 知らんけど」
「いや、空の古城といえばもっとこう、古代文明を包む緑豊かな場所の方がロマンがあるだろ?」
珍しく辛口な評価を下す十六夜に、凌太は「いや、知らん」と興味なさげに返す。実際あまり興味はないのだろう。何気にミーハーなところのある凌太にとって、ロマンへの価値観は十六夜とは異なるのかもしれない。
「ま、そんなことよりレティシアだ。俺はもう謎解きは終わってるが、春日部の方はどうだ?」
「うん、解けたよ。第三勝利条件だけだけど。“砕かれた星座”...黄道十二宮の欠片も、アーシャ達が見つけてきてくれたよ」
「あっ、そうだそれだ。かに座とか射手座とかのやつ。朝のニュースの星座占い」
そこで凌太はようやく思い出したらしいが、ぶっちゃけどうでもいいので全員が無視する。
「ふぅん? その欠片、今手元にあるか?」
「うん、あるよ。これ」
耀が取り出した数々の欠片を見た十六夜は、あることに気が付いた。
「...足りない」
「え?」
「足りないんだよ。蠍座と射手座の間、蛇遣い座の欠片が。レティシアの所へ行く前に欠片探しだな」
そう言って、十六夜は軽く方角を確認した後に迷いなく歩きだす。
場の全てを置き去りにする十六夜の行動は、どこか少し焦っているようにも見えた。
* * * *
「俺が最初に目を付けたのは、ゲームタイトル“SUN SYNCHRONOUS ORBIT”だった。その次が第四勝利条件“鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て”かな」
無事に最後の欠片も手に入れた十六夜は、レティシアのいる玉座の間へ向かう途中でゲームの解説をしていた。
ゲーム攻略の一歩手前まできていた耀は悔しげに、ほとんど解けていなかった凌太は感心するように、十六夜の言葉に耳を傾ける。
「なに、簡単な言葉遊びだ。“革命”の綴りは“Revolution”だろ? この単語は多義語でな、同時に“公転”って意味もある。つまり“革命”の主導者ではなく“公転”の主導者と正すことで、全てが繋がる仕組みになっているのさ」
先の戦闘でボロボロになった城内を歩く。
数はおよそ百。元々城下町に飛ばされていた者達に加え、地上から飛んできたゲーム攻略組がまとまって行動しているのだから、城内は足音が絶えない喧騒をみせている。
「つまり十六夜の話を総合すると...『公転の主導者である、巨龍の心臓を撃て』っていうのが、第四勝利条件?」
「腑に落ちないこともあるが、まぁ概ねそういうことだ。ってことで、悪いな凌太。勝手に巨龍を倒されると困る」
「んあ? ああ、別にいいよ。それはしょうがねぇことだし。それにもう、この龍と正面から戦える力は残ってねぇ。不意打ちならワンチャンあるが、そんなのはつまんねぇしな」
不意打ちならワンチャンあるのか...と、話を聞いていた十六夜以外の全員が引く。
そんなことをしているうちに、一行はレティシアのいる玉座に辿り着いた。
「...来たな」
ズカズカと足を踏み入れる一行を見たレティシアは、そう呟く。
「なんだお前、目ぇ覚めてたのか」
「お前は...たしか凌太と言ったか。さては、お前が私の影を倒したな?」
「なんか襲われたからやっちった」
軽く言葉を交わす凌太達を横目でみつつ、十六夜と耀が手分けしながら星の欠片をそれぞれ配置していく。ジャックやアーシャ、サラも手伝おうとしたが、そこは十六夜が頑なに拒否。手違いで“ノーネーム”以外がクリアしてしまうことを警戒しての対処だろう。
残るは十三番目の欠片、蛇遣い座だけとなったところで、十六夜がレティシアを鋭い目で見つめ、問い掛ける。
「...信じていいんだな?」
「ああ。これで巨龍は消え、私も無力化され...それでゲームセットだ」
儚く笑うレティシアを見て、十六夜は不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、最後の欠片を窪みに填める。
その瞬間、配布された全ての“
『ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”
勝者・参加者側コミュニティ“ノーネーム”
敗者・主催者側コミュニティ“ ”
*上記の結果をもちまして、今ゲームは終了となります。尚、第三勝利条件の達成に伴って十二分後、大天幕の開放を行います。それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承ください。夜行種は死の恐れもありますので、七七五九一七五外門より退避してください。
参加者の皆様はお疲れ様でした』
「.....どういうこと?」
何度も何度も“契約書類”を読み直した耀は、意味が分からない、というふうにゆっくりとレティシアを見る。
「そこに書いてある通りだ。今から約十分後、箱庭の大天幕が解放され、太陽の光が降り注ぐ。その光で巨龍は太陽の軌道へと姿を消すはずだ」
「.......レティシアは、どうなるの?」
「死ぬ、だろうな。龍の媒介は私だ」
「...っ、だって、無力化されるだけだって...!」
「すまない、あれは嘘だ」
にべもなく告げるレティシアに、堪らず耀は胸倉を掴もうとする。が、その手は虚しくすり抜けて空を切った。
「な、何これ!?」
「言っただろう? 私の身体は龍の媒介だと。この玉座の私は、侵入者に対する疑似餌。いわば精神体のようなものだ。本来なら私に触れると影が撃退に現れるのだが...そいつはそこの神殺しが倒したらしいのでな」
レティシアに苦笑をむけられた凌太は、無表情で睨み返す。
そして、玉座の前で項垂れたまま両腕を戦慄かせる耀を一瞥したあと、ゆっくりと口を開いた。
「さっきから黙って聞いてりゃごちゃごちゃと。うるせぇっての。十六夜、春日部、俺は先に行くぞ」
そう言ってくるりと踵を返す凌太の背に、十六夜はわかりきっているであろうことを問い掛けた。
「おい、どこ行く気だ?」
「とりあえずは龍の頭付近だな。だいたいの生物は頭を潰せば死ぬ。もうゲームはクリアされた。なら、俺が倒しても文句はないだろ?」
振り返ることなく、凌太は人混みを押し退けながら進む。
だが、十六夜はそれを待ったをかけた。
「分かってねぇなぁ、凌太。巨龍を殺すんじゃない。巨龍の心臓を撃つんだ」
「? 同じことじゃないのか?」
「お前、第四勝利条件の説明聴いてなかったのか?」
「いや聴いてたけど...殺せば同じことかなって...」
何やら軽い調子で会話をしながら、十六夜は凌太の後に続く。
それに続こうと耀も立ち上がったところで、呆然としていたレティシアが飛び出しそうな勢いで叫びだした。
「んなっ...!? ま、待てお前達! くっ、誰かあの三人を止めろッ!」
しかし、誰も三人を止めようとはしない。
当たり前だ。誰だって、ここでそんな邪推なことはしたくないのだろう。
レティシアの声を背に受けながら、三人はどうやって心臓を撃ち抜くのかの話をしながら玉座を後にする。
───数分後。荒れ狂う巨龍へ二つの極光が撃ち込まれ、最強種の断末魔が“アンダーウッド”全域に轟くこととなる。
下層のコミュニティの人間の手によって最強種が消滅させられたことは、後に箱庭を震撼させることとなるのだが、それはまた別のお話。
何が今月(2018年11月)中には投稿したいだふざけんな(ごめんなさい)
今後はこういったことがないよう、気を付けます。