未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第三話(第八話)

南流魂街79地区【斬鬼】―――――――――――――

 

「はあ…はあ…バ、バカな傷一つ負わせられないだと…!?」

 

その場にひざまずく朝八、その後方では薬師寺が四楓院夜九の手当てをしており朝八と薬師寺たちの間に刳八(くるや)が立っている状態である

 

「もう少し楽しめるかと思えば、所詮はこんなもんか……」

 

「くそっ…」

 

「まあ、いい暇つぶしができたよ。そのことには感謝しておくとするか。じゃあな、二番隊隊長」

 

影内が朝八を切り捨てようとしたそのとき

 

「破道の三十一”赤火砲(しゃっかほう)”」

 

影内に向け火の玉が飛んできたが影内は斬魄刀でその火の玉を叩き切った

 

「なんだ、まだ意識があったのか。十二番隊隊長の…えっと…まあいいか」

 

八道(やじ)は朝八から見て影内の左斜め後方に倒れていた

 

「っふ、こっちのやつから始末しようと思ったがお前から始末することにするか」

 

そう言って影内は八道が倒れているほうへ歩き出した

 

「待て、くっ…」

 

朝八は影内の後を追おうとしたがその場に倒れた

 

「そんな急がなくてもすぐにこいつの後を追わせてやるよ」

 

影内は刀を振り上げこう言った

 

「あと1人でも隊長を連れてくればよかったものを…じゃあな、哀れな十二番隊隊長」

 

刀が振り下ろされるその瞬間だった

 

「縛道の八十”樹縛(じゅばく)”」

 

その瞬間影内の足元から樹木が生えてきて、たちまち影内を捕らえた

 

「これは…」

 

「なんとか間に合いましたね」

 

「まさか本当に影内君がいるなんてね」

 

影内は声のするほうへ目を向けた

 

「っ!!お前らは…」

 

そこにはかつての戦友である、初代三番隊隊長・銀華零白と初代十三番隊隊長・狐蝶寺春麗がいた

 

「なるほど、じいさんはお前ら二人をここへ向かわせたか。てっきり雷山が来るものだと思っていたんだがな」

 

「雷山さんはちょっとした事情でここへは来ませんよ。私たちを人質に取ったとしても無駄です」

 

「まっ、影内君に敗けるつもりもないけどね!」

 

「はっ…ははっ…」

 

ザシュッ

 

影内はたった一振りで自身を縛っている樹木を斬った

 

「二番隊隊長よ、お前が知りたがっていた現在生存している初代十三隊隊長4名のうち2名はお前の目の前にいるその2人だ」

 

「なっ…!?銀華零隊長と狐蝶寺隊長が初代十三隊隊長だと!?」

 

「ごめんね朝八君。言う必要がないと思って言わなかったんだよ。私も白ちゃんも雷山君もね」

 

斬魄刀の峰内を肩にあてながら影内が近づいてきた

 

「だから言ったろ。あいつらが自ら初代十三隊隊長だと言うとは思えないとな。それにしてもまさかこの二人が来るとは思わなかったな…」

 

そう言うと影内は斬魄刀を鞘に納めた

 

「やれやれ、隊長を二人始末できると思ったのにな。ここは退くか…」

 

「私たちから逃げられるとでも?」

 

「もちろんただ逃げるだけじゃ撒けないだろうな。縛道の五十六”雷鳴光(らいめいこう)”」

 

その瞬間影内がいた場所に雷が落ちた。一瞬の出来事だったがその場にはもう影内の姿はなかった

 

「逃げられましたか…春麗ちゃん深追いをしてはいけませんよ」

 

「まずは朝八君たちの救援でしょ?私が辺りを警戒しておくから白ちゃんはみんなをよろしくね」

 

銀華零はうなずくと薬師寺のもとへ歩み寄った

 

「薬師寺副隊長、みなさんの怪我の具合は?」

 

「はい。四楓院隊長、八道隊長は大けがですが命に別条はありません。夜九副隊長、刳八副隊長は共に無傷ですが夜九副隊長の意識が戻っていません」

 

「そうですか…とりあえず一旦瀞霊廷に戻りましょう。またいつ影内さんがやってくるかも分かりませんし」

 

「そうですね。夜九副隊長は私が背負っていきましょう」

 

「分かりました。八道隊長は私が四楓院隊長は春麗ちゃんに背負ってもらいましょう」

銀華零がそう言ったとき朝八がふらつきながらも立ち上がり

 

「いや、私にかまわなくてもいい…これくらいの傷なら自力で歩ける…」

 

「ですが…」

 

「くだらないと思うだろうが、私にもプライドがある…女子(おなご)におぶさってもらったとなれば四楓院家末代までの恥だ…」

 

「はぁ…仕方がないですね。どうしてこうも貴族の方はプライドの高い方ばかりなのでしょう」

 

銀華零がそう嘆いたとき

 

「白ちゃん、みんなの具合どう?」

 

狐蝶寺が木にぶら下がって様子を見に来た

 

「皆さん無事ですよ。私は八道隊長をおぶっていくので春麗ちゃんは護衛をお願いします」

 

「了解!」

 

瀞霊廷へ向け歩き出した数分後、朝八は狐蝶寺にとある質問を投げかけた

 

「狐蝶寺隊長、先ほどの影内との会話の中で雷山悟の名が出てきたんだがまさかやつも初代隊長の一人なのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「なるほど、どうりで山本総隊長殿にあのような態度をとれるわけだ」

 

「そうなんだよね。私も白ちゃんも礼儀はわきまえようよって言ってるのに全く聞かないんだよ~」

 

「……やつは、狐蝶寺隊長にだけは言われたくないって言いそうだな」

 

そして銀華零たちは影内の追撃を受けることなく瀞霊廷に帰り着いたのだった

 

「おいおい、これはまた随分とひどくやられたもんだな」

 

朱洼門(しゅわいもん)で待っていた雷山は朝八と八道の姿を見てそう言った

 

「私たちが着くのがあと少し遅かったら二人ともやられてました」

 

「相手は本当に影内だったのか?」

 

「ええ、まず間違いなく影内さん本人だと思います」

 

「なるほどな……」

 

雷山はそう呟くと朝八のほうへ目を向けた

 

「どうだった朝八。影内は強かったか?」

 

「ふんっ、口ほどにもないな。初代十三隊というのは…」

 

「そう言ってる割にはボロボロじゃねぇか」

 

「ふんっ…」

 

「まあいいさ、お前らはゆっくり休みな。あとは俺たちに任せておいてくれればいい」

 

 

* * *

 

 

尸魂界南流魂街77地区【埜口(きぐち)

 

「おい蜂乃背(ふうのせ)、帰ってきたぞ~」

 

影内がそういうと一人の男が応答した

 

「やっと戻ったか。目的どうり隊長を二人始末できたのか?」

 

「いやそれがな、銀華零と狐蝶寺に邪魔されて始末するまではできなかった」

 

「は?あの二人が来たのか?てっきり雷山が来るかと思ったんだが」

 

「銀華零が言うには、”雷山さんはちょっとした事情でここへは来ませんよ”だとさ」

 

二人の会話を聞いていたもう一人が反応した

 

「ちょっとした事情?なんか気になるねぇ」

 

「ああ、しかし厄介だなこっちは全員で7人あっちは隊長が12人も居やがる」

 

「しかもそのうち5人は俺たちのかつての戦友…山本のじいさんも雷山も存命」

 

「この戦力差はきついところだね~」

 

猫間(ねこま)、何をそんな気楽そうに言ってんだ」

 

「気楽そうに入ってないよ。楽しみなんだよ。彼らとは一度でもいいから戦ってみたかったんだよねぇ」

 

「気分屋のお前が珍しくやる気じゃないか」

 

「僕がやる気になろうがならなかろうが僕の自由さ」

 

「まあ、要注意はたかが5人だし、あいつの能力もある。何とかなるだろう」

 

「じゃあ…?」

 

「ああ、あいつが来たら瀞霊廷を落としに行くぞ。それまで各々準備でもしていてくれ」

 

 

 

 

 

 




ー追記ー
南流魂街78地区を79地区に修正しました

縛道の五十六”雷鳴光(らいめいこう)
効果:自身のいる場所に雷を落として自身の姿を一瞬見えなくする

縛道の八十”樹縛(じゅばく)
効果:地中から樹木を生やし相手の自由を奪い、捕らえた者の霊力を吸い取ることで樹木はどんどんと大きくなる。ただし相手の霊力すべてを奪うことはできない

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