未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第十二話(第四十八話)

渦を抜けると雷山と椿咲の目の前には巨大な湖の上に城下町が広がっているような景色が広がっていた

 

 

「ここが、あいつらの本拠地と言ったとことか…」

 

「雷山隊長、その…さっきはすいません…」

 

「…気にするな。あんな不気味な殺気を向ける春麗を目の当りにしたら戦いたくなくなるだろ。特にお前と山吹はな」

 

「ありがとうございます。それでここはどこなんでしょう」

 

「雨入は間違いなく”卍解”と言った。だとするならここは雨入の卍解空間内と考えるのが妥当だ」

 

「その通りです」

 

何処からともなく雨露雨入の声が聞こえてきた。咄嗟に雷山は辺りを見回したが人影一人見つけることが出来なかった

 

「ここは私の”卍解”『梅雨染櫓』の空間内です。ここで志波隊長と銀華零隊長を倒したんですよ」

 

「…なるほど、どうりで名前が挙がってこないわけだ。護廷十三隊に入ったばかりの奴が”卍解”を会得しているなんて普通は考えつかないからな」

 

「ええ、おかげで動きやすかったですよ。いくら暴れても疑われないのですから」

 

「…せっかくここまで来てやったんだ。大人しく春麗を返してもらおうか」

 

「雷山隊長、まさかとは思いますが、その問いに私が”Yes”と答えると思いますか?」

 

その瞬間家屋の中から狐蝶寺が現れ斬りかかってきた

 

「ちっ!!」

 

雷山はバク転の要領で後ろへ飛び退き狐蝶寺の攻撃を躱した。顔を上げると狐蝶寺の両サイドの家屋の屋根に雨明と雨入が立っていた

 

「あなたも本当にしつこいですね。狐蝶寺隊長はそちらに戻ることもないと言うのに」

 

「…お前はデメリット以上のメリットがあると言ったな。あれはどういう意味だ」

 

「僕たちが答える義理も義務もはありませんよ。そんなことよりあなたにはこの空間から出て行ってもらいたいのですが…」

 

「やれるものならやってみろ”雷光光(らいこうひかり)雷鳴鳴(らいめいな)らせ”『雷斬(らいざん)』!!」

 

始解した雷山の周りでスパークが起こり始めたが、すぐにそのスパークが起こらなくなった

 

「ッ!?これは…」

 

「これこそが私の”卍解”『梅雨染櫓』の能力です。これであなたはこの空間内では斬魄刀の能力を一切使用できない!!そして逆に狐蝶寺隊長は思う存分『風芽』を扱えるわけです!!」

 

その時雷山に斬魄刀を解放して巨大な扇を持った狐蝶寺が迫っていた

 

「なるほどな…」

 

不意を突かれた形だったが雷山は狐蝶寺の持つ扇を受け止めていた

 

「これ程緊迫する戦いは久しぶりだな…!!」

 

状況的には不利に見えたが、雷山は戦いを楽しんでいるように笑みを浮かべていた

 

「悪いが春麗、まずお前には気絶していてもらおうか!!……何!?」

 

雷山は『静電気』と言う技を使おうとしたが、その技が使うことが出来なくなっていることに気付いた

 

「ちっ…」

 

何もできない、何も策を練っていない状態で春麗のそばにいることは不利になると判断した雷山は狐蝶寺の扇を払いのけ距離を取った

 

「『雷斬』の”能力”だけではなく”技”までも封じるか…」

 

「雷山隊長!!大丈夫ですか!?」

 

着地した雷山の隣に椿咲が瞬歩で現れた

 

「椿咲、お前はまだ手を出すな。まずは俺が戦ってお前にあいつらの戦い方の癖を見せる。お前が参戦するのはその後だ」

 

「…了解しました」

 

「”破道の八十八”『飛竜撃賊震天雷砲』!!」

 

雷山は雨露姉弟に接近するための囮として鬼道を放った。雷山の鬼道を防ぐ術を持たない雨露姉弟は避けるしかなくそこを雷山が突いた

 

「くっ…!!さすがにあなたと一対一(サシ)での勝負では勝ち目はなさそうですね…!!」

 

空中で雷山の刀を受け止める雨明が呟いた。その間に雷山の背後には狐蝶寺と雨入が迫っていた

 

「隙を突いているつもりだろうが、春麗は最優先で警戒しているんだよ!!」

 

雷山は振り返ることなく狐蝶寺の刀を躱し雨明ごと狐蝶寺を水面へと叩き落した

 

「雨明!!狐蝶寺隊長!!」

 

「次はお前の番だよ…!!」

 

雨入は突きを繰り出したが雷山は刀で突きの軌道を逸らし雨入の懐に入り込んだ

 

「そんな…!?」

 

雷山は雨入の死覇装を掴み背負い投げの要領で雨入を地面へ投げた

 

「がっ…!!」

 

「姉さん!!」

 

慌てて雨入に駆け寄ろうとする雨明だが雷山が行く手を阻んだ

 

「他人の心配をしている場合か!?」

 

「くっ…!!」

 

「うっ…痛てて…」

 

雨入が身体を起こすと椿咲が立ち塞がっていた

 

「…椿咲副隊長、私に何か用ですか?」

 

雨入の問いに椿咲は背を向け雷山に向け叫んだ

 

「雷山隊長!!雨入ちゃんは私が何とかするのでそちらは春麗さんと雨明くんをお願いします!!」

 

「なっ!?」

 

その一言は狐蝶寺を除く全員を驚かせた

「お前が勝手に決めんな!!だが…」

 

「うぐっ…!!」

 

雨明は雷山の刀を受け止めていたが、雷山の瞬歩を捉えられずに腹部を斬られた

 

「いい判断をするようになったな!!」

 

「はぁ…はぁ…くっ…!!」

 

雨明は息が上がりながらも傷口を手で押さえながら雷山を睨みつけていた

 

「さあ、決戦といこうぜ。雨露雨明!!」

 

「くっ…!!狐蝶寺隊長!!」

 

雨明が叫ぶと狐蝶寺が反応し雷山を無理やり退けた

 

「…決戦ですか。確かに最後の戦いになるでしょう。もちろんあなたの敗北で終わりますがね」

 

「言ってな!!」

 

雷山は雨明に再度斬りかかろうとしたが間に狐蝶寺が割ってい入り代わりに斬撃を受けた。狐蝶寺は雷山の斬撃を容易く受け止めたがその衝撃は凄まじく、辺りに衝撃波を生じさせるほどだった

 

「やはり先に春麗をどうにかしないとダメか…」

 

「……」

 

雷山が考え事をしようとした一瞬の気の緩みを狐蝶寺は見逃ず刀を若干逸らし力を入れている雷山の態勢を崩した

 

「うおっ!?」

 

バランスを崩し刀傷を受けながらも雷山は飛び退いて二撃目を躱した。飛び退きながら雷山はけん制の為に鬼道を放った

 

「”破道の八十八”『飛竜撃賊震天雷砲』!!」

 

巨大な雷撃が目の前まで来たとき狐蝶寺はただ一言呟いた

 

「『断空』…」

 

その瞬間狐蝶寺の目の前に透明な防壁が現れ雷山が放った鬼道を防ぎきった

 

「鬼道なら…と思ったんだがな…」

 

その瞬間狐蝶寺が密かに放っていた『鎖条鎖縛』が雷山を捕らえた

 

 

毒牙(どくが)(へび)吸血(きゅうけつ)(ちょう)蛇蝎(だかつ)(はな) 忘却(ぼうきゃく)(のぞ)(くろ)鬱金花(うこんか) (わか)れを()げる友禅菊(ゆうぜんぎく)―――――――――――――――

 

 

狐蝶寺が詠唱をしているすぐ横では足元に広がる水が風により舞い上げられ、いくつもの蛇の姿を形成し始めていた

 

「ッ!!この鬼道はまずい…!!”縛道の九十一”『枷外(かせはず)し』」

 

狐蝶寺が放たんとしている鬼道の威力を知っている雷山は迎撃しようと己にかけられている縛道の解除に取り掛かった

 

 

―――――――――――――――暴蛇(ぼうじゃ)舞蝶(ぶちょう)(くろ)(あめ)()たれる(はな) 戦慄(せんりつ)(おぼ)える意識(いしき)(そこ) (ちょう)(にら)まれる落魄(らくはく)(みこと) ()(ころ)され・(うしな)い 無惨(むざん)()()せよ ”破道の九十三”『猛蛇蝶形花(もうじゃちょうけいか)』!!」

 

 

狐蝶寺が『猛蛇蝶形花』と叫ぶと同時に何体もの水の蛇が雷山に向かっていった。それと同時に雷山を捕らえていた『鎖条鎖縛』が消滅し雷山は咄嗟に叫んだ

 

「”破道の九十五”『雷弾狼炎椛(らいだんろうえんか)』!!」

 

雷山が叫ぶと同時に背後にモミジの葉を模った雷の陣が現れそこから雷で形成された狼が現れた。その狼は向かって来ている水の蛇を飲み込み爆発して霧散した。爆発、霧散したため辺りは白い煙に覆われた

 

(銀華零隊長の時は失敗したけど今度こそ…!!)

 

雷山の視界が塞がれていることを利用して雨明は突きを繰り出したが、雷山は刀を掴むことでその攻撃を防ぎ、反対に雨明に切り傷を与えた

 

「はぁ…はぁ…何故だ…何故狐蝶寺隊長と僕の二人がかりでも倒せないんだ…!!」

 

「簡単な話だ。俺とお前では実力も経験値も違うということだ。例え春麗を使ってもそれは変わらない」

 

「くっ…!!」

 

「…もう気が済んだだろう。春麗を返してもらおうか」

 

雷山は刀の切先を雨明に向けながら言った。その瞬間雨明は怒りによって震えだした

 

「くっ…誰が…誰が…狐蝶寺隊長を奪わせるものか!!」

 

雨明は雷山の刀を弾いて一瞬の隙を作り狐蝶寺の隣へ移動した

 

「…何故思いつかなかったのだろう。こんな回りくどいことをしなくてももっと楽な方法があったと言うのに…!!」

 

「…もっと楽な方法だと?」

 

「…雷山隊長は僕の能力(ちから)が何か知ってます?」

 

「……お前、まさか…!!」

 

その時雷山は雨明が何をしようとしているのかを察した

 

「…どうやら気付いたようですね」

 

「雨明!!それを使ったら狐蝶寺さんが狐蝶寺さんじゃなくなっちゃう!!」

 

雷山が動こうとした瞬間雨入が割って入って来た

 

「邪魔をしないで!!」

 

雨明は止めに入った雨入を振り払った

 

「大丈夫だよ姉さん。狐蝶寺隊長は僕と共に生きていくのだから…」

 

「かはっ!!」

 

次の瞬間、雨明は狐蝶寺の身体を斬魄刀で貫いた

 

(ぼく)身体(からだ)()(わた)せ”卍解”『夢病遊戯(むびょうゆうぎ)』!!」

 

その瞬間雨明と狐蝶寺の身体を凄まじい光が包み込んだ

 

雨明がやろうとしていることを防げなかった悔しさと怒りから雷山は叫んだ

 

「雨明ぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




”破道の九十三”『猛蛇蝶形花(もうじゃちょうけいか)』

効果:蛇を模した風で相手を捕らえ、身体の至る所から蝶形花を咲かせ、蝶形花事相手を散らせる技

詠唱:毒牙(どくが)(へび)吸血(きゅうけつ)(ちょう)蛇蝎(だかつ)(はな) 忘却(ぼうきゃく)(のぞ)(くろ)鬱金花(うこんか) (わか)れを()げる友禅菊(ゆうぜんぎく) 暴蛇(ぼうじゃ)舞蝶(ぶちょう)(くろ)(あめ)()たれる(はな) 戦慄(せんりつ)(おぼ)える意識(いしき)(そこ) (ちょう)(にら)まれる落魄(らくはく)(みこと) ()(ころ)され・(うしな)い 無惨(むざん)()()せよ

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