未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

48 / 55
第十一話(第四十七話)

雷山は、狐蝶寺を奪還するためには雨露姉弟との戦闘は避けられないと判断しており、隊長にも匹敵する実力を持つ椿咲も連れて行こうと五番隊舎へ立ち寄っていた。

 

隊長執務室へ入ると隊士たちから報告を受ける椿咲が対処しきれず混乱状態に陥っていた。椿咲も混乱に加え、雨入がいなくなったことの報告も入っており、事務能力に長けた実松も対処しきれずにいた

 

「た、隊長ぉ!!助けてください!!」

 

「椿咲、すぐに出かける用意をしろ。話はあとだ」

 

「えぇ!?ちょっと待ってくださいよ!ここに溜まっている書類の山はどうするんですか!?」

 

「今は構っている暇はない。それにその書類ほとんどが必要なくなるはずだ。実松、俺は今から雨露姉弟を追いかける。万が一のことも考えられるが、後のことは山本に任せてあるから山本の指示に従ってくれ」

 

「は、はい!」

 

実松は状況を理解できていなかったため、雷山が最後に言った”山本の指示に従ってくれ”と言うことに対して返事をした

 

「よし、椿咲行くぞ!!」

 

「隊長!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ~!!」

 

執務室を飛び出して行った雷山の後を椿咲は慌てて追いかけて行った

 

「一体どうしたんですか!?雨入ちゃんもいなくなっちゃうし、白さんが誰かに倒されたって言うし…」

 

瀞霊廷を出たところで立ち止まる雷山に追いついた椿咲が今までの事の成り行きを聞いてきた

 

「簡潔に言うぞ。まず、雨露たちが今回の事件の首謀者だった。そして白が倒されたことで開かれた隊首会の場に雨露たちが現れ、春麗を連れて姿を消したんだ。あの場での春麗の姿を見て確信した。おそらく虚圏で春麗が暴走した原因はあいつらだ」

 

「雨入ちゃんたちが首謀者…!?白さんを倒したのもあの二人なんですか!?」

 

「ああ、実際にあいつらの口から聞いたわけじゃないが、あの口ぶりからして白を倒したのはあいつらだろうな。そしておそらく志波も…」

 

「そんな…あの二人が…」

 

椿咲は雷山以上に雨露姉弟と深く関わっていたため、二人銀華零と志波の二人を倒したことを信じられない様子だった

 

「分かっていると思うが気を引き締めろよ。あいつらが春麗を操っていると言うことが分かった今、少なくともあの二人のどちらかは始解を会得している」

 

「始解ですか!?いくら何でも会得するのは早すぎますよ!」

 

「ああ、だから今まで首謀者の名に上がってこなかったんだ。……見つけた、春麗はこっちか。椿咲、飛ばすぞ!!」

 

雷山は先程の攻防の最中、狐蝶寺の斬魄刀に静電気と言う形で自身の霊圧を纏わせていた。狐蝶寺だけの霊圧ではとても追える状況ではなかったが、自身の霊圧はいくら離れていようともその痕跡が残っているため探し出すことが出来たのだった

 

「それにしても、なんであの二人が春麗さんを連れて行ったのでしょう…」

 

「さあな、少なくとも俺は春麗からも白からも”雨露雨明””雨露雨入”の名前は聞いたことがない。あの二人に聞けば分かることだが、そう簡単に教えるとも思えないしな…っと思った以上に早く追いついたな」

 

椿咲が前方を見ると十三という文字が書かれた隊長羽織を着る狐蝶寺の背中が見えた

 

「春麗!!」

 

その呼びかけに一度立ち止まり振り返る狐蝶寺だが、その目は雷山たちを見ておらず上の空の状態だった

 

「…てっきり動ける隊長格全員が来ると思ってたんですけど。雷山隊長と椿咲副隊長の二人だけですか。これに関しては想定外だね」

 

「だけど、そんな想定外なんて私たちにとってのハンデとはならない…」

 

狐蝶寺の上にある枝に雨明と雨入の二人が座っていた。その様子から護廷十三隊の誰かが来るのを待っていたと言う様子だった

 

「お前たち…」

 

「あなたも随分しつこいですね雷山隊長。あなたがいくら頑張ろうと、もう狐蝶寺隊長はそちらへは戻らないと言うのに…」

 

「…何故こんなことをした。こんなことをしてもお前らにメリットは何一つないだろ」

 

「メリットがない?それはあなたの主観での話です。僕らにとっては死ぬ可能性があるというデメリット以上のメリットがありますよ。ですが、雷山隊長には到底わからないことです。狐蝶寺隊長のことを何もわかっていないあなたではね…」

 

「春麗のことを名にも分かっていないだと?まるでお前らは知っているような口ぶりだな!!」

 

雷山は抜刀し雨明に斬りかかろうとした。その攻撃に反応するように狐蝶寺が間に入り受け止めようとしていた

 

「無駄ですよ。瀞霊廷での攻防で分かったでしょう。僕たちが攻撃されれば全て狐蝶寺隊長が庇ってくれるとね」

 

「そんなこと分かりきったことだ」

 

「なに?」

 

雷山は斬魄刀を横一閃に振り抜こうとしていたが、それを途中で止め狐蝶寺の懐に入り背負い投げの要領で狐蝶寺を投げ飛ばした

 

「椿咲!!少しの間でいい、春麗を足止めしておいてくれ!!」

 

椿咲は雷山に言われた通り狐蝶寺が雷山の元へ行かないように立ち塞がった。雷山に投げ飛ばされた狐蝶寺は空中でバランスを整え着地しゆっくりと立ち上がった

 

「…春麗さん。あなたを必ず正気に戻します!!」

 

「やっぱり銀華零隊長より先に雷山隊長をどうにかするべきだったかな…」

 

雷山の斬撃を紙一重で躱しながら雨明が呟いた

 

ガキンッ!!

 

「やはり白を襲撃したのはお前か…」

 

「そうですよ。その時雷山隊長も倒そうと思っていたそうなんですけどね…」

 

雨明が瞬歩で雷山の目の前から消えたと同時に背後に雨入が現れた

 

「だから私が雷山隊長を訪ねたんですよ!!”破道の六十三”『雷孔砲』!!」

 

雷山は雨入の鬼道が放たれる直前、反鬼相殺で鬼道を打ち消した

 

「この程度で俺を倒せると思うな!!」

 

「きゃあ!!」

 

椿咲の悲鳴が聞こえ雷山は反射的に声が聞かれた方を見た。椿咲は狐蝶寺に弾き飛ばされ木に背中を打ち付けていた

 

「南美ちゃん、もう終わりなのぉ?へへへっ!!」

 

狐蝶寺は酔った様に頬を紅潮させ、気分が高揚している状態だった

 

「もっとさぁ…楽しい殺し合いをさせてよ!!あの時(500年前)みたいに、いろんなことを忘れてただ戦いに没頭できる殺し合いをさあ!!」

 

その時狐蝶寺の霊圧がさらに上昇した

 

「春麗さん…?」

 

普段の様子からは想像もできないような狐蝶寺の変貌ぶりに椿咲もただ呆然とするとしかできない様子だった

 

「春麗さんどうしちゃったんですか!?元の春麗さんに戻ってください!!」

 

「元の私ぃ?これが私の本性だよ?そんなことよりもさぁもっともぉっと…」

 

殺し合おう(遊ぼう)よ…」

 

「南美ちゃん…?」

 

「ひっ…!!」

 

不気味な殺気を放つ狐蝶寺に椿咲は完全に戦意を喪失してしまった

 

「春麗…!!」

 

「”破道の六十三”『雷孔砲』」

 

その瞬間誰もいない方向から鬼道が飛んできた。その方向からして雷山、椿咲が放ったものではないことは明白だった

 

「『雷孔砲』だと!?いったい誰が…」

 

「…気味の悪い殺気がすると思って見に来てみれば、いったい何をやっているんだ?雷山」

 

現れた一人の人物に雷山と椿咲は驚き、雨明と雨入は警戒感を示した

 

「何故お前がここにいるんだ。六道」

 

そこには少し前に初代隊長たちを蘇らせ瀞霊廷で反乱を起こした初代護廷十三隊十二番隊隊長・六道死生が立っていた

 

「何故と言われてもな…強いて理由(ワケ)を挙げるなら流魂街に住む少年(ガキ)とこの辺りまで来ていたから、だろうな」

 

「…驚いたな。まさかお前が特定の誰かと一緒にいるとは…」

 

「俺の話なんかどうでもいい。それよりこの状況を説明してもらいたい。何故、狐蝶寺春麗がお前たちに刃を向けているんだ?」

 

「簡単に言えば、あの二人が春麗を操っている状態だ」

 

「なるほど。つまりは暗示の類の能力というわけだな」

 

「誰だが知らないんだけどさ、僕たちの邪魔はしないでもらえるかな」

 

雨明と雨入は突然現れた六道に対して過剰ともいえるほどの警戒感を示していた

 

「悪いが見ず知らずの餓鬼の言うことを聞いてやるほど、俺はお人好しではないんでね。”縛道の六十三”『鎖条鎖縛』」

 

六道は雨明に向け鬼道を放ったが、狐蝶寺が刀を振るっただけで鬼道を相殺した

 

「…本気だな」

 

六道はその攻防一つで狐蝶寺が稀に見せる本気の状態だと見抜いた

 

「なるほどな。何故雷山ともあろうものが手をこまねいているのかと思えば、そういうことか」

 

「ああ、だから今はお前に構っている暇はないんだ。戦いたいならまた今度にしてくれ」

 

「お前と戦う気はない。だが、俺を倒した奴が俺より実力が下の者に殺られるのは癪だ。非力だが、手を貸してやろう」

 

「何人集まっても同じことですよ!!」

 

「果たしてそれはどうかな?」

 

雨入は背後から聞こえたその声に驚いた。咄嗟に目を向けるとさっきまで雷山の隣に立っていたはずの六道がそこにいた。

 

「”破道の六十三”『雷孔砲』」

 

「くっ…!!」

 

雨入は六道が放った鬼道をギリギリで躱した

 

「さすがに雷山を退けているだけはあるな。”修羅道”を使っても攻撃を見切るとはな」

 

攻撃を躱された六道は余裕を見せるように立っていたが攻撃を避けた雨入は反対に冷や汗をかいていて動揺を隠せていなかった

 

「み、見えなかった…」

 

そう一言呟いた雨入は一瞬にして六道が”修羅道”と呼んだ技が非常に恐ろしい技だと感じ取った。

 

(狐蝶寺隊長は今、私たちが攻撃を受ければその攻撃から守ってくれる。だけど今のは狐蝶寺隊長が反応()()()()()んじゃない…反応()()()()()()んだ…)

 

雨入は雨明の斬魄刀をよく知るがために、狐蝶寺が対応できなかったことを理解したがそれは信じがたいことであった。そしてその攻防を見ていた雷山は一見すると無敵とも思える雨明の技に弱点と成り得る点を見つけ出した

 

「なるほど、そういうことか…!!」

 

(六道行使”修羅道”は文字通り六道の身体能力を抜群に上げる技だ。そしてそれは白でも捉えられない程の速さになる。つまりいくら春麗を操ろうが、捉えられない攻撃は庇いようがないということか…!!) 

 

「六道!!」

 

六道の隣へ移動した雷山は、自分が気づいた点を雨露姉弟に聞こえないように小声で伝えた

 

「…知られちゃったかな」

 

その様子を見ていた雨明は自身の能力の一つの弱点を見つけられてしまったと確信した

 

「雨明、ごめんね」

 

六道が雷山に気を取られている隙に雨入は雨明の隣までやって来た

 

「気にしなくてもいいよ。それより準備は出来た?」

 

「うん。いつでも出来るよ」

 

「そう…」

 

雨明は静かに笑みを浮かべていた

 

「…なるほど、確かにそれは考えられる話だな。」

 

「ああ、だからもう一度…」

 

雷山と六道が雨露姉弟に目を向けてようやく二人が木の上に移動していることに気が付いた

 

「そんなに距離を取ってどうしたんだ?さっきの攻防がそんなに怖かったのか?」

 

「…雷山隊長、僕の能力(ちから)を穴を見つけたのは見事です。ですが、それを見つけたところで意味を成さない。何故ならあなたとはここでお別れとなるのですから」

 

「面白い冗談だな。この状況でどうやって逃げるんだ?いくら春麗を操っているとは言ってもお前たちが相手にしているのは、隊長二人だぞ」

 

「それでもお別れとなるのですよ」

 

「”破道の九十三”『猛蛇蝶形花』!!」

 

雨明は狐蝶寺に鬼道を使わせて雷山と六道の意識を鬼道を避ける方に向けさせ一瞬の隙を作り出した

 

「くそっ…!!」

 

「”卍解”『梅雨染櫓(つゆぞめやぐら)』」

 

”卍解”の声が聞こえたときには雨入と雨明を中心に大量の水が辺りを覆い尽くしながら渦を作りつつあった

 

「…もし銀華零隊長の意識が戻ったらよろしくお伝えください」

 

「雷山隊長。少しの間でしたがとても楽しかったです。さよなら」

 

その渦の中に雨露姉弟と狐蝶寺が入って行くと同時に急激に渦が収縮し始めた

 

「くそっ、待ちやがれ!!」

 

その時雷山の目に未だ戦意喪失でうな垂れている椿咲が目に入った

 

「椿咲、何をやっている!!行くぞ!!」

 

しかし椿咲は雷山の声を聞いてもその場から動けずにいた

 

「……」

 

それを見かねた六道は椿咲の腕をおもむろに掴んだ

 

「えっ!?何を…」

 

「受け取れ、雷山!!」

 

六道はどんどんと収縮して行っている渦へと椿咲を投げた

 

「六道、お前…」

 

「雷山悟、椿咲南美、俺を打ち破った時の意地を見せて来い!!」

 

その渦の中に椿咲が投げ込まれたと同時にその渦は消えてしまった。

 

「…雷山、負けたらただじゃ置かないからな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




名前 雨露雨入(あまつゆあいり)※二十一話初登場
所属 護廷十三隊五番隊隊士
身長159㎝ 体重49㎏
容姿 肩まで伸びている黒髪をリボンで結んでいる髪型をしている
性格 やんちゃで大胆不敵な性格をしている。ただし椿咲と違い仕事はこまめにやるという一面も持っている
斬魄刀 雨入(あまいり) 解号:雨よ降れ
能力 相手の持つ能力を強制的に封じる能力
始解能力の発動条件:死神なら相手の刀、虚なら仮面に刀で触れること
卍解 梅雨染櫓(つゆぞめやぐら)
能力 相手を湖の上に浮かぶ城下町を彷彿させる空間に閉じ込める能力。この空間内では、対象一人の斬魄刀の能力、技を封じることが出来る
備考 雨明の双子の姉で弟といつまでも仲良くしていたいと思っている。過去に狐蝶寺に助けられ狐蝶寺と共に自身の卍解の能力で造り出した空間に住もうと計画をしている。実力は志波空山や椿咲とも互角以上に渡り合うことができるほど高い

御触書(おふれがき):卍解使用時のみ使える技。この御触書は対象一人に一つしか使用できず、同じ御触書を別の人物に使うことも出来ない。また、一つの御触書を発動したらしばらくの間は同じ御触書を使うことが出来ない
落城(らくじょう):卍解空間を急激に収縮させ、空間内にいるすべての者を押しつぶす技

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。