未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第十話 (第四十六話)

翌日、それは五番隊第三席・実松矢井からの報告から始まった

 

「雷山隊長!!」

 

雷山は普段なら必ずノックをして入ってくる実松がそれをせず大急ぎで入ってきたことでただ事ではない何かが起きたと察した

 

「そんなに急いでどうしたんだ?」

 

「先程各隊へ緊急連絡が入りました。三番隊・銀華麗隊長が…」

 

「おお、白が敵を討ち取ったのか?」

 

「いえ…銀華麗隊長が何者かに重傷を負わされたとのことです…!!」

 

「何だと…白が重傷を…!?」

 

それを皮切りに銀華零白が何者かに重傷を負わされたという情報は瞬く間に瀞霊廷を駆け巡った

 

「実松、それは本当なのか…?」

 

雷山は銀華零が何者かに重傷を負わされたことが信じられない様子であった

 

「は、はい!三番隊・浮葉副隊長からのご報告で、現在総合救護詰所に収容されているそうです」

 

「…分かった。実松、少しの間留守を頼んでいいか?椿咲が来たらここで待機するように伝えてくれ」

 

「はい、了解いたし――――」

 

実松の返事を最後まで聞かずに雷山は四番隊舎へ向かい大急ぎで出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~四番隊・総合救護詰所~

 

 

「白!!」

 

病室の戸を叩く間もなく雷山は部屋へ駆け込んだ。銀華零の病室には三番隊副隊長・浮葉刃と四番隊隊長・卯ノ花烈、同隊副隊長・薬師寺見舞の3名がいた

 

「……!!」

 

寝かされ体中包帯だらけの銀華零の姿を見た雷山は絶句した

 

「…卯ノ花、白の容態は…?」

 

「…私にできることはしました。あとは本人次第ですが…」

 

言いにくそうだったが卯ノ花は続けて言った

 

「…おそらく、今夜が峠でしょう…」

 

「くそっ…くそっ…!!」

 

雷山は壁に額と右拳を押し付け後悔と怒りからくる自責の念に耐えていた。その姿は雷山が普段見せる、誰がやられようとも冷静沈着でいると言う姿からは到底想像できないような姿だったため薬師寺は思わず目を背けてしまった

 

「……浮葉。白を見つけた時どういう状態だったんだ…?」

 

少しの間の後、気分を落ち着けた雷山は壁に額と拳を合わせたまま浮葉に聞いた

 

「…自分が発見したときは既に瀕死の状態でした…そうだ!銀華零隊長が意識を失う直前何かを自分に伝えようとしてました!!」

 

その言葉を聞いた時雷山は初めて浮葉の方へ顔を向けた

 

「なんだと!?白はなんて言ってたんだ!!」

 

「『雨露さんたち…』と言っていました。しかし何故銀華麗隊長が雨露姉弟のことを指したのかが分からないんです」

 

「雨明と雨入か…十三隊に入ったばかりのあの二人が白を倒せるとは到底思えないんだが…念のため後で話を聞くか。浮葉、お前もついて来てくれ」

 

「はい!」

 

「しかし…あの銀華零隊長が瀕死の重傷を負わされるなんて私はとても信じられないのですが…」

 

ベッドに寝かされた銀華零の姿を改めて見た薬師寺見舞が口を開いた

 

「ああ、十三隊の誰もが信じられない話だろうな。今ここにいる白が幻覚の類と言う可能性も0とは言い切れないが、白がこうなってしまった以上非常に厄介なことになったな」

 

「ええ、銀華零隊長は雷山隊長や山本総隊長殿とも互角に戦える隊長です。その彼女がこうなってしまったと言うことは現時点でその敵に勝つことが出来るのは雷山隊長と山本総隊長殿の二人しかいないと言うことになります」

 

「おいおい。卯ノ花、実力だけならお前も十分戦えるだろ」

 

「護廷十三隊の回復の要である四番隊、その隊の隊長が前線に出てくると思いますか?」

 

「戦いの終盤ならそんなこと言ってられないだろ。まあ、俺と山本がやられた時は任せたからな。さて、では雨露たちに話を聞きに行くか」

 

雷山がそう言うと同時に病室に四番隊の隊士が入って来た

 

「失礼します。卯ノ花隊長、山本総隊長より召集がかかりました。至急一番者へ集合せよとのことです」

 

「……分かりました。見舞さん、後のことは任せましたよ」

 

「はい、分かりました!」

 

「緊急の隊首会か…悪いな、浮葉。雨露たちに話を聞きに行くことだがどうにも一緒に行けそうにない。代わりに椿咲を行かせようと思うんだがどうする?」

 

「…いえ、話を聞きに行くくらいなら私一人でも十分です」

 

「だが、雨露たちが今回の首謀者だったらどうする?白を倒すほどの実力だ。まず間違いなく命はないぞ?」

 

「ええ、その時は私の斬魄刀の能力であの二人を一生空間内から出れないようにします。どうかここは私一人で行かせてください」

 

浮葉の目からは確固たる決意が感じ取れた。一人で行かせるのは得策ではないと考えながらも雷山は浮葉の気持ちを汲んだ

 

「……分かった。だが、雨露たちを敵だと思って行動して行けよ」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~一番隊・隊首会議場~

 

 

「これより戦時特例を護廷大命に変更する。諸君、此度の反逆者を発見次第即刻処刑せよ!!」

 

杖を突く音がその場に響いた

 

「山本、まだ誰がやったか分からないうちに護廷大命にしてもいいのか?」

 

「事態は火急じゃ、ここで手を拱いておれば更なる被害が及ぶのは必至の事じゃ。そうなる前に手を打つのが我ら護廷十三隊の使命じゃ」

 

「そうは言っても護廷大命に変更するだけじゃ意味がないだろう。相手は白すら倒す程の強者だ。ただ即刻処刑に変更するだけじゃ―――ッ!!」

 

雷山たちが何かの気配に気づいた瞬間、隊首会議場の扉が開き始めた。しかしその一秒後扉が破壊され、扉の破片が議場内に飛び散って来た

 

「『放電(ほうでん)』!!」

 

扉の破片を避ける態勢に入る隊長たちの中で雷山は一歩前に出て瓦礫の全てを粉砕した

 

「済まない。助かった、雷山隊長」

 

「……一体これはどういうことだ?お前たち…」

 

破壊された扉の外には雨露雨入、雨露雨明の二人が立っていた

 

「どういうことって、今の行動が全てを物語っていますよ雷山隊長」

 

「……浮葉はどうした?」

 

「浮葉副隊長でしたらここにいますよ」

 

雨入が自身の後ろを指さすと目が虚ろでフラフラと歩いてくる浮葉の姿があった

 

「まさか銀華麗隊長が僕たちのことを浮葉副隊長に話していたなんてね。仕方ないからこうやって操ることにしたんですよ。浮葉副隊長、隊長方のお相手お願いしますね」

 

粗く斬魄刀を構えた浮葉が猛スピードで雷山に襲い掛かった。―――――がしかし

 

「がっ…!!」

 

雷山の目の前まで来た浮葉が突然、バランスを崩し転んだ。床に転がった浮葉を見ると胴の部分に六つの光が突き刺さっておりそれにより動きを封じられている状態だった

 

「”縛道の六十一”『六杖光牢』」

 

「……」

 

何の躊躇いもなく浮葉に鬼道を使ったことに雨露姉弟は少し驚いた表情をしていた

 

「あまり舐めた行動をするなよ。雨露雨入、雨露雨明」

 

「生憎舐めてなんかいませんよ。銀華麗隊長に散々言われましたからね。今回ここまで来たのはちょっとした目的があったんですよ」

 

「目的だと?それは大層なことだな。お前たちを捕まえた後でゆっくりと聞こうか」

 

そう言い雷山は雨露姉弟に斬りかかった。雷山の攻撃に対して雨露姉弟は攻撃を避けようと言う行動をしなかったが雷山の攻撃が通ることはなかった

 

ガンッ――――――――

 

「何をする春麗…!!」

 

「……」

 

雷山の斬撃を受け止めた狐蝶寺の目は虚ろな目をしていた。その目は虚圏で狐蝶寺の斬撃を受け止めた時に見た目と全く同じだと雷山は感じた

 

(ッ!!これは…この目はあの時の…)

 

ガンッ!! ガキンッ!! シュッ!!

 

二度の斬撃による攻防の後雷山は狐蝶寺の胴に峰内を食らわせるべく刀を振るったが、狐蝶寺はそれを避け逆に雷山の腹を蹴っ飛ばした

 

「ぐっ…!!」

 

腹を蹴られたことによるダメージはなかったが、蹴られた衝撃によって後方へ引き下げられてしまった

 

「じゃあ、僕たちは行きます。さようなら、護廷十三隊のみなさん」

 

次の瞬間風の渦が雨露姉弟と狐蝶寺を包み込んだ。風の渦が取れるともうそこには誰もいなかった

 

「待ちやがれ!!」

 

「雷山!!」

 

狐蝶寺を追いに行こうとする雷山を元柳斎の怒号が引き留めた

 

「雷山。おぬし、何処へ行くつもりじゃ?」

 

元柳斎の方へ向かずその問いに雷山は答えた

 

「言わなくても分かるだろ。春麗を連れ戻しに行くんだよ」

 

「ならぬ!此度の事件の首謀者は雨露雨明、雨露雨入、狐蝶寺春麗の3名であるとおぬしも分かっておろう」

 

「……」

 

「何も言わずか…こうなってしまった以上我らが動かぬわけにはいかぬ。現時点を以て緊急特例を護廷大命に変更する。雨露雨明、雨露雨入、狐蝶寺春麗の3名は捕縛を第一義とすることに変わりはないが、抵抗を示すようであれば処刑せよ!!」

 

「…お前の言いたいことはよく分かっているつもりだ。山本元柳斎重國総隊長…」

 

「ッ!!おぬし…」

 

元柳斎は口を開いた雷山が『山本』とは呼ばずに、自身のフルネームを呼んだうえ最後に”総隊長”とつけたことで雷山が引き下がらない程の覚悟を決めていると察した

 

「”例え誰であろうと反逆者は等しく処刑される”そんなことは分かっている。だが、どうしても俺は諦めきれない。きっと白…いや、銀華麗隊長も同じことを言うだろう。だから少し期限を設けてもらいたい。明日中に俺が狐蝶寺春麗を奪還できたと判断されなければ、俺はこの件から手を引く」

 

「貴様!!そんなことが許されると思うか!!」

 

雷山の提案に二番隊隊長・四楓院朝八が反発した。尸魂界の秩序を重んじる彼にしてみれば、雷山の提案はとても看過できるものではなかったためであった

 

「…良いじゃろう。ただし、条件がある。雨露雨明、雨露雨入両名はその期限関係なしとすることとし、狐蝶寺春麗の場合は期限を過ぎれば如何なる理由を述べようとも処刑を行うことになるがそれでも良いか?」

 

「ああ、俺か白がやってもダメならもう誰がやっても止められないからな」

 

「うむ。それだけ聞けば十分じゃ。今回の事件の始末は五番隊隊長・雷山悟に一任することとする。また、本日中に二番隊隊長・四楓院朝八を部隊長とする始末特務部隊を編成し明日出発とする!!」

 

「悪いな、恩に着る」

 

元柳斎に一礼した雷山瞬歩でその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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