未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第七話(第四十三話)

「此度の首謀者と思われる者と接触したじゃと?どういうことか説明してもらおうか」

 

一番隊舎へ到着した雷山と銀華零の二人は元柳斎に先程の一件を伝えた

 

「単刀直入に言えば、再び春麗が操られる事態が起きた。まあそれは俺たちが何とかしたが、その時に春麗を操っている相手とも会話したというところだ」

 

「…再度問うが、狐蝶寺春麗が自分の意思で事を起こしたという可能性は全く無いと捉えて良いのじゃな?」

 

「ああ、春麗が事を起こした際に霊圧を探ってみたら別の霊圧を感じた。これは白も感じ取ったことだから間違いない。相変わらず誰の霊圧かまでは分からなかったけどな」

 

「…なるほど。ひとまずは狐蝶寺春麗が自らの意思で行動している可能性は低いと言うことにしておこう。して、相手の目的は判明したのか」

 

「奴は去り際に”全ては狐蝶寺隊長のため”と言っていた。その言葉で春麗を慕う誰かの仕業と言うとこまでは容易に推測出来るが…」

 

「春麗ちゃんを慕うものは護廷十三隊に数え切れない程います。その線から絞り込むのは不可能だと思います」

 

「おぬしら二人から見て狐蝶寺春麗を異常ともいえるほど慕っている者はおるか?」

 

そう元柳斎に問われた雷山と銀華零は深く考えていたが心当たりがないように首を横に振った

 

「…残念だが、心当たりがないな」

 

「私もです。少なくとも春麗ちゃんの口から聞いたことはないと思います」

 

「うむ…つまりは現時点で”狐蝶寺春麗を慕う誰か”しか情報がないということか」

 

「…山本、仮に春麗が今回の反逆を企んだ首謀者だったらどうするつもりなんだ?」

 

「…たとえ相手が狐蝶寺春麗だろうと我らの”護廷”の意志は変わらぬ」

 

そう言う元柳斎の顔には並々ならぬ覚悟が現れていた。仮に狐蝶寺が首謀者だった場合、雷山と銀華零は狐蝶寺の処刑阻止に動き、護廷十三隊との全面戦争が避けられない事態に発展すると元柳斎は考えていた。それは残りの全隊長の戦力を比較しても大規模の被害が出ることは誰も目にも明白な事でもあった

 

「…そうか。…山本、お互いに春麗が謀反を起こそうとしてなければいいな」

 

「……」

 

「だが、本当の問題は中央四十六室(ろうがいども)が何を言ってくるかだな。まあ、あいつらが何を言ってこようがどんな手段を使ってでも勝手は真似はさせないがな…」

 

「…雷山さん。あまり手荒なことはしてはいけませんよ?あの人たちを怒らせたら例え雷山さんや私たちでもどうすることも出来ない事態が起きかねませんから」

 

「安心しろ。そうなったら俺の命一つで丸く治めてやるよ」

 

「……」

 

現在の護廷十三隊隊長及び歴代全隊長たちは全員等しく雷山の強さは知っているが、幼馴染である銀華零と狐蝶寺の二人だけはその強さの中に自棄が含まれているのを知っていた。雷山は言葉や行動で”誰か”の死を止めるが、その”誰か”の中には雷山自身のことは一切含まれてはいなかった

 

「雷山、多少に事は儂も目をつぶろう。じゃが目に余る行動は慎め」

 

元柳斎が呟いたその時、十番隊副隊長・浮島鑢が勢いよく入って来た。その形相からただ事ではないことは明白だった

 

「はぁ…はぁ…ご報告いたします…!!十番隊・志波隊長が重傷を負っている状態で発見されました…!!」

 

「ッ!!」

 

その報告はその場にいた雷山と銀華零も驚かせる内容だった

 

「どういうことか説明せよ」

 

「は、はい。志波隊長が隊首会から一向に戻られず、捜索をしていたところ急に志波隊長の霊圧が現れ、現場に急行すると大怪我を負った状態で発見したというものです」

 

「誰の仕業か目星はついておるのか?」

 

「いえ、誰がこのようなことをしたのかは不明です。しかし私どもが到着した際には何者かがいた痕跡もありませんでした」

 

雷山は痕跡が全くないと言う点に引っかかった。隊長一人を瀕死に追い込むほどの激しい戦いに誰も気が付かなかったことも考えにくい話だったが、戦っていた自分自身の痕跡を一切その場に残さずにいられることは不可能に近かった。

 

「ともかく、今は事態の収拾に努めるのが先決であろう。浮島副隊長には四楓院隊長が到着するまでの間、現場の指揮を命ずると伝えよ」

 

「はっ!!」

 

浮島は元柳斎に一礼する瞬歩でその場から去った

 

「雷山、おぬしも志波隊長の襲撃された現場に向かってくれぬか」

 

「ああ、分かった。状況が分からない分俺も現場を見ておこうと思う」

 

その後雷山と銀華零は志波が襲撃された場所に赴いた

 

「それにしても、春麗や豊生と隊長を操っていた奴が今度は志波の…引いては隊長格への攻撃か。とてもじゃないが一人でやっているようには思えないな…」

 

「そうですね。これだけのことを誰にも一切悟らせずたった一人で出来るとは考えにくいですね」

 

「やっぱ白もそう思うか……っと、居た居た」

 

雷山の目線の先には現場を指揮している四楓院の姿があった

 

「朝八、何か痕跡と言えるものは見つかったのか?」

 

「…雷山か。いや、残念ながら何も発見できていない。そもそもこの場で戦っていたのかさえも分からないのが現状だ」

 

「……」

 

「痕跡が一切出てこなかったのなら、志波はあの場で斬り倒されたのではなく別の場所で倒されあの場に置かれたとは考えられないのか?」

 

「なんだと…?」

 

「例えば浮葉の斬魄刀『虚空』のように別空間を生成できる能力を相手が持っていたとするなら、志波と戦っていた痕跡が出てこなくても不思議ではないだろ?戦っていた場所と倒れていた場所が別なんだからな」

 

「では今すぐ浮葉刃の身柄を…」

 

「”もう少し頭を使って言葉を発しろ”と前に言っただろ。浮葉を持ち合いには出したが俺は浮葉が首謀者だとは一言も言ってないぞ」

 

「雷山さん。一つ確認してもいいですか?」

 

そう言う銀華零の顔は浮葉が疑われていると思っているように不愉快そうな顔をしていた

 

「まさかとは思うのですが、浮葉さんを疑っている訳ではないのですよね?」

 

「ああ、微塵も疑ってない。仮に隙を突いて志波を倒したとしてもわざわざ空間外に出す必要がない。そんな真似をすれば自分がやったと自白しているようなもんだ。あれだけ頭が回る浮葉がそんなミスはしない」

 

雷山がそう言い切るのには相応の自信があった。現時点で”別空間に他人を閉じ込める能力”を護廷十三隊内でただ一人しか持ってない浮葉がその能力を使えばまず疑われるのは浮葉自身であることは誰の目にも明らかだった。しかし雷山や銀華零にすら一切悟られることなく椿咲を攫うことの出来る程頭の回る浮葉がこんなヘマをするとは到底思えなかったからである。

 

「疑っていないのなら良いのですが…」

 

「ああ、俺も紛らわしい言い方をして悪かったな。しかし厄介な話になったな」

 

「…なるほど。雷山隊長の仮説が正しかったとすれば”他人を操る能力”を持つ者と”別空間を生成しその中に相手を閉じ込める能力”を持つ者の二人がいるということになると言う訳か」

 

「ああ、そしてその二人が合わせた実力は未知数、少なくとも志波以上の実力になるな」

 

「そうなれば私たちも容易く倒される可能性があることを頭に入れておかなければなりませんね」

 

「つまりは銀華零隊長以上の実力者になる可能性があるということか…」

 

朝八は少し考えた後副隊長である四楓院夜九を呼び寄せた

 

「朝八様お呼びでしょうか?」

 

「夜九、私は山本総隊長殿の元へ行き現時点での調査結果を報告してくる。お前は引き続きこの場での調査を続けよ。私が戻るまでの間はお前に現場の指揮を任せる」

 

「かしこまりました」

 

「…雷山、私はまだ椿咲南美を疑っている。しかし、それは私情ではなく冷静に今までの出来事を私なりに考えたうえで出した答えだ。此度の反逆者が椿咲南美だろうが別の者だろうが、ひっ捕らえる為に私はそれ相応の覚悟をしている。それはお前にも分かっていてもらいたい。では、私はこれで失礼する」

 

四楓院はそう言い終わると同時に瞬歩でその場を去って行った

 

「ふっ、生意気な奴め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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