未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第六話(第四十二話)

「さあ、この戦いもいい加減終局としましょうか」

 

死神は戦いを愉しんでいるように高らかに言った。その死神にもう一人の死神が近づいて来た

 

「”御触書(おふれがき)”を使ってもそんなにダメージを受けるんだ。結構強力だったの?」

 

「九十番台の鬼道なんて強力に決まってるじゃん。”御触書”を使ったのと私だったからこれだけで済んだんだよ。普通の人なら間違いなく死んでるって」

 

「…バカな」

 

何事もなかったかのように普通に会話をする死神を見て空山はそう呟いた。空山は自身の鬼道を本来の威力で放ったにもかかわらず目の前の死神が無傷で打ち破った事実を信じられない様子だった。

 

「あの鬼道はいくら隊長格の死神でもそう易々と打ち破れるものじゃないぞ…!!それこそ山本総隊長や雷山隊長程の実力者じゃなければまず無理なはずだ…」

 

 

 

 

 

”破道の九十二”『氷獄炎牢(ひょうごくえんろう)

 

 

その鬼道は藍染惣右介が使った”破道の九十”『黒棺』同様に隊長格の死神も一撃で倒すことの出来るほどの威力を有しており、無傷でいられるのはほぼ不可能であった。しかし目の前にいる死神は死覇装こそ破れたりしていたが身体的なダメージはあまり負っているように見えなかった

 

「鬼道を打ち破ったのが信じられないですか?」

 

死神は空山をからかうように笑って見せた。それほどの余裕をまだ持っていることに空山はさらに驚いた

 

「貴様…俺の鬼道を…どうやって破った…!!」

 

その問いに死神は笑うのを止め真剣な眼差しで空山の目を見て答えた

 

「正確には、あなたの鬼道を正面から打ち破ったのではなく、あなたの鬼道を封じたんですよ」

 

「鬼道を…封じただと…!?」

 

「”御触書(おふれがき)『鬼道封殺令(きどうふうさつれい)』……」

 

「何…?」

 

「私の斬魄刀の能力を最大限活かした技の一つですよ。簡単に言えば、あなたがこの空間内にいる間は私が”御触書”を撤回しない限り鬼道の一切が使えないと言うことです」

 

「それで『氷獄炎牢』が不発に終わったのか…」

 

「ええ、少しダメージを受けてしまいましたがあなたを殺すくらいわけないですよ」

 

「くそっ…」

 

(ダメだ…先程の鬼道でほとんどの霊圧を使ってしまったため、意識が朦朧とする…――――ッ!!)

 

気が付くと襲撃者の死神が自身の目の前に立っていた。死神は疲労で動けなくなっている空山の目の前まで瞬歩を使わず歩いて近づいていたが、意識が朦朧としていた空山はそれに全く気付いていなかったのだ

 

「…最初は隊長でも斬魄刀の能力を駆使すれば簡単に倒せると高を括っていましたが、それはどうやら驕りだったみたいですね。ありがとうございました。おかげでこれからは驕らず戦えそうです」

 

死神は刀を四つん這いの状態で跪いている空山の首元に当て首を掻き切る用意をした

 

「さようなら、志波隊長」

 

空山の首を切ったと同時に鮮血が噴出した。その時空山は一瞬意識が飛びかけ倒れこんだが、この者たちをこのまま野放しにすることは自身のプライドが許さぬと執念で意識だけは繋ぎとめた

 

「さて、志波隊長も倒せたし帰ろっか」

 

「そうだね。このままここにいても僕らの計画に支障をきたすだけだからね」

 

目を向けると二人の死神は自身を倒したと思い込んでおり、背を向けて油断していた。空山は、自身の死を覚悟すると同時にせめてどちらか一人だけでも道連れにしようと考えた

 

(せめて…この一撃だけは…決める…!!)

 

ザシュッ!!

 

「え…?」

 

立ち去ろうとしていた死神は突然腹部に激しい痛みとそこから熱が帯びていくのを感じた

 

「斬魄刀…?なん…で…?」

腹部に目をやると刀の切先が15㎝程飛び出ていて斬魄刀が身体を貫通しているということを物語っていた

 

「うっ…!!うぅ…」

 

死神は、痛みに耐えながらなんとか斬魄刀を引き抜き、傷口を抑えながら片膝をついて肩で息をし始めた

 

「はぁ…はぁ…うぅ…痛い…」

 

傷口を抑えてもなお激痛が襲い、死神は顔を歪めて痛みに耐えていた。その様子にもう一人の死神も慌てて駆け寄った

 

「ちょっとちょっと、大丈夫!?」

 

「大丈夫じゃない…さすがにすごい痛い…」

 

「……」

 

もう一方の死神は立っている余力がなく倒れている空山を一瞥して傷口を抑えて痛がっている死神に一言

 

「ちょっと待っててね。すぐに片づけてくるから」

 

と声をかけ、空山に止めを刺すべく刀を引き抜き攻撃を仕掛けようとした。しかし、その刃が空山に届く直前突然地面が揺れ始めた

 

「ッ!!地面が…?まさかッ!?」

 

この空間内でのこの現象に心当たりのあるもう一方の死神は咄嗟に後ろを振り向いた

 

「ごめん…卍解を維持できそうにない…」

 

死神は傷口を抑えながら申し訳なさそうにそう謝罪していた。そこでもう一方の死神は空山に止めを刺すか顔を見られる前に立ち去るか一瞬迷った

 

「くそっ…!!」

 

空山に止めを刺している暇がないと判断したもう一人の死神は、激痛で動けなくなっている死神を抱き抱え瞬歩でその場を後にした。一人取り残された空山はその様子を見て自身が辛くも勝利したことを察した

 

「はぁ…はぁ……ははっ…隊長を…舐めるな…よ…」

 

その空山もそこで意識が途絶えそのままうつ伏せの形で気絶してしまったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神の卍解が解ける少し前―――――

 

 

「いたか!?」

 

「いえ、まだ発見されません!!」

 

「志波隊長…どこに行かれたのですか…!!」

 

空山がいつまで経っても隊舎に戻らない事態に十番隊は混乱状態に陥っていた

 

「まさか…志波隊長も敵の手に…」

 

「バカなことを言うな!!」

 

十番隊副隊長・浮島鑢(ふじまやすり)の怒号が響いた。隊長が不在の事態に焦りを不安から気が立っていたのである

 

「……ッ!!済まない…今はお前たちに当たっている暇はないと言うのに…」

 

我に返った浮島は怒鳴り散らしてしまった隊士に謝罪した

 

「気にしないでください。志波隊長がどこに行ったのかわからない以上心配になるのは当然ですから」

 

「済まない…お前たちはもう一度廷内を霊圧を探りながら探していてくれ。俺はこの事態を総隊長殿に報告して来てからそっちに合流する」

 

「はいっ!!」

 

隊士が返事をしたその時、浮島を始めとする隊士全員が空山の霊圧を感じた

 

「これは…志波隊長の霊圧…!!」

 

「急ぎましょう!!」

 

しかし、到着した浮島たちが見たのは漫然の状態の空山ではなく、首から血を流し意識を失って倒れている空山の姿であった

 

「志波隊長…!!」

 

浮島はあまりの惨状に絶句したまま立ち尽くしていた

 

「浮島さん早く指示を…」

 

浮島は上の空で隊士の声が聞こえていない状態だった。それに気づいた隊士は浮島の胸ぐらをつかんで大声で浮島の名前を叫んだ

 

「浮島副隊長!!あなたが上の空でどうするんですか!!志波隊長が倒れられた今あなたがこの隊の最高責任者なんです!!」

 

その声で我に返った浮島は、空山が倒れた影響で困惑している隊士たちに指示を出した

 

「まずは急いで四番隊に連絡をしろ!!」

 

「は、はい!!」

 

浮島にそう指示された隊士たちは大急ぎで四番隊舎の方へ走って行った

 

「残った者の中で回道が得意な者は、急いで応急処置の準備をしろ!!」

 

「はい!!」

 

その後数人の隊士が空山に近づき首からの出血を抑えるべく回道での処置を始めた

 

「俺は総隊長殿にこのことを報告してくる。後は任せたぞ!!」

 

「了解しました!!あっ!浮島副隊長!」

 

浮島は隊士に呼び止められて振り向いた。そこには頭を下げている隊士の姿があった

 

「さっきは無礼な態度をしてしまいすいませんでした!」

 

「気にするな、お前がああ言ってくれなかったら俺は動けずにいた!!助かったぞ!!」

 

そう言い残し浮島は一番隊舎に向け走って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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