未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第四話(第四十話)

「…俺は調べものがあるんだ。そこを退いてくれ。今はお前に構っているほど暇じゃないんだ」

 

隊首会が終わった直後五番隊隊舎に戻ってきた雷山は、椿咲に行く手を阻まれていた

 

「そう言わずにちょっと待ってくださいよ!!」

 

「はぁ…薮崎と雨露まで引き留めて何をやってるんだ。大した用事があるわけでもなし」

 

「いえ、重要です!すごく重要ですよ!何と雨入ちゃんの弟君がここに来てるんですよ!」

 

「雨露が五番隊に所属しているんだから来てもおかしくないだろ」

 

雷山は呆れたように大きなため息を吐いた。隊首会の最中に朝八が言っていた”時間を割いてまで聞く程の話でもない”と言う点は概ね事実でありそこに関しては朝八に言われても仕方がないと思っていた

 

「せっかくだから隊長も会いましょうよ!」

 

良知が明かないと判断した椿咲は雷山の隊長羽織を掴んだ。羽織を掴まれた雷山は椿咲の勢いに押され無視して行くのを諦めた

 

「分かったから羽織から手を放してくれ」

 

雷山は椿咲の手を叩いて無理やり羽織から手を離させた

 

「はぁ…それで雨露の弟はどこにいるんだ?」

 

「渋s…薮崎君の後ろに隠れてますよ」

 

見ると確かに藪崎の腰辺りに手が一つ見えた

 

「前に白が言ってた通りホントに物静かだな。一言も発さないんで全く気付かなかった」

 

「雷山隊長すいません。ほら、雨明。雷山隊長に挨拶しなよ」

 

「……」

 

顔を覗かせた雨明は雷山を睨んでいた。雨明と初対面で何もした記憶がない雷山は何故睨んでいるのか全く見当がつかず困り果ててしまった

 

「す、すいません!!雨明!!なんでそんな顔するの!!あっ、こら!!」

 

雨入のその声と共に雨明は逃げ去って行った。雨入は雷山に再度謝るとその後を追いかけて行った

 

「それで、雨入の弟と何話してたんだ?」

 

雷山は雨入と雨明をここに連れてきたであろう藪崎に聞いた。藪崎は”別に大したことじゃないんだがな”と前置きをし話し始めた

 

「実は雨露姉弟と俺は知り合いなんだ。それで、雨入に”雨明がどうしても私以外の人と話そうとしないから何とかしてほしい”と言われてな。それで誰とでもすぐに仲良く話せるようになる安に会わせようとしたんだが…」

 

その時藪崎が椿咲をチラッと見たのを雷山は見逃さなかった。その行動で話に出てきてない椿咲がなぜこの場に居たのかと藪崎が何を言おうとしているのかを大体察したのだった

 

「なるほど、つまりは”捕まった”と言う訳か」

 

「ああ、退けと言っても退かねぇからさすがに困ってたんだ。雷山が来なきゃ前と同じことになってたな」

 

「まあ、結果的に手を出さなかったのは褒めてやるよ。白に話は通しておいてやるから明日雨入と安を連れて雨明と思う存分話してきな」

 

「おっ!さすが雷山だな。どこかの副隊長と違って話は通る。じゃあ明日安と雨入を連れて三番隊まで行ってくる。じゃあな」

 

その時藪崎は気付いていない様子だったが、すごく嬉しそうに笑っていた。藪崎が去って行く中、雷山は藪崎との会話の中で一つ気になったことを聞いた

 

「薮崎、一つ聞いていいか?」

 

「今更聞くこともないだろ」

 

「いや、大したことじゃないが、あの場所にいたお前が雨露たちとどうやって出会ったのか気になってな」

 

「んな細かいことなんかいちいち覚えてねぇよ。じゃあな」

 

「……」

 

雷山は執務室に向かい歩きつつ薮崎が雨露たちに会った経緯について深く考えていた

 

(いつどこで出会ったか記憶がないか。まあ、俺も白や春麗との出会いを正確に覚えている訳じゃないから不思議じゃないが…少し調べてみるか…)

 

執務室に着いた雷山は開口一番に椿咲に藪崎の隊記録がどこにあるかを聞いた

 

「藪崎君の隊記録ですか?それならここに…」

 

そう言って椿咲は棚から五番隊前隊士の記録が集積されている書類を出してきた。雷山は護廷十三隊全体絡みの書類や他の隊からの書類、隊長が確認しなければならないものなどは管理しているが、五番隊内に関する書類の管理だけは椿咲に任せていた

 

「おう、ありがとよ」

 

「それにしても珍しいですね。隊長が隊の記録を見たいなんて…」

 

「ちょっと調べ物をな…ん?五番隊入隊以前の藪崎の記録はないのか?」

 

「それなら図書館の方にしかありませんよ。私が管理しているのはあくまでも五番隊にいる間の記録だけなので、異動でいなくなったらその都度異動した隊に持って行ってるんですよ」

 

「図書館か…」

 

「留守はしてるんで、行ってきてもらってもいいんですよ?」

 

「…そうだな。ちょうど白にも用事が出来たことだし少し行ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~瀞霊廷・三番隊隊舎付近~

 

 

「わざわざお見送りなんかしてくれなくてもよかったのに」

 

「そうもいきませんよ。最近、また騒がしくなってきていますから」

 

「それもそうだね。白ちゃんが強いのは分ってるけど、そっちも気を付けてね」

 

「ええ、もちろんですよ。それではまた今度」

 

「うん!またね!」

 

銀華零は歩いていく狐蝶寺の背中を見て隊舎の中へ入ろうとした

 

「……?」

 

銀華零は背後に何かの気配を感じ立ち止まった

 

「…一体何の真似ですか?」

 

銀華零の背後には斬魄刀の切先を銀華零に向けて立ち尽くしている狐蝶寺の姿があった

 

「もう一度聞きますよ?これは一体何の真似ですか?」

 

「……」

 

振り返った銀華零はまず狐蝶寺の虚ろとしている目が気になった。それは先日虚圏で見たものとはまた別のものであったが、銀華零にとっては警戒に値した

 

「春麗ちゃん…いえ、貴方いったい何者ですか?」

 

銀華零は直感的に今目の前にいる人物は狐蝶寺ではないと感じた。それは姿が幻覚によるものという意味ではなく、精神や心と言った内面の事を指していた

 

「……」

 

一方の狐蝶寺は銀華零の言葉に一切の反応を示さずに刀を構え今にも銀華零に斬りかかろうとしている状態だった

 

「仕方ありませんか…」

 

銀華零も刀を抜き狐蝶寺の攻撃を迎撃する態勢に入った。それと同時に狐蝶寺が地面を蹴り猛スピードで銀華零に斬りかかってきた

 

「くっ…!!早い…!!」

 

銀華零と狐蝶寺の刀がぶつかり合おうとしたその時

 

「”縛道の六十三”『鎖条鎖縛』」

 

「ッ!!」

 

突然、狐蝶寺の身体に鎖が巻き付き動きを封じた

 

「おいおい、これは一体どういう状況なんだ?」

 

声のする方へ視線を向けると雷山が立っていた

 

「雷山さん…」

 

「一応言っておくが、そこを動くなよ。十三番隊隊長・狐蝶寺春麗」

 

「……!!」

 

「春麗の霊圧の中に別の霊圧を感じるな…」

 

狐蝶寺は雷山が乱入したことに驚いている様子だった。雷山は狐蝶寺の霊圧の中に別の者の霊圧を感じ取り自身の考えていた”春麗を操っている者”がついに現れたと察した

 

「…なるほど、ついに姿を現したというわけか」

 

「ぐぬぬ…」

 

捕らえられた狐蝶寺は何とかして鎖を引き千切ろうとしていた

 

「無駄なことはするな。その鎖は死神の腕力じゃどうしようもないものだ。お前はただそこで大人しくしていればいい」

 

「くっ…!!」

 

狐蝶寺は怒りからか雷山を睨みつけた

 

「お前にはいろいろと聞きたいことがある。まず、お前の目的と春麗を陥れようとしている訳を聞こうか」

 

「…ただ一言言うのなら、全ては狐蝶寺隊長のためだからだ」

 

「春麗のため…?それはどういう…」

 

「あなたに分かる訳がありませんよ。狐蝶寺隊長のことを何も知らないあなたではね…」

 

そう言うと狐蝶寺は再び気を失った。気を失いその場に倒れこもうとした狐蝶寺を雷山は慌てて支えた

 

「ちっ…逃げられたか」

 

「雷山さん、春麗ちゃんは大丈夫ですか!?」

 

「ああ、目立った外傷はないしただ気を失っているだけだ」

 

「そうですか…」

 

銀華零はホッとしたように胸を撫で下ろした

 

「白、さっきの春麗の霊圧を感じたか?」

 

「はい、春麗ちゃんとは別に違う方の霊圧がありました」

 

「ああ、やはり春麗や豊生自身が事件を起こしているのではなく。裏で誰かが操っているということだな」

 

「今すぐ山本さんにこのことを伝えましょう」

 

「そうだな」

 

雷山と銀華零は狐蝶寺を三番隊舎へ安置した後元柳斎の元へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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