未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第二話(第三十八話)

狐蝶寺から虚圏で起こったことを教えてもらえないかと頼まれた雷山は狐蝶寺に本当に知りたいかを問い、結果虚圏で狐蝶寺が別人のように大暴れしたことを伝えた。それを聞いた狐蝶寺は自分の身にいったい何があったのかと悩み自死も厭わない精神状態に一時陥ったが、雷山の説得でその危機を脱したのだった

 

 

 

 

 

「春麗さんすごいショックを受けていましたね…」

 

狐蝶寺が十三番隊舎へ帰った後、しばらくの沈黙の後椿咲が口を開いた

 

「そりゃ自分の記憶がないときに大暴れしたって聞けば、誰だって不安になるだろ。お前だってそうだろ?」

 

「そうですね…確かにいつまた同じことが起きるのかと考えたらすごい怖いです」

 

「春麗にああは言ったが、相談したにしても解決策が全くない以上、問題を先延ばしにするしかないと言うのが現状なんだけどな」

 

「はい…」

 

 

椿咲は目を閉じて狐蝶寺の剣を受け止めた時のことを思い出していた。真正面から剣を受けた椿咲はあの時の狐蝶寺は自分の知ってる狐蝶寺じゃないと言う気持ちが未だ拭えずにいた

 

 

”さっきも言ったじゃない…私はただ、あの虚を消そうとしているだけだって!!”

 

 

「…雷山隊長。やっぱりあの時の春麗さんは、春麗さんじゃないような気がします」

 

「やっぱりお前もそう思うか…」

 

「なんとなく…と言う感じなんですけど」

 

「まあ、そういった感覚も大事だからな。あと他に気付いたことがあったら何でもいいから言ってくれ。もしかしたらそこに今回のことを解決に導く解答(こたえ)が潜んでいるかもしれない」

 

「はい!」

 

「よし、じゃあさっそく仕事の続きでも…露骨に嫌な顔するな」

 

雷山は仕事を再開しようとすることを露骨に嫌がる顔している椿咲に言った

 

「頭では仕事をちゃんとしたら隊長になれるっていうのは分かっているんですけど、身体が拒絶反応を起こすんですよ」

 

「はぁ…お前なぁ…」

 

雷山が呆れていたその時執務室の外から声が聞こえてきた

 

「失礼します。雷山隊長はいらっしゃいますか」

 

「ああ、いるぞ」

 

襖が開かれると雨露雨入(あまつゆあいり)が立っていた

 

「失礼します。雷山隊長、折り入って相談があるのですが…」

 

雨入が神妙な面持ちで話をし始めたため雷山と椿咲に緊張が走った

 

「…なんだ?」

 

「そのですね…少し暇を頂きたいのですが…」

 

「休暇の話!?」

 

椿咲は緊張していた反動で思わず声を出してしまった

 

「えっ!?」

 

「勝手に勘違いしてた俺たちに問題があったな。それで具体的には何日くらいだ?」

 

「2日ほどです。雨明(あけ)と瀞霊廷内を色々回ってみたくて…」

 

「2日か…」

 

雷山はこれからの仕事の量がどれほどあるかを確認し始めた

 

「うん、別に構わんぞ。今は特に忙しくないし、むしろこういう時に休まないと何時まで経っても休めなくなるからな」

 

「はい!はいはーい!私も行きたいです!」

 

「お前は働き過ぎじゃないだろ。第一、席官じゃない雨露と副隊長のお前じゃ忙しさの度合いが全く違うだろ。それに雨露たちのプライベートに踏み込むんじゃない」

 

「私は都合が合えば椿咲副隊長に来ていただいてもよろしいんですが…」

 

「ほら!雨入ちゃんもこう言ってますよ!それに仕事は帰って来たらちゃんとやりますよぉ…」

 

「…雨露、本当に椿咲が付いて来てもいいんだな?」

 

「はい、雨明には私の方から言っておきます。それに雨明を椿咲副隊長に紹介するいい機会になりますし」

 

「はぁ…、椿咲」

 

「ひゃいっ!!」

 

急に呼ばれた椿咲は驚きながら返事をした

 

「”仕事は帰って来たらちゃんとやる”というあの言葉、忘れたとは言わせないからな」

 

「は、はい!」

 

「よし、じゃあ二日休みをやるから行っていいぞ。雨露たちにいろいろ紹介してやれ」

 

「やったー!隊長、ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

翌日、五番隊隊舎前に集合した椿咲と雨露姉弟は雨入(あいり)の弟である雨明(あけ)と互いに自己紹介をしていた

 

 

「椿咲副隊長、こちらが私の弟の雨露雨明(あまつゆあけ)です」

 

雨入の後ろに隠れている雨明は椿咲を睨むように見ていた

 

「こら、雨明!!なんで椿咲副隊長を睨むなんてことするの!!」

 

「いいよいいよ!あんまり気にしてないから!私は椿咲南美って言うんだ!今は五番隊の副隊長をやってるけど、いつかは五番隊隊長になるんだ!」

 

雨明の警戒心を解こうと明るく話しかけたが、かえって警戒心が増したように思えた

 

「すいません。雨明は知らない人が目の前にいると緊張していつもこうなっちゃうんです。最近、ようやく銀華零隊長には心を開いたようなんですけど…」

 

「うーん…まあ、緊張するんならしょうがないね。じゃあ、気を取り直していこう!」

 

まず椿咲は自身行きつけの甘味処に雨露姉弟を連れて行った

 

「ここが私の行きつけの甘味処だよ!どれも美味しいけど、私のおすすめはお団子だよ!」

 

「あれ、南美さんまたサボっているんですか?」

 

椿咲が店内に入った瞬間声が聞こえてきた。見ると四番隊副隊長・薬師寺見舞が座っていた

 

「また雷山隊長に怒られちゃいますよ?」

 

「サボっているなんて人聞きが悪いなぁ。今日は雷山隊長からお休みをもらったんだよ。それよりも見舞ちゃんもここに居ていいの?」

 

「私はちょっと休憩しているだけです。本当は卯ノ花隊長も誘ったんですけど断られちゃいまして」

 

「私は卯ノ花隊長がここに居なくてよかったと思うよ…」

 

「あの…椿咲副隊長、こちらの方は…?」

 

「あ、ごめんごめん。話に夢中になって紹介が遅れたよ。この子は四番隊副隊長の薬師寺見舞ちゃん。最年少で副隊長になった天才なんだよ!」

 

「もう、椿咲さんったら…」

 

褒められた薬師寺は頬を赤らめて照れている様子だった

 

「見舞ちゃん、この子たちはね。この間五番隊に新しく入った雨露雨入ちゃんだよ。それで後ろに隠れているのが三番隊に入った弟の雨明くん」

 

「よ、よろしくお願いします!ほら、雨明も挨拶しなよ!」

 

「……」

 

雨入の後ろに隠れている雨明は何も言わずにただ薬師寺を見ていた

 

「う~ん…見舞ちゃんでもダメかぁ…」

 

「私何か気に障ることやっちゃったかな…」

 

「すいません!雨明挨拶くらいしてよ!」

 

「見舞ちゃんごめんね。雨明くんものすごい人見知りらしくて、白さん以外まともに話せないらしいんだよ」

 

「人見知りですか…それならこれから徐々に慣れていけばいいですよ。私も護廷十三隊に入りたての頃はそうでしたし」

 

「あの時の見舞ちゃん初々しかったなぁ…」

 

「南美さんに散々悪戯されましたけどね。さて、それでは私はそろそろ戻ります。御三方ともよい休日を過ごしてください」

 

薬師寺は椿咲たちに一礼すると去って行った

 

「さて、それじゃどれ食べた…」

 

「た、助けてくれー!!」

 

椿咲の言葉を遮るように外から人が助けを求める声と爆発音が聞こえてきた

 

「え、何!?」

 

驚いた椿咲は急いで外に出た。そこには惨劇とも呼べる光景が広がっていた。幾人もの隊士が倒れており、辺りが血で真っ赤に染まってる中に白色の羽織を着た七番隊隊長・豊生愁哉(とよおしゅうや)が立っている状態だった

 

「なにこれ…一体どうなっているの…?豊生くん何やってるの!!」

 

「見れば分かることだろう。俺が、邪魔なこいつらを蹴散らしただけだ。まさか、そんなことも分からなくなったのか?椿咲南美」

 

ゆっくりとこちらに顔を向けた豊生の姿を見て椿咲は戦慄を覚えたと同時に違和感を感じた。

 

「これってもしかして…」

 

椿咲は普段の礼儀正しい過ぎる豊生とは明らかに異なっている点と先日の虚圏内での出来事を目の当たりにしている点ですぐに違和感の正体に気が付いた

 

(間違いない、これはあの時と同じだ)

 

「…雨入ちゃん、雨明くん私が豊生くんを引き付けるからその隙に二人とも逃げて」

 

椿咲は豊生に聞こえないように小声で言った

 

「椿咲副隊長を置いて逃げられませんよ…」

 

「大丈夫だって、私こう見えても意外とタフなんだよ?」

 

そう言うと椿咲は抜刀し豊生に斬りかかった。豊生はそれを見て飛び退き椿咲の刃をやり過ごした。その後着地した際に地面を蹴り飛ばしその勢いで突きを繰り出した。一方の椿咲はバク転の要領でその攻撃を躱し逆立ちの状態で鬼道を発動させ、豊生の動きを封じた

 

「”縛道の六十一”『六杖光牢(りくじょうこうろう)』!!」

 

「抜かったか…!!」

 

「雨入ちゃんたち今のうちに!!」

 

「うぅ……椿咲副隊長、すいません!!」

 

自分がこの場において椿咲の邪魔になると察した雨入は雨明を連れて走って行った

 

「さて、これで思う存分…ってわけにもいかないんだけどね」

 

「椿咲、お前まさか忘れたわけじゃないよな!!俺の斬魄刀の能力(ちから)を」

 

「ッ!!豊生くんの斬魄刀で使えるのは破道だけじゃないの!?」

 

「奥の手というものは親しい者にも見せないものだ!!」

 

その瞬間椿咲の『六杖光牢』が何かに掻き消されるように霧散してしまった

 

「お前には、俺のとっておきを見せてやるよ!!”()じり()()え”『鮮彩(せんさい)』!!」

 

豊生が始解したと同時に手に持っていた刀が消え、代わりに拳周りを取り巻くグローブ上の武器に変わった

 

「”破道の三十一”から”三十三”まで”混成鬼道”『黒閃炎(こくせんえん)』!!」

 

「させないよ!!」

 

椿咲は鬼道が放たれる瞬間サマーソルトキックの要領で豊生の腕を上へ弾き『黒閃炎』の軌道をずらした

 

「ちっ…!軌道をずらされたか…!!」

 

「へへっ!だてに副隊長をやってないよ!!」

 

「俺の腕を弾いたその実力は評価に値する。だが、残念だったな。『黒閃炎』は俺の技の中でも珍しい”追尾型”の鬼道だ」

 

「ッ!!…何もない…!?」

 

椿咲は豊生の言葉を聞き鬼道を避けるために背後に目を向けたが、そこに自身に向かって来ている鬼道はなかった。一瞬混乱をした後豊生の言葉が嘘であったことに気が付き態勢を立て直そうとしたが、すでに豊生は二発目の『黒閃炎』を作り出していた後だった

 

「もっと俺の能力(ちから)について知っておくんだったな」

 

豊生は言葉を言い終えたと同時に『黒閃炎』を椿咲に向け放った

 

「やばっ…!!」

 

不意を突かれた状態だったが椿咲は咄嗟に飛び退こうとした。しかし間に合わず黒い炎の中に消えて行った

 

 

 

 

 

 


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