未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第十三話(第三十三話)

態勢を整えるべく一度退いた銀華零たちだったが、銀華零は一度退く以外に何か手があったのではないか、その手を考えるべきだったのではないかと言う自責の念に囚われ、狐蝶寺は雷山を助けることが出来なかった自身の不甲斐なさに涙を流していた

 

 

 

 

 

「山吹副隊長…」

 

「うん…」

 

普段あまり見慣れない隊長たちの姿に浮葉と山吹の二人は思わず顔を見合わせた。そして頷いた後銀華零に進言した

 

「銀華麗隊長、すぐに戻るべきだと思います」

 

「私もそう思います。雷山隊長も南美副隊長もそう簡単にやられるとは思えません。きっと逃れているはずです!」

 

「…そうですね。今はどうするべきかを考えましょうか。春麗ちゃん、泣いている場合ではないですよ」

 

「なんでよ…」

 

「……」

 

浮葉と山吹は狐蝶寺が呟いた言葉の意味が分からず、その場に立ち尽くしていた。反対に銀華零はその意味を察し言葉に詰まっている様子だった

 

「なんで雷山君と南美ちゃんを置いて行ったの…?私と白ちゃんが卍解をすれば全員で逃げることぐらい出来たでしょ…」

 

狐蝶寺のその言葉は先ほどまで銀華零が頭の中で考えていたことの一つであった

 

「春麗ちゃ…」

 

「答えてよ!!」

 

狐蝶寺の怒号がその場に響いた

 

「隊長…」

 

「…何を言っても言い訳にしかなりません。しかし春麗ちゃんの言う通りあの時私が卍解をすれば雷山さんや南美ちゃんが囮になる事態は避けられたと思います」

 

「だったらなんで…なんで見捨てるように逃げてきたの!?」

 

「雷山さんの覚悟を尊重するためです」

 

「雷山君の覚悟…?そんなもの死んじゃったら意味がないじゃない!!」

 

「私だって…私だってそう思いますよ!!」

 

「ッ!!」

 

普段感情的にならない銀華零が声を荒げたことで狐蝶寺は驚いて臆してしまった

 

「しかし雷山さんからすれば、自身が死ぬことよりも春麗ちゃんや南美ちゃんが死ぬことの方がはるかに嫌なことなんです。その証拠に南美ちゃんが攫われた際に隊長を罷免されることを顧みず解放の条件を飲み、六道さんたちとの戦いでは春麗ちゃんが捕まっていると分かった時何よりも優先して助けに行ったのですよ!!」

 

「でも私だって雷山君に死んでほしくないんだよ!!白ちゃんはそう思わないの!?」

 

「そう思っているからこそこれから先程の場所に戻るのですよ!!今度は私たちが雷山さんと南美ちゃんを死なせないために…!!」

 

「……分かった。ムキになって喧嘩腰になっちゃってごめんね?」

 

「構いませんよ。今は状況が状況ですし、何より昔は喧嘩など幾度となくやりましたから」

 

銀華零は浮葉、山吹、狐蝶寺の順に顔を見て言った

 

「それでは行きましょうか。”守られる私たち”ではなく”守る私たち”になるために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ見つからないのですか?」

 

「も、申し訳ありません…!!虚圏全域まで捜索範囲を広げてはいるのですが…」

 

「…まあ、そちらに割いている人員も多くはないので咎めることなどはしませんが、困ることは事実ですね…」

 

ドゥミナスはその時何かに気づいたように顔を一瞬ハッとさせた

 

「引き続きあなた方は捜索をメインにお願いします。これ以上そちらに人員を割くわけにはいかなそうなので」

 

「は、はい!承知いたしました!」

 

「…こちらから出向く手間が省けましたわね。あとは…」

 

 

 ー 同時刻 ー

 

 

「蟻共はまだ見つからぬのか?」

 

「は、はい!全力を挙げて捜索しておるのですが…」

 

「もう良い!ドゥミナスを呼べ!奴に状況を説明させる。どうした?ドゥミナスはおらんのか」

 

「申し訳ありません。ドゥミナス様も行方が分からなくなっておりまして…」

 

「あの女狐め…」

 

その時バラガンは空から何かが降ってきていることに気が付いた

 

「なんだこれは…」

 

その正体は雪であったが、虚圏で降るはずのない雪を目の当たりにしてバラガンは自身らがすでに攻撃を受けていると察した

 

「”銀鏡・降雪(こうせつ)(こう)”」

 

「バラガン陛下!!侵入者です!!」

 

一人の虚がそう言うとその場にいた虚すべてが銀華零を方を見た。雪は銀華零の持つ斬魄刀から発生しておりこの場に雪を降らせている犯人だということは明白だった

 

「これだけ降らせれば十分ですか?」

 

「うん。多分全部は倒せないけどかなり数を減らせるよ。”竜巻(たつまき)冷災旋風(れいさいせんぷう)”!!」

 

銀華零の技によって降り始めた雪が、狐蝶寺の作り出した風に乗り、暴風雪となった

 

「こんなもの…!!」

 

暴風雪を意に介さず狐蝶寺たちに攻撃を仕掛けに行った虚たちは初めこそ暴風雪を受け切っていたが徐々に身体が凍っていき風圧で粉々に砕け散っていった。その光景を見た残りの虚たちは恐れから狐蝶寺たちと距離を取り始めた

 

「…この程度でわしを打ち負かせると思ったら大間違いだ!!」

 

バラガンは竜巻に近づき手に持つ戦斧で竜巻を切りつけた。すると、竜巻は急速に勢いを失い次第に消えて行った

 

「他愛ない…」

 

「そんな…私の技が…」

 

狐蝶寺は”冷災旋風”が掻き消されたことに驚いているようだったが、銀華零は雷山の言葉を思い出し落ち着いていた

 

”バラガン・ルイゼンバーンと言う”老い”の力を持つヴァストローデ級の大虚だ”

 

「…なるほど。あれが雷山さんが言っていた”老い”の力ということですか…」

 

「お前たち!!この蟻共を迎え撃て!!」

 

そう叫ぶバラガンを尻目に銀華零は周りに雷山と椿咲の二人がいないことを確認した

 

「皆さん、作戦はBパターンで行きます」

 

「了解です」

 

「それでは、散開!!」

 

銀華零の合図とともに四人は散らばり銀華零はバラガン、狐蝶寺はドゥミナス、浮葉と山吹は”冷災旋風”で倒しきれなかった虚の残党をそれぞれ相手にするべく動いた。唯一ドゥミナスを発見出来なかった狐蝶寺は霊圧を探りドゥミナスの元へと向かった

 

「…見覚えのある顔かと思えば、あの時敗走した蟻か。みすみす殺されに戻ってきたか」

 

ガンッ!!

 

「……」

 

「黙りなさい…!!私は今虫の居所が悪いのです…!!」

 

「貴様の事などわしにとってはどうでも良い、しかしこの場に怒りを持ち込んだのは失敗じゃな。周りが見えておらぬぞ」

 

銀華零の斬魄刀が徐々に錆び始めていた

 

「わしの力は貴様の刀すら朽ちさせる。迂闊にわしの間合いに入ったのが失敗だったな」

 

「…そう思いますか?」

 

「なんだと?」

 

「『銀鏡』”始解”『雷斬』!!」

 

銀華零が『雷斬』と口にしたと同時に、雷山と同様に銀華零の周りでスパークが起こり始めた。またそれと同時に錆び始めていた刀の浸食が止まった

 

「…氷雪の次は(いかづち)か。随分と多彩なことだ。しかし攻撃手段を変えたところでわしには届か…」

 

バチィ!!

 

その瞬間バラガンの身体をを雷の一撃が走った

 

「…なるほど。その雷はわしたちを足止めしそして散っていった蟻の能力か。良かろう…”虚圏の王”バラガン・ルイゼンバーンの実力を見せてやろう…!!」

 

「『放電』!!」

 

銀華零は刀を振るって電気を放ったがバラガンの戦斧の一振りで掻き消されてしまった。

 

「どうした。その程度ではわしの”老い”を防げぬと言ったはずだぞ!!」 

 

(やはり致命傷を与えるまではいきませんか…)

 

銀華零の斬魄刀『銀鏡』は”他人の斬魄刀の能力を写し自在に使える”というものだが、その斬魄刀の本来の持ち主と比べれば能力の扱いが劣ってしまうという欠点があった

 

「他愛無いものだ。わしと戦い散っていったあの蟻の方がまだ粘っておったぞ」

 

「『百降雷壁陣(ひゃっこうらいへきじん)』!!」

 

銀華零が斬魄刀を振り上げると虚圏の空に雷雲が生成された。そして銀華零が刀を振り下ろすとその雷雲から雷がバラガンを囲むように降り注いだ

 

「他愛無いと言ったはずだ!!」

 

バラガンは戦斧を一振りし雷の壁を消滅させた

 

「所詮は蟻、神には勝てぬ!!」

 

「やはり始解ではここまでですか…」

 

銀華零は『雷斬』を写していた『銀鏡』を元の状態に戻した

 

「”卍か…」

 

銀華零が”卍解”と呟こうとした時だった

 

「『雷刃(らいじん)摩槍(まそう)』”閃”『一閃刃(いっせんじん)』」

 

銀華零の右隣ギリギリを刃状の雷が通り抜けた

 

「ぐっ…!!」

 

バラガンは咄嗟に戦斧に纏わせた”老いの力”でその雷を相殺しようとしたが、雷の一撃があまりにも強大だったため相殺しきれず雷に打たれたように雷撃を受け後方へ弾き飛ばされた

 

「『銀鏡』の技ではバラガンに致命傷を与える決定打には欠け、最も攻撃力が高い俺の『雷斬』を使ってもバラガンの”老い”に防がれてしまう。とことんお前とは相性最悪だったな」

 

銀華零は雷の斬撃が飛んできた方を見た。そこに立つ人物を見て銀華零は目に涙を浮かべただ一言呟いた

 

「無事だったんですね…!!雷山さん…!!」

 

 

 


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