未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

33 / 55
第十二話(第三十二話)

「さてと、それでは主演をお呼びしましょうか。”真の虚圏の王”バラガン陛下を」

 

「ッ!!バラガンだと…!?」

 

雷山にはその名前に聞き覚えがあった。それは未来へ飛ばされた際に参戦した破面たちとの戦いで藍染が率いてきた破面の中にそのような名前の破面がいたと言うことで記憶していた

 

「バラガン陛下をご存じなのですか。なるほど、こちら側のことは全て承知していると言うことですか…」

 

「雷山君、そのバラガンって誰なの?」

 

「バラガン・ルイゼンバーンと言う”老い”の力を持つヴァストローデ級の大虚だ。容姿はあの通り紫のローブを身に纏っている骸骨…現世で最も死神と認知されやすい容姿と言えば分かりやすいな」

 

「あー…なるほどね…」

 

狐蝶寺が何か思い当たるように声を上げた

 

「どうした?」

 

「うん。過去に現世に行ったときに会った子にね。すごく言いにくそうにしてたけど、同じようなことを言われちゃったんだよ」

 

「…そうか。まあ、その話は尸魂界に戻ったらたっぷり聞くとしよう」

 

「戻れる訳があるはずがないでしょう?死神の皆さん」

 

「どうやら上手くいったようじゃな。ドゥミナスよ」

 

「…お出ましか。あいつがバラガン・ルイゼンバーンだ。念のために言うが気を抜くなよ。あいつもイミフィナリオ同様ヴァストローデ級の大虚であることは変わりないからな」

 

現れたバラガンは捕えられているイミフィナリオを見て蔑ました様に話し始めた

 

「”虚圏の女帝”とも在ろうものが無様なものじゃな。何か言うことはあるか?イミフィナリオ」

 

「小僧が随分と言うようになったのう」

 

「どうやら立場を分かっていないようじゃな。だが、まあ良い。イミフィナリオ、貴様の時代は終わった。これからはこのわしの時代じゃ」

 

その時になってバラガンは雷山たちの存在に気が付いた

 

「ドゥミナス、この蟻共は一体何者だ?」

 

「はい、護廷十三隊の隊長格に御座います。イミフィナリオと戦わせて双方葬るつもりだったのですが…」

 

「…失敗(しくじ)ったと言う訳か」

 

「申し訳ありません。バラガン陛下」

 

「まあ、良いだろう。所詮は蟻共、叩いて潰せば良いことだ」

 

そう言うとバラガンは懐から巨大な黒い戦斧を取り出した

 

「虚圏の真の王と戦えるのだ。光栄に思うが良い。やれ、お前たち!!」

 

バラガンの号令と共に配下の虚が雷山たちに突撃してきた

 

「大勢に無勢ですね…」

 

「まずは疲弊している隊長格から狙え!!」

 

虚の軍勢はイミフィナリオたちとの戦いで疲弊している雷山と椿咲から始末するべく二人を重点的に攻撃し始めた

 

「白、春麗!椿咲の援護は任せたぞ!!『雷刃の摩槍』”轟”『雷神狼(じんろう)咆哮(ほうこう)』…すぅ…」

 

雷山は大量の空気を吸い、一時的に息を止め、大声を出すことでそれを吐き出した

 

「◎△$♪×¥●&%#∀!!!」

 

それは言葉ではなく、さながら狼の遠吠えのような声だった。その声は辺りの砂と空気中に漂う静電気を攫い、雷山に近づいていた虚全員に直撃した

 

「ぐあぁぁぁ…!!」

 

大量の静電気を浴びた虚たちは電気分解され跡形もなく消え去って行った

 

「我が兵を…!!」

 

その光景を見ていたバラガンは戦況を大きくこちらに傾ける意味と疲弊している今この瞬間で確実に仕留めるために自ら雷山の前に立ちはだかった

 

「貴様はわしが直々に相手をしてやろう。虚圏の王…いや、虚圏の神と戦い死ねるのだ。光栄に思うが良い!!」

 

バラガンは間を置かずに雷山に戦斧を振り下ろした。しかし雷山も槍でその攻撃を防ぎきっていた

 

「その傷でわしの一撃を受け止めるか。…なるほど、ただの蟻ではないと見える。名を聞いておこう死神」

 

「…五番隊隊長・雷山悟だ。お前の名は知っているから名乗らなくてもいいぞ。バラガン・ルイゼンバーン」

 

「貴様…気安くわしの名を…!!」

 

「黙らせてみろ…!!」

 

雷山たち7人とバラガン率いる虚の大群は初めこそは雷山たちが優勢の状態だったが、数の多さを生かしたバラガンの策により雷山たちは徐々に劣勢になって行った

 

「くっ…!倒しても倒してもキリがない…!!」

 

「浮葉さん危ない!!」

 

銀華零の叫びにハッとし咄嗟に攻撃を防いだ浮葉だったが、バランスを崩し倒れてしまった

 

「しまった…!!」

 

攻撃が浮葉に届く直前、虚は山吹によって斬り倒された

 

「はぁ…はぁ…大丈夫ですか?浮葉さん…」

 

そう聞く山吹自身も頭から血を流し万全の状態ではないように見えた

 

「済まない。山吹副隊長…」

 

その様子をバラガンと戦いながら横目で見ていた雷山はある決心をした

 

(今この場を乗り切るには…この手しかないか…)

 

「ん?貴様、何を企んでおる」

 

雷山が何かしろのことをやろうとしていることをバラガンも察した様子だった

 

「啖呵を切っておいて難だが、ここは一旦退かせてもらおうかと思ってな…全く、退くしか手がない自身の不甲斐なさに腹が立つ…!!」

 

「貴様…!!」

 

雷山はバラガンの戦斧を弾いて空に飛び上がる形で距離を取り、銀華零たちに叫んだ

 

「お前たちここは俺が止めておくから一度退くんだ!!」

 

「雷山さん!?自分が何を言っているのか分かっているのですか!?いくら雷山さんでもその状態で一人では…」

 

万全の状態ではない雷山がたった一人残る危険性を即座に理解した銀華零はそれを止めるように説得を始めた

 

「そんなことを言っている場合か。ここで全員やられるのと、一人がやられることのどちらが得策が分からん訳ではないだろ!いいから一度退いて態勢を整えてくるんだ!!『雷刃の摩槍』”落”『落炎十槍雷陣(らくえんじっそうらいじん)』!!」

 

雷山は『雷刃の摩槍』を十本複製しその全てをバラガンたちと銀華零たちを隔てるように突き立てた。突き立てた槍は他の槍と雷で結び付き雷の壁を形成しそれを無視して行こうとした虚は霧散して消えて行った

 

「さあ、ここを通りたくば、俺殺して行け!!」

 

雷山の気迫に押されバラガンを含めた全員がその場から動けずにいた

 

「…皆さん、ここは一度退きます」

 

銀華零もまた決心したように呟いた。悔しさからか斬魄刀を握る右腕が僅かに震えていた

 

「私は反対だよ!!雷山君死んじゃうよ!!」

 

そう言って雷山の元へ走って行こうとする狐蝶寺を銀華零は抱え走って行った

 

「白ちゃん放してよ!!雷山君が!!」

 

銀華零に抱えられた狐蝶寺は泣きながら暴れていたが次第にその声が遠退いて行った

 

「……お前も行けと言ったはずだぞ」

 

静まり返ったその場で雷山が口を開いた。雷山の背後には椿咲が立っていた

 

「どこに隊長を残して逃げる副隊長がいるんですか?」

 

「バカ言うな。五番隊隊長はお前に任せるつもりなんだぞ。そのお前がここで死んでどうするんだ」

 

「私はまだそれを聞いたことがないので、それを言うのは無しですよ。それに、私って意外としぶといんですよ?」

 

「はぁ…言うことを聞かない副官を持つと大変だ。後で後悔するなよ」

 

「むしろ残ってくれてよかったって言わせてやりますよ!」

 

バラガンはそこでハッと我に返り、残った雷山と椿咲を殲滅すべく配下の虚たちに指示を出した

 

「ええい!何をしているお前たち!!こやつらを叩き潰せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷山と椿咲に大群の虚が襲い掛かった――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雷山の卍解『雷刃の摩槍』には卍解時のみ使える”雷” ”轟” ”閃” ”落”の四つの技が存在する


”轟”『雷神狼の咆哮(じんろうのほうこう)』:大声による音圧で空気中に帯電する大量の静電気を一気に相手にぶつける技。この技は時に音速に達することもあると言う
 
”閃”『一閃刃(いっせんじん)』:槍を振るい一直線上に巨大な刃状の雷を放つ技
 
”落”『落炎十槍雷陣(らくえんじっそうらいじん)』:静電気を使い卍解状態の斬魄刀を模した槍を複製しその全てを相手にぶつける技。放つタイミングを自在に変更することが出来、相手が避けた場所に槍を落とすことも出来る。また、この技は相手より上空にいないと使うことも出来ない
 
”雷”『放電圧死大鎌斬(ほうでんあっしだいれんざん)』:槍の矛部分を鎌の形を模した高電圧の雷で覆いその状態で相手を斬る技。鎌状の部分は変幻自在で好きな形に変えることが出来る。この技を受けた箇所の細胞は電気分解され、補肉剤等を用いても二度と修復が出来なくなるほどの大火傷を負う(事象をなかったことにする井上織姫の”双天帰盾”だと治せる)。雷山は膨大な霊力を使い燃費が悪いと言う点とこの技を”最後の切り札”と位置付けているため滅多に使うことがない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。