未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第十一話(第三十一話)

イミフィナリオと戦っていた雷山は虚圏に来ているはずのない狐蝶寺と相対していた

 

「春麗、何故お前がここにいる?」

 

「何故っておじいちゃんに言われて雷山君を助けに来たんだよ」

 

「…そうか、では質問を変えよう。何故お前一人だけがここにいる?」

 

「……」

 

雷山は狐蝶寺が来ているならば少なくとも副隊長の山吹は来るはずだと考えていた。しかし目の前の狐蝶寺は何も語らずに押し黙っていた

 

「…やはりお前、本物の春麗じゃないな。いったい何者だ、幻覚…って訳でもなさそうだな」

 

「…そうだよ。私は本物の狐蝶寺春麗じゃない。そうだね…私は君の記憶の幻影と言う所なのかな」

 

「記憶の幻影だと?」

 

その時雷山は目の前にいる狐蝶寺が刀に手を掛けたのを見逃さなかった

 

「動くな。いくら春麗の姿をしていても妙な動きをすれば斬るぞ」

 

「無駄だよ。君じゃあ私を倒すことは出来ないよ。…この空間内ではね…」

 

雷山は目の前にいる狐蝶寺が刀に手を掛けた時点でいつ斬りかかって来ても対応できるようにその動きを警戒していた。しかし、次の瞬間には刀の切先が喉に突きたてられていた

 

「動きが見えなかっただと…!?」

 

「バイバイ、精々頑張って本物の私に会うんだね。ああそれと、あまり私を甘く見てるといつか痛い目に合うから気を付けてね」

 

そう言うと狐蝶寺は斬魄刀で雷山の喉元を裂いた。それと同時に雷山の視界は再び暗闇に包まれた

 

「―――――ッ!!」

 

雷山は飛び起きるように目を見開き頭の中で状況を整理した

 

「はぁ…はぁ…」

 

(今のは何だったんだ…!?)

 

雷山は自身の喉元に触れ傷がないかを確認した

 

(さっきのは幻覚じゃなく実際の痛みだった…)

 

「あの、雷山さん?」

 

突如背後から声をかけられ雷山は振り向いた

 

「…なるほどな…!記憶の幻影とはよく言ったものだ。春麗の次はお前か…」

 

雷山の目の前に銀華零白が立っていた

 

「記憶の幻影…ですか。なるほど、春麗さんはすでに私たちが偽物と言うことをあなたに言っているのですね」

 

「この空間は一体何なんだ?」

 

「それはお答えできません。ですが、あなたなら薄々感づいていることがあるのではないでしょうか?」

 

「…やはり、俺の考えは間違ってはいなかったか」

 

雷山は斬魄刀を構え銀華零を隙を伺い始めた

 

「悪いが、お前を倒して行くぞ。白」

 

雷山自身はいくら銀華零が相手だろうと簡単に勝てると思っていた。しかし結末は雷山の予想とは大きく異なっていた

 

「くそっ…」

 

雷山は銀華零に左腕を斬り落とされる重傷を負っていた

 

「…あなたは確かに本気でした。しかし、この空間内では万に一つも私に勝つことは出来ないのですよ」

 

「…俺が勝てないだと、果たしてそれはどうかな?」

 

「あなたが自信家なのは重々承知ですが、この期に及んでハッタリも大概になさいな」

 

銀華零が刀を振り下ろしているその時、時間にすれば一秒にも満たないであろうその瞬間に銀華零は雷山の声を聴いた

 

「やはり所詮は偽物か、取るに足らない。迂闊だぞ?」

 

「うぐっ!!」

 

次の瞬間銀華零の身体に電気が流れ始めた。その電流は凄まじく、銀華零は刀を持っていることも立っていることも出来なくなりその場に倒れこんだ

 

「だから言ったろ。「迂闊だぞ」とな。何が起きたのか知りたいのなら地面を見て見な」

 

「ふふふっ、こちらも言ったはずですよ。この空間内では万に一つも私には勝つことが出来ないと…」

 

パリーンッ!!

 

その瞬間、銀華零の姿が氷の塊に変わり砕け散った。それと同時に背後から何本もの氷柱が雷山の身体を貫いた

 

「惜しかったですね。私からはあなたの助けとなることは言えませんが、本物の私に無事会えることを願っていますよ」

 

そこで雷山の意識は途絶え再び暗闇が辺りを包んだ。その後、雷山は様々な人物に幾度となく殺され、暗闇に包まれ、目を覚ますと言うサイクルを繰り返し続けた。それは雷山の気が参り一切の抵抗を見せなくなるほどにまで

 

「…まさかお前まで出てくるとはな」

 

雷山の目の前には初代護廷十三隊十番隊隊長・蜂乃背秋十が立っていた

 

「久しぶりだな、雷山。この間はよくも俺を殺してくれたな。今度は俺がお前を殺してやるよ!!」

 

「…もう好きにしろ。いい加減殺され続けるのも飽きてきた」

 

雷山があきらめの言葉を口にしたとき蜂乃背からは驚きの言葉が帰って来た

 

「雷山、てめぇ何を言ってやがる。そんな諦めの言葉を口にする腰抜けに成り下がっちまったのか!?」

 

「……」

 

蜂乃背がそう雷山に問いかけても雷山は項垂うなだれているだけだった

 

「雷山!!俺はそんな腰抜けの奴に負けた覚えはないぞ!!」

 

蜂乃背に殴られた雷山は1メートルほど吹っ飛んだが、それと同時に消えかけていた雷山の闘志が戻った

 

「…痛ってぇな。俺が黙っていれば好き勝手言いやがって…だが、おかげで肝心なことを思い出したよ」

 

(そうだ…冷静に考えれば、死んでいる影内や蜂乃背たちが俺を殺しに来れるわけがない。それに白と春麗が言っていた記憶の幻影と言うあの言葉。この二つから考えられることはただ一つ…これは、イミフィナリオが見せる悪夢の中だ!!)

 

「それでこそ、俺がライバルと認めた男だ!!行ってきな、そして狐蝶寺隊長のことは任せたからな!!」

 

蜂乃背のその声が聞こえたと同時に目の前が真っ白に染まった。雷山が目を開けると元の虚圏の景色に戻っていた

 

「バカな、妾の”万楽死(マサクレース)”を打ち破るだと…!?」

 

イミフィナリオは雷山が”万楽死”を打ち破ったことを信じられない様子でいた。

 

「驚いている場合か?」

 

雷山は瞬歩でイミフィナリオの上空に移動した。移動した雷山は斬魄刀を逆手に持つ独特な構えをした

 

「『落雷(らくらい)』!!」

 

雷山が刀で切った空中に小さな雷の球が浮いていた。その球はしばらくは空中に浮いていたが、次第に重力に従って落下し始め幾つにも枝分かれを繰り返し自然現象の雷を模していった

 

「くっ…!!」

 

イミフィナリオはステッキを自身の前で回転させ、自身に当たる範囲の雷を防いでいた

 

「この程度で妾を倒せると思うてか!!」

 

「思うわけないだろ。足元を見て見な!!」

 

「なに…?これは…!!」

 

イミフィナリオの足元では防がれずに地面に降り注いだ雷が少し浮いた状態で帯電していた

 

「イミフィナリオ、俺の本気を見せてやるよ ”卍解”!!」

 

その瞬間帯電していた雷が雷山の斬魄刀に吸い寄せられるかの如く集まり、閃光と轟音で雷山の姿を覆い隠した

 

「”卍解”『雷刃(らいじん)摩槍(まそう)』」

 

閃光が弱まり雷山の姿が見えた時その手には稲妻状に曲がる刀ではなく、2メートルはあろう槍が握られていた

 

「『雷刃の摩槍』”閃”『一閃刃(いっせんじん)』!!」

 

雷山が槍を振るうと巨大な刃状の雷が放たれた

 

「ぐあっ!!」

 

それはイミフィナリオを直撃したと同時にあまりの威力のため砂煙が舞い上がった。その砂煙は上空にいた雷山や近くで戦っていた椿咲、エンジェリーナをも飲み込んだ

 

(やりすぎたな…何も見えん…)

 

雷山は自身の周りの砂煙の動きに注目し警戒していた。しかしイミフィナリオは雷山が砂煙の動きに反応し動く前に雷山を掴みそのまま地面に叩きつけた

 

「ッ!!」

 

「はぁ…はぁ…今の一撃はなかなか良かったぞ…!!だが、妾の力はこの程度ではないぞ…!!」

 

雷山にステッキを突き刺そうとしたその時イミフィナリオは空から降っている雪の存在に初めて気が付いた。そしてそのおよそ一秒後背後に立つ人物の存在に気づくことになる

 

「そなたらは尸魂界の援軍か…よもやこうも簡単に背後を取られるとは…!!」

 

「ええ、万全の状態の貴女でしたらこうも簡単にはいかなかったと思います。雷山さんのおかげですね」

 

「大丈夫ですか!?雷山隊長」

 

「ああ、済まんな。浮葉」

 

「イミフィナリオ様!!今お助けを!!」

 

椿咲を一時的に退けたエンジェリーナはイミフィナリオから銀華零を引き離すべく攻撃を仕掛けようとしていた

 

「はいはーい!動かないでねー!」

 

「ッ!!」

 

エンジェリーナは銀華零にあと一歩と言う所で背後に現れた狐蝶寺に左腕を掴まれ、首元に斬魄刀を当てられ動きを封じられた

 

「くそっ…今一歩のところで…!!」

 

「南美副隊長、大丈夫ですか!?」

 

「全然大丈夫じゃないよー…」

 

「遅れてすいません。雷山さん、南美ちゃん」

 

「いや来てくれて感謝している。白に春麗…ッ!!二人共離れろ!!」

 

雷山のその声に咄嗟に離れた二人はイミフィナリオとエンジェリーナが白い帯のようなもので捕らえられた瞬間を目撃した

 

「…あら、気付かれてしまいましたか。さすがはイミフィナリオ様と互角に戦っていただけはありますね」

 

その場にいた全員が声のする方へ眼を向けると、今尸魂界にいるはずのドゥミナス・ミドフォーゼが笑みを浮かべて立っていた

 

「ドゥミナス!ちょうどいいところに帰って来た!早くこれを外してくれないか!?」

 

「…本当にあなたは物分かりと言うものがありませんね。エンジェリーナ・クァント」

 

「ドゥミナス…やはりそなたは…」

 

状況が全く掴めていないエンジェリーナとは裏腹に全てを察したイミフィナリオはドゥミナスを静かに見据えていた

 

「さすがはイミフィナリオ様…いえ、イミフィナリオですわ。ですが、あなたの舞台はここで終幕となります。ここからはわたくしたちの舞台をご覧くださいな」

 

ドゥミナスのその号令と共にイミフィナリオの配下ではない虚の大群が現れた

 

「さてと、それでは主演を招き入れ、始めましょうか」

 

 

 

 

 




名前 ドゥミナス・ミドフォーゼ
身長174㎝ 体重60㎏ 誕生日は6月6日(由来:悪魔の数字と言われる666から)
アジューカス級の大虚で黒髪の女性の虚。服装は黒と赤を基調としたドレスを身に纏っている。武器は三叉槍の形をしたものを使う。一人称は「わたくし」。【高貴なる神の左腕】と呼ばれているイミフィナリオの最側近の一人でイミフィナリオから絶対的な信頼を置かれている。実力はヴァストローデ級の大虚と大差がないと言われており、その証拠に十三番隊隊長の狐蝶寺春麗と互角に渡り合っていた。その実力から『虚圏の女帝篇』冒頭は、瀞霊廷へ侵攻する虚の大軍勢を率いる総司令官を務めていた。イミフィナリオも裏切られるまで気づかなかったが、その正体はとある大虚の配下でありイミフィナリオを失脚させるために送り込まれたスパイであった。

堕落(コルピシオン):相手を動けなくする技。体の一部に適用することも、複数人にかけることも可能だが一度発動した後に人数を増減させる場合は一度この技を解かなければならないデメリットを持つ。

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