未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第二話

雷山に言われ一足先に五番隊舎に帰ってきた椿咲

 

「隊長にどんな悪戯を仕掛けようかなぁ。あれもいいしこれもやってみたいしなぁ…」

 

そんなことを考えながら椿咲は執務室の襖を勢いよく開けるとそこには

 

「えっ…?隊…長…?」

 

数分前に別れて今十三番隊隊長・狐蝶寺春麗の元にいるはずの雷山悟がいた

 

「隊長、もう帰ってきたんですか…?」

 

椿咲の問いかけに雷山は無反応だった………かに見えたが

 

「ああ、意外と早く終わったんでな」

 

といつも通りの雷山の言葉が返ってきた。安堵した椿咲だったが、彼女はその一瞬を見逃さなかった。椿咲の眼に雷山の顔がニヤッと笑い邪悪な笑みを浮かべているのが一瞬見えた

 

「…!あなた、いったい何者ですか…!?」

 

目の前の人物が雷山ではないと気付いた椿咲は腰に差してある斬魄刀に手をかけた

 

「…は?椿咲、お前は何を言ってんだ?」

 

「へへっ、気安く椿咲なんて呼ぶのはやめてくれないかな?私が何年、雷山隊長の副官をしていると思っているの?」

 

強気にそう言う椿咲だが、顔に余裕は見えず冷汗をかいていた

 

「………」

 

雷山の姿をした者はしばらく沈黙していたが、

 

「ちっ…」

 

舌打ちをし態度を一変させた

 

「さすがに100年近くも副隊長をしている君は騙せなかったかぁ。結構自信があったのになぁ…」

 

残念そうに自分の姿を見る雷山(偽)

 

「残念だけど、ここで大人しく捕まってもらうわ。縛道の六十三…」

 

椿咲が縛道を発動させようとしたその瞬間、時間にして一秒も掛からなかっただろう。しかし椿咲は確かに聞いた

 

「うん、まあ悪くはないね。だけど、甘いよ?椿咲南美副隊長」

 

その瞬間椿咲の視界から雷山(偽)が消えた

 

「…!?どこに…」

 

その瞬間椿咲の目の前に手の平が現れた

 

「しまった…これ…は…」

 

「フフフ…まあ、ゆっくりお休みなさいな。椿咲南美副隊長」

 

椿咲は途切れ行く意識の中でその言葉を聞いた

 

 

 

 

 

 

 

その数分後五番隊舎に雷山が帰ってきた

 

「椿咲、ちゃんと仕事してるかー?」

 

そう問いかけながら執務室の襖を開けたが、執務室には誰もいなかった

 

「……早速いねぇじゃねぇか。どこ行きやがった」

 

そう言ったその時だった

 

「さてと…あれ隊長?もう帰って来たんですか?」

 

執務室の襖が開き椿咲が入ってきた

 

「おい椿咲、お前どこ行ってたんだ?」

 

雷山にそう聞かれると椿咲は少々言いにくそうな顔をしたが

 

「……お手洗いですよ」

 

と答えた。随分とまともな答えが返ってきたので雷山は困った

 

「案外まともな理由だったな…」

 

「さて、隊長も帰ってきて悪戯もできなくなっちゃいましたし大人しく残りの仕事しますかね」

 

「…?」

 

「隊長、どうしたんですか?私の顔に何かついているんですか?」

 

「ん?いや…」

 

雷山は再び前を向いた椿咲に向かって手を伸ばし始めた。

 

「…!?」

 

すると、何かに気づいたように椿咲がその腕を掴んだ

 

「…隊長、私に悪戯を仕掛けても無駄ですよ?」

 

雷山の腕をつかみながらニヤニヤと笑う椿咲

 

「…お前…誰だ…?」

 

腕を振り払い椿咲に向かって雷山はそう問いかけた

 

「えっ?…やだなぁ。悪い冗談はやめてくださいよ~」

 

そうとぼける椿咲に雷山は嘲笑した

 

「残念だが、冗談じゃない。まあ、うまく化けていたとは思う。だがお前は二つミスを犯した」

 

「…!」

 

その瞬間椿咲の顔が緊張したように見えた

 

「一つは今お前が俺の腕を掴んだことだ。…知らなかったか?椿咲は一度もそれに反応出来た事がないんだぜ?」

 

「あ、あれはいつもわざと引っかかってたんですよ!」

 

「苦し紛れの言い訳か。なるほど、確かにそれもあるだろうな。だがな、お前が俺の腕を掴む時に一瞬出した霊圧…あれはどう考えても椿咲の霊圧ではなかった。今は椿咲の霊圧に近づけているようだが、よくよく霊圧を読んでみると若干椿咲の霊圧とは違うな。さあ、猿芝居はやめてそろそろ正体を明かしたらどうだ?」

 

雷山の言葉を静かに聞いていた椿咲だったが、

 

「フフフ…フハハハ…あーあ、バレちゃったかぁ」

 

突如笑い出し斬魄刀を抜いた

 

「バレちゃったもんは仕方ない、ここで戦闘不能に追い込もうか!!」

 

「ッハ!若僧が、俺に勝てると思うなよ」

 

「おりゃ!!」

 

雷山と椿咲(偽)の刃がぶつかりかけたその瞬間

 

「縛道の二十一『赤煙遁(せきえんとん)』」

 

突如現れる赤色の煙

 

「くそっ、新手か」

 

煙が晴れるとそこにはもう椿咲(偽)の姿はなかった

 

「…ちっ、逃げられたか。にしてもあいつは何者なんだ…」

 

そう言った時雷山は机の上に書置きがあることに気づいた

 

「どう見ても椿咲の字じゃないな。…あ?」

 

その書置きにはこう書いてあった

 

 

”椿咲南美五番隊副隊長は預かった。返してほしくば北流魂街八十地区【更木】まで来い。お前の実力は大方把握した、そう簡単に我らに勝てると思うなよ?”

 

 

「…めんどくせぇな、何あいつ捕まってるんだよ」

 

書置きを読み終えた雷山はそう呟いた

 

「だがまあ、助けなければそれはそれで問題だな…」

 

雷山はしばらく目を閉じ考えた

 

(うん、更木は尸魂界で最も治安の悪い場所…当然そこの住人も俺に襲いかかってくるだろう…まあ、負けはしないだろうが、骨が折れるのは事実だな…正直行きたくないな…いや、待てよ?ここで椿咲に恩を売っておくってのもアリだな。少しはあいつを大人しくできるようになるかもしれんな)

 

閉じていた目を開け雷山は呟いた

 

「仕方ねぇ、助けに行ってやるか」

 

そう思い立った雷山は、先ほど訪れた十三番隊舎に再び訪れた

 

「春麗いるかー?」

 

「あら、雷山隊長、今度はどうされたんですか?」

 

「ああ、ちょっと春麗にまた用が出来てな。いるか?」

 

「つい先ほど、銀華零隊長と出かけましたよ」

 

雷山はしまったと声を出した

 

「どこに行ったか知ってるか?」

 

「聞いても教えてくれませんでしたよ」

 

雷山は舌打ちした

 

「あのバカ…」

 

「あ…すいません、雷山隊長」

 

「いや、気にするな。邪魔したな」

 

そう言い十三番隊舎を後にした

 

「仕方ねぇ、霊圧を探って探すか」

 

そこから先は簡単だった。霊圧を探ると狐蝶寺と銀華零は意外と近くにいたため、雷山もすぐ追いつくことができたのだった

 

「―――――という訳なんだが、来てくれるか?」

 

雷山は今まであった事をそのまま話した

 

「あの南美ちゃんが誘拐されるなんて…」

 

銀華零は椿咲が誘拐されたことが信じられない様子だった

 

「確かに信じられないけど、雷山君はこういう嘘は言わないから本当の事なんだろうね」

 

「二人ともすまねぇな。無理なら俺一人で行くg」

 

「それはだめだよ(です)」

 

銀華零と狐蝶寺の声が見事に重なった

 

「いくら雷山さんでも一人で姿も名前もわからない敵の所に行くのは、得策ではないと思いますよ?」

 

そう言う銀華零の後ろで狐蝶寺がウンウンと頷いている

 

「ホントにすまねぇ…」

 

「そんなに謝るなんて雷山君っぽくないよ!元気出しなさい!」

 

「痛っ!?」

 

そう言いながら雷山の頭にチョップをする狐蝶寺

 

「そうですよ、元気出していきましょう。南美ちゃんも無事ですよ」

 

頭を押さえながら二人を呆然と見ていた雷山だったが、

 

「…ああ、そうだな」

 

二人の激励を受け普段通りの彼に戻ったのだった

 

「よし、ここで時間を潰してても無駄だ。さっさと行ってさっさと椿咲を奪い返してくるか!」

 

右腕を上げ意気揚々と言う雷山

 

「帰ってきたら、雷山君のおごりで何か食べよう!」

 

「そうですね!」

 

雷山に対しうれしそうにそう言う狐蝶寺、銀華零

 

「おいおい勝手に決めんなよ。……はぁ、分かったからさっさと行くぞ」

 

「おー!」

 

 

 

 

 

こうして雷山悟、狐蝶寺春麗、銀華零白の三人による椿咲南美奪還作戦が始まるのだった――――

 

 

 

 

 


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