第一話(第二十一話)
前代未聞、初代護廷十三隊十二番隊隊長・六道死生率いる初代護廷十三隊隊長たちと護廷十三隊総隊長・山本元柳斎重國率いる現護廷十三隊隊長たちとの壮絶な死闘から徐々にほとぼりが冷め始めた頃―――――――
~瀞霊廷・五番隊隊舎隊長執務室~
椿咲は五番隊が修復を担当する地区の見回りに出かけ、雷山は先日の反乱の件に関する書類に目を通していた。そこへ何枚かの書類を抱え五番隊第三席・
「雷山隊長少しよろしいですか?」
「なんだ?」
雷山は目線を変えずに実松の呼びかけに答えた。実松は自身が抱えていた書類の一枚を雷山の目の前にそっと置き続けた。
「隊長に山本総隊長から一番隊舎への召集がかかっております」
「はぁ?まったくいきなり何の用だ…」
書類を手渡された雷山は目を通しすぐに席を立った。
「悪いが留守を頼む。こればっかりは無視するわけにはいかない内容なんでな」
「了解しました。いってらっしゃいませ」
雷山は「おう!」と答え実松に留守を任せ一番隊舎へと赴いた
「山本、入るぞ」
雷山は礼儀として一番隊隊長執務室前で一声かけた
「来たか雷山」
「ああ、召集状を出してまで俺に何の用なんだ?」
「先日の六道の件で九番隊隊長の席が空席の状態になっておる。そこでおぬしの
それを聞いたとき雷山は驚きと同時にため息と吐いた
「はぁ…誰だよ。俺に何も言わずに勝手に椿咲を推薦したのは…」
「…狐蝶寺隊長の推薦と聞いておる」
雷山はやっぱりあいつかと言いたげな顔をした
「やれやれ…あいつにも困ったものだ」
「それでどうするつもりじゃ?」
「…もう一つ聞くが、なぜそれをわざわざ俺に言うんだ?」
「この話を勝手に進めたとしたらおぬしは後で文句を言うであろう?」
「よく分かってるな。さすがは500年近くの付き合いだ。まあ、残念だがその話は断っておく。あいつに隊長はまだ早い。あと数年は俺の下に置いておく」
「…そうか。椿咲副隊長にはこのことは伝えなくても良いのか?」
「伝えなくてもいい。俺が断ったことを知ってうるさくなるだろうからな」
「そうか。時間を取らせてすまなかったのう」
「気にすんな。護廷十三隊の長はお前だからな。多少なりとも従うのは当然だろ」
そう言い雷山は一番隊隊舎を後にした。五番隊隊舎に戻ってきた雷山は絶句した
「おい…これはいったいどういう状況だ…」
そこには書類が散らかっている隊長執務室と気を失って倒れている椿咲と藪崎、慌てて片づけをしている実松と安の姿があった
「実松この状況を説明しろ。なんでこの部屋の書類が散乱していてその真ん中で椿咲と藪崎が気絶してるんだ」
「それがその…」
それは数分前に遡る――――――――――
「おい雷山!この書類を…っていねぇじゃねぇかよ」
「君はいい加減雷山さんを呼び捨てにするのをやめたらどう?あれ、実松さん。雷山さんは留守ですか?」
「藪崎…雷山隊長は山本総隊長の所へ行っていていませんよ」
「なんだ、あのジジイの所か。まあいいや。この書類を渡しといてくれ。じゃあな」
「はぁ…やれやれ」
実松が頭を抱え呆れている所に椿咲が帰って来た
「隊長~!」
「がっ!?」
勢いよく部屋に入ってきた椿咲と部屋を出て行こうとした藪崎がぶつかった
「痛ってぇな!どこ見て歩いてんだよ!その二つの目は飾り物か何かか!?」
「ごめんごめん。えっと…渋崎くんだっけ?」
「藪崎だ!!てめぇいい加減にしろよ…!!」
「何よ!少し間違えたくらいでそんなに怒らないでよ!!」
「元の原因はてめぇだろ!!頭に来たぜ…ここで叩き斬ってやらぁ!!」
「それはこっちのセリフよ!!」
そうして大喧嘩が始まり最終的に両者共に相討ちとなり気絶するという結末を迎えたのだった。
「なるほどな。それでこの部屋のあり様か」
「すいません。止めようとはしたんですが自分も安もとても入れるような状況じゃなかったもんで」
「申し訳ないです。雷山さん」
申し訳なさそうに頭を下げる安と実松
「まあ、原因はそこで気絶してる二人だしな。お前らを責めようとは思わんよ」
「うっ…いててっ…」
藪崎が目を覚まし頭を擦りながら身体を起こした。
「こいつ思ってたより強いな…久しぶりに本気を出しちまった…」
「ようやく起きたか。お前何してるんだよ。まあ喧嘩はするなとは言わんがせめて外でやれ」
「…なんだ雷山か。この前も言っただろ俺は誰にも従わないとな」
「……できればこういうのはやりたくはないが仕方がない。お前に選択肢を二つやろう。行動をもう少し改め五番隊に所属するか。行動はそのままでいいが護廷十三隊から去るか。脅すようで悪いんだが、こればっかりは従ってもらわないといずれはお前も困ることになるぞ」
「てめぇ卑怯な手を使いやがって…いいぜそんなに言うなら護廷十三隊なんかやめて――――」
「言っておくが、やめるというならその時は俺がお前を叩き斬るからな。まあ、今すぐに答えを出せとは言わん。じっくり考えて後悔の無いように答えを出すんだな」
「ちっ…仕方がねぇ。行動くらいは改めてやるよ。言葉使いはこのままでいいのか?」
「お前の口調が直らんのは分かりきったことだから俺は別にいいが、場所と人物くらい選べよ。ところでお前が持ってきたって言う書類はどれだ?」
「あ?ああ、それなら確かこの辺に…」
そう言い散乱した書類をかき分け自分が持ってきた書類を引っ張り出した藪崎
「これだこれだ。じゃあ、俺は行くところがあるんでな」
雷山に書類を渡すと急ぎ足ぎみに藪崎は去って行った
「……おいおい、六道の反乱から舌の根も乾かねぇって言うのにもうこの季節が来たのかよ」
雷山の受け取った書類には護廷十三隊新入隊士の入隊時期の報せが書いてあった
「…確かここ最近五番隊に配属された人はいませんでしたよね?」
「ああ、少し前に山本にそのことを聞いたんだがどうも五番隊配属を希望した奴がいなかったらしい」
「そ、それは何かの間違いなんじゃないんですか?」
安が気を遣って雷山にそう問いかけた
「変に気を遣うな。まあ、考えられる理由は俺か
そこまで言った時ようやく椿咲が目を覚ました
「っ!!
「藪崎なら用があるらしくてどっか行ったぞ。そうだ、お前にも説教しないとな」
「はい?」
「お前もあんまり藪崎にムキになるな。あいつのあの性格は直らんから諦めろ。それに、あいつはああ見えて意外と根はいいやつだしな」
「そんなの信じられませんよ」
「俺も実際に見た訳じゃないが、この前の六道の反乱の時五番隊の隊士を何人か助けているらしい。おまけに影内をかなりいいところまで追い詰めたらしいしな」
「そうなんですか!?とても信じられませんが…」
「剣の腕前だとお前よりも上かもな。…ん?」
雷山は自分が書類を一枚踏んでいることに気が付いた
「これはさっきの書類の続きだな……おっ、ようやく
それを読んだ雷山は喜びの声をあげた
「何人配属されるんですか?」
「ひーふーみー…6人だな」
「やっとですか…」
永末が疲れたように呟いた
「悪いな。前々から少しは回してくれと山本には言ってたんだが、あいつにもどうにもならなかったらしい」
「透君いつも一人で頑張ってたもんね」
「それはお前が原因だろ。第一お前がもう少し真面目に働けばな…」
その時隊長執務室の襖を叩く音が聞こえた
「あのすいません!ここは隊長執務室でよろしいでしょうか?」
その声はその場にいた誰も聞いたことない声だった
「なんか嫌な予感がするのは私だけでしょうか…?」
「いや、十中八九新しく配属されて来た奴だろうな」
「…どうしましょうか?」
「どうするもこうするも無視するわけにもいかないだろ」
雷山は部屋の片づけが間に合わないと判断して襖を開けた
「こんにちは!!ここに雷山五番隊隊長、椿咲五番隊副隊長がいると聞いて来ました!私は此度五番隊に配属されました
そこには十代にも満たないであろう少女が立っていた
(なるほど。こいつが五番隊に配属されるという…)
「五番隊隊長の雷山だ。まあ、立ち話も難だ、かなり散らかっちまってるがとにかく入れ」
「わあ!あなたが雷山隊長ですか!よろしくお願いします!!」
一礼して隊長執務室に入る雨入
「……失礼ですけど、本当に散らかってますね。どうされたんですか?」
「ああ、どこぞのアホが喧嘩なんかしやがってな。その片付けの最中だったんだ」
雷山が目を向けると椿咲は咄嗟に目を逸らした
「そんなときに押し掛けてすいません」
「気にすんな。今回は俺の監督不行届のせいでもあるからな。自業自得みたいなもんだ。そんなことより雨露雨入、お前を五番隊に歓迎する。日々の職務を精一杯全うしてくれ」
「はい!よろしくお願いします!!」