未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第十五話(第二十話)

六道の攻撃によって深い傷を負った雷山だったが

 

「楽しくなってきたじゃねぇか…!!」

 

その眼にはまだ闘志が残っていた

 

「さすがだな。そこまでの傷を負ってもまだ戦う気力が残ってるなんてな」

 

「こんな程度でへばっていたら、隊長は務まらんよ」

 

「それもそうか…」

 

再び雷山の懐に入ろうとする六道だったが

 

「っ!?」

 

あるところを境に動けなくなった

 

「ぐっ…!なぜ動けない…!?」

 

「六道よ。俺の斬魄刀の能力を忘れたのか?」

 

「しまった…!!」

 

六道は何かを思い出したように声を上げた

 

(くそっ…忘れていた…雷山の斬魄刀は一見するとただ雷を生み出すだけの能力だと思われがちだが実際は違う…奴の斬魄刀の能力は摩擦を操る能力…!!)

 

「ほらどうした?あと少しで俺を貫けるぞ?」

 

「ぐっぬぬ…!!」

 

何とか刀を動かそうとする六道だが微動だにしなかった

 

「ほら、さっきのお返しだ」

 

そう言うと雷山は六道を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされ壁に向かって飛んでいく六道

 

「ぐはっ!!」

 

六道は壁に激突した衝撃で吐血する。また六道がぶつかった衝撃で壁が崩れ六道は生き埋めの状態になった

 

「ほら、さっさと出て来いよ。まだ死んでいないだろ?」

 

「ちっ…」

 

自身の上に乗っていた残骸をどけ口元の血を拭う六道

 

「やってくれたな…雷山」

 

「お返しだって言ったろ?」

 

「くそっ…こうなったら…」

 

六道が何かを仕掛けてくると直感した雷山は意識のすべてを六道に向けた

 

(こいつ…何をしてくるつもりだ…?)

 

「フフフ…雷山、俺を見つけることが出来るかな?”縛道の八十七”『陽炎写』」

 

その瞬間その場にいたすべての者が六道の姿に見えるようになった

 

「なるほど陽炎写か…まためんどくさいことしやがって…」

 

雷山がそう呟いた時周りでは何人もの六道同士が戦っている奇妙な光景が広がっていた

 

「…やれやれ”縛道の八十九”『解呪(かいじゅ)』」

 

雷山が使った縛道『解呪』によって六道の『陽炎写』が無効化され、それまで六道の姿に映されていた者すべてが元の姿に見えるようになった

 

「あんな気持ち悪い風景はこりごりだな」

 

「おいおい心外だな。案外面白い風景だったぞ思うぞ?」

 

六道は特に変わった様子がなく雷山の前に依然としていた

 

(陽炎写を俺が簡単に破ることはあいつにも分かっていたはずだ…だがそれでもなお使ったということは何か他に狙いがあるのか…?一応あれを使う用意をしておくか…)

 

「解せないって顔をしてるぞ。俺が陽炎写を使ったことがそんなに解せないのか?」

 

余裕の笑みを浮かべながら六道は続けた

 

「簡単なことだ。お前が斬魄刀の能力を一瞬でも使わないタイミングが欲しかっただけだ」

 

六道は瞬間的に移動速度を上げ、雷山の背後に回った

 

「言っとくが俺はまだ人間道を使っている状態だ。いくらお前でもノーガードで人間道の攻撃を受ければただでは済まない!!終わりだ雷山!!」

 

それは時間にして一秒はかからなかったであろう。しかし六道は確かに雷山の声を聞いた

 

「やはりこれを用意しておいてよかったな…」

 

その瞬間雷山と六道の間に空から雷が降ってきた

 

「なんだと!?」

 

雷に阻まれ六道の攻撃は雷山に届く事がなかった

 

「さっきお前はこれで終わりだと言ったな。残念だがそれはこちらのセリフだ。百降雷壁陣(ひゃっこうらいへきじん)

 

その言葉を合図とするかのようにいくつもの雷が天より降り注ぎ六道の周りに雷の壁を築き始めた

 

「なんだ…これは…?」

 

「あのユーハバッハに重傷を負わせた俺の最高の技だよ。これを使うのは今回で4回目かな、正真正銘これが最後の俺の切り札だ!!」

 

そう言い雷山は手を六道の方へ突き出し握りこぶしにした。そしてそれと同時に雷の壁が収縮し始め徐々に六道の方へ近づき始めた

 

「雷が収縮してきただと!?くそっ!!」

 

雷の壁を止めようとする六道

 

「ぐぬぬ…!!」

 

最初はなすすべもなく押されていた六道だったが

 

「はぁ…はぁ…どうだ!!」

 

収縮する雷を満身創痍ながら無理やり止めることに成功した

 

「それを止めるとはさすがだな。だが、それで勝ったと思うなよ?ここからは根競べだ!!」

 

必死に止めようとする六道だが徐々に押され始め円形に作られる雷の壁が六道の背後に迫る

 

「くそっ…くそがっ…ぐわあああ!!!」

 

背後に迫った雷の壁が六道に触れたと同時に爆発し辺りは爆煙に包まれた

 

「……」

 

雷山は警戒を解かずに煙を見つめていた。煙が晴れると血だらけの六道が立っていた

 

「はぁ…はぁ…これが…お前の全力か…?残念だが…俺には…届…か…」

 

そこまで言った時六道は前のめりに倒れた。その瞬間それまで六道の卍解の能力によって蘇っていた初代隊長たちの姿が透け始めた

 

「なっ!?」

 

「これは…」

 

初代隊長たちの間にも動揺が広がる。

 

「やれやれ…六道隊長もここまでのようだな…」

 

一人がそう呟いたのを合図とするかのように一人また一人と消えていく

 

「やっと終わったか…」

 

雷山がそう呟いた瞬間

 

「雷山!!お前も道連れだ!!」

 

大澄夜を振り切った蜂乃背が猛スピードで雷山に突っ込んできた

 

「蜂乃背…!!」

 

「最後の最後で油断したな!!これでお前との勝負は俺の勝ち逃げだ!!」

 

そう言い刀を振るう蜂乃背だったが

 

「お前は…!?」

 

狐蝶寺が雷山を庇い蜂乃背の斬撃を受け止めていた

 

「…まさかお前に止められるとはな…」

 

そう言うと蜂乃背の姿が透け始めた

 

「結局おまえには勝てなかったな雷山…だがまあ、久々に楽しかったよ」

 

吹っ切れたように、満足したように蜂乃背は言った

 

「じゃあな。雷山と狐蝶寺隊長」

 

すがすがしい笑みを浮かべながら蜂乃背は消えて行った

 

「はぁ…」

 

深いため息とともにその場に座り込む雷山

 

「これで本当に終わりだな…」

 

「そうだね。みんなに久しぶりに会えたのはうれしかったけどもうこんな経験はこりごりだよ」

 

雷山の隣に一緒に座った狐蝶寺が言った

 

 

 

 

 

それから数日後・・・

 

 

 

 

 

 

「うっ…」

 

四番隊・総合救護詰所のベッドの上で目を覚ます六道

 

「おっ、目を覚ましたか」

 

「…雷山か。ここはどこだ…?」

 

「ここか?ここは四番隊の総合救護詰所だ。お前は俺に敗けた後ここに運ばれたんだ」

 

「…そうか。痛っ…!」

 

無理に身体を起こそうとする六道

 

「無理に起きようとするな。お前は今かろうじて生きていると言っても過言ではない状態だ」

 

そう雷山に言われ六道は諦めるようにベッドへ身を任せた

 

「…俺はどうなる?」

 

「さあな。そこまでは俺にも分からんよ」

 

「そうか…」

 

「そうだ。山本がお前に面会したいと言ってたがどうするよ?安心しなお前にも責任があるとかぬかしたら拳骨くらいは食らわしといてやる」

 

六道は目を閉じしばらく考えだした

 

「いいだろう。どうせ監獄に収監される身だからな、今更何を言われたとしてももうどうすることもできん」

 

「だそうだ山本。入ってきていいぞ」

 

雷山に促される形で護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國が入ってきた

 

「六道死生、おぬしが儂を恨んでおったことは雷山から聞いた。今更弁明を述べたところでおぬしの気が晴れる訳もあるまい。ただ、一言詫びをいれよう。すまなかった…」

 

六道は頭を下げた元柳斎を驚いたように見ていた

 

「…その詫びをもう少し早く聞きたかったな。だがまあ、気が晴れたよ」

 

 

 

 

 

その翌日、中央四十六室によって六道の裁判が行われ、判決が言い渡された

 

 

 

 

 

「元十二番隊隊長六道死生。反逆罪により中央地下大監獄最下層・第3監獄”無間”にて3千年の投獄刑に処する」

 

「…まあ、そんな所だろうな…」

 

「―――――と言いたいところだが、過去の実績及び情状酌量の余地を認め無罪を言い渡す」

 

「ッ!?なぜだ。俺は尸魂界に反逆したんだぞ!?それを…」

 

「我らの判決の異議は認めぬ!!」

 

その後六道は中央四十六室の議場から解放され、瀞霊廷を行く当てもなく歩いていた

 

「一体何が起きたんだ…?極刑まではいかなくとも千年単位での投獄刑は覚悟してたんだが…」

 

「よお、六道。解放された気分はどうだ?」

 

六道が顔をあげると雷山が立っていた

 

「…雷山、何故お前がここにいる。…まさかお前が…!?」

 

「おっ!察しがいいな。そうだとも四十六室に根回しをしたのは俺だ。いや、正確には俺たちだな」

 

「俺たちだと?」

 

「ああ、さすがに俺一人だけじゃあのじじい共を説得しても無駄に終わるからな。白や春麗、卯ノ花や山本の五人であのじじい共を説得してやった。いくらあいつらが尸魂界の最高司法機関と言われていようが、俺たちには頭が上がらないからな。渋々承諾するしかなかったようだ。まあ、それなりの条件は出たがな…」

 

六道は息を吞み雷山の言葉に耳を傾けた

 

「そんなに緊張しなくてもいい。お前を無罪とする条件だが、”即刻斬魄刀を返却し瀞霊廷への永久に立ち入ることを禁ずる”だそうだ。まあ、こればっかりは従うしかないわな」

 

「何故あの四十六室が俺の無罪を認めたんだ。おかしいのはお前たちもそうだ。俺を無理やり無罪にすればお前たち自身にも影響が及びかねないんだぞ」

 

「さあな。他のやつにどんな思惑があったのかは知らないが、俺はただ、古くからの戦友(とも)を労ってやっただけだ。今までご苦労だったな。六道」

 

「ふん…お前にそんなことを言われる日が来るとは夢にも思わなかったよ」

 

「ああ、俺もまさかお前に言う日が来るとは思わなかった」

 

「…では、俺はもう行く。じゃあな、雷山。お前らとはもう二度と会うこともないだろう」

 

そう言うと六道は雷山の横を抜け去って行こうとした

 

「待てよ、六道」

 

「なんだよ。まだ俺に何か用があるのか?」

 

「お前どこに行くつもりなんだ?」

 

「行くあてなんかねぇよ。どこかその辺りを旅して回るだけだ」

 

「そうか。…六道、お前居場所を逐一俺に教えてくれないか?」

 

それを聞いた六道からは「はあ?」と間の抜けた返事が帰って来た

 

「何故そんな面倒なことをやらないといけないんだ。俺は解放されたんだろ?だったらもうお前らとは関わらない方がいいだろうし何より関わる気もない」

 

「やれやれ…」

 

「…もう用は済んだだろ?だったら静かに復讐に身を焦がれた哀れな死神を見送ってくれ。じゃあな」

 

「また顔を見せに来いよ!俺の友人としてなら喜んで招いてやる!」

雷山の呼びかけに手を上げて答える六道

 

「…あいつ、どうやら吹っ切れたみたいだな。さて、俺もそろそろ隊舎に戻るか」

 

 

 

 

それからさらに数日後・・・

 

 

 

「はあ…はあ…」

 

森の中を走る影が一つ

 

(なんでこんなところにあんな化け物がいるんだ…!!)

 

その正体は流魂街に住む少年だった

 

「うわっ!!」

 

ドサッ

 

少年は少しの段差につまずいてしまい転んでしまった

 

「うっ…ててっ…はっ!」

 

我に返り再び走りだそうとしたが

 

ドンッ!!

 

目の前に虚の足が降ろされた

 

「……」

 

放心状態になりその場で固まってしまう

 

「グラァアアアアアア!!!」

 

虚の爪が少年に振りかざされたその時

 

「”破道の六十三”『雷吼炮(らいこうほう)』」

 

鬼道を浴びた虚は霧散して消えてしまった

 

「やけに騒がしいと思っていたら、お前が虚に追いかけられてたのか」

 

森の奥のほうから一人の死神が出てきた

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「礼はいい。それよりさっさとここから去るんだな」

 

「…あの、名前を聞いてもいいですか?」

 

「…名前か?俺の名前は六道、六道死生だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~初代隊長反乱篇 fin~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




縛道の八十七”陽炎写(かげろううつし)
効果:自身の霊圧を使い、陽炎を発生させ任意の姿を写す技

縛道の八十九”解呪(かいじゅ)
効果:八十八番以下の縛道をすべて無効化することができる

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