未来から帰って来た死神   作:ファンタは友達

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第九話(第十四話)

狐蝶寺が猫間に捕まった同時刻

 

「六番隊隊長…なるほど。おぬしが現在の朽木家当主か」

 

猫間、狐蝶寺がいる地点より北へ4㎞行ったところでは初代六番隊隊長朽木銀雪(くちきぎんせつ)と現六番隊隊長朽木白厳(くちきそうげん)と副隊長朽木雪乃(くちきゆきの)が相対していた

 

「兄上…この方はもしや…」

 

「ああ、我らの考えが間違いでなければあの方だ…」

 

白厳は斬魄刀を鞘に納め名乗りを上げた

 

「貴方は朽木家初代当主朽木銀雪殿とお見受けする。私は朽木家十五代目当主朽木白厳。なぜ貴方が我らに敵対しているのか教えていただきたい!」

 

「…一つ訂正してもらいたい。私は初代当主ではなく二代目当主だ。そこは間違えておかないでもらいたい。それにしても朽木家十五代目当主か。っはは…そんなに続いたのか…実に不愉快だ」

 

笑う銀雪だったが目は全く笑っておらず語尾には怒気がこもっていた

 

「二代目当主…?朽木家はあなたが作られたはずじゃ…!?」

 

「残念だがこの忌まわしき朽木家というものを作ったのは私の父である初代朽木家当主”朽木菊白(くちききくは)”だ」

 

「…なるほど。あなたが朽木家二代目当主だったというのは承知した。しかし、この忌まわしきとはどういう意味なのか説明していただきたい」

 

「そんなのは簡単な話だ。私は貴族…特に五大貴族というのが嫌いでな。今まで幾度となく朽木家を消滅させようとしていだが結局叶わなかった…」

 

銀雪が自身が過去に朽木家を消滅させようとした経緯を説明しているとき雪乃は不安に駆られていた

 

「兄上…この方は本当に銀雪様なのでしょうか…。私には人格を作られた偽物としか思えないのですが…」

 

「…私自身も実際に会ったことがなく本人かどうか判断しかねるが、雷山隊長が言っていた六道死生の能力に他人の人格を作るというのはなかった。つまり、あれが銀雪殿の素の性格と見るのが妥当だろう…」

 

「―――――――というわけだ。だが、私はどうやら幸運なようだ……」

 

「それは一体どういう…?」

 

「この手で朽木家を滅ぼせられるんだからな…!!」

 

その瞬間銀雪の目に狂気が染まり白厳と雪乃には戦慄が走った。

 

「”(かわ)きて()えよ”『燥火松(そうかまつ)』!!」

 

始解した直後銀雪の背後より燃え盛っている樹木が生えてきた。そしてその樹木は火の粉を辺り一面へ撒き散らし始めた

 

「バカな…始解でこれ程の…!?」

 

「兄上、ここは私が!!兄上は始解の用意をなさってください!!」

 

白厳の後ろにいた雪乃が叫んだ

 

「すまない雪乃!!」

 

「”()()らせ”『粉吹雪(こなふぶき)』!!」

 

始解したと同時に少量の粉雪が降り始めた

 

「『舞凍(ぶとう)雪景(せつえい)』!!」

 

降り注いでいた無数の粉雪が白厳と銀雪の間に押し固められ始め壁を形成した

 

(なるほど、火の粉には粉雪か。なかなか洒落てはいるがそんな粉雪程度ではでは私の攻撃を防ぎきることはできないぞ…!!)

 

「これで少し時間が…そんな…!?」

 

粉雪で形成された壁は確かに火の粉を相殺していたが、時間が経つにつれ火の粉の数が増していきついには相殺しきれなくなっていった

 

「ダメだ…このままだと…」

 

(このままだと負ける…!!)

 

「すまない待たせたな雪乃!!”()らせ”『雨水月(うすいげつ)』!!」

 

白厳が始解をすると大雨が降り始めた。その雨が火の粉に当たり水蒸気が発生し始めた

 

「雪の次は雨か…。だが、その大雨程度では私の燥火松には及ばない!!」

 

銀雪は手を大きく広げ巨大な火の塊を作り始めた

 

「バカな!!この大雨の中それほどの火の塊を生成できるだと…!?」

 

「私は今、この時をもって!この手で!!この忌まわしき朽木家を滅ぼす!!!さらばだ、朽木白厳!!」

 

両手を振り下ろし作り出した巨大な火の塊を白厳に向け落とし始めた

 

「兄上!!」

 

巨大な火の塊が白厳に落ちる直前雪乃が白厳を庇い突き飛ばした

 

「なっ!?」

 

その行動は銀雪自身想定外のことであり、思わず驚きの声を上げた

 

「きゃあああ!!」

 

その直後雪乃を巨大な火の塊が襲いその場に雪乃の悲鳴が響いた

 

「雪乃!!」

 

爆煙が晴れるとそこにはひどい火傷を負い血だらけで横たわる雪乃の姿があった。本来なら死んでいてもおかしくはないほどだったが雪乃は火の塊が当たる直前咄嗟に雪で自身を覆い致命傷だけは避けていた

 

「雪乃!!しっかりしろ雪乃!!」

 

雪乃には意識がなく虫の息の状態だった

 

「許さぬぞ…許さぬぞ…!!”卍解”『琉城湖雨水月《るじょうこうすいげつ》』」

 

卍解した瞬間白厳たちの周りには湖が広がった

 

「…なるほど、さすがは私の後継に当たる朽木家十五代目当主…大した卍解だ」

 

辺りを見回し一息ついて銀雪は言った

 

「だが、貴様の卍解など私の卍解で消し飛ばしてくれよう!!”卍解”…!!」

 

そう言うと始解で出現させた燃え盛っている樹木のほうへ向き直った

 

「『燥火松獄炎(そうかまつごくえん)』!!」

 

その瞬間あたり一面を焼け野原にする大爆炎が発生した。爆炎は辺りの水と接触し辺りは大量の水蒸気に覆い包まれた

 

「何も見えない…が、それは向こうも同じ」

 

「まさか私の卍解の爆炎を防ぐとはな…」

 

白厳と銀雪は五感を研ぎ澄まし水蒸気が晴れるのを待っていた

 

「そこだ!!」

 

銀雪はある方向へ握り拳サイズの日の塊を飛ばした

 

「手応えなしか…」

 

銀雪がそう呟いた直後背後に白厳が現れた

 

「ちっ!!」

 

反応して振り向きざまに白厳に斬りかかる銀雪だが白厳はその攻撃を躱し叫んだ

 

「これで終わりだ!!『(はな)()らしの(あめ)』!!」

 

しかし何も起きず銀雪は不審に思った

 

「…何をした?」

 

その瞬間空より始解時同様に雨が降り始めた

 

「また雨か…―――っ!?」

 

その時銀雪は自身の異変に気付いたがすでに時は遅く片膝を付かなければ立っているのがやっとの状態だった

 

「貴様…私の霊圧を…」

 

「…ご名答。私は今あなたから霊圧を奪っている。いや、霊圧では誤解が生まれる。この『命散らしの雨』は文字通りあなたの命を奪う!!」

 

「私の命を奪う…か。この程度で私の命を奪えると思うなよ…」

 

ふら付きながらも無理やり立ち上がる銀雪

 

「私の命が尽きる前に貴様の命も道連れだ!!燥火松獄炎!!」

 

銀雪は再び爆炎を起こそうと霊圧を溜め始めた

 

(これが最後の攻撃…)

 

「くらえ!!」

 

銀雪は再び大爆炎を炸裂させた

 

「”琉城湖雨水月”『城壁水起堀(じょうへきすいきほり)』!!」

 

その瞬間白厳の目の前の水が隆起し水の壁を生み出した。そしてそのまま壁を押し進め銀雪と白厳の中間辺りで力が拮抗し止まった

 

「まさかこれ程の実力だと!?」

 

銀雪が驚きの声を上げたその瞬間水が水蒸気爆発を起こし二人を飲み込んだ

 

「ゴホッゴホッ」

 

銀雪はかろうじて意識を保っていたが白厳は気絶していた

 

「ぐっ…身体が動かぬな…」

 

銀雪は倒れている白厳に目を向けた

 

「ふっ…まさかここまでとはな…。朽木白厳、おぬしは父とは違う道を歩んでくれ…妹君を大切…にな…」

 

銀雪も力尽きその場に倒れた

 

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

 

「あれから全く他の方たちに会いませんね。どうしたんでしょうか?」

 

「他のやつらも戦ってるんだろう。あちらこちらで霊圧がぶつかってるしな」

 

雷山と椿咲は蜂乃背との戦いの後ほかの初代十三隊隊長を探すため瀞霊廷内を歩いていた

 

「それにしても誰にも会わなすぎるな。まったくどうしたんだか…ん?」

 

雷山は前方に誰か立っているのを発見した

 

「あれって如月隊長ですよね?」

 

「ああ、こんなところで何やってんだか。音羽の姿もないしな」

 

不審に思った雷山と椿咲は如月に声をかけた

 

「如月、お前こんなところで何やってんだ?」

 

「…雷山隊長か…」

 

振り返った如月はどこか虚ろな目をしていた

 

「っ!!」

 

(こいつのこの目…まさか…!!)

 

その目を見た瞬間雷山の不審感は確信に変わった

 

「椿咲…お前は離れてろ」

 

雷山は如月に聞こえないよう小声で椿咲に注意を喚起した

 

「え…?なぜですか?」

 

椿咲が返答したその時だった。如月が猛スピードで雷山たちに突っ込んできたのだ

 

「ちっ!!退いてろ!!椿咲!!」

 

「きゃっ!?」

 

雷山は咄嗟に椿咲の死覇装の襟をつかんで椿咲を後方へ投げ飛ばした

 

ガンッ!!

 

その一秒後如月の剣と雷山の剣がぶつかった

 

「何のつもりだ…?如月…!!」

 

「ぐっ…!雷山隊長…!!ワシを斬ってくれ…!!」

 

「やはりお前…」

 

一旦距離をとるため雷山は椿咲が倒れているところまで飛び退いた

 

「如月…お前六道に操られてるな…?」

 

「雷山隊長の察しの通りじゃ…」

 

「痛てて…もぉいきなり投げ飛ばさないでくださいよぉ。けれど、なぜ如月隊長が雷山隊長に攻撃を…?」

 

「椿咲、如月は六道に操られてる状態だ」

 

「えっ!?」

 

椿咲が驚きの声を上げた

 

「嘘ですよね…?」

 

その問いに如月は静かに目を閉じ首を横に振った

 

「そんな…何とかならないんですか?」

 

「無理だ。六道に操られてるということは六道に一度殺されているということだ。つまり、如月はもう死んでいるのと同じだ。おそらく音羽も…」

 

「雷山隊長の言う通りじゃ。音羽副隊長もワシと同様になっておる。ただしワシと違ってもう意識は残っておらずただ護廷十三隊隊長を殺すために動く人形となっておる状態じゃ…」

 

如月は自身の力の無さを悔いるように言った

 

「音羽ちゃんが…そんな…」

 

椿咲はショックを受けたようにその場に泣き崩れた

 

「…そうか。如月陽水九番隊隊長、今までご苦労だった。せめて安らかに眠れ」

 

雷山はそう言い如月の背後に回り如月の首を斬りおとそうとしたが如月はそれを避け反撃した

 

「やれやれ…やっぱりそう簡単にいかせてはくれないか」

 

「すまない、雷山隊長。もうワシの思うように動けないのじゃ」

 

「まあいいさ。お前をこのまま放っておくのもなんだしな。さっさと楽にしてやるよ」


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