雷山が蜂乃背を敗ったその頃――――――――――
「お久しぶりですね。水野瀬さん」
銀華零の目の前には十代にも満たないであろう少年が立っていた
「お久しぶりです。白隊長」
その少年は笑顔で銀華零に挨拶をした
「白隊長はお変わりないようですね。てっきりおばあさんになっているものだと思っていたんですけど」
さりげなく毒を吐いた水野瀬だが銀華零は顔を変えることなく返答した
「そういう事を女性に言うものじゃありませんよと過去にお伝えしたはずなのですが、あなたも相変わらずですね」
「他の隊長にもよく言われましたよ。おまえは本当に変わらないなってね」
そういった瞬間水野瀬は銀華零に斬りかかった
「ダメですよ。戦いにも礼儀がないと」
銀華零は難なく受け止めていた
「やっぱ白隊長はそう簡単には倒れてくれないですね…!」
「ええ、こう見えても私は今の護廷十三隊内でも強いほうだと自負していますし」
「それは自負じゃなく傲りなんじゃないですか?”浮かべ”『
水野瀬が始解すると斬魄刀の刀身がツタに変わった
(久々に見ますね…かつて全斬魄刀中最高の防御力を持つと謳われた元七番隊隊長水野瀬永流さんが持っていた流水系の斬魄刀”水萍”)
「傲りですか…まあ、そう言われてしまえばそうかもしれませんがみなさんを守りたいというのは紛れもない事実ですよ?”
銀華零の始解は鏡のような形となった
「不思議な気分ですね!白隊長の始解をついこの間見たばかりなのに400年近く経っているなんて!」
「ふふっ、それはあなたが亡くなっていたからそう感じるだけですよ!”銀鏡”『
鏡の形をしていた銀華零の斬魄刀がたちまち雷山の持つ斬魄刀『雷斬』と同じ風貌になった
「げっ!?よりにもよって雷山隊長の始解ですか!?」
「ええ、雷山さんの斬魄刀が一番使い勝手がいいので」
「ん~困ったなぁ…」
そう呟いた直後水野瀬は何か思いついたように顔をあげ口元をニヤつかせた
「”破道の三十二”『
その瞬間水野瀬から霊圧が放たれた。しかし銀華零はそれを斬魄刀を振るい相殺した
「三十番台の鬼道では私に届きませんよ?」
「いえいえ届かなくても隙を作れれば十分ですよ!”縛道の六十一”『
その瞬間六つの帯状の光が銀華零の胴を囲うように突き刺さり動きを奪った
「少々油断しましたね…」
そんな状況でも顔色一つ変えないでいる銀華零
「この状況で顔色一つ変えないのはさすがですね。ですが、これを見たらその余裕もなくなるでしょう!
水野瀬が詠唱を終えたと同時に青い雷が放出された
「これはなかなかの威力ですね…」
銀華零は静かに目を閉じそしてこう呟いた
「断空…」
その瞬間銀華零の目の前に壁が現れ水野瀬が放った鬼道とぶつかった
「ゴホッゴホッ!やっぱり正攻法じゃ無理なのかなぁ」
土煙をはらいながら水野瀬が言った
「いいえ、今のはだいぶ効きましたよ?水野瀬隊長」
土煙の中から姿を現した銀華零は左腕から出血している状態で血が地面にポタポタと垂れていた
「いやいやぁ今のは白隊長を殺すつもりで放った鬼道ですから失敗といえば失敗ですよ」
「……あなた方はなぜ六道さんに従っているのですか?」
「ずいぶん直球ですね。そうですねぇ…強いて言うなら…気まぐれですかね?」
「気まぐれですか…」
「ええ、気まぐれです。正直死生隊長の恨みとかは興味ないんですよねぇ」
(なるほど…六道さんが私たちに宣戦布告をしたのは恨みを晴らすためですか…ですがいったい誰に対してでしょうか…?)
「完全詠唱をしても白隊長には防がれちゃうし万事休すかなぁ…」
「ならば大人しく投降してもらえますか?」
笑顔で水野瀬に語りかける銀華零
「残念ですけどお断りします!!”卍解”『
その瞬間地面から無数のハスの葉、ツタ、花が生え始めた
「水野瀬さんの卍解久方ぶりに見ますね…」
「冥途の土産にしてくださいな!!」
「ですが…この程度では私には勝てませんよ?『
次の瞬間、銀華零は水野瀬の背後に一瞬にして回り込んでいた
「この技は雷山隊長の…!!くっ!!」
しかし銀華零の攻撃はツタによって完全に阻止されていた
「さすがに雷山さんの技でも通用しませんか…」
「山本隊長の攻撃をも防いだツタですよ?いくら雷山隊長の攻撃でも防げるのはあたりまえですよ!!」
「…仕方がないですね。私のとっておきを見せてあげましょうか」
そう言い銀華零は通常の始解の状態に斬魄刀を戻した
「…斬魄刀を戻していったいどうしたんですか?そのままでは僕を倒すことなんて…。っ!?」
その時水野瀬は銀華零から得体の知れない恐怖を感じ取った
(なんだ…この得体のしれない威圧感は…)
「言ったでしょう?私のとっておきを見せると”銀鏡”『
その瞬間空から雪が降り始めた
「……なにこれ?」
「これは私の斬魄刀”銀鏡”の技の一つです。普段は他の方の斬魄刀の能力を借りて技を放っているので、滅多に使うこともないのですけどね」
「どうりで見たことがないわけですよ。まさかそんな隠し技があったなんて…」
「あら、別に隠していたわけではありませんよ?ただ使う必要がなかっただけです。その証拠に山本総隊長や雷山さん、春麗ちゃんなどはこの技のことを知っていますよ」
「それは白隊長の近親者じゃないですか」
「ふふふっ…さて、お話はここまでにしましょう。
その瞬間それまでただただ降っているだけだった雪が水野瀬に張り付き始めた
「冷たっ!?なんでこの雪は僕に張り付くんだ…?」
「水野瀬さん、濡れた手で冷えた金属に触ると手が金属が張り付くという現象って聞いたことありますか?」
「…知りませんね。そんな現象あるんですか?」
「ええ、現世で聞いたことのある現象です。この技はその現象をもとにして作りました。今あなたは”手”の状態で振っている雪は”金属”のような状態です」
「なるほど。けど、ツタで屋根を作ってしまえば僕に張り付く雪も降ってこない!」
そう言い自身の頭上にツタで屋根を作る水野瀬
「ふふっ屋根を作っても無駄ですよ?」
銀華零の言葉通り雪はツタでできた屋根を避け直接水野瀬に向かって降っていた
「そんな…くそっ!この雪離れろっ!!」
水野瀬が必死に雪を振り払おうとしている時とき銀華零は笑みを浮かべていた
「残念ですけどその雪はどんなことをしようとあなたから離れませんよ?」
「こうなったら…」
「私を倒そうと考えてますね?残念ですがそれもできませんよ。試しにそこから動いてみてもよろしいですよ?」
一歩を踏み出そうとする水野瀬だったが銀華零の言う通り全く動くことが出来なかった
「さてと、それでは少しの間眠っていてくださいね。ああ、心配はしなくても大丈夫ですよ。仮死状態で苦しくはないはずですから」
歯を食いしばり悔しそうに銀華零を睨む水野瀬
「ちくしょう…!!」
そこまで呟いたとき水野瀬は完全に雪に埋もれた。雪が落ちると水野瀬は氷像となっていた
「さて、他の方はどうしているのでしょうかね。勝っているといいのですが…」