新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
第十三~第十六使徒は、みんな一緒くたにロンギヌスの槍で貫かれた後
凄く雑な感じでお空の彼方に飛んでった
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※エイプリルフール(2019/4/1)投稿です。
ストーリーは可能性の一つであり、確定ではありません。
??話「世界の中心で碇くんへのアイを叫ぶリナレイさん」
「♪~~」
一人の少年が、上機嫌な鼻歌と共に海岸を歩む。
曲はベートーヴェン作曲、交響曲第9番第4楽章『喜びの歌』。
整った横顔は、
涼やかな風に銀髪を弄ばれながらメロディーを紡ぐ姿は幻想的だ。
白シャツに黒の学生ズボンというありきたりな格好ですら、彼の際立った容姿を引き立てている。
ざ、ざ。砂を踏む足音はもう一人ぶん。
背中越しに感じる新たな気配に、少年は歌と足を止めた。
「歌は良いねぇ。歌は心を潤してくれる……
そう感じないかい? 綾波レイさ「どっせいおりゃあああ!!」うぉぉっ!?」
背後からの気合と殺気に、振り返りざまの少年は目を見開いた。
咄嗟に身を反らし、乱入者……綾波レイの飛び蹴りを、頬を掠める形で回避。
「ちぃっ、外したっ!? やるじゃーないの!」
ずざざざ、とレイの足が砂浜に
第壱中学校指定の女子制服、エメラルドグリーンのスカートがフワリと翻る。
腰を落とした半身の姿勢で左腕を弓引き、右掌底を眼前に……
歌舞伎の見得にも似た、攻撃的な構えを取るレイ。
少年は肩を竦めた。
「スカート姿のまま、ずいぶんと大胆なご挨拶だね。
「
それともアレか? 『きゃーっ、このパンツ覗き魔~!』とか言うとでも思ったか!?
どこの世界線のあたしだよ!?」
「それも
左手をズボンのポケットに突っ込み、右手で前髪を掻き上げる気障な仕草を自然にやってのけた少年に、レイは不機嫌に鼻を鳴らした。
「スカしたヤツめ。
「これは驚いたな、綾波レイ。『今回』キミと接するのは初めてのはずだけれど……
あぁ、
言うほど驚いていない様子で少年……渚カヲルは微笑んだ。
その正体は第十七使徒タブリス。最後のシ者。
その役割は
傷ついたシンジのもとに現れ、性別を越えて彼を魅了し、拠り所となる。
そして彼の目の前で、あるいは彼の手で死に、心の傷をさらに抉る。
だが今回に関しては、レイも、クラスメート達も、NERVの面々も、今のところは全て無事。
第3新東京市も激戦で消耗してこそいるが、未だ要塞都市としての機能を保っている。
ゆえに、シンジの心は壊れていない。何より、彼の隣にはレイがいる。
それでも、渚カヲルはこの街に現れた。彼がもたらすのは福音か。あるいは終焉か。
口元のみを持ち上げるアルカイック・スマイルからは、その真意は読み取れない。
「ボクを、実力行使で止めに来たのかな?」
「実力ぅ? バカ言っちゃいけない。
個人的なエゴで、あんたを張り倒しに来ただけだよ。
レイは飛びかかる。
初手での上段回し蹴り。スカートの中身は相変わらず考慮しない。
しなやかに伸びたレイの蹴り足を、カヲルは片腕でガードしながら後方に飛んで衝撃を逃がした。
カヲルは上体を屈め、水面蹴りを放つ。
レイに取っては軸足を狙われた形だが、彼女はその一本足で跳躍回避した。
レイもカヲルも、そのスペックは並の人間とは一線を画している。
片や
片や
力を使おうものなら、この辺り一帯が誇張でなく消えるだろうが……
そんな人外の二人は、夕暮れの海岸で前世紀の不良漫画よろしく
「ボクの想いは変わらない。シンジくんを幸せにしてみせる。それだけさ」
「本当に碇くんの幸せを考えてるんなら、毎回のごとく
黒ヒゲ危機一髪かっつーの」
「各周回でのボクの死は、ただの結果だ。それは申し訳なく思ってるよ」
「どーだか!」
レイが顔面狙いの右ストレートを放つ。
だが、カヲルの掌がゆらりと流れてレイの手に伸びた時、彼女は慌てて攻撃を中断し、距離を取った。
相手に外傷を与えずに無力化する事に
獰猛な獣のように攻めかかるレイに対し、カヲルの反撃は静かで優雅だった。
「手首を取らせてはくれなかったか。勘が鋭いな」
「戦い方まで碇くんに似せやがって。嫌味か! それとも
「キミを舐めている訳じゃない。彼へのリスペクトさ。
それに、ボクの性的趣向とフェミニズムは相反することはないよ。
ボクにとってはね」
「自分の名台詞を自分で台無しにすんなっての。さぁて、どう攻めるか……」
「もうやめてよ、綾波さん、カヲルくん!」
シンジの静止の声が割り込んだ。走ってきたのか、息が荒い。
毒気を抜かれたレイは一息ついて苦笑した。カヲルもまた構えを解く。
「んもー碇くんってばー……
このタイミングで『私のために争わないで』とか、完全にヒロインムーブですやんか」
「ハハ、シンジくんらしいよ。今回は時間切れだね。この場は引くとしよう」
シンジがここに辿り着いたという事は保安部も周囲に再展開、待機しているだろう。
一度撒かれたとはいえ、NERVの黒服達は優秀だ。
「カヲルくん」
「なんだい、シンジくん」
立ち去ろうとした背が振り返る。あの穏やかな笑みを浮かべて。
「僕は全て思い出したよ。
カヲルくんには、感謝してる。
けれど今回は、綾波さんと生きることに決めたんだ。
だから……ごめん」
「いいさ。シンジくんが決めたことなら。
戦いが終わって、キミと彼女が結婚という形で結ばれても、それはゴールじゃなく、旅の始まりにすぎないんだよ。
もし旅に疲れ果てたら、ボクはいつでもキミを受け入れよう」
「ふん、残念だったな。
シンちゃんとの間に子供が生まれたら、碇司令のことを『ゲンじぃじ』って呼ばせる約束をしてるんだ。
あたしが、綾波レイが、容易い相手じゃない事を教えてやる!」
「あの強面の御父上が『じぃじ』とはね。フフッ、確かにキミ達は手強い相手だ。
じゃあ、次は戦場で会おう。結末がどうなるかは解らないけれどね」
そう。彼らの戦いは、これからだ。
完(クソデカ赤文字)
長らく放置してすみませんでした。
原作からネタを色々前借りしすぎたこともあり、展開がだんだん難しくなってきて筆が進みませんでした。
エイプリルフールということで『ありえるかもしれないエンディングのひとつ』です。
エヴァンゲリオンなのにエヴァが出てきやしねぇ。
第十三使徒以降の物語は流石に改めて書く予定です。
さすがにソードマスターヤマト並に団子刺しは、あんまりっちゃあんまりだでな……
更新予定未定、不定期投稿ですが、今後ともよろしくお願いいたします。