新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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5、シンジくん、戦闘前に思春期真っ只中にIN

エントリープラグにはまずシンジが乗り込み、彼の膝を借りる形でレイが続く。

 

プラグ内に注水されるオレンジ色の液体は、

パイロットを肉体的・精神的に保護するための緩衝材だ。

だが初見のシンジは、窒息を恐れて息を止めてしまう。

 

「大丈夫、肺がLCLで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます」

 

リツコに促され、ようやくLCLを飲み込んだシンジは血の味を感じて顔を歪めた。

 

「ぐっ…気持ち悪い…」

「ま、最初はキツいよね。慣れればどーってことないよ。

ん、頭痛がちょっと和らいでる。LCLは上手く循環してるみたい」

 

レイは躊躇いなく肺の中の空気を吐き出しつつ、落ち着いた様子だ。

電荷作業が行われ、LCLは透明に…外の視界が肉眼で確認できるようになる。

ミサトは腕を組み、悪くない組み合わせだと口の端を持ち上げた。

自分が下手に根性論を口にして、シンジに発破をかける必要はないだろう。

 

「レイ、二人乗り形態(タンデムモード)は覚えてる?」

「イエス・マム、葛城一尉!えーっと確か…

下の方のボタンを押しながらレバーを引き上げてー…よーいしょっとぉ!」

 

レイの思い切りの良い掛け声と共に、ガコン!とレバーが立ち上がる。

前にいるレイが下のグリップ部分を、後ろのシンジがレバー上部の丸い部分を握れる形だ。

 

「んじゃ碇くん。キミはここに手ぇ置いて…どしたの?」

「う、その、綾波さん…あんまり、動かれると…」

 

LCLショックから立ち直ったシンジは、落ち着くにつれて気づいてしまった。

 

ボディラインがくっきり出たパイロットスーツ姿の美少女。

折れてしまいそうに華奢な背中の悩ましさ。

彼女が動くたびに、自分の太ももに伝わる感触…

 

こんな時に。いや、こんな時だからこそ。

()()()()()()が、働いてしまったのだ。

 

「碇くん」

「…はい」

「あたしのおしりに何か当たってんですけど」

「いや、あの」

「なに?あててんの?それやるの普通、男女逆じゃね?」

「わ、わざとじゃないよぉ!しょうがないじゃないかぁ!」

 

振り返り、ジト目でシンジを睨むレイの頬はわずかに紅潮している。

同じく顔を上気させたシンジの声は、オペレーター全員に響いてしまった。

 

 

「おおぅ、二人とも初々しいねぇ」

苦笑する長髪の男、青葉シゲル二尉。

 

「レイちゃんと密着…!?う、羨ましくなんかないぞ!」

わなわなと震える眼鏡の青年、日向マコト二尉。

 

「ふけつです!」

童顔を真っ赤にして涙目の女性、伊吹マヤ二尉。

 

 

(だめだこいつら!早くなんとかしないと!)

ミサトは高く音を立てて、三度手を叩いた。

 

「はいはいはい!使徒が迫ってんだから、そろそろ真面目に行きましょ!

レイ!エヴァ起動準備!」

「了解~…シンクロ・スタート!」

 

…改めて皆、気を取り直す。レバーを握り、意識を集中させるレイ…

 

「マヤ、シンクロ率は?」

「だめです!二桁にも行っていません!エヴァ初号機、起動せず!」

 

(リツコ)の問いかけに、弟子(マヤ)はモニターを見据えたまま答える。

レイの眉間が寄せられた。

 

「うぅー…7ヶ月掛けてシンクロ()()はするようになったんだけどなぁ…

碇くん!一緒にやってみよう!レバー握って『起きろ!』って念じる感じ!」

「う、うん!」

 

状況に流されるまま、シンジはレイの言葉に従う。

 

((起きろ、起きろ、起きろ、起きろ…!))

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

モニターの赤ゲージが緑に塗り替えられていくのを、マヤの瞳が映し出す。

エヴァンゲリオン初号機…起動確率0.000000001%(オーナイン・システム)と揶揄された機体が

二人のチルドレンの手が加わった瞬間、あっさりと目覚めた。

 

「…シンクロ率、31.8%。若干の思考ノイズが見られるものの誤差範囲内。

ハーモニクス正常…暴走、ありません!」

「高いとまでは言えないけれど…起動は出来る!行けるわ!」

 

美人科学者師弟の言葉にどよめく発令所内。

エヴァを縛る油圧式ロックボルトと拘束具は次々と除去されていく。

射出進路全良好(オールグリーン)が伝えられると、ミサトは総司令を振り返った。

無言で頷くゲンドウ…

 

「…発進!」

 

ミサトの号令と共に、火花を上げながら紫の巨人は高速で運ばれていく。

 

「「く…!」」

 

重力(G)に呻く碇シンジ・綾波レイの両チルドレン。

エヴァ初号機が地上に姿を現すと同時、夕陽を背にした首なし巨人が、仮面を光らせる…!

 

「目標にエネルギー反応!中距離攻撃、来ます!」

「…フィールド展開!」

 

青葉シゲルの警告を受け、レイは叫んだ。

ギィン…!響く高音。エヴァの目の前に現れた半透明の障壁が、使徒の放った光線を防いでいた。

 

「初号機のA.T.フィールドを確認!ダメージなしです!」

 

マヤの報告にも、シンジはただ目を見開くのみ…

レイが喝を入れるように言い放つ。

 

「碇くん。こーゆーの、習うより慣れろだから。

あたしのやり方を見て、覚えて!」

「う…自信はないけど…やってみるよ」

「いい返事!んじゃあ…

行ィったらぁあー!!」

 

エヴァの背に残った最終安全装置が解除され…レイは、咆哮した。




ゲンドウ「シンジ!色を()年齢(とし)かッ!(背中に鬼のツラを背負いつつ)」
冬月「…思春期だからな。普通に知る歳だろう(ぼそり)」

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