新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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BGM:次回予告の時のアレ

ミサト「突如、NERV本部に侵入した使徒の群れ!
『こんな事もあろうかと!』
リツコはアンチA.T.フィールドの銃弾(ナマリダマ)を用意していた!
善戦するも多勢に無勢、次第に追いつめられるミサト達…!
ついに炸裂する、ゲンドウと冬月のNERV神拳!!
迫りくる使徒共を千切っては投げ、千切っては投げ…!!
次回、新世紀エヴァンゲリオン!
『飛んで火にいる夏の使徒!汝ら死すべし、慈悲はない!』
この次も、サービスサービスゥ!
って…これマジ?」

レイ「 *   *
 *   + うそです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *」

加持「(台本を)すり替えておいたのさ!」


62、イロウルさん、NERV本部にIN

プリブノーボックスでの実験が始まって間もなく、その直上にある第87タンパク壁に『染みのような何か』が確認された。

原因はおそらく、搬入されたパーツに気泡が混じっていたことによる侵食。

 

報告を受けた情報オペレーターの青葉シゲルは、工事の杜撰(ずさん)さを愚痴っていたが、

なにしろ第3新東京市(このまち)は非常に短いスパンで使徒による襲撃に晒されているのだ。

工期がギリギリまで圧縮されているこの状況では、イレギュラーが発生するのも無理はない。

 

 

発令所から内線を受けた伊吹マヤ二尉は、技術責任者・赤木リツコ博士にその旨を伝えた。

オートパイロット試験は重要なテストゆえ、多少の懸案事項を理由においそれとは中止するわけにはいかない。

だが同時に、この小さな(ほころ)びが基地そのものを揺るがす『蟻の一穴』になる可能性も否定できない…。

 

「タンパク壁の修復」と「実験の完遂」…両方やらないといけないのがNERVのつらい所だが、

「覚悟はいいか?」と問われれば「俺は出来てる」と答えるのがこの組織。

現状、実験に支障が起きていない事を理由に、リツコは続行を指示。

彼女が「碇司令もうるさいし…」とボヤくのを聞いて聞かぬふりをする情けは、職員達にも存在した。

 

 

……

 

………

 

事件は、模擬体経由でエヴァ零号機に微弱な出力のA.T.フィールドを発生させた時に起こった。

点滅する『警告(ALERT)』の赤いランプと、耳障りなブザー音に、オペレーティングルームが騒然となる。

 

『どうしたの!?』

『シグマ・ユニットAフロアに汚染警報発令!第87タンパク壁が発熱しています!』

『第6パイプに異常発生!』

 

「なんだ…?何が起こってるんだ!?」

 

リツコの問いかけに、マヤをはじめとしたオペレーター達の緊迫した声が返る。

それを受けて、シンジが不安の声を上げた。

 

「なぁに、赤木博士と技術部なら大丈夫でしょ。

アレだよアレ。NERVの科学力は世界一ィィってさ」

「バカナミ、それ相田(アホメガネ)が言ってた()()()とかいう奴じゃないの?」

 

サウンドオンリー表示の零号機パネルに、届かぬジト目を向けるアスカ。

根拠のない楽観は足を掬われる原因となる…

アスカは胸によぎる嫌な予感に、表情を陰らせた。

 

オペレーティングルームから聞こえる報告は未だ好転しない。

リツコは流石に実験を中止し、亀裂の発生したパイプ周りを隔壁で物理閉鎖させた。

しかし侵食は止まらずに壁伝いに爆発的に広がり、確実に特殊実験棟に近づいている。

 

『ポリソームを出して!』

 

リツコの号令により、無菌水槽の壁が開き、小型の無人潜水艇が数機、一対の後部スクリューを回して進み出た。

侵入者迎撃用の水中ドローン『ポリソーム』は、ホバリングするヘリコプターのような動きでエヴァ模擬体の周囲に展開する。

 

ポリソーム各機の『目』である水中カメラは人工知能(A I)制御でズームを調整。

侵食の進む壁に狙いを定め、機体下部の銃身…レーザー射出装置を構えた。

 

静寂…10秒…15秒…20…

 

 

(いだ)だだだだだっ!?なんじゃごりゃあーっ!?」

『『レイッ!?』』

 

レイの素っ頓狂な声が沈黙を破り、ミサトとリツコが同時に目を見開く。

 

勢いよく振り上げられる0番の模擬体の右腕。

剛腕に巻き込まれた一機のポリソームが、無残にひしゃげた。

 

模擬体はそのまま、自身が固定されている壁に腕を叩きつける。

実験棟全体を襲う、轟音と振動…。

オペレーター達は反射的に机にしがみつき、立っていたミサトは咄嗟に重心を落として足を踏ん張り、転倒を回避した。

 

 

「ひー!明らかに制御装置(リミッター)が仕事してないんですけどー!

それともこれは()()()()をやれという神の思し召し!?

くっ…また暴れだしやがったか!

邪気眼を持たぬものに、この苦痛(いたみ)理解(わか)るまい…

静まれ、あたしの右腕ぇー!」

「綾波さんっ、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」

「あのバカッ!早速フラグ回収してんじゃないのよ!」

 

…仲間二人は気が気ではなかったが、非常事態にも関わらず額にある(という設定の)()を疼かせているあたり、レイは割と余裕である。

花も恥じらう中学二年生。中二病に罹患するのは仕方ないのだ。多分。

 

そんな緊張感のないレイをよそに、暴走状態の0番模擬体は上半身しかない身体をねじって悶え続ける。

まるで攻撃的な意思を持っているかのように、首無し巨人がオペレーティングルームに向かって手を伸ばした。

 

『…っ!』

 

リツコはコンソールのアクリル板を叩き割り、非常用のレバーを引いた。

模擬体の腕が根元から千切れて、強化ガラスに激突、蜘蛛の巣状にひび割れる。

直撃は防いだが、いかに超強度を持つ強化ガラスといえども長くは持つまい。

 

『パイロットは三人とも健在!

しかし、0番模擬体は未だ制御できません!このままでは危険です!』

『全プラグ、緊急射出!データとモニターは全て発令所に引き継いで!』

部屋(ボックス)は破棄します!総員退避っ!!』

 

緊迫したマヤの報告に、リツコとミサトは顔を見合わせて頷き、その場にいる皆に指示を出した。

オペレーター達は書類を回収する暇もなく、出入り口へ。

ミサトとリツコが飛び出た後、扉を緊急閉鎖…

 

幸い、誰も溺れ死なずに済んだが、この後NERVは初めて()()()()()()()使()()()を経験する事となった。

 

 

………

 

……

 

 

「外は…本部はどうなってるんだろう?」

「もぉーっ、裸じゃどこにも出られないじゃないのぉー!」

 

緊急脱出させられた子供達のエントリープラグは、地下空間(ジオフロント)の片隅…

芝で緑化された地区に転がっており、シンジとアスカは不安と不満を漏らす。

レイは一人、インテリアシートに身を預け、眠っていた。

 

いずれはプラグから発信される電波を頼りに保安部のエージェント達が回収に来るだろうが、

情報が手に入らなければ、それもいつになるかは解らない。

 

「うぅ…」

 

うなされているのか、時折、レイの唇からは呻き声が漏れる。エントリープラグの中はある種の隔離空間。

彼女の右手の甲が、僅かに()()()()しているのを、見る者は誰もいなかった。

 

 

 

レイは、奇妙な夢を見ていた。

 

崩れた建物が広がる、茫漠とした廃墟。

どこまでも広がる、血のような赤い海。

水平線の向こうには、真っ白い巨大な人の頭が横たわっている…。

 

それは、縦に半分になり、目を見開いて張り付いた不気味な笑いを浮かべた綾波レイ(自分自身)の顔だった。




思わせぶりな〆にしましたが、イロウルさんはINして即画面外にOUTしてます。
殲滅方法はTV版と同じでリナレイさんが関わる余地がないためバッサリカット。
経過などには微妙な違いがあるかもですが、それは後々出す予定。

次回、完全放置だったおじいちゃん達が本作初登場。

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