新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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前回までのあらすじ

レイ「こんな目玉模様ひとつ!エヴァで押し返してやる!」
戦自砲兵「NERVばっかりに良い格好はさせませんよ!」
アスカ「なっ…!?やめなさい!アタシ達に付き合う必要なんてないわ!」
時田「第3新東京市がダメになるかならないかなんだ!やってみる価値ありますぜ!」
シンジ「ジェットアローンまで!?無理だよ、下がれっ!」
レイ「エヴァンゲリオンは…伊達じゃないっ!

マヤ「奇跡です…第十使徒が、地球から離れていきます…!」

BGM:♪BEYOND THE TIME


レイ「…という夢を見たのさ♪」
アスカ「殲滅できてないじゃないの!」


61、リナレイさん、特殊実験棟にIN

NERV本部を貫く巨大な縦穴…中央大垂直溝(セントラル・ドグマ)に沿って作られた長距離エレベーターが、三人のエヴァ・チルドレン達をB棟下層に位置する特殊実験棟・プリブノーボックスと運んでいく。

エレベーターの扉が開き、三人は()()()()()()()姿()で小分けされた各部屋へと現れた。

 

「NERVもとんだ変態組織ね!これがお望みの姿ってわけ?」

「うー、洗われすぎてお肌ヒリヒリする。

あたし色素少ないんだから加減してよー赤木博士ー」

「リツコさん、本当にここまでやらなきゃいけないんですか?」

『ここから先は、超クリーンルームなの。下着を変えてハイOK、とは行かないわ』

 

憮然と腕を組むアスカ。己の腕を擦るレイ。半ば諦めながらも問うシンジ。

互いに姿は見えぬままスピーカー越しに会話する三人に、オペレーティングルームからリツコがにべもなく答えた。

 

未知なる敵生体との戦いの最前線、特務機関NERVにおいては、ありとあらゆるデータが必要となる。

それにはパイロットが、()()()()()()()()()()()にエヴァに乗った時のものも含まれていた。

 

MAGIは今回の試験で、規定値以上の雑菌の存在を許してくれず、子供達は熱湯、冷水、熱風、冷風、消毒液etcetc(などなど)…実に17段階にも及ぶボディ・クリーニングを施されていた。

 

『では三人とも、通路を進んで、その姿のままプラグに入ってちょうだい』

「えぇーっ!?」

 

リツコの指示に、アスカは顔に血を昇らせながら、高く裏返った声に不満を乗せた。

明白色の無機質な壁は、否応なく人の肌を目立たせる。

シミュレーションプラグの小部屋の前…目線を左上にやれば、カメラらしきものも見える…。

プライドの高いアスカには、少々酷な仕打ちだ。

 

リツコは、事務的に言葉を続けた。

 

『大丈夫よ、映像モニターは切ってあるから。あなた達のプライバシーは保護されているわ』

温度感知(サーモグラフィー)みたいに、僕達の身体がシルエットで表示される感じですか?

恥ずかしいですけど、それならなんとか…」

「バカシンジ!丸め込まれてんじゃないわよ!

そういう問題じゃなくて、アタシの気持ちの問題だって言ってんの!」

「『モニターは切ってある』…

赤木博士の言葉を信じたばかりに、うら若き中学生男女の、あられもない姿が動画に収められてしまうのでした…

んで、流出させられたくなかったら、あたし達にあんなコトこんなコトしろって言うんでしょ!?

エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!

「相方も相方でホンット救いようがないわね、このバカップルは!

あぁもうヤケだわ!オペレーティングルーム!ぜぇーったいに見ないでよ!?」

 

洒落にならないことを楽し気に紡ぐレイを一喝しつつ、アスカは大股で…

シンジはどこか頼りなさげに周囲を見回しながら通路を抜けていく。

 

「デッデッデッデッ デーンデーンデ♪デーンデーンデ♪デーンデーンデ♪」

 

レイのシルエットは軽快なベースラインを口ずさみ…

指先をピッと伸ばしてリズミカルに肩を上下させながら、通路を進んでいった。

エロくない。残念な全裸である。仮にモニターが生きていても、エロティシズムは息をしていないだろう。

 

『レイ…なんでヒゲダンス知ってるのよ?』

『く…くくっ…』

 

呆れ顔で呟くミサト。

その後ろでは、すっかり笑いの沸点が低くなったリツコが顔を反らして震えていた。

 

………

 

……

 

 

オペレーティングルームから望む分厚い強化ガラスの向こう側には、無菌水が満たされている。

青く澄んだ水中に、巨人の上半身…エヴァンゲリオンの模擬体(ダミー)が三体、壁から()()()ように並んでいた。

 

材質はエヴァの素体と同じく、機械と有機物が混合した()()()()であり、頭のない首の付け根にはプラグ挿入口も存在する。

子供達を乗せたシミュレーション用のエントリープラグが挿入されると、MAGIシステムが模擬体と接続され、モニターの中を高速でプログラムが流れていった。

 

『おぉ~、早い早い。MAGI様々だわ。

あるいはリツコやマヤちゃん達…技術部の努力の賜物かしら?

初試験の時、足掛け一週間近く掛かってたのが嘘みたいね』

『MAGIの定期検診、済ませておいた甲斐がありましたね。

テストは、約三時間で終わる予定です』

 

歓声を上げるミサトに、伊吹マヤ二尉が嬉しそうに答える。

ただ、各自の精神(メンタル)には、プラグスーツ着用時に比べて若干の誤差(ブレ)が見られた。

 

2番のプラグ内、長髪少女のシルエットが、己の手をじっと見ているのを気づき、マヤが童顔を傾げる。

 

『アスカ、どうしたの?』

「感覚がおかしいわ。右手だけハッキリしてて、後はボヤけてる感じ」

「あぁ、それでいつもと違う感じがしたのか…」

 

シンジが納得したように呟き、レイも同意するように「うんうん」と頷いていた。

 

『レイ、右手を動かすイメージを思い描いてみて』

「ぐー・ちょっき・ぱー♪ぐー・ちょっき・ぱー♪

…あれ?なんか反応(レスポンス)弱くね?」

 

リツコに応え、操縦桿(インダクションレバー)を押し込むレイ…

0番のプラグを納めた模擬体の指はユラユラと動くだけだった。

 

『模擬体同士の間隔は近いし、いきなり一人ジャンケンされたら危ないですからね。

事故が起こらないように制御装置(リミッター)が掛けてあるとはいえ、あまり余計なことはしないでちょうだい』

「イエス・マム!ちぇー、怒られちった」

 

レイの不意打ちから腹筋を守るように白衣の腹部を押さえるリツコ。

プラグ内の三人からデータが収集されるペースは、おおむね順調であった。

 

この特殊実験棟(プリブノーボックス)直上のタンパク壁に異常が、本部発令所から知らされるまでは…


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