新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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56、リナレイさん&アスカさん、更衣室にIN

12月第二週某日。

NERV本部、女子更衣室。

 

「まったく、装甲(ガワ)が変わっただけだってのに、なんでこんなにテストが長引くのよ」

「システムの方にも、影響は出るらしいよ?あたしも詳しくは知らんけども」

 

ブツクサと文句を言うアスカに、レイが下着をつけながら答える。

第九使徒戦でサブカメラが役に立ったのを皮切りに、日本重化学工業(ニチジュウ)との技術交換は着々と進んでいた。

 

現在行われているのは、NERVと日重の技術を合わせた、軽量かつ頑丈な装甲への換装…。

結果、その調整にパイロット達も付き合わされ、かなり長居させられてしまっている。

 

とはいえ、アスカにはテストが延びた理由を聞く気はなかった。

エヴァンゲリオンの性能アップに携わる技術部・整備部のスタッフ達…。

彼らは良く言えば全員が機械工学のプロフェッショナル。

…悪く言えば、()()()()()()()()()()()揃いだ。

 

部のトップに立つ赤木リツコ博士など最たるもので、

「よくぞ聞いてくれたわっ!」

とばかりに、嬉々として説明してくれるだろう。

 

(命を預けるアタシ達としては、仕事熱心なのは有り難いけど、絶対に話が()()()()わよね)

 

いくらアスカが飛び級で大学を卒業していても、技術畑は専門外だ。

チンプンカンプンな用語まみれの長話なんぞ、疲れている時に聞きたくはない。

 

一足先に着替え終わったアスカは、更衣室中央の青いプラスチックベンチに腰を掛け、携帯電話を見ていた。

正確には携帯にぶら下がった青い天然石のオブジェを、溜め息をついて眺めている。

彼女の肩の後ろからブラジャー姿のレイが、ひょい、と覗いた。

 

「あらっ、可愛いねぇ、そのストラップ」

「加持さんからのプレゼントよ。タンザナイト…12月の誕生石だって」

「へぇー…って、アスカっち、誕生日だったの!?いつ!?」

「4日よ。先週の金曜日。いいから上ぐらい着なさいよバカナミ」

 

アスカのジト目もなんのその。

「そっかそっか誕生日かー」などと口にしつつ、ブラウスを着るレイ。

 

「言ってくれれば、皆でお祝いしたのに」

「どんちゃん騒ぎはバンドの打ち上げで、もうやっちゃったでしょ。

誕生日だからって、わざわざ仲間内でパーティ開くこともないわよ」

「んー…まぁ確かにいつもの面子よりは、デートの方が貴重かぁ。

でも、せっかく加持一尉と二人っきりになれたのに、表情が浮かないね?」

「そりゃあ、加持さんからのプレゼントだし、嬉しいわよ?けど、アタシだって女だもの。

指輪…みたいに重い事は言わないけど、せめてブローチかネックレスなら、って思ったわ。

そう言ったらさ…」

 

『俺みたいなオッサンのプレゼントしたアクセサリーなんて身に着けてたら、

アスカにボーイフレンドが出来た時、嫌な想いさせちまうだろ?』

 

「…だって」

「あー…うん…」

 

アスカのどこか寂しげな笑みに、レイまで心を締め付けられたように目を伏せた。

憧れていた、自分を大切にしてくれる大人の男性…。

結局はその気づかいが、父親が娘を見守るようなものだったと、解ってしまったのだ。

 

「アタシは子供の自分を捨てて、早く大人になろうとして…

でも加持さんは、アタシの成長を見守りながら、()()()()()も同時に守ろうとしてた。

…加持さんやミサトは、そう出来なかったから、って」

「セカンドインパクト?」

 

レイの言葉に、アスカは頷く。

体験者に「地獄しかなかった」と言わしめる大災厄。

大人と子供を隔てる、その壁の高さに、アスカは寂しさを感じた。

 

「…でもね、思ったよりショックじゃなかったのよ。

地球防衛バンドだって、元々は加持さんに見せたくて練習してたはずなのに…

いつの間にか、歌うことが楽しくなってた。

青葉一尉(コーチ)やアンタ達とジュースで乾杯した時は、使徒と戦った後より達成感があったわ。

あぁ、加持さんが言ってた事って、こういう事だったんだ、って」

「アスカっち…」

「っ…あぁーあ、ガラにもない事ベラベラしゃべっちゃった!帰るわよ、バカナミ!」

 

吹っ切るように立ち上がり、アスカは笑った。

いつもの調子を取り戻した彼女に、レイも笑い返す。

 

「失恋して泣きたいなら、また抱きしめてあげようかと思ったんだけどナ♪」

「ふん、アンタの(うっす)い胸なんて二度も三度も借りないわよ、バァーカ。

ママの代わりを務めようなんて、十年早いっつうの!」

「おーっ、()うたなぁーコイツぅ~?」

「ふふっ、あははっ!」

 

楽し気な少女達の声が二つ、更衣室から遠ざかっていった。


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