新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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前回までのあらすじ

ゲンドウ「レイの黄金水と聞いて!(ガタッ)」
冬月「お前じゃねぇ座ってろ」


4、リナレイさん、シンジくんと一緒にエントリープラグにIN

『リフト上昇。エヴァ初号機、第二次冷却に移行。プラグ挿入準備』

 

アナウンスと共に、ケージ内の水面が波紋を立てた。

何かが…徐々に姿を現す…一本の角…紫の頭部…白く光る二つの眼…

西洋甲冑の兜のような、あるいは鬼のような…

 

「顔…?巨大ロボット…!?」

「汎用人型決戦兵器…人造人間エヴァンゲリオン初号機。

唯一使徒に対抗できる、私達の切り札よ。

…碇シンジくん、あなたに乗ってもらいたいの。

こちらの、綾波レイと一緒にね」

 

リツコの視線の先。

看護師に手を借り「痛たた」などと言いつつ立ち上がるレイ。

白い顔には汗の玉が浮く。痛々しい姿に、シンジは息を飲んだ。

 

「見た事も聞いた事もないロボットに、乗れっていうんですか!?

無理ですよ!それに、彼女…綾波さんだって、怪我してるのに!

誰か大人のパイロットはいないんですか、リツコさん!?

…父さん!何とか言ってよ!」

 

「いくら戦闘機や戦車の操縦に熟達していても、『大人』ではダメなのよ。

中学生を戦場に放り込むのは人道に(もと)ると(そし)られても、他に手段がないの」

「エヴァとシンクロ出来る可能性があるのはセカンドインパクト以降に生まれた少年少女…

NERV傘下の組織であるマルドゥック機関によって選出された子供達(チルドレン)だけだ。

…必要があるから、お前を呼んだ。それだけの事」

 

それが、大人達の答え。

早鐘を打つ心臓を抑えるように、シンジは自分のシャツ…胸の部分を握りしめる。

 

「僕と綾波さんが、一緒に乗る理由は?」

「レイは一通りの訓練を受けているけれど、見ての通り負傷中。

シンジくんはマルドゥックの報告書ではシンクロの素質あり…けれどまったくの未経験者。

それで、私は二段構えを提案した、というわけ」

 

次に答えたのはミサト。

 

「…僕は『予備』っていうことですか」

「否定は出来ないわ。ごめんなさい」

 

自分を保護してくれた女性の静かな言葉。

俯いたシンジの心に様々な想いが去来する。

 

(なんでだよ)

(嫌だ、怖い、逃げたい)

(一度僕を捨てた父さんが、何を今更!)

 

(でも、僕が逃げれば、傷ついた綾波さんが一人で乗る事になる)

 

ケージを見下ろすゲンドウは、シナリオ通りの状況にほくそ笑んだ。

確信していた。シンジは、逃げ出せないと。

タイミングを見て、ゲンドウは口を開いた。

 

「乗るのなら早…」

「あー、まぁ向いてなさそーだもんね、キミこういうの。

大丈夫だよ、あたしが一人で乗っとくから帰んなさい」

 

やや無理はしているが笑顔を作り、レイの言葉が割り込んだ。

 

「く…しろ…で、なければ…帰…」

 

(お…俺のセリフ…)

ゲンドウは、ちょっと泣いた。

 

 

 

 

「綾波さんは…それでいいの?」

「ぶっちゃけた話、あたしだって痛いのは()だよ。

でも誰かがやらにゃー、みんな死んじゃうでしょーが」

 

綾波レイは、赤い瞳でシンジを真っすぐに見返した。

数秒の沈黙。シンジの手が、握り、開きを繰り返す。

 

「僕も…一緒に乗るよ」

「無理しなくていいって。逃げたいならさ」

「逃げたいよ、怖いよ!でも、君一人に任せて逃げたらもっと後悔する!だから…」

 

シンジは精一杯の勇気を奮い、レイへと言葉を返す。

そして、周囲の大人達に眼を向けた。

 

「やります…僕も、乗ります!」

「シンジくん…ありがとう」

「私からも、感謝するわ。エントリー準備、急いで!

パーソナルデータは、ファーストチルドレン『綾波レイ』と

サードチルドレン『碇シンジ』の並列(パラレル)で処理!」

 

ミサトが、そしてリツコが、答え…

 

「よーし、よく決めた男の子!んじゃ、ちゃっちゃと倒してこよっか!」

「綾波さんを…よろしくお願いします。碇さん」

 

気合を入れたレイのエスコートを担当看護師から引き継ぎ、シンジは頷く。

戦いが、始まろうとしていた。




本編よりも時間に余裕があるので説明ちょっと多目。
ミサトさんは、レイさんの「全快じゃないけどなんとか動ける」という状態から二人乗りを思いつきました。
よって「彼には無理よ!」→「乗りなさい」の掌返しはせず、最初からシンジくんをコ・パイロットとして当てにしてます

ゲンドウ「レイはとんでもないものを盗んでいきました。私のセリフです…」

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