新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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ザトウムシさんの事マトリエルっていうのやめろよ!

ん…?間違ったかな…?(アミバ並感)


53、マトリエルさん、停電した街にIN(前編)

第3新東京市、ならびに本部のブレーカーは事故で()()()のではなく、

悪意ある第三者によって意図的に()()()()()というのがNERV幹部級の見解だった。

強権・利権を有する特務機関NERVには敵が多く、下手人(ゲシュニン)の心当たりは『有りすぎて特定出来ない』。

「しょせん()()()()()()()だよ」とは、総司令・碇ゲンドウの弁である。

 

いかに科学万能の都市とはいえ…否、だからこそ、というべきか。

科学の『血液』たる電気が止まれば、身動きが取れないのが現状だ。

 

そんな中、作戦オペレーターの日向マコト二尉は、偶然通りかかった選挙カー…

『市議会議員候補 高橋覗(タカハシノゾク)』のプレートをつけたワゴン車を接収し、発令所に直接突入。

 

「使徒接近中。ただちに、エヴァ発進の要有りと認む」

 

日向が拡声器(メガホン)越しに叫んだ()()()()()()()()()()に、発令所は騒然となり…

職員・作業員達は薄闇の中、各々の仕事に追われていた。

 

 

 

カァァン……コォォン…… 不意に発令所内に響く、金属の叩かれる音。

 

カンカァン…コォン… 金属音の、間隔は。

 

カンッ ガンガンガンッ ゴンッ! 徐々に、短く、大きくなっていく。

 

 

 

すわ、どこぞの組織の特殊工作員か。

点々としたロウソクの明かりに照らされた職員達の顔に、緊張が走った。

久方ぶりに手書き(アナログ)で情報をまとめていた長髪のオペレーター、青葉シゲル二尉は、

ガコンッ! という何かが外れる物音にペンを止め、顔を上げる……

 

 

 

「突撃っ!NERVの晩ごはぁ~んっ!」

「うっわぁ――――ッ!?」

 

次の瞬間、青葉の眼前に通風孔(ダクト)の金属板が落下。

がっしゃぁーん!ごゎんごゎんごゎん…

騒がしく(たわ)みながらバウンドした。

 

暗闇で時間感覚は狂いそうだったとはいえ、夕飯にはずいぶんと早いはず。

そんなん構わん、と言わんばかりのハイテンションな若い女の声に、青葉は床にへたり込みながら絶叫する。

 

闖入者は()()()()()()()()ではなく()()()()を抱えていた。

闇の中で光る瞳は、後続にもう二対…合計三人分の視線が、ダクトに空いた穴から降り注ぐ。

青葉は、ひぃっ、と喉を引きつらせた。

 

「おーっすロンゲくーん!元気かねー?」

「す、すいません青葉さん!大丈夫ですか!?」

「ちょっとー、この高さから飛び降りたら怪我しちゃうじゃないのよー!

コーチ!脚立(キャタツ)持ってきて脚立ー!」

「レ、レイちゃん?シンジくん?アスカちゃん?」

 

それぞれ違う呼び方で己を呼ぶ声に、青葉はようやく相手が見慣れた少年少女達だと気づいた。

ちなみにアスカが『コーチ』と呼んだのは、青葉が地球防衛バンドの指導を担当しているためである。

…もっとも指導者・年長者への敬意はなく只の愛称であり、容赦なく彼をパシリに使ったのだが。

 

 

 

 

なにはともあれ…青葉が大急ぎで持ってきた脚立を使い、三人は無事に…

スカートの中身を気にしたアスカがキャーキャー騒ぐというトラブルはあったものの…

まぁ、とりあえずは無事に、発令所に降り立った。

 

「みんな、これを見てくれ。日向二尉(マコト)が車内から撮影した、使徒の映像だ」

 

青葉はノートパソコンを開き、バッテリー残量を確認してからファイルをダブルクリックした。

顔を寄せ、画面を見つめるレイ達…。

日向二尉の携帯端末からUSBケーブルで吸い出した動画が再生される。

 

 

第3新東京市の建物の間で動く…()()()()()()()()の『細長い何か』。

蜘蛛だかザトウムシだかの足のような『へ』字型の巨大な棒が四本…

轟音を立てながら曲げ伸ばしを繰り返し…()()()いた。

 

『使徒を肉眼で確認…!ヤバいぞ、これは…!』

『と、当管区内における、非常事態宣言にともないっ…

緊急車両が通ります…って、あのっ、行き止まりですよぉっ!?』

 

撮影者である日向の切迫した独白に、上擦った女性の声が重なる。

選挙カーに運悪く乗り合わせていたウグイス嬢だ。

 

『いいから突っ込め!なんせ非常時だからなっ!』

『了ぉぉ解ぃぃっ!!』

 

日向の怒鳴り声に答えたのは、運転手の男だろうか。

極度の興奮状態…最ッ高にハイな感じなのが、聞いていて解る。

 

『嫌ぁぁあ~~っ!?もう止めてぇ~~っ!?』

バッキャアァッ!!

 

ウグイス嬢の悲鳴と、何かを破砕した小気味よい音と共に、動画は終わった。

 

 

 

「…メガネくん、超楽しそうだね。なに、カーアクションでもやってたん?」

「トンネル前を塞いでたプラスチック製のバーを、そのまま()()()()()()()本部まで乗り入れたんだ。

そりゃマコトの奴も爽快だっただろうよ」

 

レイの視線から逃げるように、青葉は顔を反らす。

高橋議員の車に乗っていた面々は全員が降車しており、日向は拝借したメガホンを片手に、私服のまま職員達の間を駆けずり回っていた。

 

栗色ボブヘアーの、恐らく伊吹二尉と同年代であろう可愛らしいウグイス嬢は、

子供のようにしゃくり上げながら女性職員に慰められていて、

運転手のオッチャンは、男性職員からハッカ味の禁煙パイプを受け取り、

「や、どうもスンマセンねぇ」などと笑いつつ呑気に一服している。

混沌とした状況に、アスカは肩を竦めた。

 

「状況は大体解ったけど…それにしても暑いわねぇ…なんだか気持ち悪いわ」

「空調が止まってるからな。不快なのは勘弁してくれ。

冬月副司令の指示で、生き残った回線は全てMAGIの維持に回しているんだ。

副司令も『やりきれない』と嘆いていたよ。

現代科学の粋を極めた施設が、この有様じゃあな」

 

青葉は視線を上…司令席へと向けた。

冬月は必要とあらば指示を出すべく、全体の状況を俯瞰(フカン)している…

本来、指揮を取るべき、冬月の隣にいるはずの最高司令官の姿はそこになく…

 

「各機、エントリープラグ挿入準備!手動でハッチ開け!」

 

「父さん!?」

「おぉー…碇司令、いつになくやる気出してんね」

「ホント、あんな司令、初めてみたわ」

 

電気のない状態で、()()()()()()()()()()()()べく…

作業員達の間近で直接指示を出すゲンドウの姿に、子供達は目を凝らした。


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