新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
ん…?間違ったかな…?(アミバ並感)
第3新東京市、ならびに本部のブレーカーは事故で
悪意ある第三者によって意図的に
強権・利権を有する特務機関NERVには敵が多く、
「しょせん
いかに科学万能の都市とはいえ…否、だからこそ、というべきか。
科学の『血液』たる電気が止まれば、身動きが取れないのが現状だ。
そんな中、作戦オペレーターの日向マコト二尉は、偶然通りかかった選挙カー…
『市議会議員候補
「使徒接近中。ただちに、エヴァ発進の要有りと認む」
日向が
職員・作業員達は薄闇の中、各々の仕事に追われていた。
カァァン……コォォン…… 不意に発令所内に響く、金属の叩かれる音。
カンカァン…コォン… 金属音の、間隔は。
カンッ ガンガンガンッ ゴンッ! 徐々に、短く、大きくなっていく。
すわ、どこぞの組織の特殊工作員か。
点々としたロウソクの明かりに照らされた職員達の顔に、緊張が走った。
久方ぶりに
ガコンッ! という何かが外れる物音にペンを止め、顔を上げる……
「突撃っ!NERVの晩ごはぁ~んっ!」
「うっわぁ――――ッ!?」
次の瞬間、青葉の眼前に
がっしゃぁーん!ごゎんごゎんごゎん…
騒がしく
暗闇で時間感覚は狂いそうだったとはいえ、夕飯にはずいぶんと早いはず。
そんなん構わん、と言わんばかりのハイテンションな若い女の声に、青葉は床にへたり込みながら絶叫する。
闖入者は
闇の中で光る瞳は、後続にもう二対…合計三人分の視線が、ダクトに空いた穴から降り注ぐ。
青葉は、ひぃっ、と喉を引きつらせた。
「おーっすロンゲくーん!元気かねー?」
「す、すいません青葉さん!大丈夫ですか!?」
「ちょっとー、この高さから飛び降りたら怪我しちゃうじゃないのよー!
コーチ!
「レ、レイちゃん?シンジくん?アスカちゃん?」
それぞれ違う呼び方で己を呼ぶ声に、青葉はようやく相手が見慣れた少年少女達だと気づいた。
ちなみにアスカが『コーチ』と呼んだのは、青葉が地球防衛バンドの指導を担当しているためである。
…もっとも指導者・年長者への敬意はなく只の愛称であり、容赦なく彼をパシリに使ったのだが。
なにはともあれ…青葉が大急ぎで持ってきた脚立を使い、三人は無事に…
スカートの中身を気にしたアスカがキャーキャー騒ぐというトラブルはあったものの…
まぁ、とりあえずは無事に、発令所に降り立った。
「みんな、これを見てくれ。
青葉はノートパソコンを開き、バッテリー残量を確認してからファイルをダブルクリックした。
顔を寄せ、画面を見つめるレイ達…。
日向二尉の携帯端末からUSBケーブルで吸い出した動画が再生される。
第3新東京市の建物の間で動く…
蜘蛛だかザトウムシだかの足のような『へ』字型の巨大な棒が四本…
轟音を立てながら曲げ伸ばしを繰り返し…
『使徒を肉眼で確認…!ヤバいぞ、これは…!』
『と、当管区内における、非常事態宣言にともないっ…
緊急車両が通ります…って、あのっ、行き止まりですよぉっ!?』
撮影者である日向の切迫した独白に、上擦った女性の声が重なる。
選挙カーに運悪く乗り合わせていたウグイス嬢だ。
『いいから突っ込め!なんせ非常時だからなっ!』
『了ぉぉ解ぃぃっ!!』
日向の怒鳴り声に答えたのは、運転手の男だろうか。
極度の興奮状態…最ッ高にハイな感じなのが、聞いていて解る。
『嫌ぁぁあ~~っ!?もう止めてぇ~~っ!?』
バッキャアァッ!!
ウグイス嬢の悲鳴と、何かを破砕した小気味よい音と共に、動画は終わった。
「…メガネくん、超楽しそうだね。なに、カーアクションでもやってたん?」
「トンネル前を塞いでたプラスチック製のバーを、そのまま
そりゃマコトの奴も爽快だっただろうよ」
レイの視線から逃げるように、青葉は顔を反らす。
高橋議員の車に乗っていた面々は全員が降車しており、日向は拝借したメガホンを片手に、私服のまま職員達の間を駆けずり回っていた。
栗色ボブヘアーの、恐らく伊吹二尉と同年代であろう可愛らしいウグイス嬢は、
子供のようにしゃくり上げながら女性職員に慰められていて、
運転手のオッチャンは、男性職員からハッカ味の禁煙パイプを受け取り、
「や、どうもスンマセンねぇ」などと笑いつつ呑気に一服している。
混沌とした状況に、アスカは肩を竦めた。
「状況は大体解ったけど…それにしても暑いわねぇ…なんだか気持ち悪いわ」
「空調が止まってるからな。不快なのは勘弁してくれ。
冬月副司令の指示で、生き残った回線は全てMAGIの維持に回しているんだ。
副司令も『やりきれない』と嘆いていたよ。
現代科学の粋を極めた施設が、この有様じゃあな」
青葉は視線を上…司令席へと向けた。
冬月は必要とあらば指示を出すべく、全体の状況を
本来、指揮を取るべき、冬月の隣にいるはずの最高司令官の姿はそこになく…
「各機、エントリープラグ挿入準備!手動でハッチ開け!」
「父さん!?」
「おぉー…碇司令、いつになくやる気出してんね」
「ホント、あんな司令、初めてみたわ」
電気のない状態で、
作業員達の間近で直接指示を出すゲンドウの姿に、子供達は目を凝らした。