新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
「…まるでネズミかヤモリの気分だわ」
「ちょーっと我慢してちょ、アスカっち。あと何回かダクト経由するしー」
「うぇぇ…」
レイが先導し、アスカとシンジが続く形で、狭いダクトを四つん這いで進んでいく。
あまり格好の良いものではないのは確かであり、アスカの声には不機嫌さが滲んだ。
「き、きっと大丈夫だよ!だんだん『下』には向かってるみたいだし…このまま進めば、本部に着けると思うよ?」
「あぁーハイハイ。
まったく、すっかり飼い慣らされて…女の尻に喜んで敷かれる男なんて、
「むっ…なんだよアスカ。そんな言い方ないだろ?」
懸命のフォローをアスカに一蹴され、シンジが唸る。そこに、振り返ったレイが一言。
「どっちかっつーと尻に敷くっていうより、あたしが
「わー、わーッ」
「うっさいわねバカシンジ!
大声で誤魔化さなくたって、バカナミの話を聞いてればアンタ達が『どんな事してるか』ぐらい大体察しが着くわよっ!
間違っても
「ご…ごめん」「てへぺろー☆」
「てへぺろじゃないわよ、ったく万年脳味噌
使徒が接近しているこの状況で、なんとも緊張感のないことではあるが、『いつも通りのしょうもない会話』は、子供達の心を紛らわすにはちょうど良かった。
ダクトを出て、別の通路に降り立ち、レイが分かれ道を選別する…
果てない暗闇の中、僅かな明かりを頼りにまたダクトへ…その繰り返し。
(僕一人だけだったら、道も解らないし、不安で、怖くて、途方に暮れてただろうな)
床も壁も無機質で変わり映えせず、『進んでいる』という実感は、あまり得られない。
だが7番ルートから侵入して行軍するうちに、壁に書かれたルートの名が『75番』になった事から、順調に奥まで来られている事はシンジにも解った。
それにしても…地上とほぼ同じ速度で歩き続けるレイの背に、シンジは声をかける。
「綾波さん…こんな真っ暗な中で、よく平気で進めるね」
「言ったっしょ?本部の構造は、大体頭に入ってるって。
それに『視覚』は五感のうち、たった一個だよ?
その場の『空気』には、色んな情報があんの。
ほら、他の四つの感覚、みーんなカバーされてるじゃーないですか!
「余裕って…」
「アタシはドイツ支部で暗中格闘訓練を受けたことがあるけど、それが言う程簡単じゃない事は解るわ。
…バカナミ、アンタ何者なの?」
あまりにも、人間離れしている。
シンジとアスカが抱いた疑問に、レイは歩きながらコメカミを掻いた。
「ま、『自分は何者であるか?』みたいな
そろそろ75番のゲートが見え…うっはぁ!?」
「これは…手じゃ開けられないよ…」
過去の使徒戦の振動で崩れたのか、肝心のゲートは下半分ほどが瓦礫で埋まっていた。
瓦礫の前には、建築資材と思しき鉄パイプや金属製の足場板…
大きなスコップなどが、無造作に打ち捨てられている。
以前に復旧工事を行おうとして、断念したのかもしれない。
レイの正体はさておき、今は目先の問題…アスカは横目に溜め息をついた。
「…どーすんのよ。ダクトの入口も、ここらには見当たらないわよ?」
「昔の偉い人は言いました。道がないなら作っちゃえばいいんじゃね?」
「?」
怪訝な顔をするアスカを余所に、レイは
シンジは、ハッと息を飲んで、レイの考えている事を察し、声を上げた。
「アスカッ!耳塞いで!」
「なによシンジ、ちゃんと説明しなさ…」
「そうるらぁっ!きゃおらぁっ!」
ゴォン!ギィン!ガァン!ゴォン!めりっ!めりめりっ!!
「いぃィッ!?」
耳をつんざく金属同士の打撃音に、アスカは反射的に耳を塞いで身を縮めた。
どこぞの
過去の事故で劣化していたのか、ダクトのブリキ板にはたやすく隙間が出来た。
そこに鉄パイプを突っ込んで、テコの原理で一枚をメリメリと
額の汗を拭って、晴れやかな笑顔。本日の綾波レイは、非常に
「ふー!いい仕事したっ!そんじゃ行くよ二人ともー!」
「こ…この独善者っ!手段ぐらい選びなさいよっ!」
「でも、綾波さんのおかげで本部に行けるよ。その、かなり、強引だったけど」
「この手に限るっ!」
耳を覆っていた手を恐る恐る離して絶叫するアスカと、困惑気味に苦笑するシンジ。
そんな二人を前に、レイは鉄パイプを己の肩に乗せ、ドヤァ!と胸を張る。
本部発令所は、目の前だった。
道に迷ってないので、チルドレンは原作より早く着けそう。
その煽りでザトウムシ兄貴を目視確認するシーンはカットです。
しょせん奴は最弱…我ら十七使徒の面汚しよ…