新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

50 / 80
戦闘BGM:ペンペンとかが出てくる時のギターが軽快なアレ


46、サンダルフォンさん、バトルにIN

人間の胎児めいた姿はどこへやら。

孵化した第八使徒は、ヒラメやカレイのような平たい魚状に退()()していた。

明確に魚類と違うのは、ボディーの下部に()()()()を持っている事だろうか。

 

「なんでアンタと組む時に限って、いっつも『魚』が相手なのよっ!

バカナミ、アンタ祟られてんじゃないの!?」

「そーいやそうだネ!結局第六使徒(まえのおさかな)は三枚おろしにし損ねちゃったし…

よーし、倒したら()()()()()するか!あっ!あの形からして、煮つけとか美味しいかも!」

「食べないわよ!供養なら寺に任せりゃいいでしょ!」

「ところで『使徒』って名称だとキリスト教系っぽいけど…

仏教系のお寺でも供養してくれるのかな?」

知るかぁーッ!

 

呑気なレイと、声を荒げるアスカ。

少女達が漫才を続けている間、第八使徒は持ち上げられたまま人形(JA)の両手を押さえつけた。

 

 

使徒の身体…下部前面にある口が開き、

牙とも触手ともつかぬ()()()の器官が何本もJAの頭部に伸びる。

メインカメラは『自らが喰らいつかれる映像』をドアップで流しており、

さながらB級モンスター映画のような様相を呈していた。

 

『どうした!?振りほどけ!』

『デ、データ上の馬力は拮抗しているはずですがっ!

機械手(マニュピレータ)が、()()()()()()に阻まれて掴み返せません!』

『オォーゥッ!?JA――ッ!?ノォーゥッ!?JA――ッ!?』

 

オペレーターの報告に毛髪後退気味の頭を抱え、これまたB級洋画の端役(モブ)っぽい嘆きの声を上げる時田。

散々嫌味を浴びていたミサトは、通信越しに聞こえる日重車両からの音声に、胸の()くような想いで笑んだ。

 

「おぉおぉ、中々いい()()()()()じゃないのジェットアローン!

A.T.フィールドはあくまで『研究中』で、対抗手段はまだまだみたいね。

アスカ、レイ!補給車両の位置情報を転送するわ!電源と武器をゲットして交戦よ!」

「了解っ!」「りょうかー…ってこっち来たぁあ!?」

 

ミサトの指示に答えた二人だったが、レイの言葉は高く裏返った。

 

第八使徒は()()()()と齧っていたJAを『あ、これ食えねーや』とばかりにポイッと投げ捨て、

零号機目掛けて山の上方から滑空するように突っ込んできた。

赤木リツコ博士をして『正体不明』と言わしめる使徒の謎動力は、普通に重力を無視した動きをやってのける。

 

リニアから立ち上がりかけた状態で、使徒の特攻を受け止める零号機。

互いのA.T.フィールドがぶつかり合い、虹色の光壁となって可視化した後、

掻き消えるように中和されて、至近での組み合いとなった。

 

 

(なぁに)やってんのよバカナミッ!」

()()が、せっかちなもんで…!」

「もぉー!零号機の内部電源が続く間で良いわ!

準備してくるから、なんとか持たせなさい!

アンタ得意でしょ、()()()()!」

「で、出来るだけ早くしてねアスカっち!?」

 

アスカは弐号機を駆り、グレーの山肌に巨大な足跡を刻みながら補給車両を目指した。

レイは遠ざかる相方の赤い背中に催促を向けつつ、使徒との格闘を続ける。

 

「とはいえっ、この状況で時間稼ぎっつったら、

このまま使徒さんとお手合わせするぐらいしかないんだけども…えっ!?」

 

突如、プラグ内に響く警告音。温度の急上昇を知らせるゲージを、レイは凝視する。

マグマの中で手に入れた能力だろうか、使徒の甲殻が()()し、至近距離で格闘する零号機を高熱で(さいな)んだ。

当然、エヴァの受けたダメージはパイロットへとフィードバックされ…

 

「ぅ(あっち)ゃア~~ッ!?」

「レイッ、落ち着いて!プラグスーツを耐熱シフトに!」

「た、耐熱ぅ!?あ、例のアレか!」

 

いまいち緊張感に欠けるものの、熱さに叫ぶレイに、ミサトは指示を飛ばした。

レイはプラグスーツ右手首にあるボタンを押し、冷却ガスをスーツ内に充填させる。

 

アスカと違い、格好を気にしないレイは()()姿を躊躇いなく選び、

その結果、レイ自身は熱によるフィードバック・ダメージから解放され、思考する余裕を得た。

 

(ふぃー、危なかったぁ…どーする、今からでも電源取りにいくか?

…ダメだな、あの距離じゃ補給車両につく前に内部電源が切れちゃう。

操縦者(あたし)だけスーツで守られてても、機体(エヴァ)のダメージが無くなるわけじゃなし。

アスカっちが助けに来るのを信じて、時間ギリギリまで交戦するかっ!)

 

レイは操縦桿(インダクションレバー)を押し込む。

零号機は膝蹴りを巨大ヒラメの腹に叩き込んだ後、プログナイフを抜いて頭に振り下ろし…

ひどく硬質な音を、浅間山に響かせた。

 

(かった)ぁ―!なんぞこれ―!?

日向二尉(メガネくん)!フィールドは中和してるはずだよね!?」

「今データ解析した!使徒の甲殻は、マグマの高温・高圧に耐えられる構造だ!ナイフじゃ通らない!」

「まァじでェー!?ただでさえ時間ないのにっ!」

「零号機、活動限界まで10秒!9、8、7…!」

 

カウントを読み上げる日向の顔色は悪い。

レイの目には、使徒の口が開かれ、JAに齧りついていた触手らしき器官が伸びるのが映る…

ガンッ…!()()から伝わる重い衝撃。

 

「うっぐ!?」

 

身体を揺らされ、呻くレイ。零号機の電源は切れなかった。

弐号機が持ってきた電源紐(アンビリカルケーブル)のソケットが零号機に装着されていたのだ。

零号機に食らいつかんとしていた使徒の口には、弐号機がもう片手に持っていた巨大なホースが突っ込まれている。

 

「バカナミ、まだ寝るなっ!足止めとフィールド中和…役目は果たしてもらうわよ!」

「アスカっち来た!これで勝つる!って、そのホースは?」

()()()っ!バカシンジの苦手科目が、いいヒントになったわ!」

 

モノは温めれば膨らみ、冷やせば縮む…プールで何気なく交わした会話を、アスカは覚えていた。

ホースから使徒の体内に流れ込む『それ』は本来、弐号機をマグマの中に潜航させるための冷却液。

現地の補給車両から引っ張ってきたものだ。

 

温度差による蒸気を派手に吐きながら、使徒は暴れる。

電源供給を得た零号機は、必死に踏ん張ってその魚めいた身体を抑え込みながらA.T.フィールドを中和。

弐号機にホースをさらに捻じ込まれた使徒は不意に動きを止め…あっけなく形象崩壊していった。

 

「パターン青、消滅!使徒殲滅確認しました!」

 

日向の報告にミサトは満足げに頷き、モニター越しのレイとアスカへ親指立て(サムズアップ)と笑顔を向けた。

 

「アスカっちもお疲れー。今日のMVPだね!ホント助かりましたわー」

「当然よっ!もっと褒め称えなさい!」

「いやでも、アンビリカルケーブルを差し込まれた時の衝撃は、ちょっとビックリしたな」

「なによ、せっかく持ってきてやったのに。命拾ったんだから、感謝しなさいよね!」

「だって…いきなり()()()()()()()()とか…

あんなの、碇くんにだってされた事ないのに…

やっかましいわエロナミ!

 

ほんのり赤く染まった頬を抑え、身体をくねらせるレイに、

機嫌の良かった表情を転じさせ、青筋浮かべて吼えるアスカ。

 

「あんた達、相変わらず仲が良いわねー。

機体損傷度のチェックするから、補給車両に向かってちょうだい」

「ほーい!」「誰が仲良いってのっ!」

 

いつものやり取りにミサトは頬を緩ませ…ふと、山肌に倒れている機体…JAに目を向けた。

 

(さて、どうなってるかしらね。我らがライバル、日本重化学工業共同体の皆様は)

 

どう『ご挨拶』したものか…ミサトは思案を巡らせた。




レイ「あっ、お魚食い損ねた」
アスカ「まだ言うか」

日重関係の戦後処理がおかしかったので結構削りました(9/1)
後の話で修正して出す予定です。

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