新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
人間の胎児めいた姿はどこへやら。
孵化した第八使徒は、ヒラメやカレイのような平たい魚状に
明確に魚類と違うのは、ボディーの下部に
「なんでアンタと組む時に限って、いっつも『魚』が相手なのよっ!
バカナミ、アンタ祟られてんじゃないの!?」
「そーいやそうだネ!結局
よーし、倒したら
「食べないわよ!供養なら寺に任せりゃいいでしょ!」
「ところで『使徒』って名称だとキリスト教系っぽいけど…
仏教系のお寺でも供養してくれるのかな?」
「知るかぁーッ!」
呑気なレイと、声を荒げるアスカ。
少女達が漫才を続けている間、第八使徒は持ち上げられたまま
使徒の身体…下部前面にある口が開き、
牙とも触手ともつかぬ
メインカメラは『自らが喰らいつかれる映像』をドアップで流しており、
さながらB級モンスター映画のような様相を呈していた。
『どうした!?振りほどけ!』
『デ、データ上の馬力は拮抗しているはずですがっ!
『オォーゥッ!?JA――ッ!?ノォーゥッ!?JA――ッ!?』
オペレーターの報告に毛髪後退気味の頭を抱え、これまたB級洋画の
散々嫌味を浴びていたミサトは、通信越しに聞こえる日重車両からの音声に、胸の
「おぉおぉ、中々いい
A.T.フィールドはあくまで『研究中』で、対抗手段はまだまだみたいね。
アスカ、レイ!補給車両の位置情報を転送するわ!電源と武器をゲットして交戦よ!」
「了解っ!」「りょうかー…ってこっち来たぁあ!?」
ミサトの指示に答えた二人だったが、レイの言葉は高く裏返った。
第八使徒は
零号機目掛けて山の上方から滑空するように突っ込んできた。
赤木リツコ博士をして『正体不明』と言わしめる使徒の謎動力は、普通に重力を無視した動きをやってのける。
リニアから立ち上がりかけた状態で、使徒の特攻を受け止める零号機。
互いのA.T.フィールドがぶつかり合い、虹色の光壁となって可視化した後、
掻き消えるように中和されて、至近での組み合いとなった。
「
「
「もぉー!零号機の内部電源が続く間で良いわ!
準備してくるから、なんとか持たせなさい!
アンタ得意でしょ、
「で、出来るだけ早くしてねアスカっち!?」
アスカは弐号機を駆り、グレーの山肌に巨大な足跡を刻みながら補給車両を目指した。
レイは遠ざかる相方の赤い背中に催促を向けつつ、使徒との格闘を続ける。
「とはいえっ、この状況で時間稼ぎっつったら、
このまま使徒さんとお手合わせするぐらいしかないんだけども…えっ!?」
突如、プラグ内に響く警告音。温度の急上昇を知らせるゲージを、レイは凝視する。
マグマの中で手に入れた能力だろうか、使徒の甲殻が
当然、エヴァの受けたダメージはパイロットへとフィードバックされ…
「ぅ
「レイッ、落ち着いて!プラグスーツを耐熱シフトに!」
「た、耐熱ぅ!?あ、例のアレか!」
いまいち緊張感に欠けるものの、熱さに叫ぶレイに、ミサトは指示を飛ばした。
レイはプラグスーツ右手首にあるボタンを押し、冷却ガスをスーツ内に充填させる。
アスカと違い、格好を気にしないレイは
その結果、レイ自身は熱によるフィードバック・ダメージから解放され、思考する余裕を得た。
(ふぃー、危なかったぁ…どーする、今からでも電源取りにいくか?
…ダメだな、あの距離じゃ補給車両につく前に内部電源が切れちゃう。
アスカっちが助けに来るのを信じて、時間ギリギリまで交戦するかっ!)
レイは
零号機は膝蹴りを巨大ヒラメの腹に叩き込んだ後、プログナイフを抜いて頭に振り下ろし…
ひどく硬質な音を、浅間山に響かせた。
「
「今データ解析した!使徒の甲殻は、マグマの高温・高圧に耐えられる構造だ!ナイフじゃ通らない!」
「まァじでェー!?ただでさえ時間ないのにっ!」
「零号機、活動限界まで10秒!9、8、7…!」
カウントを読み上げる日向の顔色は悪い。
レイの目には、使徒の口が開かれ、JAに齧りついていた触手らしき器官が伸びるのが映る…
ガンッ…!
「うっぐ!?」
身体を揺らされ、呻くレイ。零号機の電源は切れなかった。
弐号機が持ってきた
零号機に食らいつかんとしていた使徒の口には、弐号機がもう片手に持っていた巨大なホースが突っ込まれている。
「バカナミ、まだ寝るなっ!足止めとフィールド中和…役目は果たしてもらうわよ!」
「アスカっち来た!これで勝つる!って、そのホースは?」
「
モノは温めれば膨らみ、冷やせば縮む…プールで何気なく交わした会話を、アスカは覚えていた。
ホースから使徒の体内に流れ込む『それ』は本来、弐号機をマグマの中に潜航させるための冷却液。
現地の補給車両から引っ張ってきたものだ。
温度差による蒸気を派手に吐きながら、使徒は暴れる。
電源供給を得た零号機は、必死に踏ん張ってその魚めいた身体を抑え込みながらA.T.フィールドを中和。
弐号機にホースをさらに捻じ込まれた使徒は不意に動きを止め…あっけなく形象崩壊していった。
「パターン青、消滅!使徒殲滅確認しました!」
日向の報告にミサトは満足げに頷き、モニター越しのレイとアスカへ
「アスカっちもお疲れー。今日のMVPだね!ホント助かりましたわー」
「当然よっ!もっと褒め称えなさい!」
「いやでも、アンビリカルケーブルを差し込まれた時の衝撃は、ちょっとビックリしたな」
「なによ、せっかく持ってきてやったのに。命拾ったんだから、感謝しなさいよね!」
「だって…いきなり
あんなの、碇くんにだってされた事ないのに…」
「やっかましいわエロナミ!」
ほんのり赤く染まった頬を抑え、身体をくねらせるレイに、
機嫌の良かった表情を転じさせ、青筋浮かべて吼えるアスカ。
「あんた達、相変わらず仲が良いわねー。
機体損傷度のチェックするから、補給車両に向かってちょうだい」
「ほーい!」「誰が仲良いってのっ!」
いつものやり取りにミサトは頬を緩ませ…ふと、山肌に倒れている機体…JAに目を向けた。
(さて、どうなってるかしらね。我らがライバル、日本重化学工業共同体の皆様は)
どう『ご挨拶』したものか…ミサトは思案を巡らせた。
レイ「あっ、お魚食い損ねた」
アスカ「まだ言うか」
日重関係の戦後処理がおかしかったので結構削りました(9/1)
後の話で修正して出す予定です。