新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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3、リナレイさん、シンジくんより一足先に格納庫にIN

爆心地にクレーターを作ったにも関わらず、

NN(エヌツー)地雷での攻撃は使徒の体表面を僅かに融解させただけだった。

 

自らの所有兵器が通用しないと悟った国連軍の高官達は

直属組織である特務機関NERVの総司令、碇ゲンドウへの作戦指揮権を委任。

それを受諾した後、ゲンドウは専用回線を繋いだ。

 

「葛城一尉、首尾はどうだ」

『ご心配なく。ご子息は最優先で保護しています』

「そうか、ご苦労だった。本部直通のカートレインを回す。赤木博士も迎えに行かせよう」

『い、いえ!彼を迎えに行くのは私が言い出した事ですので!私が最後まで責任を持って…』

「内部構造に慣れていない君が()()迷うのは目に見えている。

…我々には時間がないという事を忘れるな、葛城君」

『は、はひぃっ!』

 

図星を突かれた葛城ミサト一尉の声が上擦る。

要件のみで通信を切ったゲンドウ。

その傍らに立つ白髪の壮年…NERV副司令の冬月コウゾウが横目を向けた。

 

「葛城一尉に連絡を取るなら、同乗しているシンジ君に

声の一つも掛けてやれば良かったのではないか?三年ぶりの再会だろう」

「どの道すぐに顔を合わせる事になる。二度手間だ」

「不器用な奴め。俺には息子との会話を意図的に避けているように見えるぞ」

 

苦笑する冬月を黙殺し、ゲンドウは格納庫(ケージ)にモニターを移した。

 

「レイ、もう一人の予備が間もなく届く。別命があるまでは待機だ」

『ほいほーい、了解~』

 

おそらく同伴の看護師が用意したのだろう。

パイプ椅子に座り、肩からタオルケットを羽織った綾波レイが答えた。

清涼飲料水(スポドリ)を一口だけ啜り、軽く喉を湿らせて看護師へと返す。

 

「ありがと」

「もういいの?」

「や、飲み過ぎてもおしっこ行きたくなるし」

「綾波さん、普通にトイレって言いましょうよ…女の子なんだし」

 

ケージ内の作業員達の眼を気にして赤面する看護師。

レイはどこまでもマイペースだった。

 

 

「お、おしっ…あの、レイが…!?」

「…盗み聞きは感心せんな、碇」

 

ぼそり、冬月が一言。

スピーカーだけを切り、ケージ内の音声を拾っていた総司令。

ヒゲを剃っても、()るで()ーティな()っさん略してMA☆DA☆Oだった。

 

 

 

 

 

場所は変わり、地下空間『ジオフロント』を抜け、NERV本部へと到着したカートレイン。

後部がひしゃげて走るのもやっとという(てい)のルノーと

そこから降りてきた二人を、赤木リツコが出迎えた。

 

「よく無事だったわね、ミサト」

「全力で逃げてきたけど、NNの衝撃波に「カマ掘られた」わ。

まーだ3年近くローン残ってるってのにね。…修理代は経費じゃ落ちないかしら?」

「期待しない方がいいわよ」

「デスヨネー。トホホー」

 

親友たるリツコに愚痴をバッサリと切り捨てられ、ミサトは肩を落とす。

シンジは『ようこそネルフ江』と書かれた資料を脇に抱え、会釈を交わした。

 

広く入り組んだ施設の中を、リツコの先導で歩いていく。

動く歩道、エレベーター、ゴンドラと乗り継いでいく間、

ミサトは「こっちがこうで…」などと呟いており、

案内役を寄こしたゲンドウの判断は正しかったと言えるだろう。

 

オレンジ色の液体が満ちたケージをモーターボートで進んでいく三人…

 

「やっほーい」

 

人工の海に渡された金属製の通路の上から、

看護師に付き添われた少女が手を振って迎えた。

シンジは既視感(デジャヴ)を感じ…ハッと息を飲む。

怪我のためか少々声のトーンを落とし気味。それに服装こそ違えど

間違いなくシンジが先程見かけた水色髪の少女だった。

 

「幽…霊!?」

「む、失敬な。包帯(ミイラ)状態だけど死んでるわけじゃないよ」

「あ、ご、ごめん…」

 

ぷー、と頬を膨らませる少女…レイに、シンジは慌てて頭を下げた。

ミサトは眉を寄せ、リツコに耳打ちする。

 

「…レイは第3新東京市の街中に出てたりはしないわよね?」

「ないわね。病室から看護師の肩を借りて、30分ほど前にケージ入りした所よ」

「シンジくんが、私と合流する前に『幽霊を見た』って言ってたの。

彼に虚言癖や妄想癖があるとも思えないし…どういうことなのかしら?」

生霊(いきりょう)、とでも?心霊現象の大半は見間違いと偶然で片がつくものだけれど…

今は後回しね。…ボスがおいでなすったわよ」

 

『久しぶりだな、シンジ』

「…っ、父さん」

 

上前方、ガラス越しに姿を現すゲンドウと、見上げるシンジ。

感動の再会、という風でもない。張り詰めた空気…。

 

「…あ、親子なん?確かにちょっと似てるかも?ヒゲ剃ったのもあるしネ、司令」

 

レイの能天気な声は、空気を読まなかった。




バタフライ効果かは解りませんが、レイさんの回復が早まったのにつられて、
セリフや時系列が前倒しになってたり、色んな人が少しずつ前もって行動してたりします。
どうなりますことやら

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