新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
爆心地にクレーターを作ったにも関わらず、
自らの所有兵器が通用しないと悟った国連軍の高官達は
直属組織である特務機関NERVの総司令、碇ゲンドウへの作戦指揮権を委任。
それを受諾した後、ゲンドウは専用回線を繋いだ。
「葛城一尉、首尾はどうだ」
『ご心配なく。ご子息は最優先で保護しています』
「そうか、ご苦労だった。本部直通のカートレインを回す。赤木博士も迎えに行かせよう」
『い、いえ!彼を迎えに行くのは私が言い出した事ですので!私が最後まで責任を持って…』
「内部構造に慣れていない君が
…我々には時間がないという事を忘れるな、葛城君」
『は、はひぃっ!』
図星を突かれた葛城ミサト一尉の声が上擦る。
要件のみで通信を切ったゲンドウ。
その傍らに立つ白髪の壮年…NERV副司令の冬月コウゾウが横目を向けた。
「葛城一尉に連絡を取るなら、同乗しているシンジ君に
声の一つも掛けてやれば良かったのではないか?三年ぶりの再会だろう」
「どの道すぐに顔を合わせる事になる。二度手間だ」
「不器用な奴め。俺には息子との会話を意図的に避けているように見えるぞ」
苦笑する冬月を黙殺し、ゲンドウは
「レイ、もう一人の予備が間もなく届く。別命があるまでは待機だ」
『ほいほーい、了解~』
おそらく同伴の看護師が用意したのだろう。
パイプ椅子に座り、肩からタオルケットを羽織った綾波レイが答えた。
「ありがと」
「もういいの?」
「や、飲み過ぎてもおしっこ行きたくなるし」
「綾波さん、普通にトイレって言いましょうよ…女の子なんだし」
ケージ内の作業員達の眼を気にして赤面する看護師。
レイはどこまでもマイペースだった。
「お、おしっ…あの、レイが…!?」
「…盗み聞きは感心せんな、碇」
ぼそり、冬月が一言。
スピーカーだけを切り、ケージ内の音声を拾っていた総司令。
ヒゲを剃っても、
場所は変わり、地下空間『ジオフロント』を抜け、NERV本部へと到着したカートレイン。
後部がひしゃげて走るのもやっとという
そこから降りてきた二人を、赤木リツコが出迎えた。
「よく無事だったわね、ミサト」
「全力で逃げてきたけど、NNの衝撃波に「カマ掘られた」わ。
まーだ3年近くローン残ってるってのにね。…修理代は経費じゃ落ちないかしら?」
「期待しない方がいいわよ」
「デスヨネー。トホホー」
親友たるリツコに愚痴をバッサリと切り捨てられ、ミサトは肩を落とす。
シンジは『ようこそネルフ江』と書かれた資料を脇に抱え、会釈を交わした。
広く入り組んだ施設の中を、リツコの先導で歩いていく。
動く歩道、エレベーター、ゴンドラと乗り継いでいく間、
ミサトは「こっちがこうで…」などと呟いており、
案内役を寄こしたゲンドウの判断は正しかったと言えるだろう。
オレンジ色の液体が満ちたケージをモーターボートで進んでいく三人…
「やっほーい」
人工の海に渡された金属製の通路の上から、
看護師に付き添われた少女が手を振って迎えた。
シンジは
怪我のためか少々声のトーンを落とし気味。それに服装こそ違えど
間違いなくシンジが先程見かけた水色髪の少女だった。
「幽…霊!?」
「む、失敬な。
「あ、ご、ごめん…」
ぷー、と頬を膨らませる少女…レイに、シンジは慌てて頭を下げた。
ミサトは眉を寄せ、リツコに耳打ちする。
「…レイは第3新東京市の街中に出てたりはしないわよね?」
「ないわね。病室から看護師の肩を借りて、30分ほど前にケージ入りした所よ」
「シンジくんが、私と合流する前に『幽霊を見た』って言ってたの。
彼に虚言癖や妄想癖があるとも思えないし…どういうことなのかしら?」
「
今は後回しね。…ボスがおいでなすったわよ」
『久しぶりだな、シンジ』
「…っ、父さん」
上前方、ガラス越しに姿を現すゲンドウと、見上げるシンジ。
感動の再会、という風でもない。張り詰めた空気…。
「…あ、親子なん?確かにちょっと似てるかも?ヒゲ剃ったのもあるしネ、司令」
レイの能天気な声は、空気を読まなかった。
バタフライ効果かは解りませんが、レイさんの回復が早まったのにつられて、
セリフや時系列が前倒しになってたり、色んな人が少しずつ前もって行動してたりします。
どうなりますことやら