新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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45、ジェットアローン(局地仕様)さん、マグマにIN

日本重化学工業共同体は、浅間山火口付近にワイヤーレールを設置。

レーザー射出装置がマグマ内に向けて閃光を打ち込み、機体のルートを確保した。

やがて、装置と場所を入れ替えるように巨大ロボットが降下位置に陣取る。

 

JA(ジェットアローン)・マグマダイバー…

その名を現す耐熱装甲は、赤熱する溶岩以上に明るく赤い。

高さはエヴァンゲリオンと同等だが、胸部と頭部が一体化しているあたり、

フォルムはむしろ第三、第七使徒寄りだ。

 

ワイヤーレール、およびJAの各部に取りつけられたカメラからのモニター情報は、

日重の通信車両を通して、隠す事無くNERV側へ伝えられている。

 

『自分達が秘密主義のNERVとは違う事をアピールするため』か。

あるいは『JAの力を知らしめるため』か。

モニターの一つから届く画像…JAの背から伸びる()の形状に、ミサトは顔を顰めた。

 

「非核の()()()が聞いて呆れるわ。

アンビリカル・ケーブルの丸パクリじゃないの!」

『人聞きの悪い事は言わないで頂きたいねぇ、葛城三佐。

只の電源ケーブルに権利を主張するなど、笑い物だよ』

 

NERVと日重、互いの通信車両に分かれ、モニター越しに両者は牽制しあう。

『イニシアティブは日重側にある』とばかりに薄笑いを浮かべる時田シロウ。

ミサトは唇を噛みつつも、コンソールに向き合う眼鏡の副官に目を向けた。

 

「ふん、舐められてるのは癪だけど、映像を共有出来るのは好都合だわ。

MAGIによる解析が可能なら、()()()()()にはなるもの。

…日向くん、こちらの状況は?」

「布陣はエヴァ弐号機を主力に据え、零号機がバックアップ。

現在、高速リニア・ラインで移送中ですが…」

「間に合うかどうかは…微妙か…」

 

強化断熱素材のケーブルを伸ばし、灼熱のマグマ内に進攻するJAの姿は、

見せつけられるようにNERVの通信車両に届いていた…。

 

 

 

 

 

「状況はどうだ?」

「現在、深度1100メートルを突破。CTモニターにより索敵中です。視界、透明度98」

「機体ダメージは?」

「マグマによる損耗率7.2%、各部動作は正常。作戦行動に支障ありません」

「よーしよし、いいぞ。そのまま続けてくれ」

 

日重の通信車両内で、時田は満足げに口を吊り上げていた。

オペレーター達と言葉を交わしながら、JAから送られてくる映像を見つめる。

『いつまでもNERVの時代ではない』と大見得を切った時田は実際、

()の組織を決して侮ってはおらず、自信と警戒の微妙なバランスを保っていた。

 

かつて時田はエヴァを『外部電源なしでは5分も動かぬ決戦兵器』と揶揄していたが、

彼を戦慄させ、考えを改めさせたのは、独自のルートで入手した第五使徒戦の戦闘データだった。

 

NERVの葛城ミサト作戦部長は竜騎兵作戦(オペレーション・ドラグーン)を立案。

エヴァンゲリオン2機と第3新東京市の防衛機能をフルに活用…

戦略自衛隊の協力を得て、常識外れの攻撃力と防御力を持った使徒を殲滅せしめた。

 

仮にその時、もし完成したばかりのJA一号機が参戦したら、どうなっていたか?

…おそらくは、あの正八面体に近づく前になすすべもなく加粒子ビーム砲に狙い撃ちにされ、日向マコトの懸念通り、第3新東京市を放射能まみれにしていたに違いない。

JAの売りである『核動力による150日間の連続行動』など、短期決戦においてはまったくの無意味だ。

 

NERVを吊し上げるつもりが、自らが恥を掻きかねない事に気づき、時田は顔を真っ青にしてJA完成披露パーティーの延期を決定。

今日(こんにち)に至るまで、資金・労力・時間…多くの資源(リソース)を開発・改良に費やした。

その結果、こんな過酷な状況下にあって、JAは未だ健在でいられるのだ。

当地震観測所の観測機では、マグマの熱と圧力により()()()()()()()()()()()()()()()()()潰れていただろう。

 

…深度を進めるJAのレーダーに、大きな黒い影が写る。

オペレーターの一人が、時田へ振り返った。

 

「目標物、捕捉。軸線に乗りました!」

「さぁ皆、ここが正念場だぞ。慎重に、正確に…我々日重の腕の見せ所だ。

捕獲せよ(キャプチャー)!」

 

時田の号令に合わせ、JAの両腕が『それ』に伸びていく…

 

 

 

 

 

地上を走るエヴァ専用のリニア・ラインは空路や海路よりも速い移動手段ではあったが、レイとアスカが現場に到着したその時、火口付近の映像がエヴァ両機のエントリープラグ内に映し出された。

 

煮えたぎる溶岩から引き上げられたJAは、重量上げのような格好で『楕円形の何か』を頭上に掲げている。

カプセルに包まれた胎児のように見えるが、体高数十メートルの巨大ロボットが持ち上げていることから、サイズはかなりのものであるのが伺えた。

 

『っ…くくくっ…はぁーっはっはっはっ!

見たかNERV!これが私達の…ジェットアローン・マグマダイバーの実力だよっ!』

「間に合わなかった!?くっ、なによ!

あんな()()()()ロボットに先越されたっての!?」」

「ぐぬぬぬ。コミカルなカッコしてる割に中々やるじゃーないの…ん?」

 

勝ち誇った時田の高笑いがモニター越しに響き渡り、アスカは悔し気に唸る。

だがレイは何かに気づき、凝らしていた瞳を日重のモニターに向けた。

 

「あのー、日重の時田(トッキー)さん?

そちらのジオン水泳部っぽいロボが『獲ったどー!』のポーズで担ぎ上げてるソレ…」

『んん?なにかね、NERVパイロットの…あぁ、君は綾波レイ嬢か。

これは私達が回収したモノであって、最早君たちの出る幕は…』

今めっちゃ(かえ)ってるんですけど

NOOooo(ノォ――――)ッ!?

 

胎児状の物体は急速に姿を変えていき…JAの手に収まらないほど激しく暴れ出す。

プラグ内に表示されたBLOOD TYPE:BLUE(パターン青)に「やっぱりねー」とレイが呑気に呟いている中、時田は顎が外れんばかりに絶叫していた。




ミサト「ちわぁーッス。NERVですけどォー!
例の敵生体に対する的確な対処はいかがッスかぁ~?(゜∀゜)」
時田「プルプル(((゜皿゜#)))プルプル」

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