新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
「このっ、もぐっ!惣流・アスカ・ラングレー様をっ、はぐっ!
甘い物で釣ろうなんてっ、むぐむぐっ、安く見られたものねっ!
ごくっ、おかわり!!」
「見事に釣られてるじゃないか…」
「さすがアスカっち。チョロいっ、かわいいっ!」
「そこのバカップル、なんか言った?」
「「いいえ、なにも」」
NERV職員食堂のテーブルには細長く巻かれた「フルーツたっぷりクレープ(クリーム増し増し)」が山盛りになっており、アスカはそこからひょいひょいとクレープを取って黄色い山を削っている。
レイはその様子を眺めながら、マイペースにクレープを
女同士とはいえ堂々と
アスカのプライドを傷つけた落とし前をどうつけるか、という話になり、
レイから「クレープ食べ放題奢るよ!」という提案が出た結果…
「絶対にスイーツなんかに負けたりしない!(キリッ)」
↓
「やっぱり勝てなかったよ…(´・ω・`)」
というお決まりの流れになったわけである。
桃、バナナ、キウイといった果物に生クリームとチョコソースを絡め、
しっとりしたクレープ生地で包んだNERV職員食堂の人気スイーツメニューは、
アスカの舌を充分に満足させる出来だった。
「あれ、碇くんは紅茶だけ?食べないの?クレープおいしーよ?」
「いや、甘い物は好きだけど、この量はさすがに…
カロリーが凄く高そうで、見てるだけで胸やけが…うぅっ…」
「あんたバカァ?アタシがこの程度で太るわけないじゃないの」
青ざめた顔で砂糖なしのホットレモンティーを啜るシンジをよそに、女子組は余裕である。
運動量のせいか新陳代謝が良いのか、アスカは『いくら食べても太らない』という
NERV女性職員から羨ましがられそうな体質だった。
実際に太った経験がないだけに、疑似的にではあるがお相撲さん体型になる耐熱プラグスーツは、
アスカには耐えがたかったのかもしれない。
その時、三人の携帯端末にコールが入った。
チルドレンの非常招集…すなわち、使徒が出現した可能性が高いことを意味する。
レイは眉を動かし、シンジは顔に緊張を走らせ…
アスカは手に残ったクリームをペロリと舐め取って不敵に笑った。
「ほら、アタシ達の仕事よ。
ちょうどいい腹ごなしが出来そうじゃないの」
「気楽だなぁアスカは。えぇっと場所は…浅間山」
「アサマヤマ?どこよ?」
「長野と群馬の県境にある活火山だね。
標高2400mちょい。セカンドインパクト前はもっと高かったみたいだけど…」
「火山…!?まさか…」
シンジは端末で確認した情報を、アスカに伝えていく。
彼女の顔色が沈むのとは対照的に、レイはにっこりと花のように微笑んだ。
「うむ!高熱地帯ですな!
例のどすこいスーツとエヴァ弐号機・
やったねアスカっち!活躍の場が増えるよ!」
「ちょっと、その言い方は洒落にならないから止めなさいバカナミッ!
嫌ぁー!あんなみっともない格好はいやぁー!」
取り乱すアスカ。
耐熱局地戦の場合、パイロットが膨張式のスーツを着るだけでなく、
エヴァ弐号機にも特殊装甲が装備されることになっている。
通称D型装備をまとったエヴァ弐号機のシミュレーション映像を見た時、
レイは「ちょっとカワイイ♪」との感想を抱いたのに対し、
アスカは先のような悲鳴を上げたものだった。
「よーし、腹くくっていこーかーアスカっち!
「アスカ、しょうがないよ。任務だからね」
「いーやぁ~~~~!!」
レイのカードで清算を済ませ、食堂を後にする三人。
アスカの叫びが空しく響いた。